問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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くっ、エロいイベントから普通のイベントになったら途端にお気に入りの変動が減った……これが、エロパワーだとでも言うのか……!?




白い流星の下で

ギフトゲームが始まると同時に、舞台はオークション会場の片隅から大きな中世の洋国の街中のような場所に変わった。

 

「ここは……見た感じ、中世の英国、ペストのゲーム盤に似ていますが……」

 

「中世イギリスとハーメルン街のドイツが似ているわけはないだろう。似ている……とすれば、ここのモデルはドイツの隣国だな」

 

さて、と竜胆は上を見上げる。

 

それはもう大降雪だ。ぶっちゃけ陣羽織じゃこんな天気の中歩き回るのは危険だろう。

 

「これ、気に入ってるんだがなぁ……」

 

竜胆は溜息を漏らしながら衣服を竜胆の時代で今時という感じの冬服に変わった。マフラーが口元を覆って仏頂面が見えないからやたらと女性っぽく見える。

 

しかし、どうしたことか。服装を変えても竜胆が感じる凍えは変わらなかった。

 

「……どういうことだ……?」

 

「恐らくこのギフトゲームのルールですよ。"詩人の母"と呼ばれている、この街のどこかにいる人物が凍えを感じているんだと思います」

 

「……これもダメージっていうことなのか……だったら早いところ探さないといけないな。この感じからするとその人物は防寒の類いを一切行えないと見ていい……その人物の凍死によって、俺達も凍え死ぬ」

 

八汰鴉もその言葉に頷く。

 

「では……手がかりとなりそうなものはなんでもいい。探し回る必要がありますね」

 

「ああ……人物名の特定だけでギフトゲームは圧倒的に優位に行える。そこを中心にして探し出そう」

 

そう言うと二人は少しだけ離れて行動を始める。

 

ギフトゲームは、始まったばかり……

 

◆◇◆

 

とある時、とある場所。

 

大雪の降り注ぐその街の中、裸足で小さな男の子を追いかけて行くみずぼらしい服装の少女がいた。

 

「待って……!返して……私の、靴……」

 

「へん!貧乏人のお前には靴なんて似合わねえよ!貧乏人のくせに今日の日に街中で歩いてるんじゃねえ!」

 

少女は貧乏人である。とある理由で今日は目的を果たすまで家に帰ることは許されない。

 

彼女がこの大降雪の天候の中で裸足でいるのにも、そこにある。元々は普通に靴を履いていたのだが、片方は馬車に巻き込まれて見失い、もう片方は今のように少年に奪われてしまっている。

 

「待って……!待って……!」

 

凍傷を負った足では少年を追いかけることもできなくなり、少女はやがて諦め、自らの責務に戻った。

 

◆◇◆

 

「あっ……ぐっ……!?」

 

情報を集めている最中、竜胆と八汰鴉の足に嫌な痛みが走る。

 

「この感じ……凍傷しているのか……だとしたら、その目的は今靴を履いていないのか……?」

 

時間が経てば経つほど情報は手に入るが、その情報を生かしきれないようにその情報が邪魔をしてくる。

 

「っ……八汰鴉。なにか情報はあったか?」

 

竜胆と八汰鴉はマトモに足を動かせないと悟ると、翼で動くことにしてすぐさま合流していた。

 

「ええ……時間が少しかかりましたが、いくらか……というほどでもありませんが」

 

「いい……今は一つでも欲しい。不可解だと思ったことを言ってくれ」

 

竜胆が催促すると、八汰鴉は頷き手に複数枚の板を持ってきた。

 

「……それは?」

 

「家の標札です。ギフトゲームの舞台だから奪っても構わないと判断してもって来ましたが……見てください」

 

八汰鴉の持っている標札に一通り目を通す。ここは明らかに日本ではないはずなのにカタカナで名前が書かれている。そして、なにより不可解なのは───

 

「ホー・セー・アナスン……ホー・セー・アナスン……ホー・セー・アナスン……同じ人名ばかりだな……」

 

「ええ……ですがしかし、一つだけ違うものがありました」

 

八汰鴉が一枚の板を取り出し、それを見せる。

 

「アンナ……このホー・セー・アナスンの名前以外には、このたった一枚だけが見つかったってことか?」

 

「はい。一枚だけ、アンナと」

 

八汰鴉の持ってきた情報は他にもここがデンマークをモデルとした場所であること。これに関してはその辺の日本語でない文字から理解したらしい。

 

「じゃあ次は俺か……俺はこれを見つけて来た」

 

竜胆が八汰鴉に見せて来たのはカレンダーだった。めくると次の日が表示されるというものだ。

 

「カレンダー?それがどう不自然だと……?」

 

「見てみろ」

 

竜胆に渡されたカレンダー慎重に見る。今日と設定されている日は12月25日……クリスマスの日だ。

 

八汰鴉が次のページを見ると、それは不自然だった。

 

次の日は12月26日ではなく、12月31日……大晦日の日だったのだ。

 

更に次の日をめくると、今度はまた12月25日。それをめくれば12月31日、めくると12月25日……と二つの日だけが永久的にループしていた。

 

「確かにこれは……不自然です。意図的に二つの日以外が破られているんじゃなくて、二つの日が永続的に続いている……」

 

「ああ……でも俺はこの日は物語が行われている日ということだと思っている」

 

「……二つの続かない日が物語とは不自然です。根拠は?」

 

「ない……だが、そうとでも思わなければ納得できない。どうしてこの日だけが続いているんだと……」

 

竜胆が寒さに顔を強張らせながら話す。どうやら目的の人物は雪が身体中についたようだ。

 

八汰鴉もまた顔を強張らせ、標札の話題に移る。

 

「では、今度は僕の考察を……恐らく、この標札の二つの名前は物語の主人公と原作者ではないでしょうか?」

 

「原作者と主人公……か」

 

「はい。名前からして恐らくホー・セー・アナスンの方が原作者でしょう……中世のデンマークは確か貴族社会。僕らの身体が冷えているのは主人公が冷えていっているから……ならば、苗字の存在しないアンナが主人公なのではないでしょうか」

 

「まて。そのアンナを主人公とするのならクリア条件の"詩人の母"とはどういうことだ?主人公だと言うのならそれは作者の子という表現の方が正しいだろう?」

 

「………!確かに……では何か足りないピースが……?」

 

八汰鴉が焦るように呟くが、竜胆は本能的にこれ以上集まる情報はないと悟っていた。

 

そもそも、たったこれだけの情報を集めるのにもかなりの手間だったのだ。恐らくあったとしても集めている間にゲームオーバーだろう。

 

竜胆が頭を捻らせ、捻らせ、僅かな違和感を埋めるべく思考する。

 

考えても、考えても、答えは浮かばなかったが、それでも考えて続け、その瞬間だった。

 

ぽうっ、と竜胆達の身体の周りが少しだけ暖かくなった。

 

少しの間、安心するような暖かさを感じ、その後すぐさま右手の辺りが熱く感じた。

 

そうすると、暖かさは消え、暫くするとまた暖かくなり、右手の辺りが熱くなり、暖かさは消える。

 

まるで炎が下につたっていくかのように───

 

「───まさか、いや、そうか……!それならホー・セー・アナスンの名前も、詩人の母というのも、アンナという主人公にも納得がいく!」

 

竜胆が立ち上がり、凍傷を負った足で駆ける。

 

「ちょ、竜胆くん!?いったいどこへ行くんですか!?」

 

「煙の匂いがするところだ!そこに、詩人の母がいる!」

 

八汰鴉はとりあえず竜胆を信じ、彼についていく。

 

「どういうことですか?煙の匂いって……!」

 

「一つずつ説明する。まずループし続ける二つの日。それはやっぱり、物語の行われている日なんだ」

 

「こんどはちゃんと根拠があるんでしょうね……!」

 

八汰鴉がそう言うと竜胆はしたり顔で笑う。

 

声には出さなかったが、多分「"人類の希望"をなめるなよ」と言いたそうにしている。余計なことを言えないくらいにその詩人の母は衰弱しているのだろう。

 

「ある。これにはある理由があるんだ。

まず、この作品の原作は大晦日の日……それでもクリスマスにも物語があるという理由。それは子供が大晦日という日をあまり詳しく知っていないということなんだ」

 

「ということは、この作品は童話ですか……?それも主人公が死んで終わるバッドエンドもの?」

 

「そうなる……次に名前だ。アンナは置いておいて、このホー・セー・アナスンは本名じゃない」

 

竜胆達が感じていた熱がいっそう強くなり、意識が朦朧とし出した。

 

詩人の母の命が尽きようとし、詩人の母と命が繋がっている二人にも影響を与えているのだ。

 

「ホー・セー・アナスン……ホー・セーはHとCのデンマーク語読み……アナスンはデンマーク語で表記するとAndersen……Hがファースト、Cがミドル……そしてAndersenがラストに来る著名なデンマーク人は一人だけだ」

 

竜胆は路地裏に複数の小さな炎に囲まれている少女を見つけると、そこで止まる。そして少女の元へ向かい、その名前を告げる。

 

「本名ハンス・クレステャン・アナスン……英語名に直すとハンス・クリスチャン・アンデルセン……そして詩人の母とはつまり、アンデルセンの母をモチーフにしたということ……それがこの物語の主人公、日本のテレビでアンナと名付けられ、ギフトゲームの名前、流星の夜に死んでいった少女……その題名は───!」

 

その題名は───

 

───マッチ売りの少女

 

 






コラボをそうそう長引かせたら本編忘れちゃいそうだから展開を少し早めました。

今回のギフトゲームの題名がわかった人はいたかな?いたらWikipediaとかpixivとか色々な方面から調べ尽くした人だと思われます。

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