問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
別に過去話による鬱展開じゃないですよ?そうさ100パーセントコメディですよ?
"アンダーウッド"の収穫祭が終わってから、どれくらい時が過ぎただろうか。数日?それとも数週間?2クールかけた友情ごっこだって時の流れが億劫になることなんてないだろう。
竜胆は収穫祭が終わった時に白夜叉から直接「私からのプレゼントだ」なんてもらったビンを眺めていた。
「なんのプレゼントだよ、これ……聞いても開けてからのお楽しみしか言わなかったし……」
正直、あの駄神のことだ。よからぬことを考えているのは目に見えているが、その辺に関しては流石"希望"となっても"罪"の化身。人間的に開けたくないものほど開けたくなる。
そう、まるで開けるといけないと言われているのに車のドアを開けてしまう赤子の如く───
「───……ちょっと、だけ……」
そして竜胆はそのビンを開けてしまった。
◆◇◆
「竜胆?そろそろ夕ご飯の準備する時間だから早く戻って来てくれると嬉しいってリリが」
今日も今日とて春日部耀は竜胆が子供らしい本能に任せて眠る竜胆を起こしに行く。なにがあったとか、そういうのは特にないのだが、ツンデレ純情狐になった竜胆の世話をなにかとしていた耀はいつの間にかそういう役目を担っていた。
「………?竜胆ー?」
いつもなら彼の耳が反応してわかった。すぐ行くなんてどうしてか顔を赤らめながら行くのだが、どうして赤らめる必要があるのか耀には全くわからなかった。
だがしかし、今日の彼はなにかが違った。違いすぎた。
「うみぁぅ?」
なんか、やけに、可愛らしい声、が聞こえ……た。
発生源はいつも竜胆が可愛らしい寝顔で寝ている場所である。きのせいか、声の質も似ている。
耀はつい気になって声の発生源を探したが、それはすぐに見つかった。
「うにぅ?」
孤独の狐改め、自由のニャンコが誕生した瞬間だった。
◆◇◆
「……で、なんでその……仮称にゃん胆くんは春日部さんの膝から離れないの?」
「……なつかれた?」
「いや、俺の目からすると最初からなつき度MAXだったぞ。そのままレベルが上がって進化したんじゃないのか?」
それから、竜胆は耀に連れられていったのだが、なにが起こっているのか全くわけがわからなかった。因みに膝から離れないとは言っても、身長は本来の彼のものとそう変わらないので頭を乗せているだけだ。
「これはどちらかと言えば退化なんじゃ……?」
「みゃぅ?」
多分、飛鳥の言うとおり生物学上では寿命や歩行足の数など、進化というよりは退化しているように見える。
「みゃにゃう!うにぁあ!うーみゃ〜!」
「……なんて言ってるんだ?こいつ」
「猫の言葉だけど猫語じゃないからわかんない……多分、『退化なんて言うな!人類は日々進化しているんだぞ!アンパンマ◯の顔みたいに!』って言ってると思う」
「なんでそこでア◯パンマン!?こうなる前から薄々感じていた彼のフリーダムっぷりは一体なんなの!?そもそも◯ンパンマンの顔って成長してるの!?」
「うみゃー!にゃにぁにゃふかーー!」
「作画が進化してるだろ!そもそもアン◯ンマンは元々はただのあんぱん配ってたおじさんだ!って」
「昭和の私にはわからないわよそんな話!だいたいアンパ◯マンなんて前に竜胆くんが教えてくれただけで私全然知らないんだけど!?」
飛鳥が叫ぶように言うと突然そばで床がこすれる音がした。
「アンパン◯ンが……ヤツが元々はただの人間だと……!?そんなバカなことが……」
十六夜がなんか絶望していた。
「そんなバカなこと、俺は信じないぞ……!アン◯ンマンは俺が託児所を転々としていた時からそばにあったヒーローだ!断じて認めてなるものかぁ!」
「ふみゃ、にぁにぁにぁ、にゃう……にゃ?」
「真実だ。それより十六夜貴様、アンパンマ◯を英雄視していたとは……どの辺が好きだった?と」
「んなもんばい◯んまん殴り飛ばして自分の顔が抉れる瞬間に決まってるだろうが……!」
歪みきった偶像英雄だった。
◆◇◆
「で、竜胆のいた場所にこんなビンが置いてあったんだけど」
耀が出したビンにはよくわからない、きたない文字が並んでいた。
「なんだこれ……?にゃたたび……これを飲めばツンツンした狐もあら不思議、好きな子にすりすり甘えて来るにゃんこになる!……だとよ」
「……ああ。だから竜胆くんは狐耳でも狐の尻尾でもなくてネコミミと鍵尻尾のにゃん胆くんになったのね」
やたら酷い文字だったので竜胆がそれが理解できなかったのもわかる。
「……んみぁ〜」
竜胆改め、にゃん胆はブーツを脱いだ右の素足で器用に頬をぽりぽりと掻く。とても可愛い。
にゃん胆は両手と共に2つの足と2つの腕で耀に近づくと彼女のブーツに頭をすりすりしてきた。
「おおう、なんだ?にゃん胆のヤツ、発情期にでもなったか?」
「違うよ十六夜。ネコは好きな人の足に頭をすりつける習性があるの」
「みゃあ♪」
にゃん胆は耀が頭を撫で返してくれたことがよっぽど嬉しかったよか、気持ち良さそうな表情をする。
「ほら、ね?」
「……だな。マジもんのネコだ、コイツは」
十六夜が呆れながらにゃん胆の頭に手を置こうとする。
「ふかーー!!」
怒られた。嫌らしい。
「……不公平じゃねえか?これ」
「十六夜くんの普段の行いのせいじゃないの?」
「どっちにしろにゃん胆は竜胆よりも正直者ってことだよ」
正直も行き過ぎると人を傷つけることがあるが……多分十六夜じゃなかったら、にゃん胆じゃなかったら傷ついてただろう。
すると突然、どうしたことだろうか。にゃん胆がそのままうつ伏せになってぐでっとした表情になった。
眠たいらしい。どうやらにゃん胆は竜胆よりも生物的な欲にも正直なようだ。だからといって、ニャンコになっているとはいえ人が靴で踏み鳴らしている床の上でおねむをするのはあまりよくないが。
まあ、その日は"ノーネーム"一同がにゃん胆に癒されたのは疑いようのない事実である。
◆◇◆
後日談というか、今回のオチ。
翌日、にゃん胆の記憶を全て失った竜胆は問題児達と共に"サウザンドアイズ"に呼ばれていた。
白夜叉が"階層支配者"の役目を終え、仏門に入ったことから、今までほど"サウザンドアイズ"に厄介になることはないと思っていた、矢先である。
「な、にゃんだこりゃーーーーーッッ!?」
にゃん胆の時が若干残っているのか、竜胆は若干猫語で叫んだ。
そんな彼が手にしているのは、複数枚の写真。
「ふはははははははははは!!!これぞ私が先日"ノーネーム"の館に侵入して撮った秘蔵の写真達よ!」
写真に写っているのはにゃん胆。眠そうな顔をしてデフォルメで口を三角にしているにゃん胆。耀に甘えまくってるにゃん胆。昼寝から起きて陣羽織がはだけているにゃん胆etcetcetc……
にゃん胆だらけである。
「白夜叉……俺の記憶が昨日の分スッポリと抜けているのは貴様の仕業かぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
「無論そのとおり!実にかわいらしかったぞよ!」
なっははははははははははは!!と上機嫌そうに笑う白夜叉は不意に影に覆われた。
次の瞬間、その影は消え、逆に明る過ぎるくらいに明るくなった。
簡単に言えば、竜胆が身体の至る部分からワイバーンだったり魔神だったりガルーダだったりフェンリルだったりのパーツを顕現させ、太陽神の神格も顕現させたのだ。
「なはは……は?」
「くたばれ駄神様がぁぁああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わ、私は滅びぬ!例え私のこの身体が消えようと第二第三の白夜叉がこの秘蔵写真の群れを───」
敗者のテンプレみたいなセリフを吐いて白夜叉は光の中に消えた。
「焼却!」
そして写真達は第二第三の白夜叉が現れる前に燃やされた。
その後、竜胆は暫くそのままでいると、突然元の姿に戻ってニコッと笑う。
「帰るか!」
因みに、耀が弄るために個人的に二枚くらい取ってあったのは秘密である。
やはり、彼は弄られる運命にあったのだ……