問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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ってなわけで『異常な普通も異世界から来るそうですよ?』コラボも今回が最終回です!忙人K.Hさんありがとうございました!

それでは、バトルありサービスシーン(主に竜胆くんの行為)あり、お笑いありの最終回、どうぞ!



変わらない彼ら

剣が重なる音と、大地を抉る一撃が二つと形容し難い音。

 

四つの音はそれぞれ不定期に重なり合う音を変え、絶えることなく鳴り続ける。

 

「っだー!オカシイよこれ!なんでさっきからここまで派手に音鳴ってるのに人っ子一人来やしないんだ!?」

 

「まったくだ!聴覚のいい耀やお前の眷属のロキ辺りは気づいてもいいはずだろ!?」

 

「ィハハハ!!無駄無駄無駄無駄無駄ァ!オレ達がぃるこの空間はぃまオレのギフト"虚無空間"(ヴァニティー・フィールド)で実質的に"誰もぃなぃ空間"になってる!まぁ、誰もぃなぃクセにわくせぃがあったなぁ予想がぃだったがなぁ!」

 

「そういう事だ。ここは我々四人以外何者も存在しない世界……数を呼ばれると厄介なのでな。そしてこれがッ!」

 

その言葉を引き金に貭魂は自らの左腕を引き千切った。そして次の瞬間、彼の腕から溢れ出る血が、左腕だった部分から大鎌のようなカタチをしたものに変わるように生えて来た。

 

「私のギフト、魂魄の怒り(バイオレイジ)……ハッ!」

 

貭魂が右腕を振るうと、鎌のカタチになり損ねた彼の血が全て小さなダガーのカタチを形成し、健太と竜胆に向けて飛んで来た。

 

「っ!」

 

「血液がもう凝固してるのか!?」

 

「ただの血じゃダメージの無効化はできないっ……どうする!?アレを使うしかないのか……気が引けるけど……」

 

この血そのものに対して"平常運転"が働かないことを悟った健太は自然と身体の急所をガードしていた。そしてそれをなんとなく理解した竜胆は健太を守るように彼の前に立つ。

 

「……健太」

 

健太が使うもの、"半身半念"……それはありとあらゆるものを[0]にする文字通り何でもアリな荒業。

 

その気になれば健太は竜胆が僅かな時間を稼いでくれれば貭魂と夜雷を一瞬で文字通り消すこともできる。そんな異常な技だからこそ、本気でキレていない今の健太はそれを切るのに少しの躊躇いがあった。

 

それを察したのだろうか、竜胆は声のトーンを少し上げて健太に話しかける。

 

「お前はいいヤツだな」

 

「は、はぁ?いきなり何言ってんのさ」

 

「正直な感想さ。今こうしてアイツらを消し去る策があるのにお前はそれを使うことを躊躇っている。それだけさ」

 

「……冗談。僕はあんまりそれ自体使いたくないだけだよ。やろうと思えばさっさとできる」

 

「……それはお前にやらせたくないな。人を[0]にしたことはあっても人を殺したことはないだろ?それは俺の役目だ」

 

「そう言うなら、キミも相当なお人好しだけどね……!」

 

竜胆はダガーを全て一身に受ける。健太を庇うように、まるでそれが役割とでも言うかのように。

 

「テメェらもテメェらだ……いつまでも俺が耐えっぱなしだと思うなよ!」

 

竜胆はその一言をトリガーに"太陽神の神格"を発動させる。血液はその高温によって液体に戻り、気化する。

 

そして竜胆は炎のブースターを吹かせ、貭魂に接近。ハンドアックスを手に持ち貭魂の脳を砕くように斧を振るう。

 

「クタバレクソッタレがぁあああ!!」

 

「くたばるかよぉ!ィヒャビャピャ!!」

 

だが夜雷が貭魂を庇うように前に出て竜胆の一刀を簡単に弾き飛ばす。しかし健太はそのタイミングを見計らったかのように弾かれたことで体勢を崩した竜胆の間を縫い、かつ夜雷に直撃するようなコースに向けて電磁加速砲(レールガン)を発砲する。

 

そしてそれは今度は貭魂の"魂魄の怒り"によって再び散らした自らの血を傘状にして電磁加速砲から夜雷を守る。

 

「キヒャヒャヒャヒャヒャ!!アヒハハヘフハヒヒヒヒ!!!」

 

そしてその血の傘の中から飛び出してきた夜雷が体勢を崩した竜胆に向けて強襲してくる。

 

「させない!竜胆クンと僕の距離を[0]に!」

 

それに対して健太は竜胆と自らの距離の概念を[0]にしたかと思うと、なにもない空間を掴む。

 

「うわわわ!?」

 

すると竜胆の身体はすぐそばにいないはずの健太の手に引っ張られて夜雷の攻撃を回避させられる。

 

「ゴメン!あの夜雷が明らかに異常なのに"平常運転"を無効化した以上はキミとアイツの距離を[0]にして攻撃を届かなくさせても意味がない可能性を考慮したから……!」

 

「気にしない!それより目の前のコイツらを片付けてからだ!」

 

竜胆は背中の炎を纏めて夜雷に向けて撒き散らす。やはりそれは貭魂の血の傘で防がれたが、それは一瞬だけのことですぐに液状化、気化を起こす。

 

「てぇりゃああ!」

 

更に竜胆はそれに続くように手斧を夜雷に向けてぶん投げる。だが、それも単発ではなく、投げてはまた新しいものを生成しては投げる、武器を選ばない竜胆だからこそこの戦い方が可能だ。力が足りないのならば物量で。

 

「ィハハハ!斧がメチャクチャ飛んでクラァ!貭魂これおもしれェや!」

 

「遊ぶのも程々にしろ。∀を連れ帰ることがEの望みだ」

 

「キャカカ!!そーだったなそーだったよ!なんてったってあのEの頼み事だかんなぁ!オレ達ゃそれに従うだけだよなぁ!」

 

「さっきから訳のわかんねえ話ばっかしやがって……わかるように説明しろってんだ!」

 

「まったくだっての!わからないことをわからないままにするのは好きじゃないんだよこちとら!」

 

「理解してもらう必要はない!」

 

「だとさカップル様!大人しくカノジョが攫われるとこを歯噛みしながら見てなってんだぁ!」

 

「誰がカップルだ!誰と、誰が!?あと誰がカノジョだ!言え!答えてみろ夜雷!」

 

「ィハハハ!!ぃうと思う〜?残念!ぃぃませ〜ん!」

 

「ドチクショー!あのクソムカつくウザい顔おおおおおお!!」

 

「まぁ、ぃわなくてもわかるんだろうけどなぁ!」

 

「あの態度マジ腹立つぅううう!」

 

竜胆が半ば感情に振り回されるように斧を投げまくる。そんな行為を続けたせいか、その行動はどんどんと単調になって行き、あっという間に夜雷は斧を弾きながら炎の中を前進して来た。

 

「ィヒャ!クタバレ!」

 

「くたばるのぁテメェの方だッ!」

 

夜雷の拳に対してバカデカいハンマーを創り出してぶつける。拳とハンマーという誰がどう見ても優劣のわかるはずの二つの力は何故か、拳が次第にハンマーを押していた。

 

「ふぐぐぐぐぐ…………!!」

 

「ィギギギギギギ!!」

 

二つの力が混じり合い、夜雷という身体を基点にして地面が割れる。二人の踏み込みと加えられているパワーの桁違いさを如実に表しているが、二人はそんな状況でも構わず力を振るい続ける。

 

「竜胆クン横だ!」

 

「隙あり!」

 

「グガッ……!?」

 

「ギャヒ……!?」

 

そんな鍔迫り合いの状況にあり、互いに身動きが取れない状況だったからか、互いのパートナーは二人の身体を電磁加速砲で、固まった血の槍で撃ち貫かれる。夜雷は強烈な電流によって、竜胆は地面ごと縫う槍によって身じろぎ一つできなくなるが、夜雷はすぐに身体の電気を弾き出し、竜胆は健太が血液の温度を[0]にすることで束縛から解放される。

 

「ケフッ……どーする健太。このままじゃどこまでいってもどんぐりの背比べだ。身体能力が一般人のお前がいるコッチの方が長期戦になると不利だぞ」

 

「いやいやまさか……確かに僕は"普通"だけど、"模倣演者"(フェイクパフォーマー)、ついでに策士でもあるんだぜ?」

 

「策があるってのか?どんなのだよ」

 

「ふふふ……それは……」

 

「……なぁるほど。それは妙案じゃねぇの。乗ったよ!六文銭掛けてやる!」

 

「なんだそれ!?僕を信じてないってのかな?」

 

「なわけないだろ。生き地獄を体験した御狐様のジョークだよ。三途の川なんて今はもう渡りたくもない……んじゃ、ちょっくら仕事しようか!」

 

竜胆が神格を消し、右手に呪符を持ち直す。

 

「凍れ!」

 

竜胆の号令一つで夜雷と貭魂の周囲は一瞬で氷漬けになった。

 

「ぬっ!?」

 

「アァア!?ぃまさらせけェマネしてんじゃねぇよ!!」

 

夜雷がその氷を見て躊躇なく拳を振り下ろす。

 

「まて夜雷!この氷、なにか───」

 

貭魂が夜雷を止めるも叶わず、夜雷の腕は氷をを粉微塵に砕き、破片を浮かび上がらせた。

 

「引っかかってくれて、ありがとうよ!俺からのファンサービスだ!受け取れ!」

 

竜胆は次の呪符で二人に向かって───正確には夜雷が撒き散らした氷を狙って大量の水流を流す。ただしそれは水流と呼ぶにはあまりに貧弱な、低圧水流。

 

だがそれこそが竜胆の、ひいては健太の狙い。その水流に触れた氷達は、一斉に煙を噴き出した。

 

「やられた……!これはドライアイスか!?」

 

「関係ねぇ!この煙とドラィアィスの温度じゃ、匂ぃだって頼りにならねえ!」

 

「それは、どうかな?」

 

その一言と共に竜胆は煙の中から正確に夜雷を狙って手斧を振るう。

 

「んだと!?」

 

「イルカの力を使わせてもらったんだ!ソナー音使ってな!」

 

「超音波で我々の位置を正確に把握した、ということか……!」

 

「Exactly(その通りでございます)」

 

急に英語でその通り、と答える竜胆。間違いなくノリだ。

 

「そして俺が高速で突っ走ったってことはドライアイスの煙の中から一点だけ煙が晴れるルートがあるってわけで……!」

 

「いい仕事するよ竜胆くん!」

 

健太の手に握られた電磁加速砲が出力を上げて発射される。その反動で地面に軽く足が沈み、その力強さを表している。

 

「"魂魄の怒り"……!」

 

貭魂が電気を血液の水に閉じ込めようと球状の血液を液体化して操る。が、血液と電気が触れ合う直前、ほぼ直角に弾丸が曲がり、そのまま貭魂に直撃する。

 

「なんっ……だと……!?」

 

「今撃ったのは専用弾の一種さ。さっきまでのが実際に電気を発射する弾丸で、今のは……磁力を帯びた弾丸。発射すれば血の主成分である鉄にも反応するほどの磁力を持っているから、その防御法は通用しないぜ?」

 

その言葉が出てきながら健太は内心冷や汗をバリバリかいていた。あの変態ども(シューターズギルドの方々)はなんて多種多様で用途がピンポイントすぎる弾丸を作ってくれたんだ、と。

 

「ちぃっ……!」

 

「おちつけ夜雷。ドライアイスの煙のせいで多少動揺はしたが、基本的な対処法は何一つ変わっていない」

 

「ケヒッ……頼もしぃよなぁ頼もしぃぜあぃぼう!テメェのおかげでオレァ思ぃっきり暴れられるってもんだぜぇ!!」

 

夜雷は喜びの叫びを挙げながら再び竜胆に向かって突っ込んで行く。が、夜雷の前に立ちはだかったのは、健太。

 

予想外の出来事に思わず夜雷は竜胆に向けて走っていた身体のバランスを健太に向けたせいで崩す。だが夜雷にはそんな状況でも健太の五臓六腑を引き裂く自身があった、

 

が、次の瞬間こそ本当に夜雷と貭魂は驚愕した。健太は己の右腕を"龍"のものへと変質させていたのだから。

 

「んなっ!?塗り潰し屋さん、テメェただの人っコロだろ!?」

 

「まさか!?ありえない!ただの人間が部位変質だと!?」

 

「マニュアル通りにやってますっていうのは、阿呆の言うことだぁぁぁぁああああああああああ!!!」

 

それもそのはず、彼は健太ではない。呪術で顔も体型も変えて健太の演技をした"竜胆"なのだから。

 

竜胆の拳が夜雷を殴り飛ばし、貭魂の驚愕の隙をついて急速接近、夜雷のところに投げ飛ばす。

 

「ってこたぁつまり、あの∀の方は……!?」

 

『「その通りさ。"模倣演者"と"写し身作りの仮面"(アバターメイカー)で竜胆"クン"の姿から体型、声帯、仕草その他諸々を模倣した"景山 健太"だよ!」』

 

そう言うと健太は夜雷と貭魂と自分の距離を[0]にし、吹っ飛ばされる二人をそこにいると見立てて掴み、殴る。

 

「喰らえっ!男女平等パンチ!」

 

「ガッ!?」

 

「ぬぁあ!?」

 

「れんぞくパンチ!」

 

「あだだだだだ!?」

 

「鬱陶しい……!」

 

「とどめの……きあいパンチィ!」

 

「「がふぁッ!」」

 

ギャグに見えるが真剣に、竜胆の姿をした健太はいつもの彼よりはるかに力強くなっている拳を容赦なく叩き込む。男女平等なのかはともかくとして。

 

「ケヒッ……ハ、ィハ……あぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!塗り潰し屋さん!ヤッパテメェはブッコロ対象第一位に昇格だクソッタレ!ぜってぇぶっ殺す!泣き喚いてもこれまでのこと全部懺悔してもぉ!テメェだけはぜってぇぶっ殺してやるからなぁ!カヒヒヒヒヒャ!シャガガガガ!!ケハフフフフフ!!!」

 

夜雷は最早言葉のイントネーションがはっきりと聞こえるほどに高笑いしていた。喜び、怒り……それがなんなのかは本人以外には計りかねないほど異質なものだった。が、

 

「……いや、時間切れだ夜雷。Eから撤退命令が来ている」

 

「ア゛ァ゛!?今更撤退だぁ!?冗談言うなよE!オレは目の前のコイツをぶっ殺したくてぶっ殺したくて仕方ねぇんだ!いくらテメェの命令でも従えねぇ!!」

 

夜雷が辺りを怒鳴り散らすように叫んでいると、不意に貭魂は夜雷の腹部に腹パンをかまして黙らせた。

 

「いい加減にしろ……それ以上はEの意思に反する」

 

貭魂はそれだけ言うと、夜雷が気絶したことで解除された"虚無空間"からまた別の次元の穴のようなものを作り出す。

 

「待て!逃げる気か!?」

 

「……∀。Eは追いたくば追えと言っている。Eと我々のことを知りたくば、この先を通ることだな」

 

「その前にテメェらをとっちめてそこの尋問マスターに尋問してもらうだけだ!」

 

「ねえそれ酷くない!?僕の扱い尋問マスターってナニソレ!?」

 

竜胆が追いかけるより早く、貭魂は次元の穴を通る、その刹那───

 

「っ!?」

 

炎の熱線が貭魂を遮った。その熱線の発生源には、機械的な杖の水晶部分を貭魂に向けていた、鈴蘭。

 

「お姉!?なんでここに!?」

 

「実は最初っからいたりして!」

 

「だったらさっさと出てこい!」

 

「いやぁ、ヒーローは遅れてやってくるもんだと思ってたのにさぁ、リンもケンタンもぜぇんぜんピンチなんないもん。おねーちゃん今回見せ場ナシかと思った!」

 

「ふ・ざ・け・る・なぁぁぁぁあ……!その面ぶん殴ってやる!!」

 

「へっへーんだ!私見せ場あったもんねー!殴られるのお門違いだもんねー!」

 

「そーいう次元じゃない!いたんなら最初っから加勢しろっていう意味だぁ!」

 

「……ねぇ、二人とも」

 

「「ん?」」

 

「あの二人……逃げてったよ」

 

「「………」」

 

「………」

 

「アホ姉えええええええ!!!」

 

「ぬわーーっっ!!」

 

竜胆が怒りのあまり一瞬で鈴蘭のいる高度まで上昇してムーンサルトキック、昇竜拳と繋げて錐揉みしながら打ち上げられる鈴蘭の足を掴んで足を上側、頭を下側にする。

 

「ちょ、リンまっ、それはいくらおねーちゃんが死なない幽霊とはいえ───」

 

「くたばれえええええええ!!」

 

ある意味、貭魂達に向けてた時よりも明確な殺意を込めながら竜胆は鈴蘭の首と顎の辺りに両足を固定し、強引に大回転仕出す。

 

落ちていく時の流れによって重力加速度と回転でドンドンと加えられていくなにか恐ろしいもの。その速度はドンドンと加速して行き次第に健太にはキレた影響か、目元が真っ暗になり左目だけが赤く光ってる竜胆の顔が残像を残したように沢山見えて……それは地面についた瞬間、カタチを成した。

 

「どおおおおおおおおおおおらああああああああああ!!!」

 

「さっぷるげぴこぶらばぁら!?」

 

……そう。パイルドライバーが炸裂した。しかもただでさえ高い木の上より高い場所に鈴蘭がいたのに竜胆のムーンサルトキック、昇竜拳のコンボで更に高度を叩き出される始末。

 

まぁ、竜胆もこんなことしても幽霊の鈴蘭は物理的に死ぬことはないとわかってやっているのだが。

 

「……ふう」

 

「いってー!チョーいてー!ねーねーケンタン私タンコブできてない!?髪の毛禿げてない!?ただでさえ生え変わった髪だから心配なのに!」

 

「ああ……うん。問題ないよ」

 

「おーよかった!」

 

「よくねえ!」

 

鈴蘭はまるで滑って転んだ後のように後頭部を摩りながら起き上がる。朱色の髪を摩りながら"橄欖石"色の目から涙を浮かべている彼女は黙っていりゃ間違いなくそういう層の目を引く美ロリ……だが黙ったら死ぬのが彼女なので美ロリにもなれないというのが悲しい事実。

 

「ったく……んじゃ、追うとするか……おらお姉、アイツら逃した責任としてついてきてもらうからな」

 

「いやそれ格闘コンからスクリューパイルドライバーキメてたリンにも責任が」

 

「ついてきてもらう」

 

「……ぶー」

 

竜胆は鈴蘭の身体を小脇に抱えながら貭魂が作った次元の穴に向かって歩いて行く。次元の穴の目の前まで行くと、竜胆はふと足を止めて健太の方に振り返った。

 

「健太、急に押し掛けてドタバタして……挙句俺個人に用があるヤツらへの対処も手伝ってくれてありがとな」

 

「どーってことないって。僕ら血は繋がってなくても、あの戦いの頃から家族だろ?」

 

「そうだったな。まあ、世話になった。また会った時は今度は俺がお前を招待するよ。コイツは返す」

 

竜胆は思い出したように健太に電磁加速砲とその弾丸を投げ渡す。健太はそれを受け取って竜胆の方に向き直る。

 

「じゃ、そろそろ俺らは行く───」

 

「ばいばーいケンタン!ケンタンさっきリン押し倒してたけどリンのお婿さんはいつでも募集だからその気になったらいつでもおねーちゃんに言ってね!」

 

「「ぶふぉ!?」」

 

行こう、としたら鈴蘭が急にとんでもない発言をした。これには思わず二人も盛大に吹き出す。

 

最初っからいたとは言っていたが、まさかそれについて言及されるとは二人とも微塵も思っていなかったのだろう。

 

「……ケ☆ン☆ターー…………」

 

その声が聞こえた瞬間、健太の顔はこの世の終わりのような顔をしていた。バカな、何故彼女がここに、何故こんな時間に起きている、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!?

 

ガタガタと、恐怖心がそのまま表れたように震えながら、ギギギギと、ブリキのような音を立てながら、健太は霊波紋に取り憑かれた漫画家のように振り返る。

 

そして、その恐怖心は確信へと変わる。

 

「…………………や、やややややややぁ、か、かかす、かすすす、かすか、春日部サン……な、なんでこんな時間に、こんな場所にいるの、カナ?」

 

思わず苗字で呼んでしまうほどの圧倒的恐怖感。そのわかりやすいオーラは竜胆を一瞬涙目にするほどのもので、隣の元凶のアホ姉はなにが起こっているのやらという表情をする始末。

 

「……竜胆、今の話、本当……?」

 

いきなり話を振られてビクゥ!となる竜胆。豆腐メンタルな上に精神年齢が十三歳の彼からすれば悪夢以外のなにものでもない。

 

だが、そんな十三歳の精神年齢がいちばんやっちゃいけない悪戯心を解放してしまう。なんとか自分の"罪"を軽くしようと、なんとしてでもこのリア充を爆発させようと。

 

竜胆は自らの歌舞伎役者としての経験をさっきの健太の変装以上に発揮させ、艶やかで蠱惑的で涙を浮かべた表情を作る。確実に健太を殺して自分の無罪を証明するべく、竜胆は自分の男のプライドをかなぐり捨てた。

 

「ぅっ……本当だよ……健太が急に押し倒してきて、すごい怖い顔してた……グス」

 

「ちょっとおおおおおお!?」

 

「……そっか。じゃあ竜胆達はもう行って。これ以上は見せられないから……これからは大人の空間」

 

大人の空間というのは暴力的な意味なのか、砂糖盛大コースなのかは分からないが取り敢えず自分は許されたという事実を竜胆は頂戴した。よし、これで心置きなく自分は自分でアホ姉を折檻できる。そう思いながら。

 

「じゃあ……バイバイ」

 

竜胆はもうこれ以上健太の世界の耀の発する異常ななにかにあてられたくないと感じてさっさと次元の穴を通って行った。

 

◆◇◆

 

「……ところでお姉。なんで起きてたの?俺がお姉蹴り飛ばした時思いっきり寝てたよね?」

 

「リンー、いくら私とはいえ蹴り飛ばされてベッドに顔面から落ちて起きないほど寝坊助さんじゃないんでござるよー?」

 

「それ伏線だったの!?」

 

 




これで今回のコラボ、終了です!重ね重ねですが、忙人さんありがとうございました!

何気に竜胆くんの歌舞伎役者設定が一番使われた回だったので僕としても大満足です!
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