問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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今回はコラボ編の13年の亡霊編を進めていきます!

今回のコラボの御相手は……江宮 香さんの『一番の問題児の性別がひっくり返ってるみたいです』とのコラボです!

それでは、はじまりはじまり〜!




異なるモノ

「ほいっと」

 

 

 

「っ……二つ目の世界か。ここはどの世界なんだか……」

 

別の世界からその場に現れたことを示す異次元の穴から竜胆と鈴蘭は姿を現わす。

 

この旅は竜胆が好きな仮面のヒーローみたいにその世界についたら◯◯の世界とわかるわけでもないとわかっていたため、やっぱりかというような表情を作る。

 

「お姉、ここがどこかわからない以上は前の世界で貰った食料ぱっぱと食わないように───」

 

「塩が効いてて美味いですなぁ」

 

「ふ・ざ・け・る・なぁぁあああ……………!!」

 

言う前に既に全て食い尽くされていた。わかっていたが、いくらなんでも超フリーダムすぎる。舐めてんのかこの阿呆は、と竜胆は怒りよりも呆れを浮かべていた。

 

そして勢いそのまま弟そっくりに伸びる頬をグイングイン伸ばす。

 

「ひふぁひふぉひふ!ふぉふぇーふぁふふぉふぁふぁふぉふぉーふぁふぉふぉふぁふぉひふ!」

 

「なーにが『痛いよリン!おねーちゃんのタマのよーな頬が伸びる!』だ!お姉が持ってんのは球の肌じゃなくてバカの頭だろーがァッ!」

 

竜胆は開幕からツッコミ全開で鈴蘭を折檻する。長年の付き合いが彼を『この阿呆を相手にするには口出しても曲解するだけだから言うだけ無駄』と理解しているが故の行動である。

 

「だいたいここがどこかもわかんないのに一瞬で数少ない食料を食い尽くす阿呆がどこにいるってんだよ!?」

 

「あいむひぁー!」

 

「開き直るなアホお姉!」

 

「うごごごごご!!」

 

そんな姉弟コントを続けていると、主にツッコミ側の竜胆の体力はマッハで消費され、すぐに竜胆はツッコむ気力を無くす。

 

「……この際これは事故だ。不本意だけどこっちの"ノーネーム"か"ウィル・オ・ウィスプ"を探そう……夜雷と貭魂を探す前に死んだらシャレになんないからな……」

 

「さんせー!せんせーバナナはおやつですかー?」

 

「さっき全部食ったのにバナナがあるわけねぇだろ!」

 

どう見ても遠足気分。異世界のことは異世界を行き来した母や竜胆と同じ時を過ごした上に竜胆よりも三年間長く箱庭に住んでいるから鈴蘭自身よ〜くわかっているはずだが、どうにも緊張感がない。

 

「ってか、なんで俺は異世界に来るたびに死にそうになるんだよ……」

 

最初の世界の毒漬けやその前に訪れた時の二週間飲まず食わずよりは現状はるかにマシだが、どうしてもこのアホ姉がいるだけで疲れがマンモス溜まる。しかし異世界に来た途端死にかけた最初の世界や姉のいなかったその前の世界と比べると果たして苦痛はこっちの方がマシなのかどうかは正直すぐにはうんと言えない。

 

「誰でもいいから来てくれぇ……黒ウサギー、飛鳥ー、耀ー……十六夜……」

 

最後に十六夜が出たのは一重に彼への信頼だろう。自分を彼女と共に"孤独の罪"から救ってくれた他でもない彼は自ずと竜胆の中でも信頼度が高くなっているのだ。

 

「……オイ、今俺の名前を呼んだか?」

 

「え……?」

 

不定形の森の中から聞こえたのはハスキーより高めの声。クールさを醸し出すが、どこか聞き覚えのある声と似ている……この声は。

 

「……誰だ?お前」

 

「いや、お前が呼んだんだろ。十六夜って」

 

「……十六夜?」

 

十六夜と名乗ったその人物は、正直竜胆にとって違和感しか感じなかった。ツンツンの金髪に学ランっぽい服。そこまではいい。だが、この人物にはある違和感があった。

 

超展開で有名なあのアニメの主人公ばりの聴力を獣の力で発現させた竜胆は人物の声───その奥に耳を澄ませる。そうか、頭の中に爆弾……あるわけなかった。

 

「おい、どーした。お前、見ない顔だがウチの誰かの知り合いか?」

 

───これだ。竜胆は違和感の正体を理解した。

 

首だ。違和感の出どころを理解した竜胆は次に目で十六夜の首を見る。

 

これにも違和感。いやまぁ、耳を澄ませた時からわかっていたが……この十六夜、喉仏がない。

 

竜胆が感じた違和感は『喉仏が震えてないこと』だと理解した。

 

おいおいマジかよ冗談キツい……と思いながらも、箱庭に来る前から家族ぐるみで異世界に関わってきたのだから驚きこそすれ混乱はしない……だが、認めたくない。十六夜がまさか、()()()()になるなんて予想できなかった。

 

故に竜胆、これからエキセントリックな行為に励みます。

 

むくりと、竜胆はさっきまでの疲れが嘘のように立ち上がって十六夜の側まで来る。哀しいかな、並び立ったせいで身長差が露骨に出ている。

 

「っ………(なんだコイツ……なんか底知れないモノを感じるぞ……)」

 

対する十六夜も竜胆纏うそれに気づいたのか、思わず身構える。そして竜胆が動き出す───

 

「ふんっ」

 

「ふぁあ!?」

 

竜胆は遠慮も恥もなにもなく、十六夜の股間にタッチした。そして思わず悲鳴を挙げてしまう十六夜。そして股間の感触。

 

「…………………………………………気の所為だったら、よかったのになぁ」

 

竜胆はグダッと項垂れる。とすると恥行に驚いた十六夜は思わず竜胆を締め上げる。

 

「て、テメェどういうつもりで当人の許可もなしに女の大事な部分に触れてくれやがった!?」

 

あっ、と竜胆は自分の憶測が正しいことを悟った。

 

知っているのと比べて気持ち高い声、見当たらないし聴き当たらない喉仏、それになにより本人の発言内容。

 

……間違いない。コイツ……いや、()()、逆廻 十六夜は───────女であった。

 

◆◇◆

 

「以上、俺がここに来た経緯だ」

 

それから十六夜にぶん殴られてなんだかんだと弁明。『違う箱庭から来た』と言った瞬間に竜胆の行為の真意を理解した辺り、どうも彼女も他の歴史を歩んだ箱庭から来た人間と面識があるらしい。

 

無論、納得したということは即ち他の箱庭で会ったヤツらは軒並み逆廻 十六夜が男である世界の人間なのだろう。

 

「事情はよくわかった……けど、悪いがこっちの"ノーネーム"は今色々忙しくてな。居候二人抱えていいのかどうか……」

 

「いや、気にしないでくれ。寝床に関してはどうせこのアホ姉は一緒に寝ろ一緒に寝ろと煩いだろうから一つで構わないし、流石に一食もらうほど迷惑になるつもりもない。一日だけでも寝床を貸してくれれば自炊なりなんなりするさ」

 

十六夜の申し訳なさそうな言葉に竜胆はとんでもない、と両手を挙げて首を振る。そもそもこうして他の歴史の箱庭に勝手に上がり込むという暴挙自体を竜胆はあまり良しとしない。本来その世界が歩むべき歴史を歪めてしまわないように注意し、その物語を本来の世界やそこから派生する異世界を形成する"中心人物"との触れ合いはなるべく避けたいのだ。

 

まぁ、もう既に知り合って触れ合ってしまっているのだが。

 

「……けど意外だな。俺の知ってる十六夜はそんなしおらしくないからな。なんか新鮮だよ」

 

「俺だって女だ。男とは根本から違うし、それを言うならお前だって()()()()()()()()()男言葉じゃねぇか」

 

「………」

 

言われてしまった。初対面である以上覚悟はしていたが、やっぱり言われた。

 

案の定凹んだ竜胆はぷるぷると震えながら十六夜の肩を掴む。

 

「十六夜ぃぃぃ……」

 

「な、なんだよそんなゾンビみたいな顔して……」

 

「俺はぁ……お、男なんだぁ……!」

 

「は、はぁ!?そんな女みてぇな顔と体型して男!?胸まであるのに下手な冗談言うなよ」

 

「胸に関してはそういう実在する病気だ!顔だって六年前と比べて断然男っぽくなってるし背丈もこの前150は越えた!(6センチくらいサバ読んでる)」

 

「……マジか」

 

「マジだよ!」

 

!かすんぷと怒る竜胆の顔を見て十六夜は『マジで言ってる』と解釈した。実際マジで言ってるのだが、その怒ってる表情からしてとても男には見えない。

 

「嘘だと思うなら……仕方ないけど、こっちもやっちゃった以上は股間触ってもいいけど……」

 

「触らねぇよ。第一そんなことしたら……(アイツになにされるか)

 

「え?なんだって?」

 

大事な部分を小さく呟いて竜胆はテンプレのように難聴。おかしい、この男喉仏の振動を聞き取れるくらい耳がいいのにこの難聴はおかしい。

 

「いや、なんでもねぇ。それじゃあ当面はその目的のヤツらを探してとっちめる、あるいはまた他の箱庭に逃げられた時まで一部屋貸す。そっちは自給自足、てところか」

 

「そうだな。俺としては止めてくれる場所と野宿よりは食料調達簡単そうな場所にいさせてくれるだけで満足だからな。助かるよ」

 

初対面なのに悪いな、と一言謝るが、その後すぐ個人的なトークに移る。

 

「しかし……なんというか、初めてあった気がしないな」

 

「そうだな……俺も、なんかお前とは前になにか、忘年会みたいな感じで会った覚えとか、現在進行形で学校で顔合わせたり、もしくは大人数巻き込んで箱庭が消えた世界で会ったような、そんな気がする」

 

あっはっはっは!と二人して何故か大爆笑。余程会ったことないのに会った気がすることにツボに入ったのだろう。

 

が、その二人が仲良く喋っているのが面白くなかったような顔してるなよがここに一名。

 

「くぉぉらぁあ!ダメでしょリン!リンには心に決めたおにゃのこやおねーちゃんがいるってのにそんなどこの誰とも知れないいざちーにうつつを抜かして!」

 

鈴蘭が竜胆の後頭部にボレーシュートをかました。

 

「いったぁ!?なにしてんだよお姉!」

 

「だからぁ!リンはそーやってちょっと仲良くなればとことん心配されるんだからダメなの!リンを心配していいのは私と耀ちゃんさんだけ!」

 

「わけがわからん!?」

 

「わからなくてけっこー!こちらの問題です!」

 

「頼むからそういうことは教えてくれない!?」

 

流れるような姉弟コント。完成度高い。

 

「……コントはいいから本題戻そうぜ?」

 

これには思わず十六夜もそう零す。その一言で鈴蘭は「それもそーだね!」と一転してにこやかな顔になる。変わるの早、と思いながらも十六夜はえーと、それで?と続ける。

 

「鈴蘭が耀……ちゃんさん?と鈴蘭意外にかまうなーってとこだったな」

 

「言ったまんまの意味です!リンは私がいないとだめだめですし、耀ちゃんさんが大好きなので耀ちゃんさんは特例でぇす!」

 

「……へぇ」

 

「ちょっと!?なにいらないことまで言ってる上に嘘八百ついてんの!?」

 

竜胆が顔を真っ赤にしながら鈴蘭に怒り立てる。まぁ、顔真っ赤ということはどれがいらないことでどれが嘘八百なのかはすぐ様わかるわけで……

 

「……で、どこまで行ったんだよ?」

 

「ぶっ、どど、どこまでって、どこまでもなにも俺と耀は、そんな関係じゃないんだって!……その、俺が勝手にアイツのこと好きになっただけだし、それにアイツ鈍いし、もっと言うとタイミング悪いし!」

 

恥じらいながら十六夜の質問に丁寧に答えていく竜胆。なんだこの女子力。

 

「で、でも!好きになるのにもそれなりに理由はあるっていうか!俺の作ったご飯いつも残さずに美味そうな顔しながら美味い美味い言って食べてくれるし、アイツ自身料理それなりにできるからそういう話もできるし、なにより……」

 

「なにより?」

 

「アイツと一緒に昼寝してると……そう!あったかい!ポカポカしてて落ち着く!」

 

「……惚気乙」

 

竜胆の好きな子自慢はまさに彼女のいいとこ自慢そのものであり、さしもの十六夜もこう言わずにはいられなかった。

 

実際今まで何人に言われたことか。竜胆が語る耀の自慢に惚気話、そしてその惚気話から連想される耀のイメージ。

 

なんでお前らそこまで行って付き合ってないの?と。

 

仕方がない。そこまで行ってても尚耀は竜胆の好意に気づかない上に竜胆もツンデレだし。なにより彼の不運は天井知らずなのでことあるごとに腹の虫とか邪魔者とかで台無しにされる。何度勇気を持ってなにか言おうとしても『グーギュルル』に邪魔されたことか。おかげで暫く竜胆はお腹の鳴る音に恐怖反応を示していたほどだ。

 

「そ、そういうお前はどうなんだ!俺の知ってる十六夜より無礼な感じがしない!女になるだけでそこまで性格が変わるわけない!」

 

「俺か?……俺かぁ」

 

はぁ、と露骨に溜息を吐く十六夜。それはなにかあるという証拠。竜胆はそれを見逃さなかった。

 

「誰だ」

 

「は?誰だって、なにがだよ」

 

「ジンは……違うか。アイツはどっちかっていうとあんまり手のかからない弟って感じか。ならマンドラ……いやいやないない。グリー……?違うな。これもそういう関係よりは戦友という関係がしっくり来るだろうし……蛟劉?」

 

「っぁ……!?」

 

「……マジなのか」

 

疑い半分で聞いてみたが、蛟劉の名前を出した時とほとんど反応が変わらなかった。

 

B I N G O!

 

「……へぇー。ふーん。まさか蛟劉と……()()十六夜がねぇ。これは驚きだ」

 

「そ、それを言うならお前の方とおんなじだ!理由だってそれなりにあるし、アイツ胡散臭いし若干ヘタレっぽい臭いするけどそんなことないし、……凄かったし!」

 

「凄かったってなにが……やけに誇張表現だな」

 

誇張表現しないといけない大人の都合があるのです。

 

まぁ兎も角、こうして何故か女みたいな男といろんな世界でも基本男の女と超絶ブラコンのレディーストークに花を咲かせたまま一夜が明けていったのだった。

 

◆◇◆

 

ある世界、ある場所。そこには一つの牢に閉じ込められた夜雷と、彼の言うEが対面していた。

 

「ザッケンナゴルァ!E!なんでオレを前に送んねぇ!?」

 

「……夜雷。お前は一つ目の世界の時に俺の命に背いたな」

 

「それがどうしたってんだァ!オレはまだやれた!あそこで"マグナ"を使ってりゃアィツも∀もブッ飛ばせてた!∀を連れてくることがテメェの望みだろうが!アァ!?答えてみやがれE!!」

 

「口が減らないな。まぁ案ずるな。∀の下には"逸生"と"玖螺摩"を向かわせてある。お前の言う∀を取り逃がす心配はないさ」

 

「逸生と玖螺摩だぁ!?ふざけんじゃねぇ!!アィツらがどんなヤツらなのかはテメェがぃちばん知ってるだろーが!」

 

「知ったことじゃない。∀がここに来るときは死んでさえなければ最悪、廃人でも構わないからな」

 

その一言と共に、Eは夜雷の前から姿を消す。その寸前に見せていた表情は間違いなく、"笑顔"であった。

 

 






というわけでコラボ編の一話目でした!

正直まだ江宮さんの方の夜子ちゃんのキャラを掴み切ってないこともあってあんまり文章が本領発揮できてない感がありますが、次回こそはっ、次回こそは……!

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