問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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というわけでお前の家族を殺したのは俺だ、からのコラボ編というわけでまるでほんものの作家のような引き延ばし戦法である。いや別に引き延ばしじゃないですけどね?

ってなわけで今回のお相手は紅の暁さんです!例によって最初の回は会話パートなので戦闘はありません




凍てついた世界

 

 

「……ぬ……」

 

二つ目の世界の一件を終え、何時まで寝てるのか定かでなかった竜胆が目を覚ましたのは丁度鈴蘭がそろそろ起こそーかな、と思い始めた頃だった。

 

「おはよーリン!グッモーニン!起きるなり次元の狭間でおねーちゃんの顔を見る気分はどーだい?やっぱりサイコー?」

 

「ちょー最悪だ」

 

はぁ~、と露骨にげっそりとため息。実際に起きると姉がいるという光景自体は五年前見たっきりなので少し嬉しかったが、すぐに朝からこのアホ姉がいる=ロクでもない事が起こるというのがお約束だったため、すぐに嫌な顔になったのだ。

 

「で……どーやらさっきの世界一とはお別れしたみたいだけど、どこに向かってんの?」

 

「道の行く先!」

 

「……具体的には?」

 

「さっぱりわからん!あだだだだだ!!ゴメン!ゴメンって!でもホントに突然のことだったからどこに向かってるのか全然わかんないのは事実なのおおお!!」

 

さっぱりの時点で既に腕ひしぎ十字固めを極めていただいた竜胆はもう色々とダメな領域に片足を突っ込んでいるのかもしれない。主に心労的な意味で。

 

「無効で闘った二人も結局よくわかんない……手?みたいなものにどっか持ってかれちゃったんだ。今絶賛追いかけ中なんだけど……上手く撒かれた」

 

鈴蘭が子供っぽすぎる性格を隠すことなくちくしょー!と叫ぶ。起きてそうそうこんなに騒がれると竜胆も耳を塞ぎたくなるのだが、こんなのもう慣れてるから気にしない。

 

「じゃ、次に行く世界はさしずめ三つ目の世界ってことか。一つ目の世界みたいに知ってるヤツってパターンもあればさっきの二つ目の世界みたいに知らないヤツの世界ってパターンがあるが……そう簡単に知り合いに会えるわけないか」

 

箱庭だって何千何億と違う歴史を歩んでるんだからな。という呟きはどう考えてもフラグにしか見えない。

 

「お!見てみて!そろそろ三つ目だよ!ほれ!ほれほれ!」

 

「騒がなくてもわかってるって。それにこんなに十年以上前から体験してるでしょ」

 

竜胆の陣羽織の裾を掴む鈴蘭。果たしてどちらが姉でどちらが妹なのかわからなくなる会話をしながら二人は三つ目の世界に足を踏み入れたのだった―――

 

◆◇◆

 

「……て、なんだこれ!?」

 

「すっげー!人がみんなピタッと止まってる!何で!?」

 

新しい手品かな!とか論点がズレ過ぎてるアホ姉(鈴蘭)を尻目に竜胆は周囲にあるものをちらと観察する。

 

動かない市民。動物の声も嘘のように聞こえない。風が吹いているような感覚があるというのに風の吹く音は一切ない。

 

「どうなってるんだ……これじゃ元の世界に戻るどころの話じゃなくなってくるぞ……」

 

不安が焦燥に変わって行く感覚に苛まれながらこの珍妙な現象の意味をさぐる。ない。なにもない。理由もわからない。そう思った通り矢先―――

 

「うははは!!すっげー!これ見てリン!やべー!噴水の水がカッチカチやぞ!」

 

「ふ・ざ・け・て・な・い・で・マジメにかんがえろぉぉおおお…………!」

 

「痛ぇー!リンのアイアンクロー超痛ぇー!ちょ、いた。にゃあぁ!」

 

マジギレした竜胆が全力のアイアンクローを注ぐ。その威力は先ほどのものよりも桁違いのモノで流石の鈴蘭もギブアップを申し出るほどだった。

 

「ったく……ん、水がカッチカチ?水は常にカタチを変える流動体だろ。それが固まってる……それに、人も固まってる。……まさか」

 

鈴蘭のカッチカチからなにかを得たのか、竜胆は地面に一言謝ってから思いっきり石積みの地面を蹴り砕く。

 

すると、割れて飛び散った石は少しすると一斉にその場で動きを止めた。空中でだ。

 

「……不完全ではあるけど、時間が止まっているのか?」

 

不完全、と付けたのは自分達が動いている事と、その動いている自分に触れた物体が動いていたことに起因する。もし本当にこの世界の時間が止まっているのだとして、完璧に時間が止まっているのならこの世界に来た瞬間自分達もこの時間の牢獄から爪弾きにされていたのだろう。

 

「俺達にイレギュラー的な要素がある……ととるべきなのか?だとすればそのイレギュラーの要素はなんだ?別の次元の箱庭から来た、とか。いや……もしくは俺達が正史の箱庭の世界において存在しない者だから……か?」

 

「多分それが正解だ」

 

自分達だけ、という項にだけ沿って考えを口に出していると、突如聞こえた声に遮られた。

 

「誰だ!?」

 

「誰だ、は酷いな。昔の"異世界同時召喚"の件で一緒に闘ったじゃねぇか」

 

竜胆に対してフレンドリーな口調で話し掛けてくる。その様子から互いに喋りあったことのある知り合いだとちうことは理解できた。声も、憶えている。

 

「―――トーヤか?」

 

「おう、そうだぜ竜胆。そんで、お前の推察通り"正史の箱庭に存在しない"俺もお前と同じで止まった時間の中を動いている」

 

「ヤッホーリンちゃん。私覚えてる?」

 

「……上月 琉璃。お前だけは忘れんぞ……若干数名含めよくも俺をあんな……思い返すだけでも寒気がしてくるようなことをしてくれたな……」

 

「え?なに、琉璃お前なにやってたの?」

 

「いやー、リンちゃんともう一人が可愛いかったから、愛でに愛でてただけだよ?」

 

「マジで?あの時の『くっ、俺に近づくな。呪い殺されたいのか』みたいなことを言ってた頃の?」

 

「そうそうそれそれ!」

 

「言うなぁああああああああ!!おまっ、それだけは言うな!!!」

 

「えー、どうしよっカナー。リンちゃんが可愛く赤面してる顔もみたいしぃ、リンちゃん根がマジメだから弄り甲斐あるし」

 

「言わないで!お願いだから言わないでよぉ!!」

 

涙目になりながら琉璃に必死に懇願している竜胆の姿には謎の背徳感がある。どうやら彼にはマゾの素質だけではなく、先天的な被虐体質(色んな意味で)があるようだ。

 

なんというか、弄ってもいじめても楽しいし可愛い。

 

しかしまぁ、そんなことをされては黙っていないのがこの(ブラコン)なわけで。

 

「こらー!誰だか知らないけどウチのかわいーおとーとをいぢめるのはおねーちゃん許しませんよ!即刻、月に変わって上様成敗しちゃる!」

 

「……おねーちゃん?」

 

「不祥事ながら実の姉だよ。といっても今はただの浮幽霊だけどな」

 

そのとーり!と何故か自慢気にNAIMUNEを張る鈴蘭。隣りの弟が豊満なだけあって哀れさが加速させられる。

 

「……可哀想に」

 

「頭が残念なんだ……ウチのアホ姉」

 

「あ、なんとなく理解した。お前の性格とかそういうのも」

 

「……察してくれてありがとう」

 

なんでこんなアホ姉に育ってしまったんだ……と竜胆は落涙を禁じ得ない。

 

それはまぁともかく、と竜胆はどうでもいい話を横におく。

 

「これはどういうことなんだ?俺達以外の時間が止まったって……」

 

「言ったままの意味だよ。さっき白夜叉に次元の歪みが生まれているって言われてまた誰か来ると思って待ち構えてたら……急にこのザマだ」

 

「こっちも同じ。急に"イザヴェル"の子供達が固まっちゃって、それで凍夜の方に行ったらこの通り」

 

「待て。さっきの仮説が正しいのなら"イザヴェル"の子供が固まるのはおかしくないか?」

 

竜胆の疑問に対して琉璃は静に首を横に振る。

 

「それはあくまで"イザヴェル"が私が存在しているからできたコミュニティであって、あの子達はどうやら元から"正史の世界"には存在してた子らしいの。だから動けるのは私と凍夜だけ」

 

「そうか……で、トーヤ、またっていうのは?」

 

「最近この箱庭に飛ばされてくる奴らが結構いてな……それに連動して"異端者"(ハエレティクス)っていうヤツが出てくるんだよ」

 

厄介そうな顔をする凍夜を見て竜胆もそのハエレティクスはただの鬱陶しいヤツではないと理解し、できるだけ情報を取り出すべく会話に花を咲かせる。

 

「それはどんな?」

 

「面倒ったらありゃしない連中だ。フォーマルハウトってヤツが作ったとか言ってな、次元を越えようとして失敗して、その影響で元の世界の人間……つまり俺や琉璃じゃ倒せないギフトを持ってる」

 

南の魚座(フォーマルハウト)、か。それにしてもそのハエレティクスはバカの集まりなのか。行き先も帰り道もわからない旅路なんて迷うに決まってるだろ」

 

「次元を飛ぶのは体験済みなのか?」

 

「生まれたときから体験してるよ。それにさっきまで二つ違う箱庭で俺も戦ってきたとこなんだ」

 

「さっきのは私が戦ってたけどね!」

 

「一回目は余裕かましながらヒーローは遅れてとか言ってたヤツのセリフ?それ」

 

冷静なツッコミが鈴蘭に炸裂する。それでも彼女はお構い無しにマイペースだ。

 

「戦ってた?」

 

「ああ。ご丁寧に俺を狙ってるって宣告してきてな」

 

「リンちゃんモテモテだね」

 

「ヤロウ二人とヤンデレと女王気質にモテても嬉しくないわ!そもそも俺が好きなのは……!」

 

「「「好きなのは?」」」

 

「……~~!!やっぱこの話ナシ!前言撤回!」

 

「気になるな」

 

「気になるね」

 

「好きなのは私?」

 

黙ってろよブラコン、と竜胆はここ最近例を見ないほどの冷徹な釘を刺す。どうやら厨二病やってた頃の癖がまだ抜けきってない様子……

 

「え、本当のところどーなのおねーちゃん?」

 

「それがねー、リンは耀ちゃんさんにゾッコンLOVEなんだなぁ、これがね」

 

「あぁ~、耀ちゃん好きな子多いよね。凍夜もその一人だし」

 

「いやでもこれがねぇ、あの子筋金入りの鈍感でリンが頑張ってアプローチしても気づいてもらえないんだ」

 

「いやでもツンデレだから尚更な」

 

「リンちゃん可愛いね」

 

「大声でコソコソ話すな!お前ら確信犯だろ!」

 

「「まぁね!」」

 

「うわぁああああん!!」

 

二人揃ってうん、と言うものだからさすがに弄られ慣れてる竜胆も泣いて立ち去りたくなる。しかし、状況というものはそうはさせてくれず、結局二人は凍夜と琉璃についていくしかないのだが……

 

竜胆は「なんでこんなのと一緒に歩かなきゃいけないんだよ……」なんて呟きつつも二人についてくる。

 

「それで、そっちは?そっちも戦ってるヤツがいるんだろ?」

 

「あ、あぁ……コミュニティなのかはわからないけど、"エルフ"って名乗ってたらしい。お姉に聞いたことだから確証はないけど、お姉達のことを"アルト"って呼んでた。あと、"マグナ"っていう能力がある、らしい」

 

「……なんでさっきかららしい?」

 

「お姉の言うことだから」

 

「しっつれーな、私は清廉潔白だよ!牧師さんにも負けないくらいに!」

 

「嘘つけ」

 

「あうっ」

 

鈴蘭の筋金入りのボケに竜胆は対応することそのものが面倒になってるように突っ込む。しかしこうでもしてないと彼の体力が持たないのだ。

 

暫く歩いたら一向。どこに向かっているかさえ二人にはわからないが、ここは凍夜と琉璃を信じて何も言わない。のだが。

 

「……なぁ、トーヤ」

 

「なんだ?」

 

「……ハエレティクスってどんな見た目?」

 

「そりゃ色々だぞ。蟹もいたな。龍の形もしていたし……」

 

「……じゃあ、あの黒いケイローンみたいなのは?」

 

竜胆が指を指した先には獰猛な声を荒げながら明らかに足を地面に擦らせる動作をしている黒いケイローン。

 

「……動いてるな」

 

「動いてる」

 

「じゃあ竜胆。こっちからも質問。その奥にいる男と女の二人組は誰だ?」

 

「……動いてるな」

 

「動いてる」

 

間の続かない漫才のような会話をしながら二人は互いに指を指し合う。二人ともボーッとしているが、これらが指す意味は流石に理解しているようで―――

 

「Gyaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

「ほう、こんなものがいる上に時間が止まった世界か。ふふふ、どうやら舞台のセッティングはする間もなくゲストが進めてくれていたようだ。なぁ、"死期"(しき)

 

「そうみたいね、"悠慈"(ゆうじ)

 

芝居がかった喋り方をする男とその傍らで人形のような生気のない目とゴシックロリータの衣服を来ている少女が呟く。その会話を聞く限り、コイツらはハエレティクスやこの止まった時間には関与していないとわかるが―――

 

「ねぇリンちゃん!あの子可愛い!」

 

「……琉璃。あれ、俺狙ってる敵。ドゥーユーアンダスタン?」

 

「オフコース!つまりひっとらえたら愛でてもかまわんのだろう?」

 

いやそうじゃねーよ!という心のツッコミを一つ。こんなただでさえぶっ壊れてる空気をもっと酷いレベルにまで引き込むわけにはいかない。

 

「と、いうわけでぇ、化け物サンファイオー!ワタクシ達高みの(けぇん)物、決め込んでますからァ!」

 

ハエレティクスが自分に危害を加えないと判断したのか、悠慈と死期はその辺の岩に尻を落として文字通り見物をするようだ。

 

「……ぷっつーん。トーヤ、俺あーいう煽り上手で自分はなにもしないヤツ大ッ嫌いなんだ」

 

「……へ?」

 

「アイツは俺がぶっ潰す」

 

笑顔だったが目が笑ってない。完全に殺る気だ。

 

「……アイツらが元の世界に帰る鍵なんだろ?殺さない程度にな」

 

「はーい」

 

軽い返事だったがスゴイなんかでドスが効いてた。コイツの怒りの基準がよくわかんないが、とりあえず戦闘は始まった。

 

 






というわけでコラボ編第一話でした!凍てついた世界、明らかにトーヤくんの名前を意識してとってますねこれ。はいそうですとも!

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