問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
一ヶ月待った……!再び問題児を書くために!問題児作品成就のために、ハーメルンよ!私は帰ってきたァ!!
……あ、コラボ二話目です。
正しき名前などない、なくなった。
次元の狭間に落ちたその時から彼らは名前も帰る世界も失ったのだ。故に彼らは
ようするに、ハエレティクスにはこの凍てついた世界の影響を一切受けない。
そしてハエレティクスはその特性上凍夜や琉璃には傷を与えられても倒すことができない。必然的に竜胆か鈴蘭が倒すしかない。が、竜胆は今慈朗と呼ばれた男を圧殺することに意識が行っているため、鈴蘭にしかその役目は望めない。
「琉璃、鈴蘭助けてやってくれ」
「えぇ~!私あの子と遊びたい!」
「我が儘言うなって。終わったらいくらでも遊ばせるから」
「おk把握」
流石と言うか、鈴蘭に対する竜胆と言うか、凍夜はごねる琉璃は軽く流して死期と対峙する。
「待たせたな。ちょっと俺の相手になってもらうぜ?」
「問題ないよ"絶対者"。貴方が相手なら私も手加減する必要ないから」
「なるほど、例の"マグナ"ってヤツか。俺のことなんで知ってるのかは……聞かないでおこうか」
「これから消える貴方にそれを答える必要もない……"マグナ"、
元々彼女が持っていたのであろう霊格が一気に弾けて強烈な力の奔流が迸る。
圧倒的かつ特徴的が過ぎるその力の正体を看破するのは容易い。凍夜はこの霊格を知っている。
「……純血の龍種、その霊格か」
「正解、だよ。正しく言うのなら半分だけど」
凍夜の問いに軽く答える。それは答えてもなんの不益もないととるか、単なる傲慢ととるか。
「……どっちにせよ龍が相手なら加減する必要はないな!」
凍夜のギフト"絶対者"が作動する。だがこの時間が止まった凍てついた世界では物質を動かしたり因果律の書き換えなどもできない。
時間には干渉できないというただひとつの縛りがギフトの能力を描き消してしまう切欠になった。これが箱庭の恐ろしさ。死力を尽くしてなにかを為そうとしてもそのなにかをするための前提条件から覆されたらどうしようもないが、それをどうにかできない方の不手際とするのが箱庭の理不尽さなのだ。
ならば、今の凍夜にできる書き換えは、今動いている自分達のみに対することしかできない。
(周りのモノを使えないのはかなりキツいが……やるだけだろ!)
凍夜はその力で自らの身体を光子に変えて不可視かつ光速の肉薄を行う。
だが死期はまるでその動作を読んでいたかのように動き、光の速度の攻撃を回避した。
(避けられた!?動体視力云々の問題じゃないぞこれはっ……!だとすれば)
死期の動作で彼女のギフトにある程度の憶測を立てた凍夜は自分の身体の情報を次々と
「コイツでどうだっ……!」
凍夜はこの攻撃を避けられる筈がないという確信を持っていた。だが、この連撃は
攻撃とはなにも敵を傷つけるだけのものではない。敵を観察する手段でもある。
(コイツならこの状況を打破できるギフトはあって三つ!上手く行けばギフトの看破もできる!)
当たれという願いとギフトの看破のためにも避けてくれという願い、相反する二つの願いが籠められた攻撃が死期を狙い打たんと襲いかかる。それを見た死期はポツリと一言。
「……全部避けるのは無理、だね」
「……!?」
確信とも予測とも違う、そうだと決めつけたような言葉。その言葉と共に死期は身体を準備運動のように捻るだけで攻撃の雨を九割回避してみせた。
「コ、イツッ……!」
「焦りが目に見えてるよ絶対者。次の動きの予測が容易い」
「ぐっ、ぼぁっ!?」
凍夜のブロックの隙間を丁寧に崩す手刀を撃ち込む。ガードを
「自分の力に無意識に過信していたね。それが隙になるっ!」
死期のハイキックを上半身と下半身を分離させて強引に避ける。そして直後に死期の背中から激痛が走る。
「ソイツは、オマエもだろうがァ!」
「衣服ッ……!」
衣服だ。自らの衣服の因果率を書き換えて機動砲台に変化、それを死期の攻撃を避けた時に胸元に隠し、視界から外れてから晒した。
「吹っ飛びやがれぇ!」
身体に捻りを加えた回転ハイキックが側頭部に突き刺さる。
気味のいい音を立てながら死期は頭を地面に強打する。
だが攻撃を仕掛けた筈の凍夜の脚にもダメージが入る。
「かってぇ……!?龍の恩恵だろうが、ここまで硬くなるもんなのかよ……!?」
想像を越える硬さに実際感じる痛みよりも遥かに大きな激痛を感じるが、戦闘を行う上で必要のない筋肉をアドレナリンに変えて痛覚を麻痺させる。
凍夜が仰け反った僅かな時間の間に死期も体勢を整え、黒のギフトカードを手に取る。
「……来い、"彩牙"、"破巌"」
掛け声と共に二本の小刀が現れる。忍が持つようなソレとは違い、ショーテルのように曲がりくねったソレは特徴的で凍夜も思わず目を凝らしてしまう。
「また面白いカタチしてんなぁ……だったら俺も、"森羅万槍"」
凍夜も自らの愛槍、"森羅万槍"を取り出す。挑まれたからには真正面から受けて立つ。偶にはこういうのも悪くない。
「……一槍求むよ、絶対者」
「応えようか、龍剣士さん」
両者の言葉を発端として二人は同時に斬りかかる。二本のショーテルを同時に打ち合おうとするが、ショーテルの形状で凍夜はガードの上から直接攻撃を叩き込まれる。
「フンスッ!」
「ぬぁっ!?」
ショーテルなんて特異にも程がある武器を使う相手とは流石に初めて相手にする凍夜。自分から槍を降っても流線形のショーテルは死期の技量も相まって氷の上を滑らされるかのように受け流される。
「フッ!」
「ごぶっ……!んなろ!」
「当たらないよ」
腹部への強烈な膝蹴り。凍夜がカウンター気味に回転して踵落としを繰り出すも躱される。まるで凍夜の挙動を予測しているかのようだが、それにしたって早すぎる。
予備動作に入る前からどの行動をとるのかを理解しているかのような挙動で確実に躱し、確実にガードを崩す無駄のない攻撃。短いショーテルという異質な武装が見事に噛み合っている。
厄介だ。
凍夜はそう思わずにはいられなかった。ショーテルだけ、もしくは謎のギフトだけなら対策の立て方がいくらでもあるが、それらが組み合わさって隙がなくなっている。
二本のショーテルと一本の槍が小気味のいい音を立てながらぶつかり合う。だがその手数の差はやがて顕著に現れ、凍夜の手から槍が弾き飛ばされる。
「―――」
「そこ!」
死期が二本のショーテルを交差させ、凍夜の身体を挟んでそのまま挟み斬る状態に移る。
「んのっ……この程度!」
「スパーク!」
なんとか拘束から逃れようとする凍夜だが、死期の叫び声と共にショーテルから超高圧の電流が流れて手が緩む。
「ぐ、ァァアアアア!!」
「このまんま、挟んで真っ二つだ!」
「んぬぬぬ……死ぬ……わけねぇだろ!」
引っ掛かった、という顔をした凍夜を見て死期は思わず後ろを向く。なにもない、―――ブラフ?
そう思った矢先、頭上から先程弾いた槍が死期の胸を貫いた。
「―――ご、ふっ……!?」
貫いた槍はそのまま胴体を貫通し、凍夜は槍の根元も槍と同じ形状にして引き抜く。
目に見えてふらついた瞬間、穂先の側面で側頭部を叩き降ろし、腕をアサルトライフルに変えて連射。次々開く風穴を見ながら容赦なく引き金を引き続ける。
「ぐっ、……ぁあ……!」
「どうだ、その様子じゃ
「……やっぱり、気づかれてたんだ……ぐ、」
「そりゃな。あんなにわかりやすいくらいにハッキリして迷いのない動作をすれば時間が止まって見えるような動体視力か未来予知の系統しかない。で、初動を見る直前から動いていたことを考えると、後者以外考えられねぇ」
ご丁寧に考察とその理由も述べる。その姿勢を見た死期は露骨なほどに悔しそうな溜め息をつく。
「そっか……じゃ、逃げる。慈朗、あとよろしく」
「んー、任されちゃったかー。はいさ、面倒だけど任された」
竜胆の攻撃を悠々と躱しながら慈朗はだるそうに右手を上げる。
「んのやろっ……なめやがって!」
「ふー?別に侮ってるわけじゃないって。面倒って言っただけでさ」
「それをなめてるって言うんだろうが!いちいち頭に来るなお前は!」
慈朗は攻撃を仕掛ける素振りすらなく、ただ攻撃を避けるだけ。その不可解な事実を頭に地が上った竜胆は気付くことなく殴りかかる。
「はっははは。そうだそうだ、そのまま来いよ。俺にもっと見せなよ∀、絶対者も力を振るえ」
「うるっせぇ!テメェに言われなくてもそのクッソムカつく面ぶん殴ってやる!」
「やれるもんならなー、ほーらほーらもっとこいもっとこい。それがお前さんのためでもあるし、"E"のためでもあるんでね」
慈朗の意味深な呟きに思わず激昂状態だった竜胆も手を止める。
「……どういうことだ」
「さてね」
「だいたい"E"って誰なんだ。そもそもなんでお前達はこうして性懲りもなく異世界に現れる?」
「そいつは秘密。時が来れば嫌でも知るだろう。だがその知るに絶対者を始めとした異世界の面々は関わることはない。関われない。……でも―――」
―――まだだよ。まだ、時間がかかる―――
空虚を見据えた慈朗の呟きは、なにもない空へと竜胆の空振った剣線と共に消えていった。
◆◇◆
―――いいぞ、"俺達"の革命の準備は整いつつある……はははは……ひはは……きひひははは……!!―――
次回、紅の暁さんとのコラボ編最終話!夜露死苦ゥ!
……ちょっとスランプかも。