問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

64 / 110

ターニングポイントってなんだかシリアスにしたくなるよね!

そんなコラボ最終回、紅の暁さん、ありがとうございました!




異端者舞って、異能者駆けて

 

「VOOOOOLEREEEEEEE!!」

 

「うるせー!黙らんかー!」

 

人馬型のハエレティクスの咆哮を叫び声で返す。バカみたいな光景だが本人達は真剣にやっているのがまた呆れるものだ。

 

「っちゅーか、なんなのコイツ!やったら硬いし!」

 

「防御に特化してる……とは考えにくいね。あの速さだ。なにか、アイツに特別な措置を施されていると考えた方が無難かな」

 

地団駄を踏む鈴蘭とは対照的に、琉璃は落ち着いて状況の判断をする。凍てついた世界は元に戻らない。世界の時を凍らせたのは十中八九慈朗のギフトだ。そしてハエレティクスの強化にも慈朗が関わっているとすれば、慈朗のギフトは支援、妨害。率先して戦うタイプではない。

 

ならばなぜ純血の龍種という協力なギフトを有している死期は簡単に退いたのか。

 

「スズちゃん、ハエレティクスの注意は私達が引くよ!二人が戦いやすいように!」

 

「あいさまかせなルリルリ!私の杖捌き、見せちゃるばい!」

 

考えられるのはいくつか。

 

慈朗には死期のギフトを凌駕する隠し玉かあること。慈朗と死期の目的が既に完了しており、死期は別の目的を達するために逃げると見せかけてどこかに移動した。

 

そして慈朗にはなにかまだ果たしていない目的があること。

 

(なんにせよリンちゃんの超スピードを軽々と回避するようなヤツなんだ。理想は私達が速攻でハエレティクスを倒して援護に向かうこと……そしてハエレティクスを倒すのは、スズちゃんじゃないといけないのもある)

 

「んなろ、ちょこまか動きおってからに!命中率重視の弾丸じゃ威力が足りないし!」

 

ハエレティクスが不規則な動作で二人の照準をずらす。右に動けば左に、左に動いたかと思えば右にと、不規則でやりたい放題をそのまま具現化したかのような動きだ。

 

「くっそう、んじゃったら……」

 

鈴蘭はなにを思ったのか、唐突に杖を消し、型がメチャクチャな徒手空拳の構えを取る。

 

「っしゃ来いや!」

 

「は?ちょ、スズちゃん得物放すとかさすがにそれは私も予想外―――」

 

鈴蘭のそのまま姿を見た途端、ハエレティクスは超スピードで鈴蘭に迫る。第三宇宙速度すら突破し、時間の進む速度すら越えんとばかりに迫ってくる巨体。鈴蘭はそれを静かに見据えて、手を瞳に添える。

 

「―――"ジャスティスハート"、ギアモード!」

 

途端、鈴蘭の紅い瞳は真逆の蒼に染まる。自らのギフト、"冥界の獄炎"の焔を腕に纏い、見ることどころか知覚することすら許さない突進が迫る―――

 

「ばぁくれつ、ナッコォ!!」

 

止めた。凄まじいという概念すら超えた速度の一撃を。下手をせずとも竜胆のそれよりも遥かに小さな腕一本で。

 

「いってぇ……!プロミネンスバインド、トラップバインド、カウンターバインド、一斉稼働!!」

 

掛け声一つ。それだけで充分だ。鈴蘭の言葉によって鈴蘭とハエレティクスを囲むように地面や空中に展開された魔法陣から現れたしなった焔と紅く輝く鎖はハエレティクスを縛り付ける。

 

「今だよルリルリ!」

 

「……うん!"星眼"!」

 

鈴蘭が作った決定的な隙を琉璃は逃さずにハエレティクスの頭部に幹竹割りを仕掛ける。凍夜の"森羅万槍"に匹敵する刀、"星眼"の一撃はハエレティクスの特性上決定打を与えることはできなかったが、確実なダメージを与える。

 

「でぇぁやぁあ!!」

 

今度は脚部への一撃。ハエレティクスの崩れた体勢は鈴蘭のバインドがきっちりと押さえつける。

 

「"ジャスティスハート"、ポイントリリース……ランサーモード」

 

鈴蘭は瞳の色を元に戻し、杖に戻し魔力の槍を作り出してハエレティクスの胴体に突き刺す。

 

「エクステンドモード起動(アウェイクニング)。アサルトモード」

 

突き刺した部位をマシンガン状の銃身に変える。持ち手を引いて杖に着いているマガジン状の物を異なる物へと変更。弾丸の性質を効率的に変動。

 

柄尻のボタンを押し込み、銃身を回転。乱射を開始する。

 

「バルカンフレア、ファイアァァァァアアア!!!」

 

「心臓、一突きにしてやるッ!」

 

琉璃が心臓部を一突きと称しながら滅多刺しにし、鈴蘭が肉体を内部から狙って連続照射を行う。鈴蘭の持つ無限の魔力が止むことのない熱の弾丸の雨を撃ち込んでハエレティクスの内部温度を急上昇させる。だがそれは琉璃の滅多刺しと刀自体に込めた"冷却"の恩恵と外部から直接入り込む空気で急激に下がり……上昇と下降を繰り返した身体はハエレティクスの肉類の限界を超え、破裂した。

 

「核が剥き出しになった!今だよスズちゃん!」

 

「ランサーモード!剥き出しのエゴそのものを、突き刺してやるッッ!!」

 

ハエレティクス心臓を一刺しにし、それを超熱の魔法で完全に溶かす。

 

ハエレティクスを倒した二人は互いにサムズアップを見せ会う。

 

「さ、かわいいおとーととその家族のお手伝いしようじゃないかルリルリ!」

 

「そうだね……っと、その前に。多分別の分岐から来ている問題上、三回くらい限りしか使えないけど、スズちゃんに切り札を渡すね」

 

「んにゃ?なにそれ」

 

「それは貰ってから。ゲーム時間の短縮かつ即効性、利便性共に応用が効くとしたら……これだね」

 

鈴蘭をちらりと見た琉璃は少しだけ念じ、空白の空間から一枚の羊皮紙を生み出す。

 

「簡単かつシンプルな分、こっちの箱庭の人達みたいに永続して使えるものじゃないけど、威力と利便性は一級品だよ。さぁ、スズちゃん。キミの力を見せるためにも、キミの力の源を見せてほしい!」

 

◆◇◆

 

突然だが、竜胆にはよく目立つ悪癖がある。

 

怒りっぽいこと、素直になれないこと、自分にとって都合の悪いことはとにかく否定すること。

 

自覚は割とある。二番目のことについては日常茶飯事だ。だが三番目に関してはどうだろう?

 

ぶっちゃけ彼はそれに自覚はない。頑固と言われれば当たり前のことをこなそうとしてるだけと答え、病的なハッピーエンド厨と言われれば助けれそうな命があって見捨てるのは人間のやることじゃないと切って捨てる。

 

この三つがうまいこと彼のデメリットとなっており、慈朗は怒りで大振りになった攻撃を悠々と躱し、凍夜の槍撃も槍故の大振りになってしまうそれも簡単に避ける。

 

「ほらほらもっと攻め立てて!俺のギフトなんて自分以外の生命体一体の強化と一定条件下での世界の凍結だけなんだぜ?お前ら二人で倒せねーわけないだろ?」

 

「いちいちカンに障るヤロウだな……!その面ぶっ飛ばす!ぜってぇだ!」

 

「やってみなって何度も言ってるっしょ……ほれほれさっさとなさいな」

 

「くっそ……コイツは流石に俺も腹が立つぞ……」

 

ゆらゆらとまるでそこになにもないかのように空虚な躍りを続ける慈朗の姿は狂気すらも覚えるほどだ。薄気味の悪さとその無意味ともとれる行動を凍夜はいよいよなにかあると確信めいた予感がしていた。

 

「ん?絶対者、なにか余計なことを考えてるな。もしかして俺に隠し玉の一つや二つあるとでも邪推してるのかな?」

 

「っ……嫌なヤツだよお前」

 

「ははは、意味なく勘ぐってるところ悪いが、俺にはもうなんにもないぜ?ギフトカードにもさっきの二つしかない」

 

ほれ、と余裕の現れか、ふたりに見せびらかすように真っ白のギフトカードを晒す。その態度はまた竜胆の怒りを買い、一層単調かつ激しい攻撃になる。

 

(どうやら本当になにもないみたいだが……ただあの死期を逃がすだけならこの時間稼ぎは少々どころじゃないほどやりすぎという感がある……やはり、なにか意図が他にある……なんだ、なんなんだ?)

 

凍夜が気にしている間にもドンドン時間は経っていく。二人の行動に合わせて動く慈朗の姿は不気味とかそういうものを越えている。

 

時間は過ぎていく。動くはずのない時間の歯車がキリキリと音を鳴らして……

 

「……もうそろそろ、かな?」

 

◆◇◆

 

『ギフトゲーム"覚悟の証明"

 

主催者

・上月 琉璃

 

参加者

・鈴蘭=T(タカマチ)=イグニファトゥス

 

参加者側クリア条件

・己が信じ、進む道の根元を叫べ

 

主催者側クリア条件

・なし

 

上記に則り、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。

 

"上月 琉璃"印』

 

「これはなんなんだい?」

 

「私のギフト"ただ一つの奇跡"(オンリーワンギフト)。力を求める人達にその人だけの力を与えるためのギフトゲームを開催するギフト……色々都合があるから簡単かつ単純なものにしたけど、スズちゃんなら瞬殺でしょ?」

 

さぁゲームスタートだよ。と琉璃は言う。鈴蘭は改めて軽く"契約書類"(ギアスロール)を確認し、ニコッと笑って即座に叫ぶ。

 

「楽勝、私が信じる道の根っこはいつだって―――おとーとが幸せになること、ただそれだけだよ!」

 

理解から攻略までコンマと必要なかった。当たり前だ、彼女は自他共に認める弟絶対主義(ブラコン)なのだから。

 

そしてゲームをクリアした鈴蘭のギフトカードには新たに一つ、"簡易版・月光処女"(インスタント・ピュアハート)と記され、ギフトネームの隣に"Ⅲ"と浮かび上がった。

 

「新しいギフト、ゲッチュ!」

 

「うん……スズちゃん、今貴女が受け取ったそのギフト。"簡易版・月光処女"は簡易版が示す通り使用制限があるの。ギフトネームの隣にあるⅢがその使用制限。使う度にその数字は減っていって、0になるとギフトそのものが自壊する。今いる箱庭から離れてもまた別の箱庭に行く可能性は捨てきれないから……一発で仕留めて」

 

「……らーじゃだよ。期待に応える」

 

おふざけなしの首肯。手に持った"ジャスティスハート"を再びギアモードに変えて右手を突き出し、腕に左手を添える。

 

ゆらゆらと揺れる慈朗。事情を知らない竜胆と凍夜は慈朗に翻弄されて時々射線に重なる。

 

「"簡易版・月光処女"起動。"冥界の獄炎"、一点集中状態。"魔導王"重ね掛け。ソニックムーヴを弾丸に起動。速度が上がる分威力をこのままにするとオーバーキルになるから、貫通力と威力を限界まで姿勢制御安定、反動減衰問題に充てる……」

 

"魔導王"の発動と共に現れた幾つもの複雑な数式を鈴蘭は一瞬で解いていく。解いた数式を独自運用の為に書き換えて弾丸と自らの身体に付与する。

 

"簡易版・月光処女"の能力は魔法そのものに使用する魔力を鈴蘭の持つ無限の魔力ギリギリまで使用するというもの。これにより能力拡張の幅を限界まで拡げ、小回りの効かない鈴蘭の魔法に応用性を加えるというものだ。

 

そして鈴蘭の魔力は上述の通り文字通りの無限。なにもデメリットは存在しないし、拡張するのに時間を加えれば一発で敵を仕留める弾丸を拡散させ、それらを全て敵にホーミングさせることができる。

 

だが今回は時間を掛けてはいられない。必要最低限の術式だけ書き加えて、狙い撃つ。

 

「撃てる?」

 

「とーぜん。私を誰だと思ってんのさ……最強最高、オンリーワンでナンバーワンのスーパーおねーちゃんだぜ?」

 

「その根拠はどこから来るのかなぁ……まいいや。私そっちの方が好きだからね。さーやっちゃいなさい!」

 

「おっけい!任せろ!」

 

琉璃の声援に鈴蘭は笑い、翳した手の小刻みな振動は止まり、確かに慈朗の頭に狙いを定めた。

 

鈴蘭の視界に映るそれらは強化された視力と動体視力……そして僅かな挙動で起こる初動すらも理解する。

 

竜胆の初動、凍夜の初動、慈朗の初動……それらを全て見定め、次にどう動くかも判断、射撃のタイミングを図る。

 

「狙い撃つ……くらいやがれぇああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

三人の重なりが離れ、確実に回避のしようがない体勢、その一瞬を衝く。一瞬の時を往く光の如く。

 

光を、時を、宇宙の広がる速度よりも遥かに疾い。その一発の光茫を放つ。

 

「―――!?」

 

一発、当てるだけで慈朗はコロンと倒れた。速すぎるその弾丸は、威力がなくとも生命体を殺すのには充分過ぎたのだ。

 

「―――やっちゃ……た?」

 

「……みたいだね」

 

「……―――」

 

「どうした、竜胆」

 

呆気なく、あまりに呆気なく死んでしまった慈朗の姿。それと、その慈朗を殺した姉の姿を呆然と見ることしかできない。

 

「……また、死んだ……」

 

「また?」

 

「……ごめん。なんでもないんだ。なんでも……」

 

竜胆の肩は震えていた。その呆気ない死に方に家族や親しくしてくれた人達の死に様を思い出したのか。無意識に凍夜に寄りかかっていた。

 

「……また、か」

 

凍夜は竜胆の背を叩き、やさしめに頭を掻き回す。

 

「……同情ってほどじゃないが……身近な人が死んだことなら俺にもあるよ。その気持ちはわかる」

 

慈朗が死んだことをトリガーに、止まった時間は動き始め。二人の身体を風が凪ぐ。

 

「その感情に思うところがあるなら決着をつけるんだ。お前たち姉弟の異世界巡りの旅に」

 

「……うん」

 

「さっき死期が逃げたときに見た歪み……俺ならアレを再現できる。それを通れば、ゴールに近づくだろ」

 

「うん」

 

凍夜が竜胆を引き剥がし、右手を翳す。するとそこから小さな歪みが出て、竜胆をその中へ押し飛ばす。

 

「―――」

 

「行ってこい。お前は半端にしか決着をつけられなかった俺とは違う。昔のお前がいた証があるだろ?」

 

琉璃が引っ張ってきた鈴蘭に眼を移して、その鈴蘭も押し飛ばす。

 

凍夜のサムズアップを見た竜胆は凍夜に聞こえるように、最大限大きな声を張り上げて叫ぶ。

 

「―――トーヤ!全部終わったらそっちに行く!だから待っててくれ!俺の旅の決着―――俺が今の俺として生きてきた、13年の決着を!」

 

「ああ、いつでも来い。いる場所が違っても俺達は家族だろ?」

 

竜胆の顔が消えていく。歪みが閉じているのだ。竜胆と鈴蘭の姿はあっという間に見えなくなり、その場にはなにもなかったように、二人だけが残った。

 

「……行ったな」

 

「行ったけど……慈朗の死体が消えてる」

 

「まだ続いてるってことだろ。終わるのがいつかは知らないが……俺は待つだけだ。帰るぞ琉璃」

 

「そうだね。さ―――そのうちまた北側に行くんだから準備しとかないとね。"アンダーウッド"からも帰って来たばかりだし」

 

 





紅の暁さん、コラボありがとうございました!

トーヤくんやルリルリは割りと二人のことを理解しやすい性格してるんじゃないか、みたいな妄想してたので書きやすかったです。

下のは蛇足すぎる番外コラムなので面倒な人は見ないのを推奨するよ!ノリと勢いの存在だったおねーちゃんがすごい存在に見えてくるから!










以下、おねーちゃんのギフトが難しいって人に下手したらもっと難解になる説明ー!

まずそもそも、おねーちゃんの使う魔法は魔法を使うための魔力を使うのですが、その魔法は所謂、魔力さえあれば科学的に証明できる魔法が主になっています。

なので魔法を使うのに数式を用います。数式を具現化させるのがおねーちゃんの本来の魔法であり、それを"冥界の獄炎"で炎の属性を付与しています。

この魔法は籠めた魔力の大きさに比例して威力が上がるのですが、この威力というのは魔力で拡大させた数式を入れる場所に威力増大の数式を入れているので強くなる。

なのでその威力増大の数式や貫通力の数式を速度上昇や反動減衰、姿勢安定などの数式に書き換えている。

"月光処女"のギフトはその籠める魔力の限界を撤廃するギフトなので、時間さえあれば一発で箱庭どころかブラフマーとかカーリーとか、神話でもチートすぎてドン引きレベルの神様だって殺せます。チート。

……この数式の書き換えを数秒で行って、試射もなしに成功させるおねーちゃんも大概なんですが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。