問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
ちゃうねん。久しぶりにいつもの竜胆くん書いたから遅れたわけやないねん。
……何言っても言い分けにしかなんないっすよねこんちくしょー!
というわけで本編に繋がるコラボ編、今回のお相手は、本編で!
その日、箱庭全土が未曾有の大雪に包まれた。
異常気象だの、
「もしかしたら雪女の仕業かもねぇ!」
その箱庭の"ノーネーム"、各々ある世界において基本的にその一つの世界にしか存在しない、所謂"特異点"と称される少女
「異常気象っていうけど、結局は冷害が多少起こってる程度だ。一部のコミュニティは持ち前のギフトで難なく過ごすだろ」
夏凛の物言いに賛成するように相槌を打つ十六夜。自由気ままな二人の発言に、すぐ近くにいた
「いや……二人とも流石に緊張感なさすぎ……でも、雪女か」
「どうしたの呉羽くん。なにか心当たりとかがあるの?」
「あ、いや……雪女。名前なら飛鳥も知ってるでしょ?」
「ええ。名前くらいなら」
「それが不思議でね。雪女なんてだいそれた名前をして、人生を憂いた人の心の隙間に付け入るように現れるのに……自分が殺しかけたしがない男のために、身を焼くような熱い恋をするんだよ」
「……熱い、恋」
ぽけー、と。ついつい復唱してしまう飛鳥。
「そ。そういうのって聞くとなにか矛盾したロマンスを感じるよね」
そういうの、よくないかな?と問い掛けてくる。困る。そんな笑顔で問う来ても、こちらがよくわからないけど困る。
「でもさ!そんなのが実在するなら……喋ってできるなら戦って、お友達になりたいよね!」
夏凛がほんわかとマイペースな発言をする。よーっし、と両腕を天に掲げて謎のポーズを作る。
「コロンビアー!雪女よ来ーい!」
「いや、そんなんで来るのは逆に雪女かどうか怪しくなるんだけ―――」
「ふにゃ!?」
「ごふっ!?」
「―――ど!?」
突如、天空から(現在地室内なので比喩表現につきあしからず)少女が降ってきた。なんというナイスタイミングなのか。
「は、
「いやいや夏凛、服装が白装束の雪女とは真逆の真っ黒なんだけど」
「誰が雪女かしっけーな!私ゃ脳から爪先までバーニングな熱血少女やっちゅーに!」
落っこちて来た少女は真っ黒なコートに炎をあしらった模様、太陽を思わせる炎髪灼眼、それになにより言葉の端々に感じられるクールさを微塵も感じさせないアホっぽさが明らかに"雪女と真逆"のイメージを与えてくる。
「……ま、いいか。私の呼び掛けに応えたってことは、戦えるってことだよね?」
「え、ちょ、夏凛?」
「喧嘩の申し込みか!よかろう受けてたーつ!!」
「え、は?」
(この子、なんかすごい可愛い!終わったら思う存分喋りたいな!それになにより―――)
(この女、なにやら我が最強のおとーとによくない影響を与えそうな気がする……出る食いは引っこ抜く!それになにより―――)
((―――なにかすごい
人を振り回す最強クラスの天然ボケ共、邂逅の瞬間であった。
◆◇◆
魔法(物理)、とでも呼ぼうか。そんな現状である。
吹き荒れる赤い奔流と飛び散る灼炎の破片。互いが互いに『本来固体として存在しないそれら』を純粋な力で殴り飛ばす。互いに周りの迷惑を鑑みてないからなおのこと
力には力。ならばその力に対抗するために力。それならばその力を叩き潰すために力……と双方の
しかも双方明らかに嗤っている。
「あはははは!!すごい!すごいよすごい!こんなに純粋に戦い合ってるのに力負けされない!こんなの滅多にないよ!」
「そりゃお互い様さね!私だって考えなしのガンドコにゃ自信、あったんだけどさ!」
見るものからすれば異様な光景。片方を知る人からすれば驚愕の光景。あのバカっぽい言動の幼女がこんなアホみたいな戦闘を繰り広げるとは、という。
そして両方を知っている者は―――残念ながら現状はまだいない。
夏凛の赤い風はうねりを上げて鈴蘭に向かい、彼女もそれを赤い障壁で防いで。また鈴蘭が太陽も真っ青の火力の炎を引きずり出せば夏凛もまた赤い風で防ぐ。
赤い。赤すぎて目に悪い。赤いだけならまだしも、それが通常の三倍とか言うのもバカらしくなるような速さで動き回っているのだ。
「くらえぇい!おねーちゃんキィィィィィッック!!!」
「なんのおおお!!私流、スーパーキーック!!」
互いにアドリブ感満載の蹴りを重ね合わせる。子供達からはヒーローショーみたいな演出に大満足だ。
しかし互いにこのまま殴り合いだけでは決着がつかないことを察したのか、自分の得物をギフト、ないしはギフトカードによって呼び出す。
鈴蘭はその杖を、夏凛は不定形な赤い力を柄だけ作って構える。
「せりゃああ!」
先に動いたのは、鈴蘭。
「先んずれば勝負を征す!私のターンッ!」
一感覚遅れて夏凛も動く。杖が振るわれ、赤が棒状になる。武器が重なり、ほぼ同じほどの力だったそれらは勢いよく弾かれる。
そうなれば、武器が固定された一つしかない鈴蘭よりも流動的に形を変えられ、一つ弾かれた程度なら代替えの利く夏凛の方が有利。
「その首もらったぁぁぁぁ!!」
赤い欠片を長槍に変えて全力で突きを行う―――その刹那。
「甘ぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!噛みきったガム以上に甘ぁぁぁぁぁぁい!」
よく意味のわからない比喩を用いると、突然巨大な壁が二人の間を遮る。
「盾ッ!?」
「
防人ッシュな台詞が表す通り、降ってきた壁は盾ではなく、
しかもそれは、先程飛ばされた杖が変型したものだったのだ。
槍が元の大きさを取り戻し、地面から引き抜かれると、それが合図だったかのようにまた静かな空気を取り戻す。
「凄いね!ここまで楽しんで戦える人なんてそういない!」
「そりゃどうも……他称蒼炎の悪魔の右腕、獄炎の魔女としては嬉しい限りだよ」
「……さ、続き、しよっか」
「オッケー。それじゃ―――」
それじゃあ、なんて言わせない。遅ればせながら、とうとうアイツがやって来た。
「それじゃ―――なにかな?」
「おお!我が愛しきおとーと!おねーちゃん先についちゃったからつい遊んでたよ!」
「………………言い訳はそれだけ?」
「私は常に本音しか言いません!」
「そっかぁ。それじゃ―――御叱りの時間だアホお姉」
ものっそい剣幕で鈴蘭の愛しきおとーと……竜胆はお説教を始めたのだった。
◆◇◆
ズズッ、お茶を啜る音。
「案の定知り合いの世界だったわけなんだが……」
さて、と言うように状況の整理に移ろうとする竜胆。しかしそんな彼の身体のいたるところをぷにぷにと触ってくる夏凛のおかげで全く本題に入ることができない。
「……変なとこ触ってこないから怒りにくい……」
あくまで夏凛が触っているのは彼の頬とか頭とかだ。まるで子供のようにペタペタと触ってくる。
「夏凛。彼……、が話しにくそうだから離れて」
「む……はーい」
「あとお姉も離れてて。どーせ話を脱線させてくるから」
「なぜだ!」
「……突っ込むの面倒なの。離れてて」
「おとーとが冷たいです!」
「で、えーと、そっちのアンタが」
最早なにを言ってもこの姉はなにも変わらないのでガン無視。今日の竜胆は少し機嫌が悪い印象を受ける。
「縁巳 呉羽。話は夏凛から少しだけ聞いてるよ。とてもボクに似てるって……」
「ああ……うん……」
似てる、の意味を察してしまって二人とも一気に御通夜ムード。こんな悲しみの連鎖にいることがとてもアレなのだ。
「……ま、話を戻す。俺達がこの世界に来たのには少しばかり厄介な理由だ。ここは四番目に訪れた世界だから『四つ目の世界』って言おうか」
そして竜胆は話した。自分と姉がこのめんどくさすぎる異世界巡りの旅に出ている理由。もしかしたらもなにも、ほぼ間違いなくこの世界にも"エルフ"の人間がいること。
もしかすれば、夏凛や呉羽にも迷惑をかける可能性があることも。
「うん……なるほど。事情は呑み込めたよ」
「ああ。その上であつかましいが、最初の世界と二つ目の世界で嫌と言うほど自分の運のなさを痛感しててな……多分ここから出たら間違いなく俺達はなんかの理由で死にかける。だから……"ノーネーム"の部屋を貸してくれないか?」
竜胆の頼みに呉羽はさすがにうーん、と考え込む。
今の状況は最初の世界や二つ目の世界のように死にかけていて無償で助けることに良心的にもあまりメリットがない。
かといって三番目の世界のようにその世界そのものが死んでいるという深刻な状況というわけでもない。
いくら親友の友と言えど、自分が初対面である以上少なからず自分達側の損得は考えてしまう。
―――あ、いいことがあるじゃないか。
「そうだ……竜胆……んー、なんか呼びづらいからリンくんでいいや」
「御勝手に。お前にならなんて呼ばれても不思議と嫌気はしないよ」
「ならリンくんで。えっとね、今こっちの世界でも少しおかしなことがあってね」
「おかしなこと……?」
「そう。そっちも"アンダーウッド"から帰って来たばかりならこの異常気象の不思議さはわかるでしょ?」
「……なるほど、確かに。"アンダーウッド"帰りの頃は真夏もいい頃だったな」
「うん……そのことで"サウザンドアイズ"から異常気象の調査の以来を引き受けていてね。でも夏凛はあんなだし、ボクはあまり身体が強くないんだ。そこで」
「手伝え、と」
「そう。もしかしたら異常気象にそっちのいう"エルフ"も関与している可能性も否定できない。いい交換条件だと思うんだ……どう?」
答えはわかりきっているのだろうに、敢えて聞いてくる。こういう無駄に嫌味なところをチラつかせてくるところも本当に俺に似ている……と思いながらその返答は迷うことをしない。
「勿論YESだ。宿を提供してくれるならこっちからすれば願ったり叶ったりだ」
「よし……契約成立だね」
互いにニカッと笑ったのを気に話し合いを終えた。
「さて……ここからはボクらも家族ってことでね。これからどれくらいの付き合いになるかはわからないけど、よろしくねリンくん」
「ああ……リンくんにカリン、か……偶には忘れてたことを思い出すのも悪くはないか……」
竜胆は薄い笑みを浮かべながら、呉羽と弱々しく握手をしたのだった。
というわけで、桔梗さんコラボありがとうございます!
予定ではオリジナル敵は今回で出尽くす予定です。それでは。