問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
悲報
前書きのネタがなくなったことが理由で完成してから三日間投稿しなかった作者がいるらしい。イッタイダレノコトヤラ……(目逸らし)
「……確かに、東側とはとてもじゃないけど思えないくらいの異常気象だ」
ぐっ、ぐっ……とブーツを雪に埋もらせながら前に行く呉羽に着いていく。本人曰く、この辺りに異常な観測記録が出ているとのこと。
「うん。この辺りを起点に三日程前から起こっている。ただ寒いだけなら冷害だけで済むんだけど……問題は起点になっているこの辺りでは相転移現象が全く起こってないってこと」
相転移現象。ある安定した物質の相と呼ばれる物が変化する現象を指す。液体から固体に固体から液体に……といった変化も相転移に含まれる。
つまり、ただの異常気象ならば必ず相転移現象が発生するはずである。だというのにそんなことは一切起こっていないということが事実。
「まるで突然現れたようにこの辺りで吹雪が起こってね……」
「なるほど……それなら大寒波や雪女、淤加美神が起こした、という線はなさそうだな。考えられるとすれば、そうだな……特定の場所と繋がっている、か」
「ボクもその線で調べてた。だとしたらそれは"境界門"を弄って起こした現象の
「どっちにしろ"境界"を操作する力を持ってる者が起こしていることには間違いはなさそうだな……さて、そうなると異世界も関連性が少なからず出てくるわけだが」
因みに鈴蘭と夏凛はお留守番だ。なんといっても変に暴れて貴重な証拠がなくなるのは困るし。
「それで……調べているうちに見つけたんだよ」
「なにを?」
「これさ」
呉羽がその場にあった岩をどかそうとする―――のを竜胆が止める。
「いい、俺がやる」
「え?」
「昔の話とはいえ病弱なヤツに肉体労働なんてさせられるか、普通」
「そっか、ありがと。優しいねリンくんは」
「……別に」
いつもの彼なら全力で否定していたであろう感謝を、比較的素直に受け止める。
どうにもこの縁巳 呉羽には心を許してしまう。同じだからだろうか、……いや、同じという意味では合っているのだろう。
呉羽にとっては過去でも、竜胆にとっては未来のこと。盲目的に、ただ愛した人のために自分を見失う。
それを知らない竜胆は不思議な感覚に苛まれたが、さして気にはしなかった。岩をどかした竜胆は呉羽に向き直る。次はどうすればいい、と。
「よくもまぁ、俺の知ってる奴らはズケズケと人の心に入ってくる……」
「なにか言った?」
「いや、別に」
アイコンタクトで次にやることを教えてもらった竜胆は空間の一点を指で突く。するとそこからブラックホールと形容すればいいか、そんなような黒い狭間が現れた。
「これか」
「そう。これが吹雪の発生源で雪を東側に停滞させている原因であるのはほとんど明白なんだけど、それ以上これがなんなのかは全くわからない」
「……ビンゴだ。これは明らかに異世界転移に使われる技術がある。十中八九とは言わないが"エルフ"の人間が絡んでいるのは違いない」
「そうなの?パッと見じゃよくわからないけど」
「座標の固定の仕方や座標のマーキングをすると必ず残る空間の歪みがある。幼い頃は俺も多用していた技術だからな」
尤も、理論がわかれど開発できる技術を持っているのなんてほんの僅かしかないが、と付け加える。
あくまで自分は第三者から偶然提供された技術を使っているにすぎなかったし、その第三者に物を知ることへの興味が深かった幼い自分が理論を聞いただけ。記憶したことを忘れられない竜胆だからこそわかるのだ。
「場所によってはもしかしたらどこの世界と繋がっているのかわかるかも知れない。それはほとんど、海の中から特定の砂を一粒拾い上げるような確率だけど―――」
使っていたものと同型だからか、手慣れた動きで歪みからコンソールを引っ張り出して歪みの先の世界を逆算していると、途端に竜胆の動きが止まった。疑問に思った呉羽が竜胆の顔を覗き見る。
その顔は驚きに染まっていた。冗談みたいなものを見ているかのように。なにかの因果がこの人物の運命を引き寄せているかのようにだ。
「……嘘だろ……この座標……」
「リン……くん?」
「この座標パターン、俺のいた世界と同じだ」
「え?」
「しかも歪みから逆算した転移装置の登録名称、母さんが使ってた転移装置と完全に一致してる」
死んだはずの母の持ち物がなぜこんなところに、と疑問に思った竜胆は途端に血相を変えてコンソールを乱雑に叩き始めた。
「冗談だろ……それじゃ下手をするとあの時母さん達が死んだのも、こうやって異世界を転々と巡ってるのも、全部本当に俺のせいじゃないか……!どれだけ人に迷惑かければ気が済むんだよ俺はッ……!クソが!」
明らかに焦りながらコンソールを操作し、出てきては消える文字列を一瞬で暗記しながら自分の記憶も頼りに母がかけているプロテクトを次々に外す。
科学的に異世界へと転移することにあまり詳しくない呉羽は目の前に起こっている現象を上手く理解することができず、おびただしい文字列と切羽詰まった形相の竜胆を見守ることしかできない。
「どれだ……!あの日依頼母さんは復讐のために人生を費やしていた……!ならあるはずだ!今回の事件のヒントが!あの時起こったことの真実がッ!!」
正直、その姿は痛々しかった。見ていられない。光の見えない穴の中を迷走している竜胆の姿はかつて夏凛に囚われて、抜け出すことすら放棄していた自分とよく似ている。
「落ち着いてリンくん!焦らなくても手に入れられる情報は逃げないから!」
呉羽はなにか悪い予感がしていた。竜胆の発言からして、今彼は普通では開示されない情報のプロテクトを突破しようと試みているのだろう。だがもしこの場に、突破できなかったプロテクトを突破させるためにこの歪みを設置した者がいたとすれば?
それは今の行動が完全に悪手であることを物語っている。せめて安全を確保してからが望ましい。
だから呉羽が竜胆を止めようとした―――その時に。
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
二人はコンソールから引き離された。不思議な感覚によって身体ごとその場から捨てられたような気分だ。
「予想通り、プロテクトの解除をしてくれたか……うん、予定通りすぎて怖くなってくるな」
「そうじゃなきゃ無用に情報提供しただけだろ」
男の声が二つ。二人の後ろから聞こえてきた。
「……お前ら、"エルフ"か」
「そうだよ」
「どういうことだ……お前らは五年前のあの日にも関わってたのか!?いやそうじゃない!それより前からも!答えろ!お前達は何者だ!?」
息を荒げて問い掛ける。もしかすれば自分の存在そのものにコイツらは関わってくるのかもしれないのだ。気にかけるのは当然のことだろう。
「……そうだな。敢えて答えるとすれば、俺達は
「ふざけるな!そんな曖昧な答えで許容するとでも思っているのかよ!?」
「思ってはいない。が、この旅を終えればいずれ嫌でも知ることになる。言葉にするなら答える必要性がない」
「ぐっ……!知っているからといって、なんでも見透かしているように!」
元々この世界に来たときから巡る意味もわからずに様々な世界を転々としていたストレスのせいか、少し気が立っていたという印象のある竜胆だが、この二人が来てからはそれが確信めいているかのように浮き彫りになっている。
いけない。フォローに回る必用もあるし、早くみんなに知らせないと。
そう呉羽が直感的に判断したが、向こうはそれを許すほど甘くない。
「悪いがお前達には少し付き合ってもらう。なにもこの情報を得るためだけにこの世界に来ているわけではないからな」
パチン、と指を鳴らすと、急に歪みが肥大化した。それがなんなのかを察した竜胆は急いで呉羽の元に駆け寄る。
「俺達を次元の狭間に放逐するつもりか!?」
「そうするつもりはない。だが、時間稼ぎはさせてもらう」
呉羽を担ごうとした瞬間、二人はもう一人に思いっきり足蹴にされる。歪みはそのまま二人にだけ吸引力を生み出し、踏ん張りを効かせることもできずに竜胆と呉羽は歪みの中、次元の狭間へと飲み込まれていった。
◆◇◆
「「―――はっ!」」
同時刻、夏凛と鈴蘭は同時になにかの電波を受信した。
「おねーちゃんレーダーが言っている!おとーとピンチ!」
「私も感じたよぉっ!」
謎の電波の一言で済ませて二人はさっさと外出の準備をする。マフラー、コート、その他諸々……とにかく詰め込めるものを詰め込んで二人はさっさと本拠を後にした。
「二人がいなくなった場所は?」
「わかるよ。私も一応行ったことあるから」
一面銀世界で半ば自分達の位置の確認すらもできないような道を二人はすらすらと進む。途中、二人のものと思われる足跡があったのでそれを追う。
「ここだよ」
「―――ん」
二人が足を止める。そこには既に竜胆達の姿も空間の歪みもなかった。
だが、二人のものとは別に二つの足跡とこの場で荒事があったかのような跡がある。
これだけあれば二人の身になにがあったのかは想像に難くないだろう。
「……明らかになにかの介入があるね。そこに隠れてる人達もそう思うでしょ?」
跡を確認しながら、夏凛は僅かに人気を感じた方向へと声をかける。
そこからは、小さな少年少女が出てきた。
(か、かわいい!)
夏凛がそう思ったのはご愛嬌だ。
「やっぱり見つかったね」
「うん。でもそっちの方がいいでしょ?」
「ええ。そっちの方が、Eのため」
少年少女は互いに言葉少なく、だがしっかりと意志疎通できているかのように話し合う。
鈴蘭は直感で理解した。というより、Eという単語から理解した。
こいつらは"エルフ"だ。
それを悟った鈴蘭は自然に身構えていた。
それを見た夏凛も頭のスイッチを切り替えて紅い乱気流を発生させる。
「怖いね。まるで見透かされてるみたいだ」
「そうだね」
二人が臨戦態勢に移行したのと同時に、少年少女も薄ら笑いを浮かべて臨戦態勢をとる。
ここに、二つの戦いが始まった。
コラボ第2話ありがとうございました!
……ネタが、ない。(絶望)
……えーと、えーと。
き、桔梗@不治さん、有り難うございます!