問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
また番外編っぽいサブタイを……
まあいいよね!次回から五巻行きますよ!
零話 幸せハッピーデイズを語る狐
「───リン。私達もいつか、あの人達みたいなすごい人になれるといいね……」
そんな言葉と共に、俺の意識は引っ張られていった。
◆◇◆
「……随分懐かしい夢を見たな……」
目覚めて第一声。竜胆はうつろうつろとした思考の中でそんな感想を持った。
「あの世界の夢……か。もう戻ることもできないんだろうけど、あの人達の人生が俺を探すだけで尽きなきゃいいんだけど……」
なんであんな夢を見たんだろう。そう思って昨日自分が何をしたのかを思い出す。
「えーっと……確か昨日は……」
腕にキス。
「……俺、なんてことしてたんだろ……」
今更になって死にたくなってきた。まさか相手の同意も得ずにキスするなんて耀は考えもしていなかったろうな、なんて竜胆は思う。
まあ、当の本人は盛大な勘違いをしていたのだが。
「───寝る!思い出せなくなるまで寝る!」
だがまぁしかし、基本的に竜胆は恥ずかしがり屋で一途なので、一度自覚してしまった想いというものはそうそう頭から離れてくれない。
忘れろ忘れろと布団に潜って中でもがいて蠢いても竜胆にとってとんでもないレベルの事態であるそれは忘れることなんてできない。
むしろ昨夜はよくそんなこと忘れて眠れたなと言えるほどだ。
「バカバカバカバカ俺のバカ……!」
寝れないのをすぐに悟った竜胆はボフボフと布団を叩いてどうにかしようとする。まあそんなのでどうにかなるのなら彼はここまで苦労してないのだが。
「くぬぅぉぉお……!どうすればいい……タマモ……?」
彼は無意識にその名前を呼んだ。
だが、当のタマモはもう3日前にいなくなったのだ。それでも竜胆はそのことを忘れてタマモの名前を呼んだ。
そして返事が暫くしても返ってこないから漸く竜胆はタマモがいないことを思い出した。
「はぁ……結局俺は他人に依存してたんだな……」
竜胆ははぁ、と溜息をつくと、途端に今までの恥ずかしさが冷める。
「……寝ようかn「竜胆、ちょっと来て」寝かせて!」
◆◇◆
それから竜胆は耀に連行され、十六夜の部屋に着いた。
「……異邦人の親睦会?」
「そうよ。思えば私達……ああ、竜胆くんはタマモに人生教えられたから例外だけど、自分達のことってほとんど知らないでしょう?」
「ああ……そうだな」
「だから、第一回目のお題として"自分の世界の生活観"を教えてもらうことにしたの」
十六夜も今の今まで知らされていなかったのか、彼の好奇心に火がついたような感覚もした。
「……結構マトモなお題でビックリした。俺はなんの脈絡もない変なトークするかと思ったよ」
「ああ。俺も意外だ。お嬢様や春日部はそういうSFチックな話題に興味ないと思ってたんだが」
「そんなことないわ。自分の生きた時代と別の時代の人間が語り合うなんて、中々に知的で素敵な会話じゃない?」
「私はそんなに興味ないんだけど……三人を見てると多分、私が一番未来から召喚されてるみたいだから。情報の提供っていう意味では価値があるかなって。
それに、竜胆の世界は元々異世界と繋がりを持ってたんでしょ?流石に私の時代にもそんな技術なかったから、そこは気になる」
なるほど、と竜胆は納得する。
確かに、世そのものの技術力は耀の時代に大きく劣るはずなのに、その耀の時代に存在しない異世界の移動手段というものを持っているというのは気になることなのだろう。
「……そうさな。別に隠すものでもないから、教えよう。
実はその異世界を移動する機械……あれは実際、俺の世界で作られたものじゃないんだ。だから世界の技術そのものは根本的なところから十六夜の時代とそうは変わらないぞ」
「……へえ?」
十六夜が興味深そうに目を光らせる。そうと聞くと余計に気になるようだ。
「じゃあ、竜胆はどうやってそんな技術を?」
「偶然の産物だな……いや、そのな?」
「その、なに?竜胆くん」
竜胆は少し恥ずかしそうにして、あははと笑いながら告げる。
「俺が生まれてすぐの頃に母さんが偶然異世界に飛ばされたんだ。本当に突然」
「どんな偶然だよ……」
「その時に会った人がな……まあ、平たく言えば神様だったんだよ。つっても、神様とは思えないほど変わった神様なんだけど」
なんという驚き。まさかそんな阿呆みたいなことをこんな阿呆みたいな世界に召喚される前から味わっていたとは。
「で、母さんはその神様に弄られに弄られまくって、地獄の方がマシなんじゃないかっていうバカみたいな修行を受けて……その神様が人間だった時から持ってたものを貰ったんだ」
「それが……異世界移動の機械?」
「呆れた技術力だな……」
「まあ、その人の技術は俺の世界の一万二千年先に行ってるからな。その人個人の技術が」
しかも個人の技術という有様である。これは流石の十六夜も苦笑いしている。
「まあ当然、どんな世界だろうと幾億、無量大数すら越えるわけだ。そうしていくうちに似たような境遇の人達とも出会って行って……俺の事件が起きたんだよ」
途端になんとも言えない空気になってしまったので竜胆はしまったなー。なんて思う。
「あー、でもそのおかげで皆に会えたわけだし、俺の人生なんだ。後悔はしても、過去に振り向いて戻りたいだなんて思いはしない」
それに関しては本心だが、らしくないことを言ったな。なんて竜胆は思う。
多分、今までの自分だったら「悪かった」の一言で終わってただろうなぁ、なんて思いつつも。
「それで、竜胆の母さんの知り合いにはなにか共通点みたいなのはあったか?」
「基本的に女難の人ばっかだった」
超即答。果たしてそれに一番目が行くというのはどうなのだろうか。
「ああでも……母さん含めてほぼ全員に共通点あったな」
「「「それって?」」」
三人は興味を惹かれて竜胆に詰め寄る。竜胆は三人……特に耀に対して狼狽し、変な笑顔を浮かべて腰に手を当てる。
すると、鉄に似たようなものでできたベルトと、カメラのようなカタチのしたバックルが現れた。
「こんな感じのカタチをはじめとした、色んなベルトを使って悪い奴らだったり怪人だったりと戦った経験のある自由の味方だった」
そう告げると、三人は揃って笑い出す。
「は、ハハハ!ヤハハハハ!なんだそりゃ!そもそも自由の味方って、正義の味方じゃねえのか!?」
「正義なんて言ったら偽善だろ。あの人達は大事な人達の自由のために戦ってたぞ」
「ふ、ふふふ。ごめんなさい竜胆くん……!それは私も……!」
「……凄いんだね、竜胆の知り合いの人は」
「笑うなよ。皆すごい人ばっかりだったんだから……」
問題児三人の笑い声は、"アンダーウッド"の河を震わせた。
あんまり詳しくは書けないでゴザル。