問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
今までのシリアス気味だったサブタイはどこへ消えたと言わんばかりにパロディ臭がするサブタイ。
これはヒドイとしか言い様がないね!
「ぁふ……昨日は色々喋りすぎたな……」
お祭りだからと言って少し調子に乗ったかなー、なんて竜胆は思いながら出店の手伝いを朝早くからやっている。
「ごめんね、こき使っちゃって」
「いえ。朝は早く起きて早く動きたくなる性分なので、むしろこれはありがたいです」
竜胆が自分の店で鍛え上げた営業スマイルで応答する。
「それに……折角お祭りが再開したんですから。少しでも沢山楽しむ人がいれば、そっちの方がいいでしょう?」
「ホントにごめんね……」
そんな感じで竜胆の朝は過ぎていった。
◆◇◆
動きたくなる性分とは、真っ赤な嘘である。
確かに竜胆はやるかどうか考えるよりも実際に試すという人間だが、今回ばかりは違う。
竜胆の脳内メーカー
愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲独占欲恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋恋食欲
こんなもんになっている。
まあ、わかりやすく言うとまるまる二日自分がやらかしたことに思いっきり後悔していらっしゃるのだ。
つまり、彼が朝早くから起きて手伝いをしている理由は『寝付けなくて身体の火照りを誤魔化すため』である。
「もうヤダ死にたい……死にたくないけど死にたい……」
こんなところにも欲がですぎて矛盾している。
「おや、竜胆さん?こんなところで一体なにをしていらっしゃるのですかな?」
紳士的な声が聞こえて来て、顔を上げるとそこにはジャックがいた。
「……いや、俺個人の問題だから……あ、それよりジャック。俺に会わせたい人っていうのは……?」
「ヤホホ。覚えてくれていてなによりです。しかし残念、彼女は朝にとても弱い……また昼頃、きっと彼女から訪ねに来ると思いますヨ?」
「……ありがとう」
「ヤホホ。お気になさらずに。貴方はやはり笑っていた方が見映えがよくなります」
「……それ、どういう意味だ?」
◆◇◆
さて、時間は飛んで昼。竜胆は例の彼女とやらの存在が原因で気が気ではなく、やることなすことが中途半端だった。
そんな彼は、今一度己の情熱に火がついた光景があった。
「な、なんだあの女の子!?ものすごい速度で肉を食べているぞ!」
「ま、まさか口の中に辺りに物を収納するギフトを……!?」
「い、いや違う……!あれはそんなチャチなものじゃ決してない!ただ単に、『食べて噛み、呑み込む速度が速い』だけなんだ!」
「………」
春日部耀が食べていた。
肉を。
ありえない速さで。
暫く見ていると、"六本傷"の料理人のペースが上昇し、更にそれを見計らったように耀の咀嚼速度も増していく。
この料理対決。彼の目から見れば勝算のない勝負だった。
だから、彼は───
「な、なんだお前!?」
「その厨房を貸せ。お前達じゃ無理だ……ヤツの咀嚼に勝ることは」
有無を言わさず、厨房に上がった。しかもすでに着替えてある。
「同じ種類の食材なら俺が個人的に持ってきたものもある……これで"六本傷"の食料庫がなくなる心配はない……俺に任せろ」
「し、しかしっ……!」
竜胆は料理人の制止も聞かずに動き出した。右手にナイフを。左手に肉を持って。
「さて……調理開始と洒落込もうか……!」
ギャラリーが驚愕に呑まれたのはほぼ竜胆が動き出した瞬間だった。
「ふ、増えた!?あの料理人の少女、分身した!?」
「いや、違う!あれはただ単に超高速で動いているだけだ!焼く、切る、盛り付ける、肉を調達する……その全てを一人で小刻みに、超高速にやっているんだ!」
「あんまり焼きすぎると追いつかれかねないからな……今回はレアだ!」
次の行動も観客を驚かせた。
なんと彼は肉を焼いていたフライパンを回転させたのである。
「なっ!なんという荒々しい調理方法!見た目とは裏腹なんていう次元じゃないぞ!」
「しかし、この行為にいったいなんの意味が……?」
「そう言うと思ったから……御賞味あれ!」
更に人数が増え、周りにいる人に肉を配る。観客達はそれを恐る恐る食べる。
「こっ!これはっ!?」
「食べただけでわかる!この味は……"六本傷"の料理人達があのお嬢ちゃんに焼いていた時のものより遥かにしっかりと火が通っているッ!焼いている時間はそれよりも短いのにだッ!」
「……っ!まさかっ、あの回転させて焼く調理方法は『火を直に当てて焼く時間を短縮させること』が目的だったのか!?」
「それだけじゃない!刺身だろうとなんだろうと、森羅万象の生肉は鮮度が命!時間短縮によって鮮度も損なわせないのか!」
味の評論家と化した観客+料理人が驚愕の声を次々と上げて行く。
「これだけの料理がこんな状況で作れる料理人なんて聞いたことがない!いったい何者……!?」
料理人の一人がそう呟いたのを聞いて竜胆は思わずニヤリとする。
「おせーてくれよ!アンタいったい何者なんだ!?どこのモンだ!?」
「どこのモンかと聞かれれば……答えて上げるが世の情け。東側"魔王"討伐の"ノーネーム"所属、兼"サウザンドアイズ"運営の総合料理店狐堂がオーナーを務める高町竜胆です!」
その言葉と共に更に観客がざわめく。
「東側の"魔王"討伐の"ノーネーム"ってまさか、今回のギフトゲームをクリアに導いたあの!?」
「いや、待て!それよりも狐堂のオーナーだと!?」
「知っているのかテリー!?」
「むう。間違いない……狐堂とは最近南側にも出回っている新設の料理店のこと。味もかなりよく、値段も味と料理に不釣り合いで利益なんてギリギリ出るか出ないか程度のものという……そのオーナーは"サウザンドアイズ"の協力の下開店にまでこぎ着けた"ノーネーム"の者と……都市伝説だとタカをくくっていたが、まさか真実だったとは……!」
その説明が終えると観客が一斉にハイテンションになる。まさか都市伝説が真実だとはわからなかったことと、その真実のすごさを讃えているのだ。
「ふっ……ヤル気出てきた!俺の中に宇宙キタぜこれ!」
竜胆の調理速度が更に早くなり、亜光速に迫りかねない速さと化した。
「……負けない」
さらに耀の食べる速度もランクアップ。手を振るうだけで肉が消えているようにも見える。
正に一進一退。引かず引かせずの戦いが何分か続いていると、その場の空気を凍らせる声が響いた。
「……フン。なんだこのバカ騒ぎは。"名無し"のクズ共が汚らしく喰い、粗野に調理しているだけではないか」
完全に場の空気は凍結した。それでも竜胆は気にせず自分の料理を続ける。
料理人なんて悪質なクレーマーの一人や二人に一方的に言われることくらい当たり前なのだ。いちいち反応していても終わらない。
だから反応するのは名指しで呼ばれた時と仲間に手を上げる時。それ以外は完全無視を決め込むことにした。
「連中はアレですよ。巨龍を倒して持て囃されている猿共ですよ」
「ああ……例の小僧のコミュニティか。なるほど、どうりで普段から残飯を漁って料理を焦がしそうな貧相な顔をしている」
無視。耀が食べなくなったので自分で食べることにした。
たった今、とりあえずきっかけがあれば殺ろうとも決めた。瞳に若干の朱が入る。
その後も男達は"ノーネーム"を乏し続けた。
曰く、数日もすればまた残飯生活。
曰く、"名無し"に栄光が来る日などない。
曰く、曰く、曰く、曰く、曰く、曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く曰く。
ありとあらゆる言葉で竜胆達を乏しめる。竜胆は俺がオーナーって時点で食べ物に困ることなんてほとんどないのにアホなのか?なんて思っていた。
まあそれでも、いい加減にしないと周りの人も気を悪くするだろうし、それに耀を乏しめるという行為が竜胆にとって許せなかった。
丁度、そんな時。
「そんなことありません!」
「……リリ」
聞き覚えのある……というかほぼ毎日声を聞いていた気がする同士の声が聞こえた。リリはそのまま男達と言い合い、そこで"龍角を持つ鷲獅子"連盟の"二翼"首領とかいうヤツを相手にしていただかなんだか言われていた。
あー。これは手助け必要かな……
俺は現在焼いていた肉を先ほどまでのレアではなく、ウェルダン……焦げる寸前まで焼きリリと言い争いをしていたヤツに投げつける。
「へぇ?それでキミ───うぁっつゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
「あ、すみませーん。お客様。焼き加減を間違えた肉を誤ってそちらに投げつけてしまいましたー」
仕方ないよね。手が滑ったんだし。
「き、貴様……あづぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!??」
「すみませーん。また手が滑ってしまいましたー。謝罪するので許してくださーい」
謝罪、許してとは言いつつも頭を下げることはなくウェルダンミート、しかもほぼ焦げる寸前を丁寧に一口サイズで"二翼"の男達に投げつける。
「というわけで……"二翼"のリーダーさん……お前もさっさと喰え」
竜胆は先ほどまでのニッコリとした表情のまま、たった今完全に焦がした肉をそのままグリフィスと名乗ったリーダーの口の中に直接突っ込んだ。
「ッ……!?ォァ……!!」
竜胆は口の中に突っ込んだ腕を確認すると、唾液で濡れていたことに対して明らかな侮蔑の目で見て、炎で殺菌・消毒する。
「グッ……き、貴様ァ……あろうことかグリフィス様にまで……!」
「悪いか?無料で利益ギリギリの肉を喰わしてやったんだ。むしろ感謝しやがれ」
「"名無し"風情が、つけあがるなよ……!」
「つけあがるなよ……?それはこっちのセリフだ混血種の恥晒しが。他人を見下し悦に入り、あまつさえ食べ物に敬意を払わない……貴様らの態度は食べられるものは食べられて当然という目をしている」
「それのどこが悪い?所詮貴様ら"名無し"はあの愚かな女、サラ=ドルトレイク同様に我々強者に喰われる宿命なのだ!」
竜胆は今の言葉に激しく反応した。
「……サラさんが喰われる?どういうことだ」
「それ、どういうこと?」
耀と竜胆がほぼ同時に声を出した。それを見た"二翼"はここぞとばかりに笑い転げる。
「なんだ……あの女から聞いていないのか?あの女は龍角を折ったことで自らの霊格を激しく磨耗し、今までの強さが嘘のように弱くなってしまったよ!
元々龍の力を見込まれて議長となったのだ。それがなくなればその座から引くのは自明の理よ!」
竜胆は絶句した。一応、彼はサラが龍角を折ってそれを飛鳥に授けていたことは知っている。
だが、そこまでは知らされていなかったのだ。恐らくそこは竜胆が自分が"暴走"したせいと引きずりかねないと危惧していたからなのだろう。
「……訂正しろ」
「何?」
「サラさんが愚かな女と言ったこと……訂正しろよクソ鳥公共。サラさんはお前らクソ鳥共の故郷である"アンダーウッド"を護るために龍角を折ったんだ……俺の責任を、彼女の愚かな行いと言うな……!」
「おいお前、いいかげ───」
グリフィスの近くにいた近衛兵が竜胆に近づくが、彼の言葉は続かなかった。
竜胆が自分の怒りが原因で溢れ出た凍気によって一瞬で氷漬けにされたのだ。
無論、これは手だしにはならない。ただ近づいて来たら凍った。それだけなのだ。
「雉も鳴かずば撃たれまい……クソ鳥。もう一回言うぞ。訂正しろ」
「……誰が"名無し"なんぞに頭を下げるものか!」
グリフィスの言葉に呆れを交えながら竜胆は地面からメダガブリューを掘り出し、刃先をグリフィスに向ける。
「仏の顔も三度まで……これが最後だ。訂正しろ」
身体から溢れ出てきた六枚のメダルをメダガブリューの中に詰め込みながらそう言う。恐らく、彼は自分が何を言おうと向こうの答えは分かり切っていたのだろう。
竜胆の予想通り、グリフィスはそれでも余裕の表情を崩さずにニヤリと笑う。
「そういえば、もう一匹いたな……バカな真似をして己の誇りを手折った者が」
「……なに?」
「有翼の幻獣にとって翼は己の誇りそのもの!王者たるグリフォンならば尚更だ!
ヤツは元気か?"名無し"の猿を助けるために誇りの象徴である翼を失った、愚かで陳腐な我が愚弟は!?」
我が愚弟。グリフォン。翼を失った。
もう、一人しかいなかった。"ノーネーム"の人間……竜胆を助けるために翼を失ったグリフォンなんて、グリーしかいない。
「……死ね。消えろ。生きて帰ってくるな。失せろ。この世から存在を抹消しろ」
『PU・TO・TYRANO・HISSATHU!!!』
竜胆が無造作に腕を振り下ろす。その時───
「やめとき。それはそこの鳥だけやなくて周りも大勢死ぬで。
殺しはしたくないやろ?」
黒い髪をした隻眼の男に腕を掴んで止められた。
竜胆は暫くそのままでいたが、メダガブリューを地面に落とし、それを大地に同化させた。
「すまない。止めてくれて感謝する。
無条件に暴れる力だったから、止め方があまり理解できてなかった」
「まあ、わかりゃええよ。取り敢えず、キミらはちょっと本陣来てや。言いたかないけど取り調べするから」
大暴走してやったぜ!
なお、余談ですが今回の竜胆くんと耀ちゃんさんのバトル、実は魔王襲来より前からこうなる予定でした(笑)
どんだけやねんとツッコまれても文句は言えない。
あと、ここからは少し真面目なお話を。
ここに書くと多少ネタバレるかもしれないので詳しくは書きませんが、活動報告で孤独の狐に関する募集をしています!
是非見て、応募してくれると嬉しいです!