問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
ニコニ○超会議とか言っちゃいけない。
あと、募集の方にご応募が早速二件ありました!
biwanodinさん、シユウ0514さんありがとうございます!
取り敢えず、一件もないという哀しい事態はまぬがれましたww
「………話はよく分かった。この一件は両者不問とする。しかし次に問題を起こしたら強制退去だ。以上」
「ふざけるなッ!サラ議長!コイツらは我らの同士を重症に追い込んだんだぞ!なのに処罰しないとはどういう了見だ!?」
「それはお前たちにも非があるからだ。私に対する侮辱は………まあ、目をつぶってやるとしても」
「……サラさんはそれでいいのか?俺は絶対許さないぞ……そもそも俺達はサラさんが龍角を折ったせいで霊格が減少したなんて聞いてない」
竜胆が怒り狂うグリフィスに呆れながらサラに尋ねる。しかしサラは拒絶するように───
「キミ達には関係のないことだ」
「……確かに、そうだけど……」
サラは押し黙る竜胆を尻目に、再びグリフィスに視線を戻す。
「……しかしグリフィス。彼らに対する侮辱は行き過ぎた名誉毀損だ。決闘を申し込まれたとしても仕方の無いと言える。違うか?」
「確かに、決闘という形式ならば重傷を負っても仕方がない。しかしあの小娘は問答無用で同士に危害を加えたのだぞ!過剰な暴力行為だろうがッ!」
青筋を立てて怒るグリフィス。しかし竜胆の瞳にはその怒りが同士のためではなく、公衆の面前で大っぴらに恥をかいたことに対してであることがはっきりと映っていた。多分、他の面子もそう見えている。いやそうとしか見えない。
というかそもそも、竜胆はあの時"二翼"の者が近づいてきたから凍らせただけと開き直っている。しかもしっかりとあの後は普通に解凍したので多少風邪は催すかもしれないが、氷漬けにされた時間もそう長くないので重症なわけがないと思っているのだが。
「……空気ぶち壊しの時点で恥かきまくりだったことになんで気づかないかな……」
「なんだと貴様!!」
「弱者たる"ノーネーム"を虐げて悦に入る……南側の次期"階層支配者"サマは随分と人望を得る方法をわかってないんだな」
「……このっ……!」
終わりがなさそうな言い争いを繰り広げる二人。サラは呆れながらも二人を止めようとした。
「やめとき二人共。サラちゃん困っとるやろ」
それを止めたのはつい先ほども竜胆を止めた、わざとらしい関西弁を使う隻眼の青年だった。
青年は椅子に座らず壁にもたれかかり、かったるそうな声で呼びかける。
「蛟劉殿……その、200歳にもなってサラちゃんというのは」
「あっはっは!僕の妹と同じこと言うねえ、サラちゃんは」
蛟劉と呼ばれた青年は愉快だと言わんばかりに笑うと、途端に笑うのをやめて二人に視線を送る。
「まぁ、ぶっちゃけた話をすると"ノーネーム"の子らはちょっと過剰防衛気味やな」
「なんですって……!?そもそも貴方は何者なの?これは"ノーネーム"と"二翼"の問題でしょう。だからこそ"龍角を持つ鷲獅子"連盟の議長のサラが仲介しているはずよ」
今まで静聴していた飛鳥が食ってかかるように蛟劉に言う。彼女も心底腹を立てていたようで、それまで竜胆に任せきりで蓄積させていた怒りを爆発させんとしている。
それを見たサラは少しどころではなく焦り、急いで飛鳥を止めようとする。
「ま、待ってくれ飛鳥!この方は亡きドラコ=グライフの御友人で、連盟の御意見番でもある方なんだ」
「……御意見番だと?そんな輩がいるとは初耳だが」
竜胆は人望ないんじゃない?と小さく呟いたが、幸い?にも誰にも聞かれなかった。
そして蛟劉は困ったように頭を掻きながら振袖から蒼海色のギフトカードを取り出した。
「ふ……"覆海大聖"蛟魔王だと!?」
「昔はドラコ君やガロロ君をよく世話したったからなあ。その時の恩を今、一時の宿り木として返してもらってるんよ」
「はたらかない魔王さま!か?」
「キミは少し黙っとろうな狐少女。それと一応御意見番だからニートやないで」
俺男……と竜胆が凹むのは最早お約束である。しかし今回は自分から無意味に首を突っ込みに言ったので誰もフォローはしない。
蛟劉は一旦ごほんと場の空気を元に戻すように咳払いをする。
「巨龍の件については申し開きもせえへんよ。けどな、今回に限ってはあの場で事を終える必要があった」
「なに?」
「あのな、若いの。オマエ何処の誰に喧嘩売ったと思ってるんや?」
「………?何を今更。私は"ノーネーム"に」
「阿呆、オマエはこの子らが何か分かってるんか?サラちゃんのことは問題ない、グリーくんのことも、個人のことなら問題ない。大きな問題は白夜王の同士であるこの子らとグリーくんを侮したことや」
その言葉にグリフィスは言葉を飲み込んで蒼白になった。
「この子らとあの鷲獅子は白夜王の所属するコミュニティの同士やぞ。その同士が侮辱されたと身内贔屓の白夜王が聞いたら───"二翼"は今日明日中に皆殺しやで?」
確かに、その通りだ。グリー個人を乏しめることなら別になんの問題もない。身内の問題とも言える。無論、サラのことなんて"アンダーウッド"を守るためとはいえ、ほぼ自業自得の結果だ。
だが、そのグリーが白夜叉の同士ということなら話が違う。
「最強の"階層支配者"にして太陽の主権を14も持つ御方や……身も蓋もない話を言うと、アンタ……巨龍14体と戦うことになるんやで?」
戦えるわけがない。十六夜だって耀のペガサスの加護を受けた超高速移動で運ばれ、飛鳥が押し留めて、竜胆が巨龍の皮膚をかっさばいた上でしか心臓を潰せなかったのだ。
そんなのが14体。しかもそれに白夜叉本人が加わってくるのだ。
「……とにかく、僕が君らを止めたのはそういう理由や。星霊とか仏様とか、敵に回すもんやないで?敵に回したら最後、旗も残らず滅ぼされるだけなんやから」
哀愁の漂う声音で呟く蛟劉の瞳は、修羅神仏を敵に回した者だけが理解できる色を含んでいた。
グリフィスは不満そうな瞳を向けていたが、それでもこの場は押し留まった。蛟劉の言う事全てが正論だと理解して、舌打ちをしながらその場を退こうとドアへと手を伸ばす。
しかし、二つの声がグリフィスを固める。
「「待てよ馬肉。逃げる気か?」」
「……なに?」
その声の主は竜胆と十六夜のものだった。
「待てよ馬肉。逃げる気か?……ほら。聞こえなかったみたいだからもっかい言ってやった」
「逃げてんじゃねえよ。白夜叉のことなんてそっちの都合じゃねえか。なんでそっちの都合でこっちが譲歩しなきゃならねえんだ」
「お、お二人とも……」
黒ウサギの声が聞こえなかったように十六夜は怒りを露わにし、竜胆は冷たい殺気をグリフィスに向ける。
そんな二人に蛟劉は呆れて二人の肩を掴む。
「あのなぁ、少年少女……仮にも先に暴力振るったのはそっちの方やぞ?」
「だからなんだ。じゃあ言葉の暴力は暴力じゃないのか?」
「言葉の暴力っていうのは直接的な傷を付けず、痣もなければ血も流れない。だがな、それでも心や魂に傷をつけて涙を流させる……俺からしてみればそっちの方が悪質で卑劣だ。
それが10にも満たないガキなら尚更だ」
二人の剣幕にはさしもの"ノーネーム"の同士も驚いた。
確かに竜胆は元々家族に対して自分の命を簡単に差し出せるくらいのお人好しで、家族を傷つける者には問答無用で殺しに行きかねないが、普段から軽薄な笑いが張り付いているような十六夜が怒っていることになりより驚いている。
「白夜叉が牙をむくとしたら、それは同じ口上のはずだ。……違うか?」
「……なるほど。一理ある」
「なっ!?」
「とはいえ、今は収穫祭の真っ最中。他の参加者も楽しんどるしここは一つ、箱庭らしくギフトゲームで決着をつけたらどうや?」
「異論はない……迷惑かけるよりはいいし、そもそも俺達もギフトゲームに出るつもりだったからな……そう、"ヒッポカンプの騎手"で決着つけようか。
一番デカいゲームで大恥かかせてやる」
「敗者は壇上で土下座だな───異論はあるか?」
「ふ、ふん。今から恥を掻く準備でもしておくのだな」
「こっちのセリフだ馬肉。お前が抜いた刃は収める鞘のない諸刃だ。お前が虚仮にしたグリーの傷は、俺の手足と竜胆の意識……そして消えたタマモの代償だ。その代償は必ず支払ってもらう」
グリフィスは舌打ちをして部屋を退出した。その背を見守った後、蛟劉は疲れたように大きくため息をついた。
「すまんかったな、少年少女。キミらの言うことは一々ごもっともや。よく耐えてくれたな」
「別にアンタのためじゃない……それに、俺にはあの馬肉よりも今は許せないことが一つある」
「なんや?言える問題なら言ってみ?一応僕も御意見番やし、相談になら乗れるで?」
「そうか……なら、遠慮なく言わせてもらうぞ……!」
ピキピキと青筋を立てて蛟劉の胸ぐらを掴む。
「俺は男だッ!!!」
「……へ?」
「馬肉がいたから黙って聞いてりゃ合計三回も少女言いやがって!!口調で気づけ蛇!!」
「……ゴメン。ホンマゴメン」
「ゴメンで済むなら裁判なんていらねえよ!」
それから三分くらい竜胆が理不尽なくらい怒ると、急に表情が元に戻った。
「スッキリした。ありがとな御意見番サン」
「いやこれ御意見番の仕事やないと……ゴメンなんでもない」
竜胆がニッコリと笑ったので蛟劉は思わず謝る。
「……まあいい。それよりも蛟魔王か。西遊記にはアンタの記述は他の四人の大聖に比べると如何せん少ない。
悪いと思うのなら是非武勇伝を聞かせてもらいたいな」
「………え?それはちょっと」
「ああそうか……俺は女なのか……女だったらこんな辱めを受けた以上はもうお嫁に行けないし、辱めを与えた蛟魔王様に嫁ぐしかないなぁ……」
「……勘弁してくれへんかな、それは」
「じゃあ聞かせろ」
「私も聞かせてほしいわ。私も西遊記くらいは知っているから、伝記と事実がどれくらい同じなのか知りたいわ」
「全くだぜ。竜胆の言う通りアンタの記述はどこをどう探しても見つからないからな。すごく興味ある」
「YES!そういうことなら黒ウサギも聞きたいのデスよ!」
「あー、いやいや、年寄りの昔話なんてそんな」
「私も聞きたいぞーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!」
突然、そんな声が壁の奥から聞こえた。
次の瞬間、壁が物理的に壊されてそのままそこにいた蛟劉が吹っ飛ばされる。
「のわぁーーーーーっ!?」
地面もえぐれたせいで埃が巻き上がる。蛟劉を下に仁王立ちしているしている人影は小さく、ジンより少し大きいか小さいか程度のものだった。
「……このテンションにこの声、まさか、あのギフトゲームの時に突然乱入して"バロールの死眼"を壊した御方デスか!?」
黒ウサギがビックリしたように声を出す。
だがしかし、埃が晴れた時に一番驚愕したのは他でもない、竜胆だった。
「……なっ、なななな」
「おっ!ようやく会えた!やっほーリン!久しぶり!
おや、どうしたねその豆鉄砲がハト食ったような目は。もしかして私のことわかんない?リンは変わったね!男子は三日合わせて舌目して見よって言うしね!」
「……刮目だろ。それとハトが豆鉄砲食っただ。お姉……」
はい!?と全員が竜胆とお姉と言われた少女を見比べる。
……確かに、よーく見るとそれとなく似ている。だが待て。驚くような幼児体型なのにお姉と呼ばれたのだ。
「覚えていてくれてサンクスだよマイブラザー!その通り、私こそがキミの最愛のお姉ちゃん、高町鈴蘭改め、鈴蘭=T=イグニファトゥスのお帰りだよ!」
なんとずっと前から存在を示唆されていたのは竜胆くんの死んだお姉ちゃんでした!
実は二章の最後に出てきたあの人……あれがこの残姉ちゃんです。あの頃の彼女はまだミステリアスな威厳があった……