問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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孤独の狐募集の結果を出しました!結果は活動報告の方でお知らせしていますので、見ていってくれると嬉しい……と思います!




三話 幽霊おねーちゃんと御狐おとーと

「はぁ……キミが噂に聞く、"ウィル・オ・ウィスプ"の"獄炎の使者"だったのか……だがしかし、噂に聞くよりは……」

 

サラが突然壁を吹っ飛ばして現れた鈴蘭を見ながら呟いている。

 

「?」

 

「なんとも……小さな身体をしているな……」

 

「そんなこと言わないでほしいでゴザルよ!11で死んだんだから仕方ないと思われ!」

 

「お姉……俺達は異性一卵性双生児なんだからどーせそこまで伸びないだろ?」

 

異性一卵性双生児、それは一卵性双生児は普通産まれないはずの異性の双子である。

 

生物学上ではごく稀にだが事例はあり、異性一卵性双生児にはその性質上、性的、身体的になんらかの障害があるのだが……この双子の場合はどうやら"異常に小さい体躯"と"異常に女らしい身体つきと思考"を持ってしまったようだ。前者は異性一卵性双生児では多めの事例なのだが。

 

「……あー。それよりも、弁償してくれないかな?流石に」

 

サラは鈴蘭が壊した壁を指差す。鈴蘭はてへぺろ!とでも言う顔で竜胆を見た。

 

「はぁ……金遣い荒いお姉のことだ。もう全部使ったんだろ?」

 

「いやー、ごめんね?」

 

「いいよ別に……それでいつも俺や父さん達が苦労してただけだし」

 

明らかにだけではない。竜胆の若干天然な性格設計にはよもやこの姉のフリーダムぶりが関係しているのではないかと思わされる。

 

「……っていうか、お姉はもう5年前に死んだんだろ?俺目の前で死んでるの見たけど、なんでここに……」

 

「ははーん、リンやわかっとらんですなぁ。弟が心配で幽霊がやって来た!なんて言ったら?」

 

「ない。そんなんだったら今頃来るわけないし、そもそもお姉は北側最強の一角なんだろ?」

 

「んまそうなんだけどね!リンは理解が良くて助かるよ!」

 

さて……どこから話したものか、と鈴蘭は態とらしく考える。

 

「そーだね。まずは一回死んだ時から始めよっか。うーん……リンからすれば五年なんだろうけど、私からすればまだ三年くらい前かな……まあ私もなんで死んだのか、その辺の記憶が曖昧なんだけど」

 

◆◇◆

 

熱い。熱い熱い熱い。苦しい。炎が身体にまとわりつく。

 

死の寸前に鈴蘭が感じたのは、そんな感情だった。

 

どうしてこうなっているのか。誰がこんなことをしたのか。あるいは……なにがこうしたのか。その全てがわからない。動機も、炎も、そして……その誰かなんているのかと。

 

炎のせいで陽炎のように揺らめく視界の中で鈴蘭はなんとか家族だった人達を見つけた。

 

母は、機械の身体が剥き出しになってよくわからない鋭利なものが突き刺さっている。

 

父は、右の身体が始めからなかったかのように傷もなく消えている。

 

兄と姉は、互いを守り合っていたかのように寄り添って動かない。

 

下の双子は、外傷一つなく、まるで身体の栄養が全て消えてしまったように朽ちている。

 

……あれ?双子の弟は?私の……私の弟は?

 

死という極限に近い状況の中で鈴蘭はふと思った。

 

いない。跡形もなく死んでしまったのか、あるいは……まだ、生きているのか。

 

後者だったら嬉しいな、と鈴蘭は思いながら炎に焼かれながら、焼けただれない身体からその魂を切り離そうとしていた。

 

丁度、その時だった。

 

「お姉ちゃん!」

 

聞き覚えのある声だ。そう……丁度今、彼についての考え事をしていた。

 

生きてたんだ。よかった……

 

鈴蘭は動かない表情から笑みを作った……つもりだ。

 

「お姉ちゃん!?どうしたの、これ……お母さん達、皆……」

 

「……………リ、…………ン…………」

 

なんとか、なんとかだが声を振り絞ることができた。

 

よかった。まだ、声は届いてる。

 

「お姉ちゃん!しっかりして!死なないでよ!?」

 

「……生きて、て…………よか、った……………」

 

「なんで僕の心配してるんだよ!?自分の心配してよ!」

 

竜胆は嘘だと言うように姉の身体を揺する。だが、姉の身体はほとんど糸が切れかけているように動いてくれない。

 

「……僕なの?僕のこの身体のせいなの!?」

 

「…………違う、よ。リンはなにも、悪くない…………」

 

鈴蘭は消えかかっている命の灯火の中、全てを振り絞って声を出す。

 

「…………リ…………ン…………」

 

「……もういいよ。喋らないでよ。助かるから、喋らないでよ!」

 

「生きて、て……くれて……………ありが、と」

 

もう、それから鈴蘭が言葉を発することはなかった。

 

「お姉……ちゃん?お姉ちゃん……お姉ちゃん?お……お姉ぇ……!!僕は……俺は……どうしたらいいんだよ……!?」

 

竜胆の慟哭は、それから彼が忽然と消えるまで続いた。

 

◆◇◆

 

……あれ?私、死んだんじゃなかったっけ?

 

というか、ここどこなんだろ……?

 

さっきまでの死んじゃいそうな熱い炎とは違う。命をくれるような……そんな、優しい炎。そんな感じの暖かさが包んでるような……そんな感じがする。

 

この炎……誰の炎?

 

「……貴女の命、とても生への縋りがあった。まだ、なにもできていない悔恨の炎……貴女はまだ、生きていないといけない」

 

……誰?誰の炎?

 

「私は、ウィラ。ウィラ=ザ=イグニファトゥス」

 

私を包んでいた炎の主は、とても柔らかい炎、そんな感じだった。

 

◆◇◆

 

「まーそうやってウィラっちのおかげで幽霊として生きるようになって、それから色々あって暴れ回ってたらあら不思議!"ウィル・オ・ウィスプ"の外じゃウィラっちの最強の右腕だの、"獄炎の使者"だの呼ばれてたんだよねー!

私すごくね?かっこよくね?」

 

「幽霊として生きてたっていうのには驚いたけどすごくもなければかっこよくもない」

 

「つれないなーリン。昔はあんなに純真無垢だったのに」

 

「昔を掘り返すな。今は今だろ」

 

「えー。昔は『おねーちゃーん』って甘えてきてたのに」

 

「どんだけ昔だ!」

 

「五年前。私からすれば三年前」

 

「ほほう……それはそれは」

 

「……おい、十六夜。その言葉はどういうつもりだ」

 

「いや、春日部とギフトゲームの作戦立てに行く時にいいネタができたなー、なんて」

 

「貴様ァ……銀河眼、じゃなくて、太陽神の神格の餌食にしてくれる……!」

 

「ははーん?春日部に言うなってかァ?言わないおいてやるよぉ!」

 

「(無言の手刀)」

 

ガシッ!

 

「やめろミザ……リン」

 

「くぅっ……次は止めない!」

 

「そりゃどーも」

 

そんなギャグのような一連の動作から気を取り直す。

 

「……だったら勝負だ。今回の"ヒッポカンプの騎手"、俺達四人で出るつもりだったギフトゲーム、俺は騎手としてお前らに勝つ!勝ったら耀にそのこと言うな!」

 

「……いいぜ。じゃあこっちが勝ったらお前の箱庭の知り合い全員にお前のシスコンを公表する」

 

明らかに割りに合ってない。だがしかし、竜胆からすれば耀にだけは絶対に知られたくないので、頷いている。

 

そもそも、耀絡みになった竜胆がマトモな思考をしているかさえ怪しい。ついさっきだって謎のはっちゃけをしたのだ。

 

「……それでいいぜ……お姉、手伝ってくれ」

 

「えー。私的にはリンのお友達皆に色んなリンを知ってほしいのになー」

 

「誰のせいでこんなことになってると思ってる!?いいから手伝え!」

 

半分は自業自得なのは伏せておく。

 

「さって……となると、他にサポーターやってくれる人を探さないとな……」

 

竜胆は鈴蘭の首根っこを掴んでサラに修理代を支払い、大樹から蛟劉の件なんて忘れたように跳び降りた。






こうして狐くんは苦労人へなっていく……

因みに竜胆くんはおねーちゃんが現れたことでちょっと今までセーブしていたツッコミ役の本能がちょちょいと滲み出ています。多分中二病時代よりもツッコミの言葉が行為も伴いそうで凶悪です。

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