問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
例の募集に応募してくれた皆様(三人)ありがとうございます!今回から皆様(三人)が考えたオリジナルキャラを登場させて行きます!
「さて……勢いよく飛び出してみたものの、アテがあるわけでもないしな……」
「えー。アテなかったの?リンってば、考えてるように見えてお茶目さんだなー」
「うるさいな。そもそもお姉が余計なこと言わなきゃこんなことにはならなかったんだよ」
「そーやって人のせーにするのよくないと思います!あ、今私幽霊か!」
「間違いなく変なこと言ったお姉のせいだよ!船に突っ込んで幽閉するぞ!」
「やめてー!乗り物だけは勘弁してー!酔っちゃうから!ウォータースライダーですら5秒で酔っちゃうから!」
夫婦漫才を見なくなったと思ったら姉弟漫才を始めてしまった。
相変わらず調子狂わされるな……と竜胆は思いつつももう会えないと思っていた家族と再会することができたことには内心すごく喜んでいる。
実はこうやって姉を連れ回しているのも、都合のいい口実ができたから久々に二人とも炎を使うだけに、姉弟水入らずで色々話そうと思っていたのだ。
だが、残念なことに竜胆は元の世界の思い出を家族が死んで以降マトモに作っていなかったのだ。話すテーマなんて箱庭のことでしかない。
「あ!ねえねえリン!すっごい可愛い服ある!」
「買わないからな」
「ぅえー!?」
「そもそもお姉、コッチ来てから何着買ったんだ?」
「えーっと、ギフトゲームで元の世界より四倍くらい稼げたから……8000着?」
「買い過ぎだアホお姉!そんな着もしない服に金掛けてるから肝心な時に金がないんだろ!」
「しかしですなーリンや。やはり洋服の買い物はやめられないのですよ!ほら、この服とか絶対リンに似合ってるって!」
「完全に女物じゃねーか!お姉まで俺を女扱いする気か!?」
「うるさいきょぬー男子!全く色々と全く育たなかった上に幽霊になって成長の見込みが消えた私の双子とは到底思えぬ!」
わーきゃーわーきゃーとアホな姉と生真面目すぎてツンデレな弟。
そんな二人を、一人の少女が見つめていた。
「……じー」
だがしかし、そこは視線やら気配やらに人一倍敏感な動物的本能の塊の竜胆。彼からすれば見ていますよと言っているようなものだった。
「……おい、誰だ」
「んにゃ?どしたの、リン」
突然口論をやめた竜胆に鈴蘭はん?と竜胆を見る。
「誰かが俺達を見てる。意図的に……それなりの距離から」
「誰がどうやって?なんのために?」
「んなの俺が知るわけないだろ……そこか」
竜胆が黒翼を展開して飛び上がる。迷いは微塵も感じられないところから彼がよほど暇なのがうかがい知れる。
「あー!逃げたなリン!待てー!」
鈴蘭も竜胆の行動に勘違いしながらなんかよくわからない力で空を飛ぶ。
飛び始めて30秒。竜胆は壊れかけの民家のところで止まった。
「おい、ここにいる奴、出て来い。出てこないと家ごと燃やすぞ」
竜胆の声が出てから10数秒。誰も出てこないので焼き払おうかと思った、その矢先だった。
「………」
「……女?」
一人の少女が信じられないものを見るような目で竜胆の前に現れた。
「お前か?さっきからジロジロと俺達のことを見ていたヤツは」
「───会えた」
「……は?」
「よーやく会えたーーーーーーーーー!!!!」
「は?いぃぃぃいいいい!?」
突然少女に飛びつかれるように抱きつかれた。なにがどうなっているのか、竜胆には全くわからない。
「思ってた通りだ!肌スベスベモッチモチ!ツンツンしてそうな目つき!狼狽えた時の紅い顔!
全部、全部可愛い!パーフェクト!ストライクボールド真ん中!」
「こんの、はな、せ……!HA☆NA☆SE!」
「ダメ、離しません!前夜祭の時から気になってたけど、やっぱり遠くから見たのより実物の方が何倍も可愛い!」
「ぜ、前夜祭からだと!?前夜祭ったら、俺ほとんど外出てないぞ!」
「偶然見つけたの!そして思った!ああ、この子は私の天使だって!正に私に愛でられるために現れたような!私のセンサーに引っかかるどころかド真ん中を撃ち抜いていったような?」
「知る、かぁぁあああ……!離れ、ろ……!息が切れるぅ……!」
「離さないってばぁ……!」
「うごごごごごご……………!」
「ふぬぬぬぬぬぬ……………!」
互いが離れろ、離すまいと押し込み、引き寄せ……かなり不毛である。これをやっているのが見た目美少女の少年と美少女だからそこまで酷くは映っていないが。
「ぅ私もむぁぜろぉおおおおおーーーーー!!!」
「「ぬわーーーっっ!」」
ようやく追いついた鈴蘭は竜胆が見知らぬ少女と遊んでいる(鈴蘭視点)のを目撃し、自分も混ぜろと勢いよく突っ込んで行く。
はっきり言って、カオス以外の何者でもなかった。
◆◇◆
「ごめんなさい!ごめんなさい!ホントにごめんなさい!」
「ごめんですむなら裁判はいらない……と、言いたいところなんだが……」
「ホントにごめんなさい……私、可愛いものを見るとどうも我を失って抱きつきに行く性分で……」
「迷惑な性分だなおい」
「竜胆くんは今まで会った子の中で一番可愛かったです!ホントに男の子?」
なぜか若干鼻息荒くして意気込む少女。竜胆が出会う女性にマトモな人が少ないのはなぜだろうか。
「男だよ男でわるいかチクショー!」
竜胆が泣きながら叫ぶ。正直よくもまあ毎度毎度同じ反応ばかりしていて飽きないなと思うほどだ。
「あっ、自己紹介が遅れてた……私はセック・ズルグ。竜胆くんは気軽にセックって呼んでほしい……かな」
「ああ。わかった、ズルグ」
「セックって呼んでほしいかな?」
「よろしく、ズルグ」
「セックって呼んでほしいかな?」
「ところでズルグ」
「り、竜胆くんが……いぢめてきた……!」
「こらーリン!女を泣かせる男はハードボイルドじゃないぞー!」
「いや、別にハードボイルド心がけてるわけじゃないし……」
竜胆がよくわからない怒り方をする姉にため息をつきながら頭を抱える。
───やっぱり姉弟水入らずなんて思うんじゃなかった……でも、あそこに残しといて変なことあいつらに吹き込んでも困るしな……───
竜胆はめんどくさそうに立ち上がり、改めてセックを見る。
「わかったよ……セック。ほら、これでいいだろ?」
「やったー!竜胆くんに名前で呼ばれた!」
「だから抱きつくな暑い離れろ……!無駄に力強い!」
数分後
「ごめんなさい」
「よろしい。ところでセック。聞きたいこと……というより興味があることが一つある」
「なんですか?竜胆くんの疑問で私に答えれることなら、答えられる範囲で答えますよ?」
竜胆は壊れた廃墟を指差しながら聞く。
「お前……見ていた、と言ったな。こんな遠くもいいところの距離でどう見ていた?」
「あー……それですか、私のギフトの応用です。"ローゲ・フィアンマ"っていう炎を操るギフト」
「また火属性かよ!私達と被ってる!」
「うるさいぜ。少し黙ってろお姉。質問してるのは俺だ。……で、炎でどうやってそんなことができるんだ?」
セックは自慢気にふふんと笑い、右手に小さな炎を作る。
「それは、ほら……こーやって陽炎を発生させて、密度を上げて蜃気楼にするんです」
「……なるほど。蜃気楼の視覚屈折を起こしているのか」
「竜胆くんは勤勉ですね。その通り。蜃気楼で視覚を弄って目の前にキミがいるように錯覚させていたんですよ」
「器用なことを……」
「すっげー!私なんて炎のコントロールが難しいギフトだからバンバン燃費も気にせず撃ちまくることしかできんっちゅーのに!」
姉弟二人がそれぞれ賞賛の言葉を贈る。セックはちょっと嬉しそうにしている。
そして、それだけの芸当ができるのなら、彼女をサポーターにしてもいいんじゃないかと竜胆も思わされる。
「……あのさ、セック。明後日なにも予定とかないか?」
「ないけど……なんで?はっ、まさか可愛い竜胆くんからデートのお誘い?」
「ちげーよ。お前、俺のアホ従者に代わって脳髄カチ割ってやろーか」
「なんだ違うのか……」
露骨に残念そうな顔をするセック。竜胆は話が全然進まないことにため息をつきながら、さっさと本題に戻そうとする。
「俺、明後日の"ヒッポカンプの騎手"に出場するんだよ。そのサポーターになってくれるヤツ探してて……セックがよければサポーター、やってくれないか?」
竜胆が恥ずかしそうに目を逸らしながらそう質問する。なぜ恥ずかしそうにするのかはよくわからない。
「……やっぱりデートのお誘いじゃないですか……」
「だから、どこが……?」
「うん、いいよ!私、竜胆くんのサポーターになるよ!」
「まあ……いいや。ありがとう」
こうして、二人目のサポーターを獲得。あとは一人だ。
「いやーははー。竜胆くんとチーム組めるなんて夢のようだよ。夢なら竜胆くんにちゅーしてもいいかな?」
「いいわけねーだろジュラルミン製鉄板で頭ぶん殴るぞ」
落ち着いた時と気分が高揚している時の竜胆への接し方の差から一抹どころではない不安を感じてはいるが。
というわけでbiwanosinさん考案のセックちゃんでした!ちゃんとbiwanosinさんが思い描いたセックちゃんになっていたか超心配です!
まあそれより、この時点で水のギフトゲームにメイン炎三人というありえないチームなんですけど!やっぱり火属性は火種が集って強くなるの?
いや、こうなったのも姉弟揃って火属性……しかも弟は万能型からメイン炎に変えた甲殻類が悪いんですけどね!