問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ? 作:エステバリス
ちょっと短め。
実はセックちゃんもエイーダちゃんも本格的に活躍するのはギフトゲーム後の一悶着だったり。
『現在、トップ集団は五頭! トップは"ウィル・オ・ウィスプ"のよりフェイス・レス! 二番手並びに三番手は"ノーネーム"より久遠飛鳥! 以下三番手、四番手は"二翼"の騎手達が猛追、五番手は二番手と同じく"ノーネーム"の高町竜胆が追って、それ以降は"二翼"の騎手達が続く状況です!』
「五番手か……まあ上々ってところか……」
『もうしわけありません……若い馬ならばもっと速く走れたのですが……』
「そう言うなよカムプスさん……俺から頼んだことなんだ。それに、カムプスさんの走りは丁寧だから現状落馬の心配はないよ」
『はい。私も走れる限り全力を尽くします』
竜胆とカムプスは軽く相槌を交わし、少しだけ加速する。
そして竜胆のすぐそばで空を駆ける鈴蘭、セックと水上を走るエイーダに目を向ける。
「俺は一人で大丈夫だ。お姉達は手筈通りに頼む」
「あいよ!おねーちゃんがんばっちゃうぜよ!」
「竜胆くんの期待に応えれるように頑張るよ!あと帰ったら揉ませて!」
「断る」
「うむ、そこの乳揉み魔は儂がなんとか綱を握っておこう。こうなった以上は楽しむだけ楽しもうぞ……ほれ、お前達も笑っておけ」
「ん。じゃ解散!」
途中の別れ道でセックとエイーダは右、鈴蘭は左、竜胆は真ん中の道を突っ切る。
「さぁて……真ん中の選択肢……飛鳥とフェイスが通った道は吉とくるか凶とくるか……」
竜胆はカムプスの丁寧な走りに身を任せて行った。
◆◇◆
『先日の遺恨を晴らしに来たか───小娘!』
某所、十六夜と別れた(勝手に)耀は光翼馬(ペガサス)の奇跡を宿した具足を身につけ、複数のグリフォンの軍勢と対峙する。
その中には一頭、他の者よりも格上の力を感じるピッポグリフがいる。どうやら今回、グリフィスはサポーターに回っているようだ。
「……別に、遺恨なんてないし。戦略的に潰しに来ただけだし」
『ッ、何処までも舐めてくれるな……!』
グリフィスの苛立ちに呼応するように雷が吹き荒れる。
しかし耀の言っていることも半分は本当だ。
「貴方達は、此処から一歩も行かせない」
『舐めるなよ、小娘ぇぇええええええええええええええええええええええ!!!』
怒りの雷が吹き荒れ、光の量子が飛び散る。
その光と雷のぶつかり合いはまるで、グリフィスと耀のぶつかり合いのように見える。
ならば、次の瞬間の出来事も、実際の光景に移し替えることもできるだろう。
雷と光との間に、一筋の炎がぶつかって来た。
『「ッ!?」』
思わず二人は炎が飛んできた方向に目を向ける。
ピッポグリフのグリフィスと獣の力を使える耀だからこそ、その炎を撃ち出した主の姿を視認できた。
ただの一般人にはその距離からは全く見えなかったであろう、そのような距離だ。
「やっぱり超長距離射撃は集中力がいるね……一直線の高速砲でもロックオンまでに数秒かかっちゃうや」
射撃の主は、耀がつい先程初めて出会った、竜胆の双子の姉、鈴蘭=T=イグニファトゥスであった。
「ごめんネ耀ちゃん……あんまり手加減できないからさ……ケガしないでよね、リンの気に入った子だからさ……!」
つい先程までのおちゃらけた素振りとは違う、本当に集中しているのだと嫌でも解る、そんな鬼神のような表情だった。
鈴蘭は両手で構えた鉄製の杖のグリップと本体をまるで狙撃銃でも握るような構えをしている。
「リンは"二翼"のプレイヤーがいたら容赦無く撃ってくれって言ってたからね……狙い撃つよ」
鉄製杖のスコープから送られる、その視点からのデータを基に確実にグリフィスに狙いを定める。
「"冥界の獄炎"……SHOT」
その一言と共に正確無比にグリフィスに高速砲が飛んでくる。
グリフィスはなんとか射撃を躱して周りの"二翼"の同志に向かって叫ぶ。
『何をしている!?あの小娘を速く止めろ!近づけばさしたる脅威ではない!』
グリフィスの言葉で部下達は鈴蘭の下へと向かって行く。
「……そう、どんどん来て……大漁旗掲げるよ。"二翼"の部下達は私が引き付けるから、耀ちゃんは馬肉とタイマン……がんばって」
ニコリと見た目と不相応な笑みを浮かべると、杖のカタチを二丁の拳銃型に変える。
そして鈴蘭はまるでステップでも刻むかのように、メチャクチャに先程よりも出力も飛距離も少ない炎を撃ち出す。
『血迷ったか!?』
"二翼"の獣達は鈴蘭には聞こえない声を出す。
だがしかし、鈴蘭には獣達が発した言葉をまるで理解したかのように首を横に振る。
「やっぱり鳥ちゃん達は鳥籠に……だよね」
獣達が接近してきたその時、鈴蘭はもうひとつの仕掛けを動かす。
「"魔導王"……スクラッパーフレア!」
全員がそこを通過した瞬間、獣達の両真横から獄炎がまるでスクラッパーのように押しつぶして来た。
「「「グギャアアアァァァァアアアアアアアァァ!!?」」」
「殺しはご法度だからね。死なない程度には燃やしとくよ」
鈴蘭の呟きは、耀がグリフィスを叩き潰す音に掻き消された。
◆◇◆
「流石箱庭……!山の山頂に海があるとは思わなかったぜ!」
箱庭、折り返し地点にて、とある方法でフェイス・レスよりも速く折り返し地点に辿り着いた十六夜と飛鳥は取り敢えずと言った風にひと段落する。
「十六夜くん、はしゃぐのもいいけどゲームを優先しましょう。竜胆くんや彼女に追いつかれたらなにをされるかわからないわ」
飛鳥の言葉に渋々といった様子で山河を駆け下りる。
そして、その瞬間だった。
「十六夜くん!彼女が来たわ!」
「───もう、か?」
十六夜が振り向くと、そこには銀髪の仮面騎士、フェイス・レスがいた。
「……やはり、先に辿り着いたのは貴方達でしたか。どうやら狐巫女は若い馬よりも、経験のある老馬を選んでいたようなので……先を行く者がいるとすれば貴方達しかあり得ませんね」
「そりゃどうも……だな」
フェイス・レスは十六夜が防ぐ前に蛇腹剣で折り返し地点の証拠物の果実を取ると、一転して緊迫した様子になる。
互いに探り合っている……どちらかが背中を向けたその瞬間、それはその方の敗北を意味する。
幸いにも滝はフェイス・レスの後ろ側にあるが、仮にそこから飛び降りたとしても無防備状態のところを十六夜に殴られておじゃんだろう。
互いが一歩も動けない、飛鳥も下手に動いたらやられかねない状況の中で、現状に一つの変化が起こった。
津波、そう形容すればいいだろうか。
まるでそれは、地面から響くかのような音。
その自称にフェイス・レスはまさかそんなこと、しかしそれは……といったような驚愕した面持ちになる。
それこそ、十六夜がその地響きに異様ななにかを感じ取っていなければそのまま叩き落とされていたであろうほどに。
「……まさか、こんなギフトゲームに……!"枯れ木の流木"とさえ揶揄されている彼が……!?」
フェイス・レスの呟きと共に、その主は現れた。
「いやぁ、遅れてもうた!折角白夜王に無理言って入れさせてもらったのにまさか寝過ごすなんてなぁ!
……でも、キミらがチンタラしてくれてたおかげで充分間に合ったわ。余計な荷物込みでな」
その名は、蛟魔王、覆海大聖、真なる名を、蛟劉。
「やっぱ、真ん中は正直者が通るわけなんてないな……直前で気づいてヒッポカンプの尻尾掴んでついて行ってよかったよ……無事か?カムプスさん」
『え、ええ……なんとか……』
そして、孤独の狐……高町竜胆。
"アンダーウッド"の戦いは、後半戦へと差し掛かる……
そういえば一つだけ言いたいことが……お気に入り数がいつもより増えてた。貴様らそんなにきょぬーショタが好きか。
ならばもっとサービスしてやろうじゃないか!御期待しているがいいさ!