問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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走れメロ……竜胆くん。自分の誇りのために。




九話 走れリンドス

「よお十六夜……遅れたよ」

 

「ヘッ、速くしねえと春日部どころかお前の知り合い全員にシスコンが知れ渡っちまうぜ?」

 

「それだけは勘弁願いたい……な」

 

テッペンではそんな会話が繰り広げられていた。

 

だがしかし、そんな軽口を叩き合ってはいるが、目の前にいる存在には流石にそんなことは言えない。

 

飛鳥とフェイスは逃げた。飛鳥に関しては死を覚悟した逃亡だが、竜胆と十六夜が作った一瞬の隙をついて逃げたのだ。

 

「カムプスさん、危ないから離れててくれ……せめて、俺達の戦いの余波が届かないところまで」

 

『……わかりました。無事を祈ります』

 

「了解だ……」

 

カムプスが無事な場所まで離れたところで竜胆は右手にメダガブリューを、左手にメロンを象った盾を装備し、足場を凍らせる。

 

「十六夜……悔しいが、ここは共闘するしかない」

 

「……ヤハハ。弱気じゃねえか竜胆」

 

「そういうお前も笑い声に軽薄さがないぞ……」

 

「作戦会議中みたいやけど、攻めてもええかな?」

 

「「ッ!」」

 

竜胆と十六夜が一口二口叩き合っていると、二人の胸元にまで蛟劉は接近してきた。

 

「ぐっ───」

 

「くっ……!」

 

十六夜は両腕で、竜胆は盾で拳を受け止める。だが次の瞬間、蛟劉は竜胆に向けて左足でハイキックを仕掛けてきた。

 

左腕が大きな盾で動きを阻害されているからという判断だろう。

 

「タジャスピナー!」

 

竜胆は咄嗟にメダガブリューを捨て、右腕に不死鳥を象った赤い盾を呼ぶ。

 

「なるほど……なかなかバリエーションが豊富なんやね」

 

「お褒めに預かり光栄……だ!」

 

竜胆は両腕に力を込め、蛟劉の攻撃を弾く。

 

「目隠し代わりにくらっとけ!」

 

竜胆は右腕のタジャスピナーから複数のメダル状の炎を放つ。しかし蛟劉はこれを周囲の水を操って軽々と打ち消す。

 

「まだだ!」

 

竜胆は更に左腕の盾、メロンディフェンダーを弧を描くように回す。メロンディフェンダーは水を裂き、蛟劉に肉薄する。

 

「んな小細工で倒れるわけないやろ」

 

蛟劉は左手でメロンディフェンダーを後方に弾き飛ばす。

 

暫く見当違いの方向をメロンディフェンダーは周り、竜胆の元へ戻ってくるが、蛟劉が竜胆に一瞬気を取られた時、今度は十六夜が蛟劉に肉薄して拳を突き出す。

 

「……確かにこの拳は天賦の才や。まったく恐ろしい……せやけど、それもただなにも考えずに使うだけやったら、ギフトが泣くだけや。

そこの狐巫女の少年みたいに上手く立ち回ってぇな」

 

蛟劉は十六夜の拳を掴み、右腕を構える。

 

「この一回はその授業料や。殺しはご法度やから、死ぬんやないで───」

 

蛟劉の拳が十六夜に突き刺さる。十六夜は激しい嘔吐感と痛みを受け、それでもなお笑いながらヘッドバットを喰らわせる。

 

「ッ───」

 

「ざまぁみやがれってんだ……!」

 

「バナスピアー!」

 

十六夜がヘッドバットの衝撃で蛟劉から離れるのと同時に竜胆は黄色い槍を蛟劉に突き刺し、その手を離す。

 

「ドンカチ!マンゴーパニッシャー!」

 

更に右手に片手持ちハンマーと巨大なハンマーを呼び、ドンカチで槍を叩き、マンゴーパニッシャーでそのまま蛟劉を殴る。

 

しかし、蛟劉はその一撃を受けても吹っ飛ぶどころかまったく動かなかった。

 

「ええコンビネーションや……キミは状況をよく弁えとる……だけど如何せん、少年よりもパワーが劣っとるで!」

 

「がっ───!」

 

蛟劉が強い水圧を含んだ水を纏った拳で竜胆を殴る。

 

全身が水に浸かったわけではないから、これは落馬ではない。

 

蛟劉の拳をマトモに受けた竜胆は海の中に落ちそうになるが、間一髪で氷のスロープを作り出し、立て直す。

 

「怪物かよ……俺か十六夜じゃなかったら身体中一切合切使い物にならなくなってたぞ……!」

 

「キミらだからこそ、や」

 

「言ってくれる……!」

 

竜胆はチイッ、と舌打ちをしながら、ニヤリと笑う。

 

「けど、もうタイムリミットだな……悪いな十六夜、あとは任せた!」

 

「は?後は任せたって……どういうことだオイ!」

 

「言葉の通りの意味だ……よ!」

 

竜胆は氷の上を走り、滝の方へと飛び降りる。

 

「て、テメェ!逃げやがったな!ってか果実どうした!」

 

「んなもん最初にメロンディフェンダー投げた時に採ってあんだよ!」

 

竜胆は右手にいつの間にか果実を持っていた。

 

確かに、メロンディフェンダーが帰ってくるまでにそれなりの時間がかかっていたが、まさかそんなことをしていたとは。

 

「や、やりやがったな!」

 

「ここで"覆海大聖"と戦うのも面白いんだが、生憎負けられない戦いなんだよ!お前があんなこと言わなきゃしっかり戦ってたさ!」

 

竜胆は子供っぽくあっかんべ、としながら落下して行った。

 

◆◇◆

 

そして落下中、竜胆はおもむろに手を伸ばす。

 

「さて……作戦開始だ、セック、エイーダ」

 

「竜胆くん!予定通りだよ!」

 

竜胆がそう呟くと同時に、下から靴の効果で空を飛んでいるセックが竜胆の手を掴む。竜胆はそのままセックによって落下の勢いを殺されながら、滝のすぐそばに現れた渦の中心部に来る。

 

「うむ……時間ジャストじゃ。些かここに来るまでに苦労しておったようじゃが……?」

 

「ちょっとな……」

 

渦の中心部はエイーダの水を操るギフトによって竜胆の立っている場所に水が一切寄っていない。

 

「じゃ……行くぜ。"天照の顔"!」

 

竜胆は神格を顕現させ、いつもの九尾と狐耳を出す。今回は腰に赤いメダルが三枚入って斜めに傾いているバックルとそのベルトの横側には円盤状のスキャナーとメダルが六枚入りそうなホルダーがついている。

 

「竜胆くんすっごい可愛い!」

 

「うるさい今はそれどころじゃないだろ!」

 

やはりというか、セックに抱きつかれそうになったため、軽くあしらう……というか水中に叩き込む。

 

「ガボボボ!私水中落ちたけどもしかしてこれでサポート不可!?」

 

「いいだろ別に……あとはサポートいらないんだから」

 

「まあその通りじゃな。儂らはここでこうしてお主の手伝いで終わりじゃしのぅ……」

 

「だからといってここで仲間に撃墜とかシャレになんないよぅ!」

 

ぶー、と毒づくが、竜胆は意に介さずゴキゴキと身体を鳴らす。

 

竜胆は背中に出現した炎の翼を呪力でブースター状に変幻させる。

 

左手にタジャスピナーを顕現させ、炎の力を左腕に溜める。

 

「ふぅ……出て来い、メダル……」

 

竜胆は更に意識を強めると、身体から7枚、赤、緑、黄色、白、青、紫、橙のメダルをタジャスピナーの中にセットする。

 

「行くぞ!」

 

タジャスピナーのレバーを引っ張ると、内部が回転する。

 

そして腰のスキャナーを手に取り、タジャスピナーに翳す。

 

『タカ!トラ!バッタ!サイ!ウナギ!ティラノ!コブラ!

Giga Scan!』

 

「ドオオオオオオリャアアアアア!!」

 

竜胆は左腕を突き出す。

 

「シャアアアアアアイニイイイイイングゥゥゥッッッ!!

フィンガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッーーー!!!!!」

 

炎の拳が大河を吹き飛ばす。そして更に両腕にメダガブリューを装備する。

 

「ファイアー!」

 

背中のブースターを最大に吹かせて半ばブースターに動かされながらもしっかりと地面を蹴り上げる。

 

その速度はあり得ないほどで、彼の身体が人間では引き裂かれるほどのものだ。

 

というかその速度、タマモの神格を得てイフリートを圧倒していた頃よりも圧倒的である。

 

そして炎が大河を打ち消せなくなった頃になると、両手のメダガブリューを乱舞させ、剣圧で大河を引き裂く。

 

「あっはぁーーーーーーはっはっはははははははははは!!!ヒィ~ャッハァーーーーーーーー!!イーーーーーヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!ぶるぅああああああああああああぅ!!」

 

最早なんの声かもわからないほどに酷い笑い声をしながら駆け抜ける。

 

「たのしーーーー!!」

 

正に、鬼。

 

◆◇◆

 

「ごきげんよう仮面の騎士様!勝つのは私───久遠飛鳥よ!」

 

フェイス・レスの蛇腹剣が飛鳥の隠し持っていた宝玉によって燃やされる。そしてそのショックでフェイス・レスは体勢を崩された。

 

「くっ───!」

 

「私の勝ちよ!」

 

「いいや、俺の勝ちだ!」

 

「「!?」」

 

どこからともなくそんな声が聞こえると、突然足下の大河が割れた。飛鳥のヒッポカンプは支える水を失い、バランスを崩す。

 

「アイム、Win」

 

大河の中から竜胆が飛び出てきてそのままゴールテープを切る。

 

のだが、竜胆のブースターの勢いが強すぎてそのまま観客席まで突っ切って行った。

 

「ふんがっ!?」

 

顔面から衝突した勢いで竜胆はそのままぶっ倒れた。

 

「いっててて……ってな───!?」

 

「……おや、これは」

 

「り、竜胆くん!?」

 

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!やりおったぞこの小僧!私が注文した通りに!しかもセルフで!なんというサービス精神!」

 

「「「ヤッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」

 

竜胆の水着が……剥けていた。

 

なんということでしょう。そもそもあの超加速をすればいくら箱庭といえどただの市販の水着(オカンな竜胆はできるだけ安くて不本意ながら自分に似合うと思った奴を選んだ)では脆くなるも当然、むしろ破れなかったことが奇跡である。

 

そして、観客席に直撃した衝撃で、完全に剥けたのだった。

 

「……ぁ、ぁゎぁゎ……見るな……見るな見るな見るな見るな!!」

 

竜胆は羞恥心のままに曝け出された胸部を抑えながら泣き叫ぶ。

 

「見ないでよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

因みに、竜胆はおねーちゃんに感謝せねばならない。

 

なぜなら、この時おねーちゃんは耀が飛鳥の手助けに行かないように足止めをしていたのだ。

 

多分、耀が現場にいたら竜胆はセップク、ハラキリ、自分からカンデン、自分からチッソク、ヒアブリetcetcとしていたことだろう。






いったいいつ、誰がヒッポカンプに乗ったままゴールせねばならないと言った!?

少なくとも本作の契約書類にはそんなこと書いてないね!

すみませんチョーシこきました。

次回で蒼海の覇者編は終了。その後は応募してもらったキャラ達と竜胆くんか頑張る特別編を行う予定です!

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