問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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勇気と無謀は別モノってよく言いますね。

結構意味がわかる気がします。

そして竜胆くんの初バトルです。ようやく、タグを理解していただけるかと。




五話 儚くも永久のカナシ

「っ……う……」

 

竜胆の目が覚めると、そこは見たことのない和室だった。

 

「む、起きたかの」

 

「……アンタは?」

 

白夜叉が近づいてくると、少しだけ警戒心を出す。

 

「そう警戒するでない。私は白夜叉。このサウザンドアイズのオーナー……っと、この話はさっきしたの」

 

「……悪いけど、俺あんたの顔見た覚えはないぞ」

 

「なんと!こんな美少女を忘れるとは!」

 

「いや、ホントに……確か、サウザンドアイズの店に入ろうとして、それで門前払い喰らって……それ以降は覚えてない」

 

俺が自分の覚えているところを掘り返していると、白夜叉はそこにいた黒ウサギを見る。

 

「黒ウサギ、お主はまたヤバいのを呼んできてしまったようだの」

 

ん?と竜胆が白夜叉が目を向けた方を見ると、そこには十六夜、飛鳥、耀、黒ウサギにジンがいた。

 

「本当に覚えてないの?」

 

耀が何故か心配そうに尋ねてきた。

 

「悪い。なにも覚えてない」

 

そう言うが、腹の底では、竜胆は自分がなにをしたのかを理解していた。

 

(なにも覚えてないってことは、"アレ"になりかけたんだよな……でも、"アレ"になりかけるくらいのことがあったのか?)

 

竜胆はその原因を探ろうとして……やめた。

 

(どうせ今まで一度もその時の事を覚えたためしがないんだから、思い出すだけ無駄か)

 

自分の中で自己整理し、白夜叉に向き変える。

 

「さてと、ではそこの可愛いのが起きたみたいだから改めて、と」

 

「誰が可愛いだ」

 

「私は白夜叉。この箱庭東外門に存在する四桁の門、三三四五外門に本拠を構えるコミュニティ"サウザンドアイズ"の幹部だ。

黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きい美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはいお世話になっております本当に」

 

投げやりに言葉を流す黒ウサギ。その隣で耀が小首をかしげる。

 

「その外門ってなに?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者が住んでいるのです」

 

ここ、箱庭の都市は上層から下層まで七つに振り分けられており、それに伴ってそれを区切る門には数字が与えられている。

 

黒ウサギが箱庭の上からの見取り図を書く。それは外門によって幾つもの層に分かれていた。

 

「……超巨大タマネギ?」

 

「いえ、どちらかといえばバームクーヘンね」

 

「ああ、どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

「いや、パリの区画だな」

 

四人がそれを見て好き勝手言い出す。

 

「ククク、確かにどちらかと言えばバームクーヘンだな。ところでパリの区画とはなんぞ?」

 

「ググれ」

 

余程めんどくさいのだろう。

 

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら、今ここはそのバームクーヘンの一番外、皮のところじゃな。

更に言うなら、東西南北の四区切りの東側に辺り、外門のすぐ外は世界の果て。

あそこはコミュニティこそ入っていないものの、強力なギフトの持ち主が多く住んでおる。

例えば、その水樹の持ち主などな」

 

白夜叉は黒ウサギの持っている木の苗のようなものを指す。恐らく、名前からして水に関係しているギフトなのだろう。

 

「して、一体誰が、どのようなゲームであの蛇神に勝ったのだ?

知恵比べか、或いは勇気か?」

 

「いえ、この水樹は十六夜さんがここに来るまえに蛇神様を素手で叩きのめしたんですよ」

 

「なんと!?クリアではなく、直接倒したと!

ではその童も神格持ちか!?」

 

「いえ、そうは思えません。神格は普通、一目でわかるものですし」

 

神格とは、生来の神そのものではなく、種の最高ランクに身体を変幻させるものである。

 

蛇は蛇神に、ひとは現人神や神童に、鬼は天地を揺るがす鬼神に。

 

神格は自身のみならず、ギフトも強化するので、多くの者はこれを目指している。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったので?」

 

「知り合いもなにも、あれに神格を与えたのは私だ。もう何百年も前だがの」

 

白夜叉は小さな胸を張り、堂々とする。

 

しかし、そんなの気にしてられないのが問題児三人様である。

 

「へえ?じゃあお前はあの蛇より強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者(フロアマスター)"だぞ。この東側の四桁以下のコミュニティでは並ぶものなしじゃ。

……まあ、先程のは少々本気でやったがの」

 

先程、それはつまり竜胆を眠らせたあれのことだ。

 

「そう……ふふ。ではつまり、貴女のギフトゲームをクリアできれば、私達のコミュニティは東側で最強、ということかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

竜胆を除く問題児三人は闘争心剥き出しで白夜叉を見る。

 

「抜け目ない童達じゃ。依頼しておきながら、私にギフトゲームに挑戦とはな。

して、そこの童は?」

 

白夜叉が竜胆に向き直る。

 

「俺はいい。あんたと"決闘"したら、勝てる気がしないからな」

 

「おいおい竜胆、随分と弱気だな」

 

「なら俺にも言わせてもらおう。逆廻、久遠、耀。お前らのそれは"勇気"ではなく"無謀"だ」

 

「え、ちょ、皆様?」

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えておる」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

 

「ふふ。そうか。───しかし、そこの童は気づいたようだが、お主らに確認じゃ」

 

「なんだ?」

 

白夜叉は着物の裾からサウザンドアイズの刻印が入ったギフトカードを取り出し、壮絶な笑みで一言。

 

「おんしらが望むのは"挑戦"か───もしくは、"決闘"か?」

 

刹那、四人の視界に爆発的な変化ぎ起こった。

 

視覚はその意味を無くし、様々な情景が脳裏を掠める。

 

それは、黄金の穂波、白い地平線、森林の湖畔。

 

そして、雪原と凍る湖畔、水平に巡る太陽がはっきりと見えた。

 

「「「なっ……!?」」」

 

あまりの異常さだった。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。

私は"白き夜の魔王"。太陽と白夜の星霊。白夜叉。

おんしらが望むのは、試練への挑戦か、それとも対等な決闘か?」

 

「水平に巡る太陽と……白夜と夜叉。

あの水平に巡る太陽やあの土地はおまえの表現ってことか」

 

「如何にも」

 

暫くの静寂の末、十六夜が切り出す。

 

「……参った。今回は黙って試されてやるよ」

 

「ふむ?それは試練を受けるということか?」

 

「ああ、そうだ」

 

「ええ。私も、試されてあげていいわ」

 

「右に同じ」

 

三人が一通りの答えを出した。

 

「よいぞ、ではおんしらの挑戦を始めようか」

 

◆◇◆

 

結果から言わせてもらうと、耀が白夜叉から出されたグリフォンのギフトゲームに勝利した。

 

なんでも、耀のギフトはただ動物と話せるだけじゃなく、友達になった動物のギフトを得るらしい。

 

……それならば、ガルドを片手で支えたのはさしずめ象のギフト、というところか。

 

───で、何故か俺だけ三人とは違うギフトゲームをすることになった。

 

『ギフトゲーム

一騎討ち

 

・プレイヤー一覧

高町 竜胆

 

・クリア条件

神群の獣の首を取れ。

 

・敗北条件

死亡、降参、或いはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

例外として、生物の召喚を行った場合も敗北となる。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名のもと、ギフトゲームを開催します。

 

"サウザンドアイズ"印』

 

「一騎討ち……ふうん、神話の獣と一騎討ちしろってことか……」

 

「左様。して、お主の相手をするのは……」

 

その時、白夜叉の右隣から業火が巻き起こった。

 

「……イフリートか」

 

「ほう?よくわかったの。

その通り。こやつはイフリート。かのアラビアンナイトにも登場した焔の魔神じゃ」

 

竜胆が白夜叉に問い、「YES」と答えられる。

 

『こいつが今度の相手か?夜叉さんよ。

悪いが、俺が今まで見てきた奴の中で一番貧弱そうだぜ?』

 

イフリートはおよそただの人間には聞き取れない声で竜胆を侮蔑する。

 

「ほう、言ってくれるじゃないか焔の魔神。まあ、ただの漁師に騙されて壺の中に閉じ込められるようなオツムじゃわからんよな」

 

だから竜胆もイフリートにそう返す。

 

するとイフリートは、自分を馬鹿にされた怒りと自身の言葉を聞き取ったことへの驚愕が混じった顔をした。

 

『てめえ……言ってくれるじゃねえか。どこのもんだ?』

 

「無所属の高町竜胆。多分"ノーネーム"に加入予定」

 

『どこのもんかと思ったら名無しかよ……おい、夜叉さんよ。

ぶっ殺してもいいんだな?』

 

「ああ、かまわんよ」

 

イフリートの問いに白夜叉は別にいい、と答える。

 

『だ、そうだ。

ってなわけで、さっさと死ねや!!』

 

イフリートの焔が一直線に竜胆に向かって行く。

 

「……死にたいとは言ったが、こんな奴に殺されるのは御免だな」

 

その瞬間、イフリートの放った焔は氷になった。

 

「!ほう……かのイフリートの煉獄と言われる焔を凍らせるか……」

 

「なんだ……期待してただけ損した」

 

『んだと!?』

 

「ふう……出てこい。八咫の鏡」

 

竜胆が地面に手を置くと、そこから一つの鏡が出てきた。

 

「あれ……あの時の!」

 

耀はそれを見てなにかに気づいた。

 

「八咫の鏡……まあ、今の俺じゃあ飛び道具として飛ばすのが精一杯だけどな」

 

あの時ガルドを受け止めた鏡だった。

 

『てめえ……どんな芸当使ってんだ?

ギフト的にはただの大道芸人に転向した方がいいんじゃねえのか?』

 

「笑えない冗談だな。大道芸人なんてやってるような面はできん」

 

『クックックッ!確かにその無愛想じゃそんな仕事できねえわな!』

 

「言ってろ……」

 

竜胆はそのまま八咫の鏡をイフリートに飛ばす。

 

「さあさ……一曲、ワルツでも如何か?」

 

竜胆が流れるように八咫の鏡を動かす。

 

『ぬ、ぐぅ!?』

 

鏡にイフリートは完全に弄ばれていた。

 

「そら、踊れ」

 

竜胆の鏡は彼の指揮に寸分たがわず従い、イフリートを追い詰めていく。

 

『な、めるなぁ!』

 

遂にイフリートはそれを拳で殴り返した。

 

「っとと、乱暴な断り方だな」

 

『け!てめえみたいな得体の知れない奴なんて焼くのが一番なんだよ!』

 

イフリートが両手を合わせ、前に翳すと、そこから一筋の熱線が現れた。

 

それを竜胆は間一髪躱す。

 

「驚いた……近接技しか脳の無い奴かと思ったが……これは面白い」

 

『人を脳筋扱いするのかよ。

まあいいさ。否定材料なんて、ないみてえなもんだからな!』

 

イフリートの背面から、ビットのようなものが出てきた。

 

「おいおい、それまんま機械じゃねえか……」

 

『ぶっとべ!』

 

イフリートの号令と共に、大量の熱線が放たれた。

 

◆◇◆

 

さあて……どうするか。もう後がない。多分、あれを一発でも食らったら、そっからドンドン攻められて負ける。

 

……あれをやるか?

 

『あれをやらせてください。私なら、あの熱線を残らず根絶やしにできます』

 

その時、俺の頭にそんな声が響いた。

 

……ち。背に腹は変えられん。やるしかないか。

 

そして俺は、その言葉を紡ぐ。

 

神格解放、と。

 

◆◇◆

 

イフリートの熱線がとどいた。

 

『はっはっはっ!威勢がいい割りにはあんまりだったな!』

 

イフリートは勝利を確信し、高笑いをする。

 

「嘘……死んじゃった?」

 

誰かがそう呟いた。

 

「いや、まだだぜ」

 

そんな中、十六夜はそう呟いた。

 

「そうだろ?死神サン」

 

「ふん……勝手に殺してもらっても困る」

 

煙の内側から、そんな声が響いたと思うと、イフリートに先程の熱線が直撃した。

 

「負けたくないんでね……本気、出させてもらうぞ?」

 

そう言った竜胆は、九つの狐尾と耳を携えていた。





あの声の主は何者……?いえ、わかってますさ、わかってますとも。

皆さん、検討ついてますよね?ついてなかったら私が自分の文才について若干浮かれます。わーいって。
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