問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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今回で一応五巻は終了です!

次章からは完全オリジナルですので、ちょっと文字数が多かったり少なかったりとマチマチかも。




結から続 霧の多年草

ギフトゲームから三日。

 

外はお祭り、中は静か……そんな状況の中、我らがツンデレ狐様は部屋に閉じこもっていた。

 

「竜胆、いい加減外に出なよ」

 

「ヤダ。出たらみんな変な目で見てくる」

 

耀の訴えも今の彼には届かず。竜胆は布団の中に潜って動かない。

 

理由は明白。自分でやらかしたあの狐巫女サービスシーン事件の一件以降"アンダーウッド"のどこを歩いてもそういう目で見られたので、竜胆はついに部屋に閉じこもってしまったのだ。

 

しかし、そもそもそういうことになりかねない作戦を考案した彼自身にも非があるのはあしからず。更にギフトゲームの名前を無視した反則まがいのことまでやらかしているのだ。

 

流石に三日も引きこもられれば"ノーネーム"側としても彼の割と豆腐気味なメンタルが気になるのもまた事実。なので竜胆にうってつけな耀を向かわせたのだが……この通りである。

 

「なんで引きこもってるのか、詳しく聞いてはないけど……あんまり皆に心配かけない方がいいと思うよ」

 

「ヤダ。あいつらが変なこと言わなきゃ俺だけギフトゲームに違うチームに出る必要なんてなかった」

 

もう拗ねた子供そのものである。こうなった子供が面倒なのは自明の理。よっぽどのことでもないとテコでも動かないだろう。

 

「……じゃあどうすれば出てくれるの?」

 

「出ない」

 

出ないときたか。しかしこちらも皆に「耀が一番」とそのコミュ力を買われているのだ(違うそうじゃない)。そうやすやすと引き下がれない。

 

だが、意地でも部屋から出ないという竜胆は初めてだ。そんなにショックな出来事でもあったのだろうか。

 

それでも耀も引き下がるわけにはいかない。子供は甘やかすだけではダメなのだ。

 

「竜胆」

 

「なんだよぅ」

 

「ギフトゲーム終わったら一緒にどっか食べ歩きするって約束だったよね」

 

「……今はヤダ」

 

「今がいい」

 

「ヤダ……ヤダ。ヤダ」

 

布団ごと丸くなる。いったい中でどうなっているのだろう。

 

耀がまるで布団に潜って起きない子供を起こすお母さん、あるいはお姉ちゃんのように布団をひったくる。

 

「起きて、竜胆」

 

「ヤダ」

 

もう子供そのものだ。ヤダ以外に言うことがないのだろうか。

 

「なにされたかわかんないけど十六夜達は私が注意しとくから、ね?」

 

「…………白夜叉」

 

竜胆が突然白夜叉の名前を出すので耀は怪訝そうに竜胆の方を見る。

 

「白夜叉がどうかしたの?」

 

「しろやしゃ ちょっといっぱつ なぐらせて」

 

「……え?」

 

「しろやしゃ なぐる。

そしたら でる」

 

なぜか舌足らずに、かつ抑揚がない声で喋り出す。

 

だがまぁ、耀にとってはこの際出て来てくれればなんでもいいので。

 

「……グッb」

 

「b」

 

一発で互いにサムズアップし合ったのである。

 

その後、竜胆の部屋はもぬけの殻となり、ギフトゲーム開始前日とほとんど同じ手法で血の海に沈んだ(気絶)白夜叉が発見された。

 

今度はダイイングメッセージが一切なく、犯人はそんなものを書く手間すら与えずに気絶させたのだと考察される。

 

◆◇◆

 

「………」

 

「竜胆、背中に隠れてないで出て来てよ」

 

竜胆は耀の背中にしがみつき、周りからの視線を見なかったことにしているかの如く俯いている。

 

「……うぅ」

 

そう言われた竜胆は半ば諦めて顔を上げ、耀の隣を歩く。

 

好機の目線。ヒソヒソと聞こえてくる会話には「あの子、ギフトゲームの時にやらかした……」「ああ、あのエロい子だ」なんてものが中心である。

 

「エロくてわるかったなぁ!どーせ俺は外見女だよ!」

 

竜胆は泣きながら叫ぶ。やはり、彼のメンタルは豆腐だ。

 

もーやだ……いえかえる……と泣き言を言い出すのでその度に耀が宥める。彼女もめんどくさい男に好かれてしまったものだ。

 

まぁ……そんな風に過ごしていって、夕方に差し掛かったころ……その事件は起きた。

 

「……あれ?耀……?」

 

耀がどこにもいない。それどころか、周囲には人っ子一人いない。

 

「……なにが起こってるんだ?集団でなにかやってるのか?」

 

ついさっきまで耀は隣にいた。周囲にも竜胆をそういう目、もしくは本当に偶々通りすがっていた人達もいた……

 

だが、誰もいない。誰も彼もいない。不自然に、誰一人として……

 

「どういうことだ……なにかの冗談だったら笑って済ませられないぞ……!」

 

竜胆が周りを見渡し、やはり誰もいないことを確認する。思えばこの"アンダーウッド"そのものも様子がおかしい。まるでなにかに汚染されたような……そんな感じに。

 

「気味が悪い……なにがどうなつている……」

 

竜胆は空を見上げる。空の色は青空から不自然な赤紫に変わっていて、なお不信感を際立たせる。

 

───そんな中、空から一枚の紙が舞い降りて来た。

 

黒い封書だ。竜胆はそれの正体に薄々勘付いていた。

 

その封書を受け取り、竜胆の表情が驚愕に染まった。

 

『───────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────── ─────────────────────』

 

「……なんだ、この"契約書類"は……?」

 

一目で"魔王"の"契約書類"てあることはわかった。

 

だが、なにもない。正確には、読めない。いかなる書物に描かれた文字でもなく、箱庭でも見たことのない文字。

 

これは、竜胆が読めないというより……読むことができなくなっている文字、そう形容した方が正しいか。

 

そう結論付けた瞬間。

 

「お前もここに取り込まれたのか」

 

少年の声が聞こえた。

 

「誰だ」

 

「争う気はない。そもそもここで争ったって双方なんの益にもならないだろ?」

 

現れたのは、少年……と形容すべきか、少女と形容すべきか。恐らく口調からして少年だろう。

 

「的を射ている。それより、お前も……と言ったが」

 

「ああ。前夜祭の頃に急にな。それ以降はやることもなくここでのんびり暮らしだ」

 

前夜祭の頃。そこから換算すると少なくとも一週間はここにいるということだ。

 

「出る気はないのか」

 

「ない……と言えば嘘だな。正確にはあった、だ。

ここに迷い込んで"契約書類"を受け取ったものの、"主催者"もいない、"契約書類"は読めない、そのことを指摘するための"審判権限"所持者もいない。

ここまで来れば流石にお手上げさ。元々所属するコミュニティもいざこざで抜けた流浪人だからな。どこでどう暮らそうが俺にはどうでもいい」

 

「世捨て人だな。正に」

 

「そりゃそうだ。こんなとこに一週間もいれば精神崩壊しない方がおかしい。一週間も一人なんだからな」

 

「俺は一年間一人でも余裕だぞ。実際やったし」

 

「……随分エキセントリックな過去なんだな」

 

竜胆は否定はしないとだけ言うとまた含み笑いを浮かべる。

 

「それに、諦めるにはまだ早いんじゃないか?」

 

竜胆が少年に"契約書類"を見せる。その"契約書類"はつい先程まで全く読めなかったのに、一部分だけ読めるようになっていた。

 

『ギフトゲーム"───────"

 

プレイヤー一覧

・高町竜胆

・霧乃秀里

・───────

・───────』

 

これ以降は一切変化はなかったが、完璧に読めるようになっている。

 

「……キリノヒデサト、なるほど、これがお前の名前か」

 

「……俺の"契約書類"も読めるようになってる。そこだけ……おまえの名前は……タカマチ、リュウドウ?」

 

「リンドウだ。多年草のリンドウからきてる」

 

「……どういうことなんだ……?」

 

「さあな。ただ確かなのは、お前と俺が出会って、出会った参加者の名前とこれがギフトゲームであることが開示された。

参加者の欄にはまだ二人……つまり、俺達が四人になった時にギフトゲームとして動き出すってことじゃないのか?」

 

「……そう、か」

 

秀里は封書を閉じると、竜胆に向き直る。

 

「俺自身はこのままここにいても構わないが、帰りたいヤツらがいるなら話は別だ。協力するよ、竜胆」

 

「お人好し……だな。よろしく、秀里」

 

正体不明の魔王戦が、始まる。





三人目の募集キャラの秀里くん。誰がどう見てもキリ子さんなので、次章のパーティーが可愛い子しかいません。なんつー萌えオタ用RPG。

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