問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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セックちゃんがヒロインしてる話。今回の章に限ってヒロイン交代なのか?




ろきのおもちゃ

 

……なにを焦っていたのかしら。そうよ。焦る必要なんてない。

 

彼女が竜胆達の仲間である以上、彼女が現れるのをきっと竜胆達は待ち続ける。

 

……それでも彼女は絶対に竜胆達の目の前には現れないわ。

 

彼女の闇は、竜胆が今忘れている闇に匹敵するほどに深く、暗い。

 

狡知の彼も罪なことをしたわね。

 

まさか、人間の女に……ふふっ、竜胆ほどじゃあないけど、彼女にも興味が湧いてきたわ……彼ら四人は皆、心に程度の差はあれど闇がある。

 

ああ……いい、いいわ。竜胆を私の愛を全て受け入れてくれる人形にしたら、後は彼女らを私が愛でる人形にしましょう……

 

竜胆……貴方が連れてきてくれた三人、とってもいい子達よ……

 

さあ……チューリップの庭の中で、踊り続けなさい。

 

◆◇◆

 

楽しい。心の奥底からそう思えたのはいつぶりだろうか。

 

今まではなにをするにしてもワクワクとした感情が浮かんで来なかった。

 

でも、だけど。今は違う。友達がいる。

 

今まで色んな人と仲良くはなったけど、どれが友達のボーダーラインかなんてわかっていなかった。

 

今ならわかる!これが友達!私が逃げ続けて、否定して、ずっと渇望していた、友達!

 

友達がいる!私はもうひとりぼっちじゃない!

 

……あれ?じゃあ、今の私って……なに?

 

◆◇◆

 

「……戻って来ないな」

 

「うむ、あのお調子者がこんなところでつまづくとは思えんのじゃが……」

 

虚構の箱庭の中枢、秀里のぽつりとした呟きは途端にエイーダの一抹の不安を吐き出させた。

 

「……覚悟はするなよ、秀里、エイーダ」

 

ただ一心に扇のような斧を片手に持った竜胆は静かに呟く。

 

「覚悟はするなって……それはセックが戻って来ない覚悟をするなってことか?」

 

「そうだ」

 

「しかしのう竜胆……儂らは今セックの内情を知らぬ故、覚悟をするなということは不可能じゃぞ?」

 

「もし覚悟をしたのなら信頼すればいい。どんなにありもしない本物の世界にアイツが囚われたとしても……帰って来ると信じるんだ」

 

竜胆の言うことは相変わらず言葉が少し足りない。竜胆の言うことが意味していることはなんなのかを理解させる気配り、その辺が彼には足りない。

 

だから二人は結論、竜胆の言わんとしていることがあんまり理解できていなかった。

 

◆◇◆

 

「貴女は誰なの?」

 

「───え?」

 

突然、セックの後ろから聞きなれない声が聞こえてきた。

 

いや、聞きなれないのではない。今までずっと聞いていたのだが、その声音は自分が今まで感じていたものよりも違う声なのだ。

 

「───貴女は、誰なの?」

 

「……あ、貴女こそ、誰?」

 

自分のことを問いてくる声に同じ質問で返す。そうなるのも仕方がない。なぜなら目の前にいるのは他でもない、"セック・ズルグ"なのだから。

 

「私はセックですよ。貴女……私の真似をしてなにが楽しいの?」

 

「そんなっ……私は貴女の真似なんてしてるつもりはないです……私は、私はセックです!そちらが私を真似ているだけではないんですか!?」

 

「そんなわけがないですよ。世の中に本物は一つしかないんです。私は彼女達とずっと仲良く過ごしてきました……でも、貴女は?

貴女は果たしてそうなの?貴女は彼女達とずっと、今日に至るまで仲良しこよしでしたか?違いますよね?」

 

「……っ、それはっ……!」

 

「やっぱり。貴女は私のフリをする嘘つきさんではないですか。セック……いいえ、ロキのおもちゃさん……」

 

「……!ロキ……!?」

 

セックははっきりと明確に、その神の名を告げたもう一人の自分を改めて凝視する。

 

「やっぱり……私、貴女を見てると不思議とイライラしていたんです。貴女の受けたロキの加護……凍てつく炎は私の大っ嫌いなものなんですっよ!」

 

「がっ、ぎゃ!?」

 

もう一人のセックは自分のギフト"ローゲ・フィアンマ"とは真逆の、燃え盛るような熱さを秘めた氷を纏って思い切り殴りつけてきた。

 

「ぐぅっ……なに、そのギフト……そんなの、私知りません……」

 

「ギフト名"ホワイト・アース"……こう言えば、ロキのおもちゃである貴女はすぐにでも理解するのでは?」

 

絶句。まさに彼女は何秒かの間まるごと呼吸することも忘れていた。

 

ホワイト・アース……白いアース。それは北欧神話でとある神と激闘を繰り広げた神の異名。

 

そして、"ローゲ・フィアンマ"と空と海を駆ける"カリガ"。この二つの持ち主もまた、とある神と激闘を繰り広げた。

 

白いアースの名を、ヘイムダル。

 

ローゲの炎の名を、ロキ。

 

共に北欧神話による神々の黄昏……ラグナロクで互いに滅ぼし会い、同士討ちの果てに相討ちとなった神の名である。

 

そして、ギフトゲームの名は"THE WORLD of LAGNA-ROCK"……ラグナロクの再現ともとれるこのギフトゲームの中で、二柱の神の加護と悪戯を受けた二人はラグナロクの再現を始めるのは、至極当然。

 

「白いアース……ヘイムダル!」

 

「ローゲの炎……ロキ!」

 

ヘイムダルの加護を受けた者が今目の前にいると理解したその時、ロキの悪戯を受けた身体は否が応でも多少の拒絶反応を起こす。

 

そしてそれは、目の前にいるヘイムダルの加護を受けた者も同じ。

 

「っ……貴女はさっきからずっとずっと、私の心を揺さぶるようなことを言って……その上、ヘイムダルの加護を持っている……!」

 

「そういう貴女は私とヘイムダルの一番討つべきロキのおもちゃ……多少なりともロキの力を持っている!」

 

「「そもそも、セックは二人もいらない!貴女は私が───」」

 

「焼き尽くす!」

 

「氷結させる!」

 

 





うーん、オリジナルってやっぱ難しい。最近の更新が遅い上に文字数が……ウゴゴゴゴ

結論、オリジナル展開になると竜胆くんは口下手な電波ちゃんと化す。

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