問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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さて、突然ですが悲しいお知らせです。

実は私、この度重大な案件がありまして、暫く更新ペースが下がると思います。

具体的な理由としては神機片手に神を喰らう……最低ですよね。わかってますさ、わかってますとも。




六話 サイレント・ヴォイス

『なんだ……そのふざけた格好は?』

 

「ふざけたもなにも、俺の力さ。

言ったろう?神格解放ってな」

 

「神格の解放ですって!?」

 

竜胆の当然といった言葉に黒ウサギと白夜叉は息を飲む。

 

「さて……これを時間以内に片付けないと、自称良妻狐さんが煩いんでね。

さっさとケリをつけさせてもらう」

 

その瞬間、竜胆の姿は消えた。

 

「き、消えた!?」

 

飛鳥が竜胆を視認できずに困惑した声を挙げる。

 

「いや、違うぜお嬢様」

 

「竜胆は、ただの一般人には視認できないくらいの速さで動いている」

 

それもそうだ。飛鳥の真骨頂はギフトを使った精神支配。その能力では運動能力も並の人間程度だろう。

 

「だが……流石の俺もあんな速度は出せねえな……」

 

十六夜は参ったと言わんばかりに声を出す。

 

『ちっ!だったら避けられねえようにすりゃいい話だろうが!』

 

イフリートは拳の焔を地面に叩きつけ、辺り一面に焔を撒き散らす。

 

「いい考えだが……その焔じゃあこの速度域に入った俺の風を振り切ることは不可能だ」

 

なんと竜胆は、それを走って突き破った。

 

「こいつでも喰らっとけ!」

 

竜胆はそのままイフリートの顔面をサッカーのボレーシュートの如く蹴り飛ばした。

 

「さーて……こっちのウォーミングアップは終了だぜ?

こっからギア上げんぞ?」

 

竜胆はイフリートに挑発するように言う。

 

『ち、調子に乗るなぁぁぁぁぁぉぁぁぁぉぁ!!!』

 

イフリートはそのまま焔を直線上に放つ。

 

「遅えよ」

 

『だったらこいつだぁ!』

 

竜胆はそれを躱すが、イフリートはそれを察していたようにビットからレーザーを照射させる。

 

「こいつが箱庭の生き物の速さ……だが足りない。足りないぞ!」

 

竜胆はレーザーを全て間一髪で躱し、少しずつ動くペースを上げていく。

 

「お前に足りないもの、それはな。

情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ、そして何よりも……」

 

竜胆はその一言と共に全てのビットを破壊する。

 

「……速さが足りないッ!」

 

その一言と共にイフリートの腹部に拳を叩き込んだ。

 

その攻撃にイフリートは倒れ伏す。

 

「さて……多少熱くなってしまったが……これでギフトクリアにならないってことは、契約書類の通り、コイツを殺せってか……」

 

竜胆は地面とキスをしているイフリートを見る。

 

「……悪いが、必要な時以外に殺しはしない主義だからな。

このゲームは棄権させてもらう」

 

『……ちっ、さっさと殺せばいいものをよ』

 

竜胆はすぐさま起き上がったイフリートを見て、少し舌を巻いた。

 

「意味のない殺しはしない。意味のある殺しは非常時のみ」

 

『変な奴だ……いいさ、敵の情けで貰った勝ちなんているかよ。

夜叉さんよ。俺ぁこのギフトゲームの辞退を宣言すんぜ』

 

イフリートがそう言うと、白夜叉は「そうか、では、私からの試練は皆合格、と」言った。

 

これは面白くなりそうだ。

 

白夜叉はそう思っていた。

 

◆◇◆

 

「さて……私のギフトゲームを乗り越えたからには、三人ともに素養が高いのは明らかだ。

しかし、これではおんしらのはなんとも言えんな……おんしらは自分のギフトをどの程度に把握している?

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「かなり危ない」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だった輩にギフトを教えるのが怖いのはわかるが、それじゃ話が進まんだろうに」

 

「別に鑑定なんて必要ねえよ。人に値札貼られるのは趣味じゃない」

 

十六夜の言葉に飛鳥と耀が同意する。

 

「ふん、あんな力なぞ逆に知りたくもない」

 

竜胆は相変わらず底の見えない発言をするだけ。

 

困ったようにしている白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ、なんにせよ"主催者(ホスト)"として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらに"恩恵(ギフト)"を与えてやらねばいかん。

ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度よかろう」

 

白夜叉がパンパンと柏手を打つ。すると、四人の手元に光り輝く四枚のカードが現れた。

 

カードにはそれぞれの名と、体に宿るギフトのネームが刻まれていた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻 十六夜・ギフトネーム"正体不明(コード・アンノウン)"

 

ワインレッドのカードに久遠 飛鳥・ギフトネーム"威光"

 

パールエメラルドのカードに春日部 耀・ギフトネーム"生命の目録(ゲノムツリー)" "ノーフォーマー"

 

ハニーゴールドのカードに高町 竜胆・ギフトネーム"呪術師" "玉藻の前" "人類の罪(ア・ヒューマン・オブ・ギルティ)"

 

それを見た黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で四人のカードを覗き込んだ。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「児童手当?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息があってるんですか!

このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードなんです!

耀さんの"生命の目録"だって収納可能で、好きなときに顕現できるんです!」

 

「つまり素敵アイテムでオッケーか?」

 

「だからなんでそんなに適当なんですか!

あーそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

四人は物珍しそうにカードを見る。

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるが、おんしらは"ノーネーム"だからの」

 

「ふうん……もしかして、水樹って奴も収納できるのか?」

 

何気無く水樹にギフトカードを向けると、それは光の粒子になって消えた。

 

そしてカードには溢れるほどの水を生み出す樹の絵が描かれ、ギフト欄の"正体不明"の下に"水樹"と刻まれた。

 

「おお?これ面白いな。

もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄使い反対!その水はコミュニティのために使ってください!」

 

チッ、と十六夜はつまらなさそうに舌打ちをする。

 

「そのギフトカードは正式名称を"ラプラスの紙片"。即ち全知の一端じゃ。

そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった"恩恵"の名称。

鑑定はできずともそれを見ればだいたいのギフトはわかる」

「へえ?俺のはレアケースってわけか」

 

「……見る限り最悪のギフトネームだな」

 

ん?と白夜叉は十六夜のギフトカードを覗き込む。

 

そこには確かに、正体不明の四文字。

 

「……いや、そんな馬鹿な」

 

あり得ないとばかりにギフトカードを取り上げる。

 

「正体不明だと……?いいや、あり得ん。全知であるラプラスの紙片がエラーを起こすなど……」

 

「なんにせよ、鑑定は失敗ってわけだ。俺的にはそっちの方がありがたいさ」

 

(そういえばこの童……蛇神を倒したと言ったな)

 

ただの人間が神格保有者に勝てるのだろうか。

 

「強大な力ということは間違いないが……まさか、ギフトを無効化した?いや、まさかな」

 

強大な破壊の力を持つこととその破壊を諌める力は一つのギフトに併用することは不可能のはず。だとすると、やはりラプラスの紙片にエラーがあった方が妥当だ。

 

「して、そこの小僧。おんしのその"人類の罪"とはなんじゃ?」

 

今度は竜胆に向き直る。

 

「見当はついてるが……的を射ているとしか言えん」

 

竜胆は溜息をつきながらギフトカードを手渡す。

 

「その検討とは?」

 

「言う義務はない。いや、言いたくない」

 

つまり、それ程踏み入って欲しくないものなんだろう。それに白夜叉は「うむ、仕方ないの」と言うと、次の質問をぶつけてきた。

 

「では、この"玉藻の前"とはなんじゃ?」

 

「玉藻の前……ね。さっきのあれもそれが関しているのかよ?」

 

十六夜が竜胆を見る。さっきの、とは当然尻尾と耳のことだ。

 

「……教える義務はn「はーい、お呼びでイケメンさん?」……勝手に出てくるな」

 

突然なにもない場所から九本の尻尾と狐耳、巫女服という奇抜な格好の女性が現れた。

 

「わお……この方、神格持ちデスよ?」

 

黒ウサギが現れた女性を見た瞬間に驚く。

 

「皆様はじめまして、私、玉藻の前と申します。どうぞお気軽にタマモ、とお呼びくださいな。

ご主人様に取り憑いている守護霊とでも思ってくださいまし」

 

『ご主人様?』

 

「はい、その通りでございます。私、この方に憑いた時からこのイケメン魂にもう惚れ惚れ!

あ、別に良妻狐さん、でもOKですよ?」

 

「黙ってろ」

 

「フギャ!?」

 

竜胆の拳がタマモの頭に落ちた。

 

「だから使いたくなかったんだよ……タマモ、さっさと戻ってろ」

 

「嫌でございますぅ!私も皆さんと女の子な会話がしたいんですぅ!」

 

「殺してやってもいいんだぞ?」

 

「……大人しくもどります」

 

タマモはそう言うとまた消えた。

 

「む……ところでだが、おんしらは黒ウサギのコミュニティが打倒魔王を掲げていると知っておるのか?」

 

「俺はまだ予定段階だ」

 

「そうよ。だって楽しそうじゃない」

 

「楽しそうで済む話ではないのだがの……若さ所以なのか、ただの無謀か、或いは勇敢か……

まあ、魔王がどういうものかは帰ればわかるだろ。

それでも魔王と戦うなら止めんが、そこの小娘二人は確実に死ぬぞ」

 

二人は一瞬だけ反論しようとしたが、白夜叉の威圧感に吞まれてそれができなくなる。

 

「魔王と戦うのなら力を付けよ」

 

「そう……肝に銘じておくわ。

次は貴女の本気に挑戦するわ」

 

「ふふ、望むところだ。ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらう」

 

「嫌です!」

 

「つれないこと言うなよぉ。今なら三食首輪と家つきだぞ?」

 

「それもう完全にペットですから!」

 

そして五人は無愛想な店員に見送られて帰っていった。




ついに登場しました、タマモさん!さて、彼女はこの色々とぶっ飛んだ主人公とどう絡んでくんでしょうね?

それは間違いなく主従関係です。自問自答。
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