問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

93 / 110
二話分投稿したらストックが切れたでゴザル。




EL-Shaddai

「竜胆オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「助けてやるさ……リップ!」

 

竜胆が悲痛な叫びを挙げるチューリップに向けて"九頭龍の舞斧"をかざし、突進していく。

 

「俺達も……!」

 

「続こうぞ!」

 

「竜胆くんにだけいいカッコさせてられないですしね!」

 

そして竜胆の後ろを秀里とエイーダ、セックも続く。三人共腕に"鎖"を砕くための武器を持ち、またチューリップの元へと向かう。

 

「もうワタシをlonelyにしないでヨ竜胆!ワタシが貴女に全力でLOVEを注いであげるカラ!」

 

「……ごめん、リップ。俺は正直なんでお前にそこまで想われているのかはわかんない。だけど、俺はお前の想いに応えてやることができない」

 

リップが自らの構成物質を光粒子へと変え、一瞬で竜胆の真後ろに動く。

 

しかし竜胆はまるでそれを察知していたかのように地面から氷の柱を出現させてリップの身体を串刺しにする。

 

「イタイ、痛いいたいイタイイタイ……竜胆、ああ竜胆……!」

 

だがリップは竜胆以外の全てが眼中にないとでも言わんばかりに氷の柱の根元をへし折り、柱が突き刺さったまま竜胆に向けて歩を進める。

 

「竜胆……ワタシが守るから……!貴女という存在を、ワタシが……!」

 

リップは身体の構成物質を更に神珍鉄へと変貌させ、身体中から紅の棘を伸ばし、竜胆を手繰り寄せるついでに竜胆の近くを飛び回る三匹の羽虫を消し去ろうとする。

 

「"三重加速"!」

 

「"シャークメイル"!我が身を守ってくれ!」

 

「"カリガ・レプリカ"!」

 

秀里は自らの加速の限界領域を三段階一気に引き上げ、エイーダは身に纏う鮫肌で守り、セックは秀里同様速度を引き上げて攻撃を凌ぐ。

 

「"八咫の鏡"!」

 

そして竜胆はタマモの神格とともに受け継いだ彼女の武装、"八咫の鏡"に呪術を施して防ぐ。

 

「大人しく寝てろ!"朱雀"!」

 

秀里が"五行の神刀"を片手に峰でリップを打ち上げ、更に加速でさらなる飛躍を可能とし、そのまま加速し続けた身体を刀に乗せて斬りおろす。

 

「"麒麟"!」

 

そして秀里の麒麟を行ったことによって発生した一瞬の硬直の隙を埋めるかの如くエイーダが"八岐の雅槍"に自らのギフト、"アクア・サーファー"の力を加え、高圧水流を纏い、更に槍の尻と自身の足から水流によるブースターをかけ、リップの肉体を一閃する。

 

「まだまだ!まだ私達のターンです!」

 

セックはそれに続き、"六道の偃月輪"を二つの曲刀状に変化させ、リップの身体を両側から両断し、"カリガ・レプリカ"の力である程度の制空を可能としている彼女はリップの身体を両足で蹴り、その要領でバク転しながら着地する。

 

そして竜胆は締めとでも言わんばかりに今度は六方向から氷の柱を出現させ、そこから地を這うようにリップの身体を凍らせ、彼女の身体を文字通り上下真っ二つにした。

 

「……やったか?」

 

「いや、そんなわけがない。今のとさっきの戦いを見ればわかる……リップのギフトは恐らく"構成物質の変換"……俺がリップなら、いやそもそも今の彼女にそんな冷静さがあるかはわからないが、普通なら……」

 

攻撃を妨害された時点で守りの体勢はとっている。

 

竜胆が発する前にリップは氷の中からその姿を現わす。ゆっくりと突き刺さったはずの氷の柱をまるで刺さっていなかったかのように歩み寄る。

 

そして彼女の体は───一切傷がついていない。

 

衣服に一切の汚れすらないのだ。

 

「なっ───」

 

「まさか、手応えは確かにあったぞ!?」

 

「……ふ、ふふフフふフフフ……ああ竜胆……こんなに壊して……ワタシのヒトガタ達……イケナイ子。竜胆……貴女のカラダで治していただくわ……?」

 

そしてやはりリップは三人に目を向けることなく竜胆に向かう。

 

だが、情緒不安定で半ば精神が崩壊しているリップの言葉の端々には竜胆達に行ったことの正体を告げる要因があった。

 

「ヒトガタ……まさか、ドールハウスの人形か!?」

 

「まさかとは思うが、よもやその人形の原子配列を組み替えて自らと全く同じ姿をした人形に変えたとでも言うのかぇ!?」

 

「まさか、そんなことをあの一瞬で、しかもドールハウスの外からやっていたなんて不可能です!」

 

「それでも現に起こっている……それに、リップの言うことをそのまま受け止めるなら治さなければならないということ……つまり、ドールハウスの人形には限りがある」

 

これがリップの持つギフトの二つ、"量子変換(クアンティゼィション)"と"影人形の人形部屋(シャドール・ハウス)"。この二つの組み合わせによってリップはドールハウスの人形がある限り武器も身代わりも創ることができる。

 

命なきモノに力を与え、命あるモノの断片を命なきモノとする……正に耀の影と称しても違和感のないギフトだ。

 

「ッ……!リップ……」

 

「竜胆!お前は帰るんだろう!?元の世界に!俺たちのいない一瞬になにを知ったのかは知らないが、自分の信念だけは捻じ曲げるな!」

 

「秀里っ……!くそっ!」

 

竜胆は苦しそうな顔をしながらゆっくりと隙をかくそうともしないリップの身体を"九頭龍の舞斧"で裂く。

 

だが、その攻撃はリップに受け止められ、扇の斧の原子をゴムへと変えられる。

 

「竜胆……竜胆……竜胆リンドウりんどう……!」

 

リップはただ盲目的に竜胆の名前だけを呼び続け、とうとう彼の胸元にまで辿り着く。

 

「くっ───!来い!アームズウェポン!」

 

竜胆の言葉一つで時空の裂け目からメロンの盾、ミカンの刀、バナナの槍など様々な武器が現れ、二人の身体を強引に押し飛ばして二人の身体をまとめて吹っ飛ばす。

 

「ぐっぁあ!?」

 

「りんどう……!」

 

竜胆は更に武器を召喚してそれらをリップに向けて飛ばし続ける。

 

彼女に触れられればなにかよくないことが起こる……そんな考えが竜胆の中にあったのだ。

 

「竜胆……そう、鬼ゴっこがしたいのネ……?」

 

リップは妖艶で歪な微笑みを竜胆に向けると自身の原子を再び光粒子に変換し、竜胆の目の前に迫る。

 

「ッ!?来るな!」

 

竜胆は自分ごと凍らせるカタチでリップと自分の間に氷塊を出現させ、接触を防ぐ。

 

「───アは。"EL-Shaddai doll makeЯ(エル-シャドール・メイカー)"」

 

次の瞬間、竜胆は氷に追い出されるように弾き飛ばされた。それと同時に竜胆が包まっていた氷塊は瞬く間に可愛らしくデフォルメされた人形となった。

 

「───なっ、」

 

そして竜胆は己の直感で危惧していたものの正体を理解した。

 

───これだ。竜胆は自分自身が最も忌んでいる"人類の希望"が、獣の本能が告げた危険。

 

触れた物を全てヒトガタへと"還る"不殺という名の惨殺。

 

その名を"全知全能(神の御神体たる影人形を創りし、超える神)のヒトガタ"。

 

正に、EL-Shaddai doll。

 

「……いらない。こんなゴミ屑、もうワタシ二は必要ないわ」

 

リップは氷のヒトガタの原子を完全にメチャクチャにして消し去ると、再び翳りのある笑みを竜胆に見せる。

 

そして───竜胆も今の光景で全てに合点がついた。

 

なぜ、この虚構の箱庭の植物が全て死んだように竜胆に応えてくれないのか。

 

なぜ……人間が一人もいないのか。

 

そもそも、ここに"世界の鎖"があるのならなぜリップはわざわざこの世界からの脱出手段であるこの場に竜胆を呼び寄せるように龍を操ったのか……そしてその龍はどこに消えたのか。

 

その、全てが。竜胆の頭の中で合致したのだ。

 

「……リップ、お前、まさか……」

 

「どウしたの……?竜胆」

 

竜胆は確かめるように、内心で信じたくないとばかりに口に出す。

 

この世界の……虚構の箱庭の真実を───

 

「お前、この世界の住人を───全て人形にしたのか?」

 

「───ふ、フフフフふフフフふハはハハハハはハハは!!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうよ。この世界の生き物、ヒトも、幻獣も、神格を持つヤツらも!

タマモもイザヨイもアスカもクロウサギもジンもペストもシラユキも竜胆の大好きな"ノーネーム"のコドモタチもシロヤシャもスズランもヒデサトもエイーダもセックもアーシャもジャックもルイオスもレティシアも魔王連合もサラもフェイス=レスもコウリュウもガロロも天界の刺客も!!!

この世界で一番愛した竜胆も!!!

全部、全て、なにもかも!ワタシの"EL-Shaddai doll makeЯ"でヒトガタにしたのよ!!!」

 

これが、虚構の箱庭の全ての真実。全て、この世界の全て……彼女を除く全てを、たった一つのギフトで崩壊させられたのだ。

 

そして竜胆は聞き逃さなかった。今リップが言った人物の名は全て竜胆と箱庭で一定以上の関わりがある者達───

 

なのに、一人だけいない。ある意味もなにも、箱庭の中で竜胆が最も深く関わり続けた彼女の名がない。

 

それだけで、竜胆にはリップの本当の名を理解してしまったのだ。

 

「───お前、"耀"……なのか?」

 

竜胆のその問いにリップはただケタケタと不気味で生気のない笑みを浮かべ、白銀の瞳はハイライトを喪う。

 

「そう───ワタシの本当の名前は、"春日部 耀"。ああ……ずっと待っていた。竜胆にワタシの名前を呼んでもらえる日を───」

 

 




わかりにくかったと思うので色々解説ー!

といっても基本リップこと虚構の箱庭の耀ちゃんさんのギフトなんですけど。

EL-Shaddai doll makeЯ
これはリップをイメージする上で耀ちゃんさんの影ということでシャドーという単語を使いたかったんですが、手元にあった某なんたらモンスターズのカードが彼女の嗜好である人形と合体させりゃいいんだ!って教えてくれてこうなりました。因みに読み方は本編で書いてありますが、エル-シャドールメイカーです。
EL-Shaddai……そのELの意味はヘブライ語で神です。つまりリップは人形を創る神様です。そしてshadowとかけてまたヘブライ語で全知全能を意味するEL-Shaddaiというダブルどころではなくややこしいネーミング……こんな説明で大丈夫か?因みに結局shadow使ってねぇなんてツッコミは禁句。

影人形の人形部屋
無論これもシャドーとドールから来てる、リップと竜胆くんが組んず解れつした人形部屋とそれによる身代わりです。うん、説明する必要なかった。ちょ、シエン将軍、いくらレベルや条件に不相応に攻撃力低いからって一族の結束しながらヤリザ殿を身代わりにするのは───

量子変換
これは読んで字のごとく……なわけがない。読んで字のごとくならなぜ原子配列変わったし。これはリップが耀ちゃんさんだったという名残りです。量子変換とありますが、量子変換して光粒子になったりすること自体原子配列の組み替えによる副産物です。まあつまりダブルオーライザーの量子化みたいなもんです。クアンタは意図して量子化詰んでるのでまた別ですが。なんでさっきから問題児もライダーも関係ない話してるんだろ、僕。

ふう……はぁ……えっと、今明かされる衝撃の真実ゥ〜!

リップは耀ちゃんさんのそっくりさんではなく、虚構の箱庭の耀ちゃんさんそのものなのでしたァ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。