問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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……サーセン!エクスカリバー抜いた100万のアーサーの一人になってたら遅れました!

だって……だって!盗賊ちゃんが可愛いんだもの!あんなんプレイするしかねぇだろ!

ってかそもそもテスト勉強とテストとテストの成績悪かったから暫く勉強してたんだよ!……泣きたい。こんな多忙な冬休み前、泣きたい。




"A his hopes"

 

「あははハはははハハハハハははははははハ!!楽しィ!楽しい楽しい!楽C!竜胆の心臓の鼓動、トクン、トクンてぇ聴こえてくる!ああ幸せ!」

 

「ちっとも楽しくなんか……ない!」

 

刃物から鋼、鋼からスライム、スライムから龍の鱗……数えだしたらキリがないくらいに目まぐるしく変わり続けるリップの身体。竜胆はそれを六つの腕で完璧に対処し、彼も天狗と鬼と化した尾を更に変化させ、竜胆とリップの戦いは完全な泥試合と化していた。

 

しかも、リップの方はほとんど半狂乱でいるのだからその痛々しさが竜胆の心を突き刺して離さない。

 

だが、竜胆はそんなリップを見ても戦う決心を揺らがせない。

 

こんな自分のために、三人は自分の存在を投げ捨ててまでしたのだ。そんな彼らの姿を見て奮い起たない方こそどうかしている。

 

「さあ竜胆!死のダンスを踊りなさい!」

 

「悪いが、デュエットダンスは苦手でな。リードされるのはもっと嫌なんだよ!」

 

リップと竜胆は互いにジョークともとれる言い合いをしながら武器を、身体をぶつけ合う。

 

リップは右腕の肘関節を"量子化"によって分断、形質変換すると共に常に最高威力を叩き出すだけの素材を集める。

 

一方の竜胆も秀里の戦い方からかわせない攻撃は絶対に守っていかなくてはならないこともしっかりと把握し、六本腕というアドバンテージを有効に活かしている。

 

竜胆は二本の能輪を乱舞させ、振り向きざまに雅槍を放り投げた。

 

「突いて薙ぐ武器がジャベリンじゃないと思うなぁ!呪法・天凱水月!」

 

雅槍は竜胆の呪術によって激流を帯び、それによって発生した水圧がすさまじい速度を引き出す。

 

リップはそれに対し自らの身体を光子に変えて避ける。

 

「ちぃ!チートかよそれ!インチキギフトもいい加減にしろよ!」

 

「アはハはははは!!竜胆ォ!竜胆竜胆竜胆竜胆!!モチロン!ワタシは貴女をAIしてるなう!だからぁ、愛ならこんなことできても仕方ないんだよぉッ!」

 

最早メチャクチャ。一言一言の言葉の速度が次の言葉を紡ぐことすらもどかしいとまでに加速していくリップは竜胆の後頭部を掴みかかり、神刀に阻まれてまた光子変換をしてワープする。

 

「くっそ……無茶苦茶な動きしやがって!イフリート!技借りるぞ!」

 

竜胆は左手のメダガブリューをタジャスピナーに交換し、炎を纏って地面に叩きつける。すると炎が竜胆が殴った地点を中心に半円状に広がっていく。

 

「炎なんかじぇ、ヤめられない止まらない!」

 

リップはその炎すらも"EL Shaddai doll maker"で人形へと変えてしまう。だが、竜胆はその炎をリップの足を止めさせる一手として使ったのだ。炎の翼に割く呪力を最大まで割き、その速度は音速を越え、第三宇宙速度を越え、亜光速にすら達する。

 

そしてその圧倒的な炎のブースターの余波は彼自身の身体にまで及び、竜胆の身体を真紅に染めていく。

 

「ッァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!」

 

竜胆の、否。秀里の神刀が通り抜けざまに強烈な一太刀をリップに浴びせ、慣性的にありえないUターンをした竜胆はすぐさま投げつけた雅槍を拾い切り抜ける。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

更にUターンし、能輪が交差してリップの身体を捕らえる。

 

「ぐっ……!"量子変換"……ッ!?」

 

リップはたまらず"量子変換"で抜け出そうとするが、ギフトカードを足ではたき落とされ、それの発動を不可能とする。

 

「せやぁああああ!!」

 

竜胆はそのまま交差した二本の剣を振り抜き、その衝撃で空中に投げ出されたリップを、まるで空中を踏みしめて、身体のバネを使って回転しながら跳ぶように強襲する。

 

「はぁ!!」

 

右手の舞斧が回転と竜胆の体重を加えて斧でリップを叩き割る。リップはその一撃によって亜光速で箱庭の中枢の床にめり込んだ。

 

だが竜胆は止まらない。戦うことを覚悟した彼は、獣の闘争本能を極限まで絞り出し、理性を抑え付け、"敵を再起不能以上になるまで徹底的に攻撃し続ける"。

 

六本の腕を同時にリップに向けて突き刺そうとし、間一髪のところで躱される。

 

そしてその刺突が生んだ隙はかなり大きく、リップは強く笑った。

 

「竜胆!ワタシと一緒に新しい世界へ行こう!」

 

「お断りだ!お前は俺が好きになった耀じゃないんだよ!お前にとってだって、目の前にいる俺はお前が好きになった俺じゃないだろう!?

もし、俺が竜胆だからなんて理由でそんな迷惑以外のなにものでもない偏愛を向けてくるのなら……お前は決して、この世界の俺に恋をしていたんじゃない!恋に恋をしていただけの、ただのメルヘンが過ぎた女だ!」

 

「そんなことどうだっていいじゃない!大した問題じゃない!ワタシは竜胆といたい!それだけでワタシが貴女に愛を注ぐには充分すぎる!」

 

「ふざけろ!迷惑だメンヘラ!」

 

竜胆は最早リップが耀であることを忘れたように毒を吐きまくる。かつて自分が孤独を演じていた頃にこういう言葉を心の奥底にダメージとして響かせることはよくやっていた彼にとって口喧嘩はお手の物だ。

 

「……ふ、ふ。いいわ。別に。どの貴女になんて言われようと……貴女達はただ、ワタシに愛されているだけでいいのだから。愛に応える必要なんてない。だって貴女達はワタシの愛を満足させるための人形なんだもの!」

 

「……それがお前の本音か!リップ!」

 

リップの言葉から彼女の愛を察した竜胆は心底彼女を軽蔑した。ただ一緒にいたいから動けない人形にするわけでもない。彼女はただ、自分が自己満足のために"竜胆に"愛を注いでいたいからと。そんな理由で竜胆を……秀里とエイーダとセックを。この世界の全てを人形に変えたのだ。

 

「お前はもう耀でもなんでもない!自己満足のために全てを意のままにしようとする自己中心的で後先を見ない快楽主義のバカだ!」

 

少なくとも、竜胆の知っている耀は自己チューでも快楽主義でもバカでもない。誰かのために、誰かと一緒に肩を並べていたいから努力して、楽しいことに目がなくてもそれがこんなことに発展することもなく、自分ができることを見据えるような人間だ。

 

竜胆にとってリップはもう、なにもかもが耀と真逆の生き物なのだという認識を与えられていた。

 

いくら似ていても、いくら同一人物でも。ここまで違えば人の汚い部分の結晶である竜胆は彼女という存在を否定するには充分すぎたのだ。

 

「お前は、ここで殺す!」

 

恐らく、殺す、死ね、と連呼してきた竜胆が本気で人を殺す気になったのは今回が初めてだろう。それはいくら彼がドライにぶっていた時でも本質はなにも変わっていなかったからである。ペストの時も"罪"の"暴走"がなければ殺されていたし、それが起こってしまった結果ペストを殺してしまっただけで彼自身に殺意はなかった。それくらいに彼には今まで人殺しへの躊躇いがあったのだ。

 

だが、彼はもう完全にタガを外した。帰ると約束したからではない。耀のところに帰りたいからでもない。ギフトゲームに勝ちたいからですらない。ただ純粋に、リップを殺したい。

 

それだけだった。

 

◆◇◆

 

戦いは竜胆の殺意から一変、泥沼化の一縷を辿った。

 

竜胆はリップの攻撃を腕以外の全てを無視して斧を、刀を、槍を、二本の剣を振るい、自らの身体を犠牲にしてリップの身体をゴリゴリ削る。

 

リップも竜胆の攻撃の激化に合わせたかのように速く異次元的な攻撃を繰り出す。

 

「殺ッす……!お前を、殺す……!」

 

「デュエットが激化してきた……ああ、これが貴女の情熱……!ワタシを殺したいという情熱!」

 

会話は最早必要ない。交わす価値すらない。

 

あるのはただ、目の前にいる存在を殺し/愛し尽くすという生物の本能のみ。

 

拳が空を切り、六つの腕が世界を割く。その空間には、否。その世界には殺しあい、愛し合う二人しかいない。

 

二人はこの世界のアダムとイヴ。……だが、二人は互いに命を実らせることなんてしない。

 

互いに、この世界から最後の命を消し去ろうとしているのだ。

 

殺し愛、冷静さを欠いていたからなのかもしれない。リップがそれに気付けなかったのは。

 

怒りと悲しみ、相反する二つの感情が早く終わらせたいと願ったからかもしれない。竜胆がそれに気付けたのは。

 

『───────』

 

「───えっ」

 

その瞬間、竜胆はリップの腕に捕まった。リップはすかさずギフトネームを紡ぎ、勝利を、そして幸福と絶頂を確信した。

 

「───"EL Shaddai doll───」

 

「"人類の希望(ア・ヒューマン・オブ・ホープ)"……形式、"正体不明(コード・アンノウン)"!」

 

しかし、竜胆は自分の残された力ほとんど全てを削って"劣化・正体不明(アンバランス・コード・アンノウン)"を発動して一瞬リップのギフトの発動を遅延、その隙に竜胆は全力で抗って腕から脱する。

 

「はぁッ……はッ……!今のは……?」

 

竜胆は霞んできた視界の中、リップに気をつけながら必死で聞こえてきた声の元を探す。そしてそれはすぐに見つかった。

 

『───────』

 

「……いいのか?」

 

その声の主は竜胆になにかを提案したようで、それに対して竜胆は問うと、声の主は承諾したようで竜胆は改めてリップと対面する。

 

声が聞こえるまで無闇に力を無駄遣いしていたせいで炎のブースターもその炎が尽きようとしている。当然、それに注ぎ込んだ呪力も底をついている。

 

ならば───これしか手はない。

 

「ッ!」

 

竜胆はブースターの加速がこれ以上不可能になるまで加速した。その加速はほんの数秒だったが、それはしっかりと竜胆の役割を果たした。

 

「ふふっ……ようやく、ようやっと終わりが来るのね……さあ竜胆、ワタシの腕のナカに……!」

 

リップが腕を広げ、交差する一瞬で捉える体勢に入る。目に見えて減速している竜胆に対してそんな余裕を見せているのにはもう竜胆は万策尽きたという確信と竜胆が自分のものになるということに対する陶酔があるが故だろう。

 

だからこそリップは、次の竜胆の行動を理解できなかった。

 

タジャスピナーを投げ捨てた竜胆の左手に握られていたものがその姿を見せる。そしてそれを見てリップは固まった。

 

「っ!?それ……なんで……!?」

 

「これでぇ……っ、おわり、だぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

竜胆がリップに向けて見せたのは───彼女自身が人形に変えた、この世界の竜胆の人形だった。

 

恐らく、竜胆が"人形部屋"から脱出した勢いで一つだけ出てしまったのだろう。

 

そして竜胆にとってこれが最高の希望となり得たのは、これが他でもない竜胆の人形だったということ。一度竜胆達の目の前で造った人形を破り捨てた彼女だ。これが竜胆のものでなければこのような狼狽をするはずがない。

 

一閃、リップの身体は竜胆によって、五つの傷口を造られて地に伏したのだった。

 

 





ふぅん。竜胆くんの心理描写って疲れる……わりと心移りしやすいからどうビッチに見せずに書くか……

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