「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜めんどくせぇ〜〜〜〜〜〜」
自宅の屋根で雲に身体を預けながら天を仰ぐ青年が呟く。
彼はエクレール、先程までナツが粉々に破壊した定例会の会場を徹夜で完成させ、その後帰宅し就寝したのは良いものの、翌日の今日はナツが出した決闘という条件をエルザが勝手に受諾し、自分も参加しなければならないことを起床時に思い出し、それから暫くこうしてだらけていた。
(なんで俺までナツに付き合わされなけゃならないんだよ…こっちは徹夜明けなんだが、主に誰かさんのせいで…!)
会場を破壊した滅竜魔道士に怒りを憶え、沸々と込み上げてくるモノを自身の中に感じ取る。
(かといって参加しないと後からエルザが煩いだろうし…八方塞がりか…?)
と、思考を巡らせああでもないこうでもないと悶えていた時、
「!」
突如、エクレールの脳内に名案が浮かぶ。
「そうだ…!その手があった…!こうしちゃいられない、早速準備を…!」
そう呟いたエクレールは雲に乗ったまま屋根から飛び降りて何処かへと向かっていくのだった。
―――――――――――――――――
数時間後、ギルド『妖精の尻尾』の入口前で“三人”を取り囲むようにしてギルドメンバーの魔道士達が集まっていた。
互いに睨み合う”三人“―ナツとエルザ、そしてエクレール
三人は静かに闘志を燃やす。
「ちょ…ちょっと!!!本気なの!?三人とも!!」
「あらルーシィ」
他の魔道士を何人か押しのけてルーシィが顔を見せる。
「本気も本気。本気でやらねば漢では無い!!!」
「エルザは女の子よエルフマン」
「女は女でも怪物のメスさ」
「だって…最強チームの三人が激突したら…」
「最強チーム?何だ、そりゃ…」
「あんたとナツとエルザ、それとエクレールじゃないっ!!!妖精の尻尾最強メンバーでしょ」
「はぁ?くだんねぇ!!誰がそんな事言ったんだよ」
と、グレイが小馬鹿にしたような言い方をした途端、笑顔だったミラが泣き出した。
「あ……ミラちゃんだったんだ………」
「グレイ、後で説教な」
それを聞いていたエクレールはグレイに対して静かに圧を掛けた。
「わ、悪かったって!だから勘弁してくれ!」
「いったい、何されたのよ…」
グレイの慌てようにルーシィは底しれぬ恐怖を感じ取っていた。
「まぁ確かに…ナツやグレイ、エクレールの漢気は認めるが…“最強”と言われると黙っておけねえな。妖精の尻尾にはまだまだ強者が大勢いるんだ」
と、エルフマンは語る。
「最強の女はエルザで間違いないと思うけどね」
「最強の
と、口々に意見を出していく魔道士達。
「私はただ、ナツとグレイとエルザそしてエクレールの四人の相性がいいと思ったのよ」
漸く泣き止んだミラが思っていた気持ちを吐露した。
「あれ?仲が悪いのが心配って言ってませんでした?」
「なんにせよ、面白い戦いにはなりそうだな」
「そうか?オレの予想じゃエクレールの圧勝だが」
エルフマンとグレイが意見を口にした時、ナツ、エルザは互いに睨み合う。対してエクレールは少々面倒くさそうにしながらも仕方ないと言わんばかりに臨戦態勢へと入る。
「こうしてお前たちと魔法をぶつけ合うのは何年ぶりかな………」
感慨深そうにエルザは物思いにふける。
「あの時はガキだった!!!今は違うぞ!!!今日こそお前らに勝つ!!!」
ナツはエルザとエクレールにそう言い放ち、やる気満々といった様子。
「なら、私も本気でいかせてもらうぞ久しぶりに自分の力を試したい…全てをぶつけて来い!!!」
そう告げたエルザは新たな鎧へと換装しており、その姿はまるで炎を擬人化したような姿であった。
「炎帝の鎧!!!耐火能力の鎧だ!!!」
「ナツの炎が半減されちまう!!!」
「エルザ!!!そりゃあ本気すぎだぜ!!!」
周りが口々にナツに勝ち目がなさそうな発言を聞いたハッピーは、
「やっぱりエクレールに掛けていい?」
賭けの胴元であるカナに賭けの対象の変更を要求していた。
「なんて愛の無い猫なの!!!」
あまりにも薄情なハッピーの所業にルーシィも突っ込まざるを得なかった様子。
「炎帝の鎧かぁ…そうこなくちゃ、これで心置き無く全力が出せるぞ!!!」
そんなエルザを見て、闘志が湧いてきたナツ。
両手に炎を纏わせて構えを取る。
対してエクレールは、
「………はぁ………」
やる気が無い為にため息を吐いて嫌そうにしていた。
「どうしたエクレール、元気がなさそうだが?」
不思議そうにエルザはエクレールを一瞥し、疑問を投げかける。
「そりゃそうだろ、こっちは誰かさんのせいで寝不足なんだよ………誰かさんのせいで……」
と、恨みがましくナツを睨むエクレール。
対して顔を逸らすナツ。
「………まぁ、取り敢えずやるだけはやってやるよ。」
と、嫌そうだが仕方ないと言わんばかりに再度構えるエクレール。
「2人がかりでいいぜ、掛かってこいよ。」
そう言ってエクレールは二人に手招きをし、挑発する。
その時急に風が止み、周囲から音が消える。
「「「……」」」
三人とも、互いに睨みを利かせて互いに牽制しあう。
それぞれが理解していた。マカロフの合図が出るまでは動くべきではない、と
そして、遂にその時がやってきた。
「始めいっ!!!」
マカロフの合図と同時に動き出すナツとエルザ。
狙いは勿論エクレールただ一人。
ナツが炎を纏った拳を振り被り、殴りかかるがそれを紙一重で躱して裏拳を顔面目掛けて叩き込む。
「がっ……!」
受けた拳の重みで軽く吹き飛ぶナツ。
次にエルザが剣を構えて此方へと向かってくる。
(流石に生身では受けきれないな…)
そう察したエクレールは、
「なっ……!」
エルザが剣を振り被ったと同時に刀を’召喚‘して鍔迫り合いへと持ち込む。
『どういうことだ!?』
『エクレールの奴、まさかエルザと同じ魔法を…!?』
ギルドの仲間たちがそんな事を口々に言い合っている中、エクレールはしてやったりと笑みを浮かべる。
「悪いが、武器を呼び出すのはお前だけの専売特許じゃないってことだ。」
「くっ……!」
そう言われたエルザは、剣に力を込めるがエクレールの刀はびくとも動かない。
その装飾は質素ながらも何処か気品を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。
「因みに、この刀を見せたのはお前で‘2人目’だ」
「何…!?」
「それだけ俺が’本気‘で相手してるってことだよ…!」
そう言って刀を握った手に力を込めてエルザを振りほどく。
「はああああああ!!!」
直ぐ様エルザは反応して再び剣を此方へと向かわせる。
「上等!!!」
エクレールもそれに負けじとエルザに向かっていく。
「俺を忘れてんじゃねええええええ!!!」
吹き飛ばされていたナツが2人の頭上から此方に向かって炎を纏った拳を振り下ろそうとする。
もう少しで勝負の行方が決まる…!
そんな時だった。
突如として響いた両手を叩く音。
「そこまでだ」
そう言いながら魔道士達の波に割って入ってきたのは人型のカエルであった。
「全員その場を動くな、私は評議員の使者である」
カエルは評議員の使者を名乗り、此方を見据えていた。
「評議員!!?」 「使者だって!!?」「何でこんな所に!!?」
「あのビジュアルについてはスルーなのね…」
ルーシィがレヴィ達にツッコミを入れた後、カエルは懐から丸めた令状を取り出してエクレール達に向けると、
「先日の
次にカエルが放った言葉は、信じられないものであった。
「エクレール・ウェザリア並びにエルザ・スカーレットを逮捕する。」
「「え」」
「何だとおおおおお!!?」
エクレールとエルザのセリフが被ったと同時にナツが叫ぶ。
「これまた唐突だな。」
「詳しい話は評議院にて話す。おい」
『はい』
カエルが合図をしたと同時に背後から複数の部下らしき者達が現れる。
直ぐ様エルザに手錠を掛け、次はエクレールの番となった時
「あ〜ちょい待ち」
右手を彼らに翳して制止すると、頭に指を当てて
まるで何処かへとテレパシーを送っているようだ。
すると、
「おー終わったか。」
『え!?』
周囲がザワついた。それもそのはず、そこには先程までナツとエルザの2人と決闘していたエクレールが立っていたのだから。
「どういうことだ…!?」
エルザが訝しげにエクレールを睨む。
何が起きているのか理解できていないのだろう。
それを見たエクレールは一言、
「こういう事。」
そう言って指を鳴らす。
するとボフッ、と効果音が出たと同時に先程までのエクレールがいた場所から煙が上がり、そこにいたのは
「ちっちゃ!?」
小さな小人だった。
「小雲郡の一つだ。魔力を込めれば俺の身代わりだって出来るのさ。」
つまり、先程までナツ達と戦っていたのはエクレール本人ではなくエクレールの魔法で生み出した存在による変わり身であった。
「な、に……!?」
コレに驚いたのかエルザはそう発すると、何も言えなくなった。
「いや~助かったよ。今日はコンディション最悪だったからさぁ、キミのおかげで約束を守れたよ。ありがとう。」
そう言ってクラウディーズの一人にしゃがみ込みながら感謝を伝える。
すると彼はニパッと笑うと、近くまで寄ってきていたいつもの雲の中へと戻っていった。
「さて、評議院の使いの方、本物の俺は此処にいる。逮捕するなら俺もだろう。」
そう言ってエクレールは両手をカエルの前へと差し出した。
「あ、ああ…そうであるな。」
カエルが部下らしき者達に合図を送ると彼らが手錠を持ってエクレールへと近づいてくる。
その時だった。
「…ざけんな」
「ん…?」
声がした方を見ると、ナツがエクレールを睨んでいた。
「ふざけんな!エクレール!!!」
そう叫びながらエクレールへ殴りかかろうと飛び込んできたナツ。
だったが、
「ホイっとな。」
即座に雷のモードに変化し、ナツへと落雷を落とした。
「がっ………!?」
ほんの一瞬の出来事の様にも思えたその瞬間、ナツは全身黒焦げになっており、その場に倒れ込んだ。
「ナツ!」
思わず叫ぶルーシィだったが、
「心配するな、どうせ直ぐに動けるようになる。」
そう淡々と言い放つエクレール。
「あぁ、そうだ使いの方。少しだけ待ってほしい」
「何かね…?」
「今俺が黒焦げにしたそいつ、目覚めたら間違いなく議会に乗り込んで暴れ始めるぞ。だから魔法で拘束しても構わないか?」
エクレールが黒焦げのナツに指を差しながらそう告げる。
そう言われたカエルは少し考える。
「安心してほしい。それ以上逆らうつもりもないし逮捕には応じるつもりだ。」
エクレールが目を逸らさずに、カエルの目をじっと見つめ続けている事に納得したのか
「……分かった。だが、その後で普通の手錠は付けてもらうぞ。」
「了解した。」
その後、エクレールは直ぐ様行動に移った。
パーカーの色が黒へと変化したかと思うと、ナツの両手と両足首に錠の様な黒い塊が現れた。
「そいつ用の枷だ。俺が解除しない限り外れない。」
そう言い放った後、手錠を掛けられる。
「エクレール!」
「心配するなルーシィ、直ぐに帰ってこられるさ。」
心配して駆け寄ってきたルーシィに向かってエクレールは言い放った。
「あ〜悪いんだが、ナツの見張りだけ頼むわ。そいつ何が何でも乗り込んできそうだからな。」
そう言った後、あ、それとと付け加えて一言。
「俺のいない間に何か問題を起こした場合、どうなるか………分かってるよね………?」
と、黒く変化したパーカーに‘満面の笑み’でギルドメンバー全員にそう’警告‘を発した。
これに対して全員、
『イエッサー!!!』
と、口を揃えてそう叫んだ。
全員調教された様なそんな感じで怯えていた。
その後、連行された後ルーシィは
(エクレールって……なんなの〜〜〜!?)
そう心の中で叫ぶのだった。