[二次創作] ジョジョの奇妙な冒険 〜フォールボックス〜   作:ウニ野郎

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丈惟とは別の、杏町の物語




III 氷の戦士

(からもも)町、警視庁。

 

「センパーイっ!氷室センパーイ!」

新人の刑事、高梨(たかなし)優也(ゆうや)が、先輩刑事の氷室を呼んだ。

「ん?どうした、優也。」

「…先輩、また(・ ・)あの娘が面倒事起こしたらしいっすよ。」

「え…また?」

氷室は肩を落とし、その少女のもとに向かった。

 

如杏奈(じょあんな)っ!」

「あ、甚二。ヤッホー。」

如杏奈、17歳の少女だった。学生服を身に纏い、嬉しそうに手を振る。

「ヤッホーじゃない。またお前は喧嘩したのか?ていうか、今月これで5回目じゃないか…。」

「ごめんごめん。相手がちびっ子から財布奪ってたからさー、取り返してやろうと思ったらアッチから殴ってきたんだよねー。…今回は私からじゃあないよ?」

 

如杏奈はストレートに伸ばした茶髪をフワフワ揺らしながら答えた。聞かなくても答えるのは、ここにすっかり慣れてしまったからだろう。いや慣れられたら困るんだけど。

「氷室先輩、この娘いつも通り家に送ってくださいっす。」

如杏奈は、喧嘩こそするが自分からは手を出さない。大体はカツアゲをしている不良か、先に手を出してきた奴にしか攻撃をしない。まあ、少しは優しい不良…と言えるのだろうか?なので、大体相手に話を聞くとソッチが悪いので、いつも氷室が家に送っている。

「じゃ、行くぞ、如杏奈。」

「アイアイさーっと。」

 

「…先輩、いっつもあの娘に甘くねえっすか?」

「んー、仕方ないんじゃないかな。だってあの二人…」

「?」

恋人同士(・ ・ ・ ・)だからね。」

「へ〜 … ファッ!?」

 

「…だから、喧嘩もほどほどにな。」

「へいへい、分かってますよぉ〜。」

不良娘と、刑事。まったく真逆の関係だが、この二人は恋人同士である。氷室に会いにくるために喧嘩しているのではないか、と警察の中で小さな噂となるくらいである。ていうかどこから恋人情報が漏れたのだろう。

「あーあ、最近退屈だなぁー。」

…おそらく如杏奈が情報元だろう。この娘は本当に大事な秘密事以外は割と喋る。

「なんか面白いことあったぁー?甚二。」

「面白いことか…不思議なことなら、あるな。」

「え!何々!?気になる気になる!」

興味津々に如杏奈が顔を近づける。

「ち、近い、近いって…。」

年下相手に情けない…と思うだろうが、これは仕方ないことだ。彼女の顔は綺麗に整っており、スタイルも17歳にしては良い。綺麗な髪からもいい香りがする。近づかれて緊張しないほうがおかしいと言うものだ。

「まあ、変な事件なんだけど、博物館でのことなんだけど…」

 

「ハンハン、なるほどなるほど?」

如杏奈は下唇の右端を撫でながらうなづいた。彼女が何かを考えているときの癖だ。またいつものように勝手な考察でもしているのだろう。

それで助かったこともあったが(ボソッ

「まあそれはそれとして、最近なんか町の空気、よどんでるよね…。」

考えるのが面倒になったのか、話題を変える如杏奈。だがたしかに、博物館での事件から、なんだか町全体に良くないモノがいるかのように、空気が重い。あの事件と関係があるのだろうか。

「まあ、確かに空気悪いかもな。とりあえず博物館の事件より大きい事件が起きてるわけでもないし…。」

すると、すぐ横から人が倒れた音がする。

「…如杏奈!?」

隣で元気にしていた如杏奈は、頭を抱えて地面に倒れていた。

「あ…っ!頭……が…!」

「如杏奈っ!?如杏奈!!」

 

 

「…大丈夫だろうか。」

如杏奈の実家、停城家(ていじょうけ)。すぐ近くまで来ていたのでとっさに運び込み、すぐにベッドに入れたが、如杏奈は目を覚まさない。

「すいません。急に上がりこんで。」

如杏奈の母親である明美(あけみ)に挨拶を交わす。如杏奈の母親と言うよりは姉に見えなくもないが、そんな若々しくても二人の子を持つ母親だというのだ。よく「歳はとりたくないわ」なんて言っているが、見ただけではまったくもって歳をとっているようには見えない。

「いいのよ、甚二くん。にしても、元気が取り柄のこの子が急に倒れるなんて、どうしたのかしら。…あ、お茶入れてくるわね。」

「お、お構いなく。」

明美さんがいなくなってから、甚二は如杏奈の手を握りしめた。

「…ん?なんだ?何か、違和感が…」

すると、如杏奈の身体から黒い煙のようなものが漂い始めた。

「っ!?なんだ!?これは!」

だが、その黒い煙はすぐさまおさまった。部屋には、如杏奈の寝息だけが聞こえる。

「…今のは、一体…。」

すると、後ろから謎の気配を感じた。

「っ!」

とっさに振り向くが、そこにはいつもどおりの町の風景が広がっていた。

「気のせいか…?」

すぐに如杏奈に向き直るが、やはり後ろから気配、いや今度は視線(・ ・)をハッキリと感じ、振り向いた。

「…虫か?」

そこには一匹のコオロギがいた。こんな時期に何故コオロギが?と考えていると、羽を動かしながらそのコオロギはこう言った(・ ・ ・)

『その女を、我々に差し出せ、小僧。』

「なっ…!?」

ガタッと立ち上がり、虫のほうを睨みつける。

「ん…、甚二?あれ、ここ、私の部屋…?」

「如杏奈、ちょっとここにいて。少し用ができた。」

そう言って甚二は部屋を出ようとする。

「ま、待って。」

如杏奈にスーツの裾を掴まれ、立ち止まる。

「き、気をつけてね…。」

甚二は如杏奈に向き直り、

「ああ、大丈夫だよ。」

そう言って額に軽くキスをして、部屋を出た。

「…っ。なんなのよ、一体…。」

如杏奈は顔を真っ赤にしてベッドに戻った。

「…ほんとに、大丈夫かな。甚二…。」

 

 

 

「ためしに路地裏まで歩いてきてみたが、本当についてくるとはね。」

甚二の目の前には、先程のコオロギのようなものがいた。先程より数が増えており、すでに五十匹以上はいた。

『貴様のように力を持たぬものなぞ、この程度の数で処分など容易なのだぞ?一人で良いのか?』

「ああ、一人でも虫くらい処理できるさ。殺人犯より怖くはないからね。」

虫と平然と会話している自分に、何故だか笑いがこみあげてくる。平静を保っているつもりでも、内心はこの虫の大群に怯えているのだろう。

「お前らはなんで如杏奈を狙っていた?言え!」

『…全ては、[箱]のためである。我らが守る[箱]に、チカラある者を近づかせないためである。』

チカラある者?たしかに如杏奈は腕っぷしは強いがその事を言ってるとは思えない。ならば、如杏奈は何か、こいつらのおそれるような力を持っているのだろうか。

「…つまり、お前らは如杏奈を処分、つまり殺そうとしてるってことか…?」

『うむ。我々の脅威となる者ならば必ず処分する。それは年齢、性別を問わぬ。』

虫の大群の一番前にいた虫がすぐさま答える。その瞬間、その先頭の虫が甚二によって踏み潰された。

『っ!貴様抵抗するのか!』

「当たり前だ!」

甚二は力いっぱい叫んだ。その瞬間、身体から薄い水色のオーラのようなもの(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )が現れた。

『っ!?これはもしや!スタンドのオーラ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)!?作戦変更!この男も処分…

 

「甚二…何してるの?」

「っ!?」

路地裏の入り口には、先程のように弱っていない、元気な如杏奈が立っていた。

「部屋で寝てたら楽になったんだけど、何してるの?それに、この虫達…何?」

「離れろっ!」

甚二はすぐに叫んだが、遅かった。すぐさま虫の一匹が羽の間に挟んでいたのであろう針を発射し、如杏奈の首を突き抜けた。

「…え?」

その一言だけを発し、如杏奈は倒れた。すぐさま甚二がそばに駆け寄り容態を確認する。

(針は貫通している…。針に何か、睡眠薬のような物を付着させてたのか。だが、何故一撃で決めなかった?とっさのことだったからか?)

甚二は如杏奈を壁に寄りかからせ、虫達にゆっくりと向き直る。

『そこをどけ。その女を差し出せばお前の命は助けよう。さあ、女を…』

 

「黙れ!この虫ケラが(・ ・ ・ ・)!」

 

『…っ!?』

「お前らだけは許さないぞ…俺の、俺の…

 

 

大切な人を傷つけたヤツらは(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)っ!!」

 

甚二がそう叫んだ瞬間、甚二の身体から放たれた水色の光が路地裏を照らした。そして、光が甚二の背後に一つの()を作り出した。

「ギギギギギッ…。」

その姿は全体的に空色だった。全身が機械のようになっており、両手がロボアームのような形状をしていた。手足はまるで棒のように細かった。肩には氷のようなもので尖ったモノが出来上がっていた。

『これは!これが、この男の幽波紋(スタンド)!』

「うおぉぉぉぉっ!」

甚二が叫んだのと同時に、そのスタンドはそのアームを開き、真ん中にあった穴から白い霧のようなものを真っ直ぐ虫達に吹きかけた。

『なんだ!?スタンド攻撃だ!全員、退…避…』

すると、虫達はパキパキと音を立ててたちまち凍りつき、虫型の氷の置物のようになった。

「…今すぐお前らがここを去るなら見逃す。だが、

まだ来るなら…一匹残らず、凍らせるぞ!」

虫の先頭にいた一匹が、しばらく動かなくなったと思えば、

『……全員、退避!一度引き体制を立て直す!』

すると、あっという間に虫達は飛び去って行き、あたりは静かになった。短い静寂が心を落ち着かせる。

 

「…奈、如杏奈!」

「へっ?」

如杏奈が目を覚ましたのは、如杏奈の部屋だった。

「はれ?虫…虫は?なんで私、部屋に?」

「君ばずっと寝ていたんだ、何もなかったよ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)。じゃあ俺は帰るから、じゃあな。」

「ま、待って!甚二…。」

如杏奈が裾を掴んできた。

「…どうした、如杏奈。」

「…ありがとう。」

如杏奈は俯いたままそう言った。

「…なんのお礼だ?それ。」

「夢の中でね、虫に襲われた私を甚二が助けてくれてたんだよ。だから、ありがとうって。それだけ。」

そこにいたのは、喧嘩ばかりの彼女でも、周りを振り回すようないつもの彼女ではない。甚二だけが知る( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )彼女の姿をがあった。

 

 

 

 

「…それで?スタンド使いになる可能性のある町民は何人殺せたんだい?」

一つの部屋に女性が一人、男性が二人いた。部屋はライトがついておらず、部屋の真ん中にある大きな金魚の水槽のライトだけで部屋を照らしていた。

「ボチボチといったところだ。5〜6人の処分は容易だった。なにせ力に目覚めていないからな。だが、発現の可能性がある者達を4人ほど殺し損ねた。恐らく協力者がいたか、すでに発現していた者だろうな。」

指先にコオロギを乗せた男性がそう説明すると、女性がため息を漏らした。

「処分し損ねた、ということはこれから私達と戦うことになる、ということですよ?しっかり処分してもらわないと困ります。」

「まあまあ、そう言わずに。楽しみがあるだけいいじゃあないか。」

紫色のパーカーを着た男性がそう答える。

「にしても、君のその虫スタンド、えっと…。

軍隊蟋蟀(ターキッシュクレセント)』だっけ?ほんと便利だね。」

コオロギを撫でていた男性が、嬉しそうにそのスタンドを掲げる。

「こいつは有能だからな。ハハッ。」

「何を呑気な…。結局、生き残った者達は一体どうするつもりなのよ?」

紫色のパーカーを着た男性がニヤリと悪い笑顔を浮かべる。

「決まってるじゃあないか……。」

「ああ、答えは一つだ。」

二人の男性が声を合わせて言う。

「「我らが手で、見つけ次第殺す。」」

それを聞き、女性は美しい顔に笑顔を浮かばせる。

「それを聞いて、安心したわ。私も考えは同じ(・ ・ ・ ・ ・ )でしたから。」

 

 

______________________

 

スタンド「コールド・プレイ」

本体・氷室(ひむろ)甚二(じんじ)趣味:知恵の輪

破壊力C

スピードC

射程距離C

持続力C

精密機動性C

成長性B

 

スタンド「軍隊蟋蟀(ターキッシュクレセント)

本体・???

破壊力C

スピードB

射程距離A

持続力D

精密機動性A

成長性D




はいどうも、ATOGAKIです。
今のちょっとつまんないな(ボソッ
第3話、如何でしたでしょうか。
今回は停城家の一人、如杏奈ちゃんのストーリーでした。
まあメインは氷室くんになってましたが。(笑)
コールドプレイ、本編では語りませんでしたが、これからはそう呼ぶようにさせて頂きます。
では、言いたいこともなくなってきたのでこのあたりで。
では第4話のあとがきにてお会いしましょう!
To be continued!!

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