ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ①

ハグレ悪魔バイサー討伐の為、柳は見学のヴァーリと共に廃工場を訪れていた。

 

 

 

「ぶるぁああああああああああああっ!! 何処ぉだぁ。何処ぉに居るぅ?」

 

「……なんで彼を連れてきたんだい? 後始末が大変だろう?」

 

「……ついて来たんです。舎弟の面倒を見るのも親分の勤めだからって……。いや、気持ちは有難いんですよ。でも、彼らに任せると周りの被害が……」

 

これから行われるであろう惨殺によって生じる被害と、その後始末を考えて柳が頭痛を感じた時、彼の未熟なマントラにバイサーらしき気配がかかった

 

「後ろです! ……あっ!」

 

「あ~あ、やってしまったな」

 

「美味そうな匂いが……ヒィッ!」

 

柳達を哀れな獲物と思って出てきたバイサーの顔はすぐさま恐怖に塗りつぶされる。身の毛のよだつほどの威圧感を感じさせる程の巨漢が片手で自分を持ち上げていたのだ

 

「俺の背後に立つんじゃねぇ!!」

 

「うぎゃぁぁぁぁぁっ!! に、逃げ……」

 

部屋の入り口付近まで投げ飛ばされたバイサーは床に激突した衝撃で血潮をぶちまけながらも這いずって逃げようとした。勝てない相手から逃げる。確かにそれは間違っていない。敵対しているのがバルバトスでさえなければの話だが……。

 

「男に後退の二文字はねえ! 絶望のシリングフォール! ぶるぁあああああああああああああっ!!」

 

「ギャァァァァァァァァッ!!」

 

「ハグレ悪魔バイサー! 貴方を滅しに……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

「……今、誰か巻き込まれませんでした?」

 

「……俺は何も見ていない。赤い髪をした女に率いられた集団がバルバトスの術に巻き込まれた所なんて見ていない」

 

「……うん。何も起きていませんね!」

 

 

「今日の俺は紳士的だ。運が良かったな。ぶわっはははははははははははっ!!」

 

柳とヴァーリが現実逃避をする中、バルバトスの高笑いが木霊した……。

 

 

 

 

「……それで、説明して貰えるかしら? 貴方達は誰なのかしら?」

 

あの後、怪我をしたリアス達を治療した柳は部室に呼び出されていた。最初は動向を渋った従者達であったが

 

「へえ~、ご飯いらないんですか? ずっと臭い服のままでいいんですね?」

 

家事の全てを握っている柳には逆らえず、同席している。ちなみに、バルバトスと柳はソファーの後ろに立ち、ギルガメッシュとエネルがふんぞり返っているのだが、神嫌いの英雄王と空島の神では相性が悪く、肘で啄きあっていた。

 

「おい、雑種。王に向かって無礼であるぞ。まぁ、良い。名乗ってやろう。我が名はギルガメッシュ。この世で唯一の真の王だ」

 

「我が名はエネル。我は神なり!」

 

「ぶるぁあああああああああああつ!! バーバババーババ、バルバトス・ゲーティアだっ!」

 

「わ、私は柳、この人達の」

 

「コイツは我の家臣だ」

 

「いや、我の下僕だ」

 

「俺の舎弟だ」

 

「……こんな関係です」

 

自己紹介に割って入り、勝手な事を言い出す三人に対し、柳は疲れた顔を見せ、リアスは同情した視線を送っていた……

 

 

その後、三人の茶々が入るも柳がリードして順調に話が進んだが、リアスの発した一言に場の空気が凍りつく

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴方達。私の眷属にならない?」

 

 

 

 

 

 

「……雑種が、身の程を知れいっ!」

 

「……不届き」

 

「……屑がァ」

 

「……嫌ですね。貴女程度の下に付くなんて」

 

その言葉を聞き、三人からは極大の殺気が発せられた……

 

 

 

 

 

駒王学園の校庭では一触即発の空気が流れていた。原因はリアスの言葉である。眷属への勧誘を断られたリアスはせめて柳を監視対象に入れようとしたのだが……

 

 

「はぁ? ここは私の領地だから勝手な真似はさせない? ここは日本ですよ。貴女達三勢力の言う縄張りなんて、ヤクザが言う、此処はうちの組のシマ、っていうのと変わらないじゃないですか。領地を主張したいなら冥界でどうぞ」

 

っと、再び断られ、それでもしつこく食い下がるリアスに対し、我慢できなくなった柳が提案したのだ

 

 

「じゃあ、私達と戦って、二勝できたら入りますよ。ただし、出来なかったら不干渉でお願いしますね。あっ、組み合わせはこちらが決めて良いですか?」

 

「望むところよ! 私の眷属の力、見せてあげるわ!!」

 

所詮、相手は相手は人間。悪魔には敵わない。リアスはそう考えていた。直ぐにその考えを覆されると知らずに……

 

 

一戦目 柳 vs 小猫

 

二戦目 エネル vs 祐斗 一誠

 

三戦目 バルバトス vs 朱乃

 

四戦目 ギルガメッシュ vs リアス

 

 

 

 

 

「……手加減しません」

 

「手加減して貰うのは貴女の方では? それと、子供はもう寝る時間ですよ。後でオネムだから負けたって言わないで下さいよ」

 

初戦は柳と小猫の戦い。油断なく構える小猫に対し、柳は余裕を崩さず、挑発まで仕掛けていた。それを見て、リアスが得意げに口を開く

 

「あら、小猫の駒は戦車よ。戦車の特性は頑丈さと攻撃力。人間が耐えられる攻撃じゃないわ。降参するなら今の内よ」

 

「早く始めてくれませんか? 見たいテレビがあるんですよ」

 

「くっ! じゃあ、始め!」

 

「……吹っ飛べ」

 

柳の挑発に青筋を立てたリアスが開始の合図をすると共に小猫は柳に突っ込んでいき、拳を振るう.小猫の武器は戦車の特性だけでなく、極めてきた格闘技術だ。今も無駄のない拳が放たれ

 

「マントラ」

 

「なっ!?」

 

柳はそれを軽々と交わす。まるで動きを完全に読んでいるかの様に……。リアス達が驚愕の顔を浮かべる中、仲間である三人は不満そうな顔をしていた

 

「まだまだマントラが甘いな。修行が足らん」

 

「あの程度ならミリで避けんとなぁ。未熟者めがぁ」

 

「我の家臣ならもっと強くならねばならん。修行内容を練り直すぞ」

 

 

 

 

「……嫌な寒気が。さて、もう終わらせますか」

 

「……避けるばかりじゃ私には勝てません」

 

先程から一発も攻撃が掠りもせず、小猫は苛立っていた。柳はそんな彼女の顔を見て馬鹿にしたように指さし、

 

 

「カルシウムが足りていませんよ。だからイライラするし、背も小さいんですよ」

 

「……殺す」

 

禁句を言われ小猫は突っ込んでいく。それが柳の罠とも知らずに……。小猫の拳を避けた柳はその攻撃の勢いが収まらない内に指を二本突き出す。小猫の両目に向かって……

 

「ッ!」

 

咄嗟に後ろに体を逸らし回避した小猫だったが、大きく体勢を崩し、その隙に柳は後ろに回り込んでいた。

 

「これで終わりです」

 

そのまま小猫の右腕と後頭部を掴んだ柳は足を払い、勢いよく小猫の顔面を地面に叩きつけ、右腕を掴んだまま体を大きく捻る

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「……うるさい」

 

肩の外れる音と小猫の悲鳴が校庭に木霊した。そして、まるで耳障りだと言わんばかりに不機嫌な顔をした柳は小猫の頭を力を込めて踏みつける。小猫が回避しようとしてもその移動先を読んで、何度も、何度も。そして、やがて子猫は気絶して動かなくなり、校庭には血だまりが出来ていた。

 

「さぁ、次の試合にしましょう」

 

柳は自分を睨めつけるリアス達の視線を気にした様子もなく、優しい笑みを浮かべ、そう言った……。

 

 

 

 

 

「おい、柳! 幾ら何でもやりすぎだろうがっ! どうしたんだよ!? こんなの、お前らしくねぇ」

 

普段見知った友人の豹変したとしか思えない行動に対し一誠は声を荒げるが、柳はなぜ怒鳴られているのか理解できないという顔をした

 

「はぁ? これ、戦いですよ。それはそちらも了承したでしょう? レーティングゲームなんて戦いモドキを楽しむのが悪魔なんだから、この程度で文句言わないで下さいよ。それとも、貴方方の言う戦いとは、一方的に相手を痛めつける事を言うのですか? それは、それは、まさに悪魔の所業ですね。ああ、それから、私らしくない? 貴方が知っている私も、今の私も、私の一面に過ぎませんよ」

 

柳はそう言うとまだ何か言おうとしている一誠を無視し、その場から離れていった

 

 

「ヤハハハハ。次は我の出番だな。……余興だ。1分の猶予をやろう。その間は我は動かん。倒せるものなら倒してみよ」

 

エネルは一誠達を馬鹿にする様な態度でそう言うと、その場にに座り込む。その態度に一誠だけでなく、普段冷静な祐斗さえも青筋を浮かべていた。そして、一層怒りをあらわにしたリアスは二人に激を飛ばす。

 

「二人共。貴方達をバカにした報いを受けさせなさい。小猫の敵、頼んだわよ!」

 

「「はい、部長」」

 

二人はは怒りと気合をみなぎらせ、エネルへと向かっていった……。

 

 

 

 

「フンッ! エネルめ。悪い癖を出しおって。さっさと倒してしまえば良いものを」

 

「くだらんなぁ。戦いに余興は不要だァ。雑魚を相手にするのは時間の無駄ァだからなぁ」

 

「まぁまぁ、これが終わったら何時もの様に禁手を使いますから其処で戦ってください。それより、終わったらコンビニで何か買っていきませんか? 少し小腹が減ってしまいまして」

 

「コンビニだと? 王の夜食にふさわしくないわっ! 貴様が作らんかぁ! ……期待しておるぞ」

 

三人がのんきに話をする中、祐斗と一誠の猛攻は続いていた。エネルに一撃も与えられぬまま……。

 

 

「くそっ! なんで当たらねえんだ!?」

 

「……何かの神器かい?」

 

何度二人が攻撃してもエネルの体を通過し、攻撃が通らない。二人が焦る中、エネルはむくりと立ち上がり、首をコキコキと鳴らした。

 

「さて、もう一分だ。2000万Vヴァーリー!!」

 

エネルが瞬時に二人の目前まで迫り、その顔を掴むとその手からとてつもない電流が放たれ、二人は膝から崩れ落ちた……。

 

 

「柳よ、我はラーメンが良い。帰ったらすぐに作れ」

 

「……買い置きあったかな?」

 

「麺から作れ。我は麺類は厳の店の蕎麦か貴様の手打ち以外認めん」

 

倒した二人に対してなんの感情も示さず、そんな会話を続けている柳達に対し、リアスと朱乃の我慢の限界が訪れようとしていた。そんな二人を見てバルバトスとギルガメッシュは愉快そうに笑う。愉快な道化を見るとうに……。そして、ある事を提案した……。

 

「どうせなら2対2の戦いをせんか? どちらかがやられたら眷属でも何でもなってやろう」

 

「それとももう辞めておくかぁ? もっとも、先に喧嘩を売ったのはそっちだぁ。逃がしはせんがなぁ」

 

 

 

「……あの二人って殺し合いばかりしている割には仲良いですよね。まぁ、ギルさんは神嫌いですからエネルさんに良く喧嘩を売りますが」

 

 

 

 

「……もう、許さない。私の下僕の敵、存分に取らせてもらうわ!」

 

「うふふふふ、覚悟ををしておいてくださいね」

 

リアスは無残に敗れ去った一誠達の姿に涙を流し、怒りで赤いオーラを全身から溢れさせている。朱乃もまた、笑ってはいるものの手からは電流が溢れ出しいた。しかし、普通なら上級悪魔でも恐怖するその光景でも対戦者の顔からは余裕が消えていなかった

 

「何をグダグダ言っておる。貴様の下僕が貧弱なのが悪いのであろう」

 

「貴様っ!」

 

ギルガメッシュの一言についに激高したリアスは開始の合図も待たずに滅びの魔力を放ち、ギルガメッシュは鼻を鳴らしてマントで簡単に打ち払う

 

「ほほぅ、貴様が我の相手だな。中々の美貌だ。ゆっくり相手をしてやりたいが、我は忙しいのでな。せめて、散り様で我を楽しませよ。雑種。ゲート・オブ・バビロン!」

 

「なっ!?」

 

ギルガメッシュがそう叫んだ途端、空間が歪み、そこから無数の剣が現れる。一つ一つから放たれるオーラにリアスが驚愕した時、その全てがリアスに向かって放たれた

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

すぐに魔力で相殺させようとするも、滅びの魔力はあっさりと剣に貫かれ、無数の剣はリアスに向かって降り注いだ……。

 

 

 

 

 

「あれって、生きてますよね? 死んだら魔王が出てきそうなんですが……」

 

「ヤハハハハ、安心してマントラを研ぎ澄ませろ。生きておろう。ギルも貴様の前だから張り切っているだけだ。……さて、問題はあの小娘の方だな。奴の琴線に触れなければ良いのだが……」

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、クッ、ここまで力の差があるなんて……」

 

「ぶるぁあああああああああああああっ!!」

 

朱乃の放った雷はバルバトスの斧の一撃で霧散し、更にその斧を振るった衝撃だけで朱乃は吹き飛ばされていた。距離を取ろうにも相手の方が素早く、甚振るかの様にジワジワと追い詰められていく。その時、朱乃はあることに気づいた

 

 

「……あの人、先程から大地の魔法と接近戦しかしてませんわ。ならっ!」

 

朱乃はバルバトスの攻撃を躱し、攻撃が届かない上空まで飛行する。そして、そこから力を貯めた一撃を放とうとし

 

 

「貴様に俺と戦う資格はねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

バルバトスの斧から放たれた赤い光に飲み込まれ、意識を手放した……。

 

 

 

「……あ~あ、やっちゃいました」

 

そして、柳はその光景に哀れんだ視線を送っていた。

 

 

 

 

 

 

ギルガメッシュの財宝を使い、リアス達の応急処置をした柳は何か言われる前にその場を去った

 

「不干渉と言いましたが、何かありましたらご依頼ください」

 

一誠がよく知る、人の良さそうな笑顔でそう言い残して……。

 

 

 

「あ~、クソ、ギルさんめ。コンビニのスィーツが食べたくなったから買ってこい、だなんて。……お気にいりのシャンプーに脱毛剤入れましょうか? いや、あの人には効かなさそうですね」

 

エネルのマントラでその呟きを聞かれ、ギルガメッシュに伝わっているとは露知らず、柳はコンビニの袋を下げ、夜道を歩いていた。すると、とあるアパートの前を通りかかった時に違和感を感じ、よく集中すると人払いの結界が張ってある。何時もなら無視する所だが、柳のマントラは最近知り合った人物の気配を捉えていた。

 

「アーシアさん……」

 

最近出会い、道案内をした少女、アーシア。彼女は柳の死んだ妹にどことなく似ていたのだ。気になった柳が詳しく探ると、死人らしき気配と恐怖したアーシアの気配。そして、激昂している男の気配があった。

 

「ちっ! 仕方ないですね」

 

柳は舌打ちをすると、そっとアパートの一室に近づいていった。

 

 

「こんな事間違っています! 悪魔に魅入られたからって人を殺すなんて!」

 

「あ~ウザってぇ。殺すなって言われているけど、犯すくらいは良いよな。っていうか、其のくらいしないと気が収まらねぇ」

 

フリードの助手としてアパートの一室についてきたアーシアが見たのは無残な惨殺死体。あまりのことにショックを受けたアーシアがフリードに詰め寄ると、フリードは激高してアーシアに襲いかかった。修道服に手をかけ、強引に破ると下着が顕になる

 

「きゃあ!」

 

とっさに手で胸をかばい蹲ったアーシアにフリードは襲いかかろうとし

 

 

「その辺にしてください」

 

「あぁ? 誰だ、テメ……うおっ!?」

 

 

突如現れた柳に腕を捕まれ、止められる。フリードが柳に向かって文句を言おうとした瞬間、足を払われ、バランスを崩され、顔面を掴まれた。

 

「……沈め」

 

柳はそのままフリードを床に叩きつけ、後頭部を強く打ったフリードは悲鳴も上げずに気を失った。あまりの光景に呆然としていたアーシアだったが、ふと我に返り、自分の格好を確認する。服の胸部が破け、ブラが露出していた

 

「きゃあ!、見ないでください」

 

「……これをどうぞ」

 

柳は顔を逸らしながらながら上着を差し出し、アーシアはそれを着る事でなんとか落ち着くことができた。

 

「あの、なんで柳さんが此処に?」

 

「怪しい結界に気付きましてね。好奇心を出して正解だったようです。お怪我はありませんか?」

 

「あ!すいません、お礼を言うにを忘れていました。助けてくださり、有難うございました。貴方に主のご加護があらん事を」

 

その言葉を聞いた柳の脳裏に浮かんだのは金ピカの神嫌いと半裸の自称神、そして、青タイツの英雄殺しの姿だった。こんな奴らが育ての親では神の祝福は受けられそうにない。

 

「……無理だろうなぁ~。育ての親が神嫌いと自称神だからなぁ~。後、グミが嫌いな戦闘狂ですし。……堕天使の気配が近づいてきますね」

 

「そんな! すぐ逃げてください。私は大丈夫ですから」

 

「いえいえ、そうはいきませんよ。それとも、こんな事をする者達と一緒に居たいんですか? 多分これも堕天使の指示ですよ。……どうします?」

 

「……嫌です。こんな事をする人達と一緒に居たくありません!」

 

「じゃあ、逃げましょう。貴女は兎も角、スィーツを守りきる自信はありませんからね」

 

その返事を聞き、柳は満足げに笑い、アーシアの手を取って部屋から駆け出した……。

 

 

 

 

「さて、力ずくでも連れて帰るとして、横の人間は邪魔だな。目撃者だろうし、死んでもらうか」

 

ドーナシークは残酷な笑みを浮かべ、右手に光の槍を発生させ、投擲の構えを取り、柳目掛けて投擲しようとしたその瞬間、

 

 

 

 

「ほぉ、誰に死んで貰うというのだ?」

 

若い男の声が聞こえ、ドーナシークの腕が消し飛ぶ

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

激痛に絶叫をあげ、血が止めどなく溢れる腕を押さえた彼の前には、電信柱の上に立つ金色の鎧をまとった男だった

 

「雑種の分際で我の家臣に手を出そうとはなぁ。喜べ、王自らが始末してやる」

 

その瞬間、空中に無数の剣が現れる。ドーナシークは、その剣に宿る力に気づく間もなく全身を刺し貫かれて死に絶えた。それを見て鎧の男はつまらなそうに鼻を鳴らすと、短剣を一本手に取り、柳に投擲する

 

「王の手を煩わせた罰だ。甘んじて受けるが良い」

 

 

 

 

「や、柳さん! 大丈夫ですか!?」

 

「な、何とか。……ギルさんですね。あの人が動きましたか。……後が怖いなぁ。あの人容赦ないからなぁ」

 

突如飛んできた短剣を辛うじて躱した柳だったが、破壊されたブロック塀の破片をくらい、血を流していた

 

 

アーシアに治療してもらいなんとか帰宅した柳を出迎えたのは半裸の男。男はアーシアを見ると愉快そうに笑う

 

「ヤハハハハハハハハハハ! 貴様が女連れで帰宅とは珍しい。帰りが遅いと思ったらそういう事か。避妊はしたのだろうな? おっと、女。名乗りが遅れたな。我が名はエネル。我は神なり!」

 

「えっ? えぇっ!?」

 

「アーシアさん、落ち着いください。ただの冗談ですよ。エネルさんもからかわない。貴方なら分かってるでしょう?」

 

柳がそう言って嘆息を吐き、アーシアが顔を真っ赤にする中、今度は家の中から筋骨隆々の男が出てきた。青髪を振り乱し、褐色の肌をしたその男はいかにも好戦的といった感じだ

 

「ぶるぁああああああああああ!! 柳ィ、こんな時間までどこで何をしていたんだァ? すこぉしぃ、お仕置きだァ」

 

「え?ちょっと、バルバトスさん!? 落ち着いて。ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バルバトスは家の奥に柳を引きずっていき、家中に柳の悲鳴が木霊した……。


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