結晶を使うためのQpが足りない 今まで所詮一レベって侮ってサボってきたから・・・・
あと、マシュと嫁セイバーの種火 マシュは明日頑張れば間に合うか
「やっぱ兄ちゃんは凄ぇな! まるでヒーローだよ」
昔、弟が木の上から降りれなくなった事がある。腰掛けている枝はミシミシと音を立て、多分友達が呼びに行った大人も間に合わない、そう思った俺は弟の所まで登ると背負って下ろしてやったんだ。木の上で震えていた弟だけど俺が助けに行ったら安心した顔になって、絶対に助けてやらなきゃって思った。途中。俺の身長の数倍の高さから飛び降りる事になったけど、弟にも俺にも怪我がなくて本当に良かったって今でも思う。
「ああ、兄ちゃんはお前のヒーローだ。だから困った時は助けを呼べ。俺が絶対に守ってやるから」
別に高い所が強くなかった訳じゃない。痛い思いをするなんて好きじゃない。テレビのヒーローみたいに全く恐怖を感じずに勇敢な行動が出来るとは思っていない。
でもよ、もっと嫌な事がある。俺が怖がったせいで、誰かが痛い思いや怖い思いをするのは我慢できないんだ。だから、強くなりたいって思った。世界中の人を救える程とは言わないけど、山程の人を助けられるくらいに強くなりたいって餓鬼の頃から思っていたんだ……。
(……今のが走馬灯って奴か? 本当に見るんだな)
聞いた話じゃ命の危機を乗り越える為に脳が必死に今までの記憶を手繰って助かるヒントを探しているらしい。実際、役に立った。あの時の経験から空中で身を翻し、上手く受身を取れたと思う。
「ヤー! 今ので生きてるとはビックリしました! アナタ、結構強いから力加減間違えたのデース」
まさか人が豆粒に見える高さまで投げられるとは思ってもみなかった。受身を取ったものの体中の骨がバラバラになった様な激痛が襲ってくる。意識は朦朧とし、直ぐに手放してしまいそうだ。指先一つ動かせる気がしない。
そもそもどうしてこうなったんだ? 朦朧とする意識の中、俺は数日前まで記憶を遡った……。
「早く綺麗な布をっ。煮沸消毒用の湯を沸かしてくれ」
「教授! 言われた茸と虫を採って来たぜっ!」
「ああ、暮尾君に指示を出しているから作業を手伝ってくれるかい?」
俺の名は
「お礼がしたいから直ぐに来て!」
俺が助けた餓鬼の名はシータって言うんだが、平教授が医者でもあるって言った途端に無理にでも連れて行こうとした時に皆理解したね……医者が必要なんだって。
「……こりゃヒデェな」
部雄が呟いた通り、村に向かってみれば酷い有様だった。古い小屋に何人もの病人が寝かされている。教授の見立てじゃ熱病らしい。
「この村は医者は居ないのかい?」
「私…だ…。私がこの村唯一の……」
医者だと名乗った老人は俺にも手遅れだと分かる程に衰弱していて、シータが教授を連れて来たがった理由がよく分かる。あの爺さんが最後の希望だったんだな。若い奴はシータみたいな子供を除けば出稼ぎに出ていて、ジャングルを越えて医者を呼びに行ける健康な奴は居ない。
「一定期間ごとに外からやって来る人は居るが……」
まだ其の日ではなく、このままでは大勢の死人が出る、と……。俺達は教授に視線を向ける。所詮俺達は教授と違って大した医療知識も技術も持っていないからな。
「……私達には他にやる事がある。この村には偶々来ただけに過ぎない」
「そんな……。先生に出て行かれたら……」
村の奴らは希望を奪われた顔になるが、仕方ない。まさに教授は降って湧いた希望だ。だが教授からすれば急な事態で危険性も高い。俺達学生の安全も関わってくるからだ。俺個人からすればなにか力になってやりたいが、俺に何が出来るかっていうと……。
こんな時、俺は自分の無力さを噛み締める。目の前で困ってる人の力になれないんだからな……。
「だから直ぐに全員治す。片っ端から診ようじゃないか」
この日から数日の間、俺達は教授の指示に従って村人の治療に専念した。教授の判断は若しかしたら非難される物なのかも知れない。だがよ、困ってる人を助けたいって想いは間違いじゃないよな。
「あら、随分と大量なのね。じゃあ、手伝ってくれるかしら? 茸は傘をとって千切りにして、それから……」
暮尾は擂り鉢で薬草を磨り潰しながら俺に顔を向けてくる。ミス・キャンパスに選ばれた此奴は噂ではふくよかな体型の奴と付き合っているらしい。聞いた話じゃ彼氏は昔は痩せてて美形だったらしいが……まぁ、どうでも良い。
少し高飛車だが根は良い奴で、少し抜けている所がある、そんな奴で俺の友人、大切なのは其れだけだ。
「……そう言えばシータちゃんだけど、どうして川で溺れていたか聞いた? どうもこの先にある遺跡に行こうとしたらしいわよ」
作業をしながら聞いた話じゃアステカ神話の神、マヤ文明ではククルカンと呼ばれる文化神・豊穣神のケツァル・コアトル、メキシコの部族の中には神官や部族長が名乗る名前だったとか。それを祀ってる神殿だったらしいが、その最上階の石像に嵌め込まれている宝珠には凡ゆる病気を癒す不思議な力があるって伝説が有るとか……。
「村の事を思っての事だろうけど、やっぱり子供ね。そんなの出鱈目に決まってるし、向かう途中で川に落ちて死に掛けてちゃ世話無いわよ」
「だけどよ、その結果俺達が村に来て何とか病が治まり出している。彼奴の行為は無駄じゃなかったぜ。……あの子の母親は危ない状況だけどな」
「……それでもよ。あの子が病人にまで心配かけたのは許せないわ。にしてもケツァル・コアトルだったっけ? 翼のある蛇、ドラゴンの類なのでしょうけど、そんなの居る訳ないのに。……そう言えば今日は姿を見てないわね」
どうも俺達は懐かれた様で――部雄だけは言葉が通じないのでイマイチ仲良くなっていない。顔も怖いしな――この村に来てから何度も顔を合わせているのに、今日は朝から姿を見ていない。
「……まさか、また遺跡に行ったのか? ドラゴンは居なくても猛獣は居るぞ」
俺は飛び跳ねるように立ち上がる。昨日猛獣が村に来た時は部雄と俺が威圧して追い払ったが、流石にあの子一人でジャングルで遭遇したら……。
村の人に話を聞き、遺跡に向かったようならば探しに行こう。俺がそう思った時、森の方からシータの悲鳴と今まで聞いた事のない生き物の鳴き声が聞こえてきた。
『ギュアアアアアアアアアアアア!!!』
「誰か、誰か助けてー!!」
「な、なんだよ、アレはっ!? ドラゴンっ!?」
俺の視線の先に居たのは必死に逃げるシータと、其れを追いかける体長二メートル程の生物。翼竜の類を思わせる肉体を持つが、俺の知識にあんなのは存在しないし、何より生き残ってる訳が無い。どちらかと言うと映画やゲームに出てくるワイバーンに近く、居るはずのない生物だ。がだが、確かに其れは存在した。
「ったく、誰か琥珀から復活させたのかよっ! カエルのDNAは使ってねぇだろうなっ!」
人間の肉体など容易に引き裂けるであろうカギ爪がシータに向けられる。必死に走って生きたのだろう、シータの足が縺れ、間一髪の所でカギ爪は宙を切る。だが、転んだ彼奴が追撃を避けられるはずがなく、酷く興奮した様子のワイバーン(仮定)は鋭い牙で肉を噛み千切ろうとした。
「らあっ!!」
迷っている暇はない。其の姿を見るなり駆け出していた俺は地面を踏みしめ一気に跳躍。ワイバーンの胴体に飛び蹴りを叩き込む。返って来たのはまるで砂鉄が詰まった革袋を蹴りつけた様な感触。
『グギャアッ!?』
つまり、何一つ問題はないって事だ。ワイバーンは地面を何度もバウンドし、よろめきながら起き上がる。その目は明確に俺を敵と認識しているが、次の行動に移るよりも前に俺の爪先が顎を蹴り上げた。
「顎が揺れれば脳も揺れる。……ファンタジーの生物っぽくても一緒だろ」
鉄の塊を蹴り砕いたかのような感触と共にワイバーンは仰向けに倒れピクピクと痙攣している。どうやら起き上がる様子はないな。
「レーカン君っ! シータちゃん!」
さてと、暮尾も駆け付けて来たし、この妙な生物の事を教授に相談しなくちゃな。まだ居て村を襲われたら少しヤベェ。部雄と俺が居ても病人守りながらだと精々十匹が限度か……。いや、パニックになることを考慮したら七匹だな。
「……ったく、面倒だ。なぁ、シータ。彼奴は何か知ってるか? 流石にこんなのが襲ってきてたら村は持たねぇだろ」
「し、知らない。急に襲ってきたの」
「ってか、村滅ぼせる奴を蹴倒した貴方は……今更ね。このデタラメ人間の万国ビックリショー」
暮尾が何か失礼なこと言ってるが無視してシータを見る。怖がらせねぇ様に視線の高さを合わせ、笑みを見せてやった。
「そうか。よく逃げ切れたな。偉いぞ」
頭を撫でてやろうと手を伸ばした時、上空から羽ばたく音が聞こえてくる。シータを背に庇うようにしながら見上げると、上空に居たのは五メートルを越えるワイバーン。上空を飛んでいて、その背中には女が立っていた。
「とうっ!」
十階建てのビルの屋上に匹敵する高さから飛び降りた其の女は軽やかに着地。まるで猫のようなしなやかな動きで少しも動じた様子がない。
「ハーイ! 今日は。ワタシ、ケツァル・コアトル。アナタ達二人のお名前は?」
「兵藤零観だ」
「く、暮尾葉虎です」
女は神の名を名乗った。普通だったら何処かの部族か冗談の類だと思うだろう。だが、俺達は違った。目の前の女が神であると、一目見ただけで確信したんだ。
ケツァル・コアトルは俺達二人を興味深そうに見詰め、次にシータに視線を送る。ビクッと体を震わせた所を見ると何かあるな。
「その子、私の神殿から宝を盗もうとしたのデース。まぁ綺麗なだけの宝石ですし未遂ですが、配下の翼竜達が怒りましてネ。お仕置きするからコッチに渡してくれマスカ?」
ったく、そういう事かよ。やっぱり、あの伝説を本気にしてたんだな。俺は冷や汗が流れるのを感じていた。ケツァル・コアトルは生贄を不要と言い出した善神と伝わってるが、神様ってのが人間が思うような都合の良い存在だとは限らねぇ。むしろ……。
「お願いします! 私はどうなっても良いから村の病気を治して下さいっ!」
「……ンー! あまり自然の成り行きに口出しするのはポリシーに反しますが……条件付きで良いですヨ?」
ケツァル・コアトルが指先をビシッと向ける、その先に居るのは俺だ。
「アナタ、私と勝負しなさい。もし私に認めさせる事が出来たら叶えてあげましょう」
「分かった。でも、約束は守ってくれよ」
正直言って神様と闘うなんて怖い。神話の英雄じゃあるまいし、俺みたいな一般人に神殺しや怪物退治なんて出来ないと思う。でも、出来る出来ないじゃねぇ。俺は今、此所で此奴に立ち向かわなきゃいけないんだ。
この時、俺には慢心はなかったはずだった。相手は神様で、人間なんて矮小な存在でしかない。其れを分かっている……積もりだった。分かっているとか言っている時点で俺は相手を侮っていたんだ。
「……ふむ。君には前から驚かされてばかりだが、まさか神様に挑むなんてね。ああ、死んだらレポートの提出はしなくて良いよ」
相変わらず教授の声には少しも感情の上下が見られない。だが、無駄が嫌いなこの人が止めないって事はこの闘いには意味があるって事だな。
「……ちょっと正気? 神様に勝てるはずがないじゃない」
「おう! お前が負けたら次は俺が挑ませて貰うぜ」
暮尾は普通に心配してくれてて嬉しい。部雄はまぁ、信頼の証だな。
「じゃあ、そろそろ始めましょう」
教授達と村の代表者としてシータ、この四人と共に俺は神殿の屋上にやって来た。リングを作る為、目の前で巨大な岩を運んできて手で削るケツァル・コアトルの姿を見ると不安になる。いや、俺以上にシータが不安そうだ。
「……ごめんなさい。私のせいで……」
「気にすんな。……それに俺が負けたって決まった訳じゃねぇ」
こんな時こそ俺は笑う。笑って自分を鼓舞し、見ている奴らから不安を拭い取る。だって……ヒーローは笑うもんだ!
「じゃあ、行くよ!」
「おうっ!」
言葉と同時に俺は駆け出していく。リングの中央で組み合い、まずは力比べだ。
「あははははははっ! 強い強い! アナタ、本当に一般人?」
「ぐっ! 余裕ありそうなアンタに褒められても嬉しくねぇな」
はっきり言って強い。同世代の奴には負けないつもりだったが、流石神だ。完全に力負けしているぜ。ギリギリと押され始め、俺の体勢が崩れる。いや、技術と力で崩されたんだ。そして崩した後には……大技が来る!
「行っくよーーーー!!」
背後から俺の腰に腕が回され持ち上げられる。そのまま浮遊感が襲って来て天地が逆さまになり、頭から岩のリングに叩き付けられた。
「……終わっちゃった?」
「まだだ。まだ負けてねぇっ!!」
追撃をせず俺を開放した相手を睨みながら俺は立ち上がる。結構いいのを貰っちまってクラクラするが俺は負ける訳には行かないんだよっ!!
そして、勝負開始から丸一日が経ち、場面は冒頭へと移る。旋回バッグドロップから上空に放り投げられた俺は受身は取ったがダメージが大きく、立ち上がれそうになかった。
そう。立ち上がれ
痛みは我慢する。意識は気合で繋ぎ留める。なんだ、まだまだ余裕じゃねぇか!
「……凄いわね。たった一人で神に挑んでいるのに諦めないなんて」
「一人…じゃねぇ。勝利を信じていてくれる奴らが居るから何度でも立ち上がれる。力が湧いてくる。それが仲間の力じゃないって言うんなら何なんだっ!!」
俺は叫びながら拳を振り上げ向かっていく。狙うはカウンターによる強烈な一撃。もう、勝利云々じゃねぇ。此処まで一方的にやられているんだ。やられっぱなしは俺の趣味じゃねぇんでなっ!!
「……うん。やっぱりアナタ、気に入ったわ」
「其奴はどうも!!」
二人の腕が射程範囲内に相手の頭を入れ、同時に振り抜かれる。ヤベッ、アッチの方が速い。これじゃあカウンターは…。
「勝てっ!!」
其れが誰の声だったのか、俺は覚えていない。だが、その言葉が俺に最後の力を絞り尽くさせた。さらなる踏み込みと同時に俺の拳は加速し、ケツァル・コアトルの拳は頬スレスレを通り過ぎて行く。クロスカウンターが完璧に決まった、それを感じると同時に俺の足は崩れ落ち、受け止められた。
「合ー格! アナタの事、認めてあげる。村の事は任せなさい」
一つ気付いた事がある。俺は戦っている最中に……。俺を受け止めた戦士の肉体の意外と良い匂いと柔らかさを感じながら俺は其れを確信した……。
「……此処は天国か? いや、親より先に死んだんだから地獄か?」
「違う違う。此処は私の神殿よ。アナタ、あれから丸一日寝てたの」
目を覚ますと知らない天井と見慣れた顔。丸一日以上戦い続けた相手の顔が直ぐ傍に有り、膝枕をされている事を知った。
「一応治療はしたけどもう少しこうしていなさい。お姉さんからのサービスと治療の効率化の為よ。暫くは立ち上がれそうにないわ」
「……ああ、確かに腹が減って動けそうにないな」
全身打撲とかのダメージや疲労はネタから回復したが、エネルギーの消費だけはどうにもならねぇ。肉だ、肉が食いてぇ。出来たら炭火で焼いたタン。
その事を伝えると呆れたような驚いたような顔をされた。曰く、俺は本当に人間なのかって。神様なら俺がただの人間だって分かりそうだがな。
「普通の定義が何か……ああ、そう。アナタ、そうなのね。……しかし人間は凄いわね。アナタの友達とか、あの村の子とか。久しぶりに人間に関わりたくなったデース。まぁ、何時か……」
「何時か、なんて日はねぇぞ。何時にするか、自分で決めないと絶対にやって来ねぇ」
俺の言葉にケツァル・コアトルは目を丸くし、次の瞬間には吹き出す。……いや、唾かかったぞ。
「あははははははははははっ! そうね。じゃあ、何時にするか決めましょう。今直ぐよ。アナタ、私と結婚しない?」
「まずは結婚を前提にしたお付き合いからだな。宜しく、ハニー」
戦いが終わった時、俺は気付いてしまった。俺は心底目の前の女神様に惚れちまったんだってな……。
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