ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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何時も隠し味を入れているシチューやカレー、昨日入れていないのを食べたら物足りない気分に


皆さんは隠し味入れてます?


兵藤家のバグキャラ長男 ⑨

 初恋の思い出は甘酸っぱいとか聞いた事あるけど、俺の場合は苦酸っぱいと思う。いや、あの人達の事は嫌いじゃないんだ。少しテンションがおかしいけど悪い人達じゃないし、むしろ善人だ。人間としては好感が持てる。

 

 ただ、俺の封印したい記憶に大きく関係していて……。

 

 

 

「イッセー先輩、二人を連れて行った人達の事を知っているんですか?」

 

「あっ、うん。まぁね……」

 

「じゃあ、その人達に二人の様子を訊いて下さい」

 

 木場の為にズボラな計画で始めた聖剣破壊の為のメンバーは俺と木場と小猫ちゃんと、あとは生徒会の匙。その匙がヤクザみたいな人達に教会からやってきたイリナ達が連れて行かれたって聞かされて、俺達は今後についての話し合いを喫茶店でしていた。

 

 そのヤクザらしい人達って言うか、ヤクザの人達は俺の知り合いだ。兄貴や俺の幼馴染で当時のガキ大将をやっていた双子の姉妹。その姉妹の祖父が組長を務めるのこそこの街一体を取り仕切る『藤村組』。昔の任侠映画――観た事はないけれど――みたいに義理人情を重視し堅気には迷惑を掛けないようにしている所なんだ。

 

 その双子の内、姉の方が俺の苦い思い出の対象なんだけど、今後の二人の動向を知る為にも話を聞かなければならないってのは分かってる。あくまでこれは俺の個人的な感情だからな。

 

「えっと、じゃあ……向こうで電話してくるね」

 

 せめて話している時に余計な事を聞かれないように俺は皆から離れ彼女達に――藤村大河と藤村砂河(さが)――通称タイガーとジャガーの家に電話を掛けた。携帯? 兄貴だったら知ってるだろうけど俺は知らない。

 

 

 

 

 

「もー! あんな所で寄付を募ったら駄目じゃなーい! 街頭での募金活動には許可が要るのよ?」

 

「それにしてもイリナちゃん、綺麗になったわねー。さっ、どうぞどうぞ。お腹減ってるんでしょう?」

 

 イリナによる経費を使っての絵画購入という悪魔祓いに有るまじき行為によって窮地に陥った私達。空腹は限界を迎え冷静さが失われていく。このままでは仲間割れにさえ発展しかねないといった時、目の前の二人から救いの手が差し伸べられた。

 

「あー! ウニは私が狙ってたのにー! ゼノヴィアはさっき食べたじゃない!」

 

「ふっ! 食事とは闘争なのさ。其れに予め取り決めをしていなかっただろう?」

 

 私達の目の前には寿司、それも特上というらしい豪華な物だ。お吸い物とかいうスープも旨いし、食が進む。私達は我先にと寿司に手を伸ばしていった。

 

 

「それにしても変わった格好ね。映画の撮影か何か? でも、そんな話は聞いてないわよねー」

 

「うぐっ!?」 

 

 あの男からも言われたが、私達の格好――教会からの支給品――はこの国では……いや、認めよう。大体の場所で明らかに奇異に映る。いや、そもそも体のラインが分かる上に手足が露出しているから防具としてはイマイチなんだ。一応マントがあるけれど剣を使う時は邪魔になるし……いや、どうしてこんな服装なんだ? 水着とか規制をかけるのに……。

 

「ま、まぁ今は守秘義務があるっていうか事前の情報公開は駄目って言うか……頂きっ!」

 

 まぁ、そんな訳で言葉に詰まると同時に寿司を喉に詰まらせてしまった私は慌てて胸元を叩いてお茶を流し込む。熱いっ! それとイリナ、その隙に玉子を独り占めするな! っていうか甘い玉子はデザートだろ!

 

 

 

 

「大河お嬢、兵藤の所の小僧から電話ですぜ」

 

「はーい! じゃあ、ちょっと外すわね」

 

 せめて最後の大トロだけでも頂こうと箸を伸ばすもイリナも同時に狙い、私達は箸でせめぎ合う。そんな事をしている間に人相の悪い黒服に呼ばれた大河さんは消えていった。

 

 

「小僧ってことはイッセーかー。懐かしいなぁ。そうそう、イリナちゃん。あの事覚えてる? ほらほら、貴女達連れてピクニックに行った時の事」

 

「ぶふぅっ!! ププッ、だ、駄目ですよ、砂河さん。あ、あの爆笑エピ…可哀想なエピソードを話したら」

 

「そっかー! そうよねー!」

 

 話したら駄目だと言いつつも笑いを堪えながら私の方を見てくる二人。……あっ、これは私が疎外されてるから仕方なく話すって流れにしたいのだな。すぐに理解した私は……。

 

 

 

 

 

 

「話したら駄目な話なら聞くのは辞めておこう。それよりも手が止まってるぞ、イリナ!」

 

 見事大トロを手にした。……旨いっ!

 

 

 

 

 

 

「良い天気だな、ハニー。お前の次に空が綺麗だ」

 

「もー! そう言う恥ずかしい事をサラっと言わないで欲しいわね。でも有難う、嬉しいわ」

 

 今日は講義も午前で終わり、午後は川辺の原っぱでハニーとデートだ。弁当食た後は膝枕で一休み。女神様の膝枕は格別で何よりだ。あー、眠くなってきやがった。目蓋が重くなり、意識が徐々に途絶えていく。幸せってこういうのを言うんだろうな。

 

「少し眠らせて貰うぜ、ハニー」

 

「じゃあ、私はゆっくり貴方の寝顔を見させて貰うわ。夜中はゆっくり見る暇なんてないもの」

 

「ん? なら今夜はゆっくり寝るか? ()()()()()()()は休みにしてよ」

 

 ニヤニヤ笑いながら言うと無言で頬を抓られる。あーはいはい。意地悪が過ぎたな。痛ぇ痛ぇ。女神様を怒らせるとロクな事にならねぇのは昔から変わりませんなっと。

 

 

 

 

 

 いや、マジで痛ぇっ! 頬を抓る力は物凄い勢いで強くなって行き、ハニーの目は笑っていねぇ。……やべぇ、マジで怒らせたっ!?

 

 

 

 

「ちょっと待て、ハニー! 悪かったっ! 反省してるってっ!!」

 

「……そう、反省してるのね。今後は年上のお姉さんを誂うのは控えなさい。……丸呑みにしちゃうから」

 

 怖っ! 顔芸怖っ!

 

 

 

 

 

「あっ、その顔も素敵だぜ、ハニー」

 

「あーん! そういう所も素敵よ、レーカン」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーいやイッセー、最近街中でウロチョロしてるみてぇだけど何してるんだ? タイガーから連絡あったぞ」

 

「ちょっ!? 兄貴!? しー! 今はしー!」

 

 ハニーの顔芸見てから数日後、どーも街中でウロチョロしたりタイガーの所に電話したりとか怪しいから飯食いながら聞いてみたんだが……不味かったか?

 

 

「あら、イッセー。最近怪しいと思ったけどやっぱり何かしてるのね」

 

 後で話せ、リアスちゃんの目がそう語ってやがる。あー、ヤバいヤバい。

 

「駄目よ、リアスちゃん。束縛ばかりしてたら男の人は逃げていくんだから」

 

「あら、そうなの?」

 

「……って、雑誌で読んだわ。レーカンともっと仲良くなる為に色々勉強してるの。所でタイガーって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーが餓鬼の時に初めて告白した奴。ちなみに初恋は別の奴な」

 

 




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