ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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思い付き!


FAIRY TAIL 魔導王の後継者  

 ぼくには おとうさんも おかあさんも いません。ふたりとも ぼくのことをしりません。だから、ずっとひとりでいきてきました。おなかがへったら たべものをぬすんで ねむくなったら きのかげでねます。あのひとにあったのは あるひのことでした。

 

「やあ、こんにちは。僕は君の叔父さんなんだ。僕と一緒に来る気は無いかい?」

 

 そのひとは とっても ()()()()()()()()でした。やさしそうにわらってるけど、うさんくささが ふくをきてる。そんなひとに ぼくはついていくことにしました。

 

 

 

 

 

「きゃー!」

 

 昼過ぎ、縁側で微睡んでいた私は突如聞こえてきた娘の声に目を覚ます。懐かしい夢に昔を思い出しながら声のした方に視線を向ければフリルのついた服を着た孫の姿を娘が嬉しそうに写真に撮っていた。

 

「もー! どうしてこんなに可愛いのかしらー! ほらほら、次はこんな服なんてどうかしら? お母さんの新作よ!」

 

「スカートは嫌だからね……」

 

 またしても女の子が着るような服を手に興奮した様子の娘だが、孫は男の子だ。姿だけは知っている母を更に幼くさせ髪型をポニーテールにをした見た目でよく女の子に間違えられるが、男の子だけあってフリルの付いた服は嫌な様だな。だが、母親の頼みだからと強く断れず、母の背後に立つ私に視線で助けを求めている。

 

「……その辺りにしておけ。サツキはお前の着せかえ人形ではないのだぞ」

 

「えー? だって可愛いんですもの。父さんだってサツキちゃんの写真は沢山残しておきたいでしょ?」

 

 思わず溜め息が出そうになる。我が娘は魔法研究者として親の贔屓目を加えても優秀なのだが、どうも我が子に可愛い服を着せるのが好き過ぎのだ。私とて孫の写真を撮りたい気持ちは分かるが、娘はちょっと行き過ぎの部類だろう。控えろ、と言って聞く質ではないのは我が子故に嫌でも理解していた。

 

「……程々にしておけ。サツキとて他にしたい事も有るだろう?」

 

「うん! お祖父ちゃんと遊びたい」

 

 私の問いに元気よく返事をする孫の姿に思わず笑みがこぼれる。父母の愛は知らない私だが、こうして我が子や孫と共に暮らすのは本当に幸せだ。まだ父母への未練が無いわけではないのだが。正直、一目だけでも顔を見たいとは思っている。

 

「ふむ。ではサツキは貰っていくぞ」

 

「あっ! ちょっと、父さ……」

 

 娘が反応するよりも前に孫を抱き上げて瞬間移動する。後が五月蠅そうだが仕方ないだろう。……まあ、娘の気持ちも分かる。もう直ぐ別の町で暮らすことになるのだからな。私は自分を見上げてニコニコ笑う孫の頭を撫でながら今後について考えを巡らせた……。

 

 

 

 

 

「やあ、よく来てくれたね。サツキも元気そうで何よりだよ」

 

 子供は限度を知らない。体力の限界まで遊んだ孫を昼寝させ、私は師の元へ向かう。私よりも若く見えるが四百年以上を生きる魔導士。名をマーリン。我が叔父にして育て親であり魔法の師。恩義はあるし、感謝はしている。娯楽の為とはいえ、魔力の高さから捨てられた私を育ててくれたのだからな。

 

 ローブ姿に杖という如何にも魔法使いといった感じの彼は相変わらず軽薄で胡散臭い笑みを浮かべており、私は跪きながらも師がしてきた提案に眉間に皺を寄せる。まだ親の庇護下にいる年頃の孫を魔導士ギルドに入れろと、そう言って来たのだから。それも、自分の娯楽の為だ。

 

「……師よ、本当にあのギルドに?」

 

「ああ、僕が君を拾った時点で本来の流れが変わった。ハッピーエンドに辿り着くのはそれしかないんだ」

 

 師は……いや、この男は予知能力……いや、その様な生易しいものではない力を使い、あらゆる可能性の未来を見ている。その魔法の名は『千里眼』。過去現在未来、その全てを己の好みに導くのが何よりの娯楽なのだ。

 

「しかし、あのギルドには……」

 

「大丈夫大丈夫。あの子は強い子だからね。……それと、これを着けるのを忘れないように言っておいてくれ」

 

 私がそれでも苦言を投げかけようとするも相変わらず軽いノリで邪魔をされる。私は彼に感謝をしている。恩義があるのは確かだが……。

 

 彼が差し出したのはリボン。何かしらの力は感じる。それも途轍もない力だ。私がそれを受け取った途端、彼の軽薄な笑みが消えて真剣な眼差しが現れた。

 

 

「これを付け、道具を使う限りあの子の魔力は隠蔽される。彼の……ゼレフから受け継いだ黒い魔力をね」

 

 母から白い魔力を、父から黒い魔力を受け継いだ私の魔力はどちらでもなく、娘は妻の普通の魔力と白い魔力を受け継いだが、孫が受け継いだのは黒い魔力。完全に曽祖父の影響であり、間違いなく厄災を引き寄せるだろう。だからこの贈り物は本当に有難い。

 

 私は何時までも守ってやれる訳ではない。願わくば我が孫が己の身を守れる程に強くなるまで傍に居られる事を願うまでだ。

 

「感謝いたします、師よ」

 

「構わないさ。あの子は私の子孫でもある事だしね」

 

 私は敬服の念を込めて再び膝をついた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所であの子は男の子ですが、何故リボンなのでしょうか?」

 

「いや、そっちの方が反応が面白いからに決まってるじゃないか」

 

 ……私も耄碌したものだ。目の前の男はこんな性格だったのを忘れていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まったく、毎度毎度飽きもせずに……)

 

 儂の名はマカロフ。魔導士ギルド『フェアリーテイル』の三代目マスターじゃ。今日もギルドであるボロ酒場でガキ共が騒ぎ、何時もの様に乱闘に発展しておる。そろそろ一喝して止めようと杯をテーブルに置いた時、扉が開き入ってくる者がいた。七歳程と酒場に似つかわしくない年頃じゃが、メンバーの何人かは同じ年頃で入ったのでそれ程場違いでもないのだが、儂はその姿を見た途端に固まってしまった。

 

「初…代……?」

 

 そう。入ってきたのは髪型や男物の服を着ているなど違いはあれどギルドの設立メンバーの一人にして初代マスターであるメイビスに瓜二つであった。

 

「あの、すいません。僕、このギルドに入りたいんだけど……駄目ですか?」

 

 カウンターに居た看板娘のミラの所まで来た少年は用件を告げ、酒場にいたメンバーの視線が集まるも動じた様子はない。左手に装着した無骨な籠手の手の甲の部分には特別製と思われる魔水晶(ラクリマ)が嵌め込まれ、髪に結んであるリボンも恐らくはマジックアイテムじゃが、何よりも本人からこの場の誰よりも巨大な魔力が感じ取れた。

 

「あの子は一体……」

 

 儂が呟いた時、再び扉が開いて新たに入ってくる者が居た。

 

 

「先に行かないで、と言った筈です。人の話は聞きなさい」

 

 見た目は十四歳ほどの少女だが竜の尻尾に翼を持ち、頭から角を生やしたゴーレムらしき存在。じゃが、明確な意志を感じられる言葉を吐きながら少年へと近寄って行き、儂の方に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、マスターマカロフ。私はメイガス・エリザベート・チャンネル。メカエリチャンとお呼び下さい。このギルドに入りに来ました」

 

「僕はサツキ・ドラグニルです。よろしくお願いします」

 

 ドラグニル、ギルドの一員であるナツと同じ名字じゃが、メカエリチャンの存在感にその様な事は皆の頭から吹き飛んでいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? それならメガエリチャンじゃないの?」

 

「いえ、誰が何と言おうとメカエリチャンです」

 

 ただ一人、ミラことミラジェーンだけは別じゃったが。




母親はどこの魔女がモデルだろうか……

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