ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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本日二回目


ダンジョンに倫理観が曲がってる天才が来ても良いかい?

 オラリオの中核組織であるギルド。その長であるロイマンはエルフでありながら贅沢と権力で肥太り、同族からは豚と揶揄され嫌われてしまっている。

 

 だが、来るべき黒龍の討伐や現在も続く龍の谷から溢れる龍種の被害、ファミリア間のいざこざや都市の経済や他国との外交を考えれば並みの王族よりも負担が大きい。

 実は汚職に手を染めていたり贅沢をするのも激務からの逃走の一種……なのかも知れず、百年以上ギルドを率いる実績が証明するその重要性はダンジョンの封印に関わるウラノスでさえも認めている程だ。

 

「ふむ。今日は平和だな。ロキ・ファミリアが遠征に出たが、何も問題が起きねばよいが」

 

 ゼウス・ヘラの前最大派閥が壊滅してから既に十年近く、未だにその偉業を越えられている者は出ていない。現最強であるオッタルでさえも前回のランクアップから足踏みをしている状態で、到達階層すら前最強に届かないのでは人類の将来が不安視される。

 

 故により強い冒険者が生まれるのを願いつつ都市に集まる財力目当てのならず者の対応に胃を痛めるもこの日は解くに報告が無い。

 可能ならば遠征から帰ったロキ・ファミリアの三首領が揃ってランクアップし、他の派閥がそれを参考にして続いてくれれば、そう願いながら紅茶を啜った時、慌ただしい足音が響いて来た。

 

 

「大変です、ギルド長!」

 

「何だ、騒がしい。他の者の仕事の邪魔……」

 

 

 

 

 

 

「オラリオの外からLv7の冒険者が、それも所属フリーの状態でやって来ました!」

 

「ブフゥゥゥウ!?」

 

 ロイマンの口から噴水のように吹き出される紅茶。ダンジョンの外では3に到達出来れば達人級、ダンジョンといったランクアップに適した環境下でもランクアップせずに終わる者が多い中、現在存在が確認される三人目が外から現れたのならばこの反応は致し方ない。

 

「そ、それでその者について何か他の情報は有るのか…?」

 

 但し、外で六度のランクアップに至るなど何をどうやったのか、胃がキリキリ痛む中も絞り出した声で問い掛ければ情報を持って来た職員は困惑した様子を見せた。

 

「それがエルフの女性なのですがギルド長を呼び捨てにしていて、どうも身内だと口にしているらしいです」

 

「身…内……」

 

 幾ら潔癖な程に真面目なエルフでも木の股から生まれる筈もなく、ロイマンにだって血の繋がった身内は当然居る。但し、ヒューマン換算で五十代となれば相手は限られるし、自分を呼び捨てにするなど身内を名乗るにしては嫌っている様子で、名乗るのは妙だ。

 

「……おい、まさか【ロゼッタ】と名乗らなかったか?」

 

「おや、本当にお知り合いでしたか」

 

 但し一人だけ呼び捨てにしつつ親しみを向けてくる相手に覚えがある。既に五十年以上顔を見ていないが、たまに正体不明のエルフの功績が耳に入る度にその人物を思い浮かべていた。

 

 カイオス砂漠の各国に自然豊かなオアシス地帯を作り出したという夢物語の様な話が最近の話。他は封印されていた古代のモンスターを討伐しただの、疫病の治療薬を開発しただの、肉体の欠損すら軽微な物に限って再生可能な回復魔法の効果を持つ魔剣を配るだの、世界各地で不定期に現れる噂の女エルフ。

 

 興味を持った神や国が接触を図るも神出鬼没で正体不明。会った者達もエルフの女性だという事以外は記憶が朧気で書かれた肖像画さえも後から見れば不明瞭。

 

 それだけの事を可能な相手などロイマンは一人しか知らない。実存すら怪しまれるその者の実在をロイマンは確信しつつも外れだと願っていた。

 

 その予想を肯定する返答にロイマンの胃痛は更にキュッと締め上げられる重篤な物へと変わるのであった。

 

「おや? 随分と調子が悪そうじゃないかい? 不摂生が過ぎるみたいだし、一度医者に診て貰えば良い。もう若くはないんだからさ」

 

 思わず胃の辺りを押さえたロイマンの耳に届くのは若い女の声。ハッとして声の方を見ればいつの間にか椅子に座るのは若いエルフ。

 

 二十にも届くかどうかの華奢な容姿。ルビーを思わせる赤い瞳に肩まで伸ばした銀の髪。

 

 何かを企む様に薄らと笑みを浮かべ、先端が捻れた長い杖を片手で弄びながら嗜める口調を自分に向ける彼女に対してロイマンは口をあんぐり開けた状態で硬直した。

 

「ちょっと困りますよ!? 一体何処から入って来たんですか!?」

 

「ごめんごめん。入り口で止められて退屈していてね。認識を阻害する魔法を即興で作って実験がてら弟に会いに来たんだ」

 

「弟? 一体誰の事ですか?」

 

 ギルド職員の問い掛けに彼女が指差したままのロイマン。え? まさか!? と更に後ろを見るも誰も居ない。

 

 すわ幽霊!? と震え上がった時、漸くロイマンは硬直から立ち直った。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ああ、姉上ぇぇ!?

 

「え? 本当にギルド長の……」

 

「うん! 私とロイマンは実の姉弟さ! 因みに二十歳差」

 

 じゃあ、そろそろ戻るけれど少しは痩せなよ? と言うなり彼女は煙の様に消え去った。

 

 

 

 

 

「随分と盛況だなあ。勧誘に来る子達と神様ばかりだし、ファミリア以外の子達には申し訳無いよ」

 

 私の名はロゼッタ、ちょっと魔法を開発するのが得意なだけのエルフさ。

 これでもハイエルフや近しい身分の子達の教師を任せられていたんだけれど、今は訳合って放浪の真っ最中。

 

 そんな私を勧誘すべく泊まっている宿屋に多くのファミリアが集まるのを向かいのカフェから眺めている最中だ。

 私が居ない部屋を私が居ると認識を改変しているから平気だけれど、これで直接受けていたらウンザリしそうだよ。

 

「それで君は……いや、貴女は勧誘しないのかい?」

 

「何の事ですか? 私は只の町娘ですけれど」

 

「そうかい? じゃあ、君と呼ばせて貰うよ。勧誘に来た美の女神じゃないと自己主張しているしね」

 

 そんな私と相席するのは銀の髪をした自称町娘。多分魂を察知して私を発見した。

 

 まあ、余計な事を言わないのが人生を楽しむコツさ。

 

 首を傾げてとぼける彼女に変な真似をすれば見張っている彼とか繋がっている彼女に怒られそうだ。

 

 ふむふむ。私が外でランクアップした偉業について聞きたいって? 此処のケーキを奢ってくれるなら良いよ。

 

 

「まあ、精霊に封印されていたアンタレスってモンスターを封印から引っ張り出して退治したり、陸の王者のドロップアイテムを回収したり……大変だったのはオリンピアの聖火かな」

 

「聖火……」

 

「おっ、此処から先はどっちの子にも知らせない方が良いのかな? じゃあ……これで大丈夫。適当な英雄譚に聞こえるからさ」

 

 流石に聞かせない方が良いよね。あの女神にも生贄になったかの英雄の為に他の人間には知らせるなって言われたし。

 

「何か悪意で穢れていたから神の力を封じるアンタレスの力を使ったアイテムをベヒーモスのドロップアイテムで増強させて繋がりの深い存在と一緒に封印。善悪を逆転させる魔法で浄化したからもう大丈夫さ」

 

 囚われていた魂は解放されたし、生き残りも国を守る力はそのまま。核も聖火の力で不滅だから再び穢れる事も無い。

 

 あの偉業の経験値が凄くて9までランクアップ可能だけれどステイタス貯金の為に7に留めているんだよね。

 

「そうですか。よく分からないけれど……有り難う。私達の不始末をつけてくれて」

 

 最後だけ彼女の声色が本来だろう物へと変わる。うんうん、私のした事で誰かが喜ぶのは本当に嬉しいよ。

 

「……所でお世話になっている派閥の幹部さんから聞いたのですが、ロゼッタさんってとある禁呪を……死者蘇生の魔法を作り上げて追放されたと聞きましたけれど噂は噂ですよね?」

 

「うん、そうだよ。リヴェリア姫がペットを亡くして悲しんでいたから作った魔法についての噂が変に膨れ上がってさ。死者を蘇らせるなんて神様じゃないと無理だよ」

 

「ですよね。でも、そんな奇跡だと噂される魔法ってどんな物なんです?」

 

 

 

「生贄を捧げる事で人格と記憶と肉体を再現した模倣品を作り出すだけさ。術者の意思で爆破可能とか操れるとか余計な能力まで付いちゃって困ったよ。前々から肉体を全盛期に保つ魔法も問題視されて、追放になったんだ」

 

 その際にロイマンから言われたっけ。私は才能の対価に人間性を捨てて生まれて来たって。

 

 

 

 

 

「当然です」

 

「当然だろ」

 

『当然でしょう』

 

 おおう!? 此処に居ない子まで駄目出ししたぞ!?

 

 

「え? だって生贄はペットの時は野生動物を使ったし、エルフを複製した際は森への侵入者を使ったんだよ? それに一時間で効果が切れて死んじゃうけれど三つもランクアップする秘薬だって……」

 

 

「当然よ」

 

「当然だろうが」

 

『当然でしかないです』

 

 えー? また言うかい?

これ独立させる?

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