ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ⑰

アーシアのストーカーをギル・バル・エネの三人が懲らしめた日の夜の事、柳が作った料理を食べていたギルガメッシュがフォークをアーシアに向けながら言った。

 

「おい、アーシア。昼間にストーカーと会ったであろう。奴は貴様が教会を追われる要因となった怪我した悪魔だ」

 

「……あっ! 思い出しました。確かにあの時の悪魔さんです」

 

「……所でなんで知っているんですか? もしや、付けてました?」

 

折角のデートを尾行されていた事を察した柳はギルガメッシュをジト目で見るが、ギルガメッシュはフンっと鼻を鳴らすだけだ。それの何が悪いのだ、とでも思っているのであろう。他の二人も同じ意見のようで、

 

「馬鹿めぇ。気づかぬ方が悪いのだぁ」

 

「ヤハハハハ。心綱が甘いぞ。もう少し範囲と正確さを上げろ」

 

っとの事だ。反論できないと察した柳は溜息を吐いて黙り込む。この三人の理不尽さには出会ってからの十年ですっかり慣れていたのだ。アーシアも大好きな柳と一緒なら別に気にはならないようだ。

 

「それで、その悪魔がどうしたんですか? 態々AUOが口にする程の事でもないでしょう? アーシアさんは私が好きで、私はアーシアさんが好き。そしていま一緒に居るんですから、過去に出会ったストーカーがどうだと言うんです」

 

「や、柳さん……」

 

「クハハハハ! 中々言うではないか。だが、本題はこれからだ。小娘、貴様ハメられていたぞ。貴様の追放は奴が仕組んだシナリオだ」

 

「……え? 今、何て……?」

 

「王の言葉を聞き逃すとは不敬な事だ。だが、特に許そう。もう一度言うぞ。聖女フェチのやつは貴様を手に入れる為にワザと怪我をして貴様の前に現れた。当然、見つかるのを計算してな」

 

その瞬間、突如席を立ち上がったアーシアは別荘のリビングから走り去っていった。

 

「ギルさん! いくら何でもそんな言い方はっ!」

 

「……誰に向かって意見している? どうせ奴は小娘に最高のタイミングで告げるはずだったのだ。ならば、今の内に知っておくべきであろう。さて、柳よ。我に食ってかかる暇があるのなら今すぐ追い掛けんかっ!」

 

「……はい!」

 

ギルが放つ威圧感に一瞬たじろいだ柳であったが、直ぐにアーシアを追っていく。その後ろ姿を見た三人は苦笑していた。

 

「ぶるああああああ! 情けない奴だぁ」

 

「貴様らの教育が間違っていたのではないか? 惚れた相手なら力尽くで組み伏せて嫌な事など忘れさせれば良いものを」

 

「いや、それは流石にどうなのだ? まぁ、我も神時代は好きなだけ召し上げていたがな!」

 

肉食系三人組は相変わらずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、柳さん」

 

柳がアーシアに追い付くと、彼女は目を泣き腫らしながら振り返った。彼女は例の悪魔を助けたことで協会を追放された事は辛かったが、それでも助けたことを一度も後悔した事はなかった。しかし、その全てが下衆な策略によるものだと知り悲しみがぶり返してきたのだ。フラつく足取りで柳に近付いたアーシアはそのまま抱き着いて胸に顔をうずめる。柳はその体をそっと抱きしめた。

 

「……好きなだけ泣いてください。私はずっと傍に居ます」

 

その後暫くの間アーシアは泣き続け、泣き疲れて眠った彼女を柳はベットまで運ぶ。そして部屋から出ると、其処にはギルガメッシュが腕を組んで立っていた。

 

「……泣き止んだか?」

 

「ええ、何とか」

 

其れだけ聞くとギルガメッシュはその場を立ち去るかに見えたのだが、再び立ち止まる。

 

「あの小娘のケアは貴様の仕事だ。既に手を出しているのだから最後まで責任を取れ。……それと、貴様もいい加減向き合ったらどうだ。昼間、あの男の娘が貴様に近づこうとしていたが素早く逃げていたであろう? 我らの目は誤魔化せぬぞ」

 

そのままギルガメッシュは立ち去り、柳は暫くの間立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、柳が寝苦しさに目を覚ますとアーシアの顔が間近に有り、その体は柳の上に乗っていた。

 

「……お早うございます」

 

「ええ。お早うございます。それで気分は晴れましたか?」

 

寝ている柳にキスをしようとしていた所で目覚められたアーシアは耳まで真っ赤になり、柳は相変わらずのニコニコ顔だ。彼女の行為に特にコメントする事なく挨拶を仕返し、そのまま抱き寄せて唇を奪った。暫く唇を合わせていた二人であったが、アーシアは真っ赤になりながらハッキリとした口調で言った。

 

「……私、今でもあの時の事を後悔していません。だって……こうして柳さんと一緒に居られて幸せですから!」

 

「ええ、私も貴女と一緒にいられて幸せですよ。貴女は私にとって七人目の家族です」

 

「え~と、家族と言いましたが……お、お嫁さんという事でしょうか?」

 

「ええ、その通りです」

 

二人は見つめ合い、互いの体を抱きしめると再び唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅い。王の朝食を遅らせるとは呆気者がっ!」

 

「まぁ、そう言うなギルガメッシュ。朝っぱらからとは中々やるではないかっ! ヤハハハハ!」

 

「……今日は外で食うかぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界の旧首都ルシファード。そこで開かれる若手悪魔の顔合わせに柳達も招待されていた。柳達が会場に到着するとサーゼクス自らが出迎える。

 

「やぁ、よく来てくれたね」

 

「ふん。不敬が過ぎるぞ。王である我を態々呼び寄せたのだ。宴の一つでも用意しておくのが礼儀であろうに。まぁ、頭にカラを似せたヒヨコ共の青臭い夢を聞くのもまた一興だ。許してやるから感謝せよ、雑種?」

 

最初は来る気のなかった一行だが、若手の夢を聞くという事を耳にしたギルガメッシュが興味を示し、行くのを承諾したのだ。

 

「……なんで私まで」

 

ちなみに柳は無理やり連れてこられていた。なお、バルバトスとエネルは興味がないらしく、アーシアはストーカーを刺激しないために来ていない。

 

「何たる不敬っ!」

 

「人間ごときがっ!」

 

「地を這う虫けらごときが誰の許しを得て我に近付いている?」

 

ギルガメッシュの物言いに腹を立てた貴族達が二人に食ってかかるが、ギルガメシュが放った黄金の剣を足元に刺されその場に尻餅をついた。

 

「おい、雑種。アレらは貴様の臣下なのであろう? 臣下を纏められぬ者に統治者たる資格はないぞ。……しかし、悪魔は実力主義と聞いたが、柳ならあの程度打ち落とせるぞ」

 

ギルガメシュは不快そうに鼻を鳴らすと奥へ向かって行く。そして、若手の顔合わせが開始し、ソーナが夢を語る場面となった。彼女の夢は上級悪魔だけでなく、下級悪魔でも通えるレーティングゲームの学校を作ること。

 

 

 

 

そして、浴びせられたのは賞賛でなく、嘲笑だった。笑っているのは壇上の老人達。そして、その場の誰よりも可笑しそうに笑っている者が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クハハハハハハハ! 笑わせてくれるな、小娘! やはりカテレアとかいう雑種といい、貴様といい、コウモリの女は道化の才能が有るらしい。喜べ、英雄王たる我自らが褒めてつかわすぞ!」

 

ギルガメッシュはその場の誰よりも高らかに笑い、ソーナの夢を馬鹿にしていた……。

 




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