ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ②

「……了解した。アイツ等は好きにしてくれ。約束の品は後で送る」

 

「当然だ。我の家臣に手を出そうとしたのだ、本来なら貴様も殺している所だが、貢物に免じ、許してやろう。ありがたく思うが良い」

 

「……すいません」

 

アザゼルに対しレイナーレ達の事を確認した柳達は、彼女等を始末する事、迷惑かけた侘びとして神器を幾らか差し出す事をギルガメッシュの独断で決定させ、話し合いが終わった。偉そうながらも過保護な所のある従者三人の怒りを買っている事にアザゼルは冷や汗を流し、柳はあまりに失礼な態度に居た堪れなくなっていた……。

 

 

 

 

 

「……本当に、友達だと思って良いんですね?」

 

ギルガメッシュの提案という名の命令により、レイナーレをおびき寄せる囮となった柳は、そんな事を知らないで楽しそうにしているアーシアに内心謝りつつ、街中を散策していた。そして、公園の池を眺めていた時、アーシアは柳に話した。自分の過去を。ずっと友達が欲しかった事を……

 

それに対し、柳は少し寂しそうにため息をついていった

 

「やれやれ、私の中では貴女は友達の積もりだったのですが、思い過ごしだった様ですね」

 

その一言にアーシアは驚き、喜びのあまりに涙しながらも手を差し出す。初めて出来た友達と握手をしようと。しかし、背後から無粋な声が聞こえてきた。

 

 

「アーシア。やっと見つけたわ。さぁ、帰りましょ。貴女は今夜の儀式に必要なのよ。……友達を殺されたくないで……がっ!?」

 

柳を殺すと脅し、アーシアを連れて帰ろうとしたレイナーレだったが、言葉を言い切る前に中断させられた。

 

「鬱陶しんですよ。空気読んで出てくるな、羽虫がっ!」

 

「や、柳さん!?」

 

 

レイナーレの顔面に飛び蹴りを叩き込んだ柳はバク転で地面に降り立つと、公園に設置されていたベンチを持ち上げ、レイナーレに投擲する。不意を打たれて動揺していた彼女は避けられず、ベンチごと池に沈んでいった。

 

「アーシアさん。雷は平気ですか?」

 

「えっ!? 苦手ですが……」

 

「そうですか。じゃあ、こっちで耳を塞いで蹲っていてくださいね」

 

柳に促されるまま離れた所に移動したアーシアは、突如聞こえた水音に振り返った。池に沈んでいたレイナーレが殺気をまき散らしながら池から出ようとし

 

「エネルさん。懲らしめてあげなさい」

 

特大の雷に打たれ、声もなく息絶えた……。

 

 

「ふぅ~、スッキリしました」

 

 

その時の柳の顔は最近溜まっていたストレスを発散したというような晴れやかな物で、アーシアは先程までの言動を無かった事にした……

 

 

 

 

柳とエネルがレイナーレを始末し、その間にバルバトスが廃教会を強襲してハグレ悪魔祓いと残った堕天使を皆殺しにし、ギルガメッシュが優雅にワインを飲み終え、やがて、夜が来た。

 

柳達はアーシアのこれからを話し合い、とりあえず一時的に柳の家に住み、今後の身の振り方を話し合う事になった。アーシアが寝静まった頃,柳はギルガメッシュに呼び出されていた。普段は傲慢な顔を見せるギルガメッシュは何処か不機嫌そうな様子で口を開く。何時もならホンの僅かだけ向ける優しさも感じさせずに……。

 

「さて、どう言う積もりだ? 雑種」

 

「え、いや、雑種って。懐かしい呼びかたです……うわっ!?」

 

何時もなら名で呼ぶギルガメッシュに雑種と呼ばれた柳は茶化すように話すが、その言葉は途中で遮られる。彼が足元に投げた短剣によって……。

 

「王が問うてやっているのだ。すぐに答えんかっ! ……なぜ、あの小娘を助けた。普段の貴様なら、よくある事と見殺しにしているであろう? 弱いのがいけないとな」

 

「それは……」

 

「そういえば、あの小娘は似ておるよなぁ。貴様の死んだ妹に。……妹と重ねたのか? 雑種」

 

「……」

 

ギルガメッシュの言葉に柳は無言で答える。それを肯定と受け取ったギルガメッシュは心底呆れたという風に大げさに溜め息をつく

 

「……貴様のやっている事はあの小娘にも、妹にとっても侮辱だ。いくら有象無象の雑種に過ぎんでも、そいつはそいつしか居らん。今回は見逃してやるが、次はどうなるか分かっておるよなぁ?」

 

「……はい」

 

「フンッ! ならば良い。せいぜい、あの小娘にどう接せば良いか悩むのだな。もう夜も遅い。我はもう寝るが、朝餉の支度が遅れればどうなるか分かっておるよな? 柳。その短剣はくれてやる。せいぜい励めよ?」

 

「……イエス、マイロード。英雄王の御心のままに……」

 

 

 

 

深々と頭を下げる柳に満足したのかギルガメッシュは笑みを浮かべながら自室へと向かっていった。彼が自室の前に着くと、彼が嫌う神を名乗る男が立っていた。

 

「王の寝所の前に立つとは、警護の積もりか? 良い心がけだな、雑種」

 

「ヤハハハハハ。そんな訳なかろう。なぜ神である我がそのような事をするのだ? ……ご苦労だったな。あの馬鹿に言い聞かせれるのは貴様だけだからな。我やバルバトスでは荷が重い」

 

「当然だ。我に出来ぬ事はないからなぁ。さぁ、其処を退け」

 

ギルガメッシュが寝室に入り、エネルも寝室に入った頃、部屋の中から話を立ち聞きしていたバルバトスは呟いた

 

「あれがぁ、ツンデレという奴なのかぁ?」

 

その疑問に答えてくれる者は誰もいなかった……。

 

 

 

「初めまして、アーシア・アルジェントといいます。アーシアとお呼びください」

 

柳達との話し合いの末、アーシアは柳の家に居候する事となった。何か言うかと思われたギルガメッシュも文句を言わず、それどころか言語の魔法と同様の効果のある宝具まで貸し与えるなど、柳を驚かせた。その人柄からすぐにクラスと馴染んだアーシアは今、柳と弁当を食べている。

 

「柳さんって、何を作られても美味しいんですね。今度教えてくださいませんか?」

 

「別に良いですが、ギルさんは味に五月蝿いですよ。なにせ王様ですから」

 

「が、頑張ります。陛下は怖いけど、柳さんの為に私も作れる様になりたいですから」

 

柳から神器の事と三人の素性を聞かされたアーシアは最初は驚き戸惑ったものの、すぐに受け入れ。ぎこちないながらも家に馴染んでいた。

 

(……それにしても、すぐに馴染みましたね。私なんて何度も死にかけたのに……)

 

この時、柳は気づいていなかった。三人がアーシアとすぐに馴染めたのは自分の存在があったからだと……。

 

「あの~、柳さん。お願いしておいてなんなんですが、本当に大丈夫だったのでしょうか? ここを支配している悪魔さん達とはあまり関係が宜しくないって聞いていますし、生活費や学費は大丈夫ですか?」

 

自分の我が儘のせいで恩人である柳に迷惑を掛けているんじゃないか。そんなアーシアの悩みを柳は破顔一笑する。

 

「ああ、お金なら大丈夫ですよ。ギルさんが稼いでいます。黄金率ってすごい能力で通帳の金額がやばい事になってますから。それと、悪魔側とは話がついていますよ。……この街の自称領主の身内の魔王とは別の魔王に知り合いが居ますから……」

 

知り合いの話に移った途端、柳の顔が暗くなる。アーシアは慌てて話を切り替え、二人は時間ギリギリまで談笑を続けていた。そして、その放課後。柳の手は玄関の扉に手を掛けた所で止まった。

 

「……私の直感が告げています。今日はホテルに泊れと……」

 

「ホテルですか!? ど、どうしましょう!? 私達、まだ会ったばかりですし。でも、柳さんとなら……って、私は何を!?」

 

「……泊まるのは私だけですよ。それに遅かったようですね。あの人に気づかれました……」

 

「やっなぎちゃ~ん♪ 久しぶり~☆」

 

柳がそう言った途端、玄関の戸が勢いよく開き、中から一人の少女が飛び出してきた。まるでアニメの魔法少女の様な格好をした少女は柳に飛びつき、地面に押し倒すと激しく頬擦りをしだした

 

柳は少女を引き剥がそうとするも、力強く抱きつかれ、引き剥がせない。その時、あまりの事態に呆然となっていたアーシアが我に返った

 

「だ、誰なんですか!? 貴女は!」

 

「私? 私は柳ちゃんの将来のお嫁さんだよ☆」

 

「……え? えぇ~~~~~~~~!?」

 

アーシアの驚愕の声が近所中に響き渡る中、キスを迫る少女の頭を柳は力強く握り締める。気を使い、身体能力を強化して……。少女の頭からミシミシと音がしてきた

 

「あいたたたたたっ!! 柳ちゃん、愛が激しすぎだよっ! それに、そういうプレイは寝室で……」

 

「……自称少女は黙っていてください。アーシアさん。この方が昼に話した知り合いの悪魔。正確には魔王レヴィアタンです」

 

「やっほ~☆ 魔王のセラフォルー・レヴィアタンだよ♪ よろしくね!」

 

「……あ、はい。宜しくお願いします」

 

驚きが一周して逆に冷静になったアーシアは普通に挨拶を行った……。

 

 

「柳さんっ! この人とはどういった関係なんですか!? み、未来のお嫁さんってっ!」

 

「……ただの知人ですよ。ちょっとした事で知り合って、その時に料理をご馳走したら気に入られまして。ちょくちょくご飯をタカリに来るんですよ。この人の発言は九割がたが脳を通さずに出ていますので、お気になさらずに」

 

「ひっど~い! ギルガメッシュさん以外が泊まりがけで釣りに行って、家に居ないから様子を見に来てあげたのに~」

 

「さ、家に入りましょう」

 

柳の発言に膨れ面になって文句を言うセラフォルーを無視し、柳はアーシアを連れ、家へと入った。

 

 

 

 

 

「……どうしてこうなった」

 

ソファーに座る柳の両隣にはごセラフォルーとアーシアが座っている。二人共腕に胸を押し当てる形になっており、柳としても振り払う気にはならなかったが、非常に居心地が悪かった。

 

「ふ~ん、最初は恋人を連れ込んだと思ってたけど、家族扱いだったんだ♪ 良かったよ、恋人枠が空いてて。柳ちゃんとは仲良くやってるの? 家族として……」

 

「はい、柳さんとは仲良くやっていますよ。今日も一緒にお昼を食べましたし。二人っきりで」

 

口調も穏やかだし、表情も笑顔だったが、二人の間では火花が散っていた。そんな中、先程から愉快そうにその様子を見ていたギルガメッシュが口を開く。火に油を注ぐ為に……。

 

「おい、柳。先程から鬱陶しいぞ。さっさと二人を抱いてしまえ。そうすれば解決するだろう」

 

「なに、言ってんですかっ!? 二人も本気にしないっ!」

 

ギルガメッシュの発言にに淫らな妄想をし、真っ赤になりながら呟きだした二人に柳は辟易し、時間は過ぎていった。そして、その日の夕食時……。

 

 

 

「……勧誘された? グレモリーにですか?」

 

「はい。もちろん断りましたけど、どうやら私の事や柳さんの事を調べたらしいですよ」

 

アーシアの言葉を聞き、柳は途端に不機嫌な顔をする。以前勝負した時に不干渉と決めていたはずなのに、約束を破られたからだ。

 

「……どうせ、アーシアさんはあの時居なかったからだとか、調べたのは私の家族や10年前の事件についてだとか言う積もりでしょうが……。ギルさん。今晩抗議してきますので宝具を貸していただけますか?」

 

「別に構わんぞ。家臣の忠誠に報いるのも王の勤めだ。我の広い心に感謝するのだな。しかし、貴様の過去が知られたとなると、あの女が関わってくるかもしれんな。悪魔としてでなく、幼馴染としてと言って」

 

「姫島先輩でですか? あの人なんてどうでも良いですよ。ギルさんも知っているでしょう? 私が悪魔が嫌いだって事。そして、堕天使も……。だから、彼らに協力しているのですよ」

 

 

 

 

「……何の用かしら? こっちは忙しいのだけど」

 

「おやおや、私が何の用で来たか分かっているのでは? 契約破りの次期公爵殿」

 

 

その日の夜遅く、柳は当事者であるアーシアを連れ、オカルト研究部の部室を訪ねた。部室内の空気はお世辞にも歓迎しているとは言えず、ピリピリとした空気が流れてる。特にボロボロにされた小猫は今にも殴りたいのを堪えている様に見えた。そんな空気を無視し、柳が構わずにリアスにイヤミを言っている中、朱乃だけは何かを言いたげにモジモジしていた。当然柳は無視し、リアス達に警告をした後、帰ろうとした。しかし、その時、部室内にグレモリーのものとは別の魔方陣が出現し、そこから炎が吹き出す。

 

「熱っ!」

 

その火の子がアーシアに降りかかった時、柳のこめかみが僅かにピクリと動いた……。

 

……どうでも良い。魔方陣から出てきた男、ライザー・フェニックスとリアスの会話を聞いていた感想はそれだった。噂で聞いた話や、今回聞いた話を要約すると、自由結婚をしたいと言っている公爵令嬢と、ハーレムのまま婿入りしたいという貴族の子息の言い争いだ。しかも、元々の話よりも婚約が早まった、という事が事態の悪化に拍車をかけている。

 

 

(バカバカしい。アーシアさんに怪我させた事を怒ろうと思いましたが、……関わりたくないですね。あの程度ならすぐ治せますし)

 

 

柳の冷めた視線に気づかず、泥沼の話し合いは続く。そして、ついにはレーティング・ゲームで決着をつけるという事になった。そんな中、先程から黙っていたアーシアが小声で柳に話しかけてきた。

 

「あの、レーティング・ゲームってなんですか?」

 

「ああ、悪魔社会で流行っている模擬戦闘みたいな物ですよ。大怪我したら直ぐに医療室に転移されて、死ぬ可能性なんて、まず無くて、死ぬような技は禁止されています。まぁ、生温いお遊びですね。全く、好戦的なくせに臆病なんですから」

 

世界を渡る力を持つバルバトスによって様々な世界を渡り、死ぬ様な思いをさせられた柳にとって、レーティング・ゲームは児戯程度にしか感じていなかった。そんな中、一誠がライザーご自慢の眷属を見て悔し涙を流し、それを見たライザーは馬鹿にする様に眷属達とディープキスをし始めた。

 

「あの~、柳さん? どうして目を塞ぐのでしょうか?」

 

「……見ちゃいけないものだからです。あ~あ、イッセーは馬鹿ですね。殴りかかって反対に……っ!」

 

アーシアに悪影響を与えない様に彼女の目を塞いでいた柳だったが、急にアーシアを抱きかかえると、その場から飛びのく。その瞬間、先程まで二人がいた場所に一誠が飛んできた。

 

「……周りの迷惑も考えてくださいよ。全く、これだから鳥頭は……」

 

「……聞こえたぞ、人間風情がっ! 誰が鳥頭だってっ!」

 

「おや、誰も貴方とは言っていませんが? 私はそこで伸びている間抜けに言ったのですよ。でも、反応するという事はご自分でも鳥頭だと思ってらっしゃるのですね。ああ、知っていますか? 鳥って体を軽くする為に、骨も脳もスカスカで、糞をボロボロ巻き散らかすんですよ。まぁ、貴方は子種を巻き散らかしている様ですがね」

 

柳の発した言葉にリアス達は思わず吹き出し、ライザーは怒りで顔を真っ赤にし、叫んだ!

 

「ミラっ! この男を殺せっ! 後ろの連れの女もだっ!」

 

「はい、ライザー様っ!」

 

「ライザー!? ちょっと、待ちな……」

 

リアスの制止も聞かず、ライザーは柳に向かって先程一誠を倒した少女をけしかける。彼女の持っている棍が柳へと迫り

 

 

 

 

「あっ! それっ! 一度振ったら、風を呼ぶっ!」

 

「きゃあっ!?」

 

 

柳が懐から取り出した扇をひと振りした途端、巻き起こされた暴風により、後ろの仲間と壁ごと何処か遠くへと吹き飛ばされていった……

 

「便利ですねぇ、芭蕉扇の原典は」

 

「貴様っ! 俺の眷属に何をしやがったっ!?」

 

「……先に手を出されたのは此方です。登場の時に出てきた炎でアーシアさんが火傷を負ったのですよ」

 

二人は暫し睨み合い、同時に仕掛けた。ライザーは炎の翼を出現させ、柳を骨ごと焼き尽くさんとし。柳は腰に下げたバックから取り出した何かの革でその炎を防ぐと、鎌を取り出してライザーに斬りかかった。そして、鎌の先端がライザーの手に突き刺さり

 

 

 

 

 

 

「おやめください。これ以上の争いは見過ごせません」

 

銀髪のメイドが間に入ることによって戦いが止められた。柳もライザーも彼女の説得によって渋々引き下がり、ライザーは帰っていった。

 

 

 

「おい、貴様もゲームに出ろ。絶対に逃げるなよ」

 

「結構ですよ。ですが、私には利益がないので、こちらが勝った場合、貴方が得る収入の半分を10年間払って頂きますよ」

 

「良いだろう! どうせお前が勝てるわけないのだからなっ!」

 

ライザーはそう捨て台詞を吐くと、魔方陣の中に消えていった。床に傷口から流れ出した血の跡を残して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは数年前、夏休みのある日の事だった。パズルゲームの対戦で、柳がギルガメッシュに30連勝していた時の事だ。

 

「柳ぃ~。貴様もぉ、基礎は出来てきたぁ。今日から実際に戦うぞぉ」

 

「あ、良いですよ」

 

惨敗したギルガメッシュの機嫌がマッハで拙い事になっており、手加減して負けてもバレるだろうから面倒くさいなと思っていた柳は、ギルガメッシュが王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を発動する前にバルバトスの異世界転移で逃げていった。

 

これはその日々の合間に書いた日記の一部である。

 

 

8月○日

 

今日、バルバトスさんの思いつきで異世界に行く事になった。どうやら私に実戦経験を積ませたいらしい。異世界の料理が楽しみだ。風景も楽しみたいと思う。ただ、ギルさんの宝具を幾つか拝借した物が入った袋があるのが不安ですが……。

 

 

 

「柳ぃ、着いたぞぉ。俺は手を出さぁんからなぁ。貴様だけで何とかしろぉ」

 

「……この状況をですか?」

 

バルバトスさんに連れられて、着いた所はお城だった。しかも、獣人の皆さんが警戒心丸出しで睨んでいる。……獣ベースの犬の獣人さんには、できればモフらせて欲しかったですね……

 

 

 

 

 

「有難うっ! 君は命の恩人だっ!」

 

 

力尽くで私が敵ではないと分かって貰った後、先ほどの毛並みの良い獣ベースの獣人が、人間ベースの獣人になり、少しガッカリでした。(犬耳の美青年って誰得なのだろう? まぁ、得する人は居るのだろうが……)

 

だが、少し調べると彼にとんでもない呪いが掛けられいる事に気づき、事情を聞いてみる事にした。それによると、彼らは異世界から召喚された存在で、召喚獣と呼ばれ、獣同然の扱いを受けているらしい。この城はそんな扱いから逃げ出した者達の隠れ家だったっとか。そりゃ、人間の私が現れれば警戒しますよね……。

 

彼に掛けられていたのは凶暴性を増す術でした。どうやら闘技奴隷だったらしいです。

 

とりあえず、ギルさんの宝具の中にあった、ルールなんちゃらとかいう短剣の原典で呪いを解除。皆さん唖然としていましたが、すぐに我を取り戻し、感謝の宴の招待されました。感謝の宴には獣人さん達の他に妖怪の類や、妖精、ロボットまで居たのは驚きでした。ああ、召喚の話を聞いた後、私が異世界人である事を話したら、警戒心がすっかり無くなりました。……ちょろすぎませんか?

 

その後、連ドラとかいう将軍や、月九とかいう博士など、人間の方々とも話をし、最後に姫と呼ばれている女の子に出会いました。どこか儚げで守ってあげたくなるような、とても好みだった事は私だけの秘密です。ただ、赤髪のメガネの探るような視線が鬱陶しかった事を覚えています。

 

その後、引き止められましたが修行の為と断り、旅に出ました。街の外では野生化した召喚獣が襲って来ましたので返り討ちにし(私が召喚したわけでもないのに襲ってきたのだから、仕方ありませんよね?)、時に人攫いを懲らしめ、料理大会に出場し、おさげ髪の女性が作ったラーメンや、白髪の少女の作った餃子に対抗すべく、激辛麻婆豆腐丼を作り、なんとか優勝する事ができました。彼等とはまた勝負がしたいですね……。

 

 

 

この世界での最終日、私はふと思った疑問をバルバトスさんに聞いてみました。私が神器で彼らを呼び出したのと、この世界の住人が召喚術を使い、召喚獣を無理やり従えるのと、違わないのではないかと……。その問いにバルバトスさんは

 

「気にするなぁ。貴様と過ごした日々は悪くなぁい。二人もそう思っているはずだぁ」

 

ただ、それだけ言ってくださり、私はそれを聞き、少し泣きそうになりました……

 

 

 

 

8月×日

 

今回訪れた世界で最初に目にしたのは巨大なテーマパークでした。入場料を払わずに入ってしまった!? っと心配しましたがそんな物は要らず、どうやらテーマパーク風のダンジョンで、宝は好きに持って帰っても良いとの事です。まだ入れない塔からは不愉快な力の波動を感じ、きな臭い感じはしましたが、修行になるから、と一人で行かされました。バルバトスさんはメロンを食べながら待つそうです。他にも挑戦者は居て、ミノタウロスを連れた武闘家のお姉さんや、珍獣を連れた魔道士のお姉さん。そして、茄子やノミに

 

「お前が欲しい」

 

と言いながら魔法で攻撃する謎の剣士。……あれが特殊性癖と言う奴でしょうか? バルバトスさんに聞いた所

 

「……早く次の世界に行くぞぉ」

 

と言われ、来て早々に旅立つ事になりました。お茶が好きな骸骨や、泣き虫な人魚のお姉さんなど、仲良くなった方々も居たので少し寂しかったですが、変態に関わりたくないので何も言いませんでした。何か言ってもう少し残る事になったら大変ですから……。

 

なお、ここで手に入れた物をギルさんに見せた所、

 

「貴様は我の与えた物を使っておれば良いっ!」

 

っと、同じ効果で上位互換のものを幾らか頂けました。これがツンデレと言うものかと呟いたら殺されかけました。理不尽だ……

 

 

8月△日

 

きょ、今日が最後らしいです。今まで大変でした。赤い服着たツンツン頭の二刀流とけん玉を武器にするハーフエルフの攻撃魔法の使い手、手枷をつけた蹴り技の使い手に札を使う精霊召喚士にバルバトスさんが勝負を仕掛け、私まで相手をさせられました。なんとか敗走させましたがキツかったです……。

 

他には鍵を体に突き刺して武器を出す人達や、ずっと手を繋いでいる男女、ゴミを木に変える力の持ち主や、剣や鎧を自由自在に装着する赤髪の美人、無口で食いしん坊な天下無双の武将など、強者と戦わされ、負ける度に基礎訓練の時間が延びていきました。そして、最終日。最後の相手は英霊でした……。

 

 

「……奏者よ。あの少年が戦うのか? どう見ても後ろの男がサーヴァントであろう!? というより、明らかにバーサーカーの類ではないのか!?」

 

「セイバー、落ち着いて」

 

私が勝負させられたのは私よりも小柄な少女。だが、ギルさんから聞いた事がある。彼女のクラスはマスターらしきお兄さんが言った通り、セイバー。最優のサーヴァントは油断できない相手。油断できない相手でした。

 

「やっ!」

 

私の防御はセイバーの速度重視の攻撃に砕かれ、

 

「打ち砕くっ!」

 

私の速度重視より、セイバーの力任せの攻撃の方が早く、

 

「無礼なっ!」

 

私の威力重視の攻撃はセイバーの防御を崩せれず、に終わり……

 

 

「受けるが良い!」

 

 

気合の入った攻撃によって吹き飛ばされました。私の意識が途切れる中、最後に目に映ったのは、私が全然歯が立たなかった赤いセイバーをバルバトスさんが一撃で葬る姿で、最後に聞いたのは、

 

「基礎のやり直しだなぁっ!」

 

という死刑宣告でした……。ああ、並行世界の私が憎い。あんな美人を従者にして。私も(ここで日記は途切れている)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとっ! 人の話を聞いているの!? 貴方もゲームに参加するのなら山での修行に参加して貰うって、さっきから言ってるでしょっ!」

 

「はっ! ……すいません、修行と聞いて悪夢が蘇っていました……」

 

ライザーと柳がひと悶着起こした次の日の朝早く、柳はリアスの訪問を受け、山で修行と聞いた途端、婿足の修行の日々が頭に蘇り、意識を飛ばしていた。憤るリアスを適当に宥め、柳は修行の支度をすると家を出た。本来なら柳は修行を断る所だが、嫌な思い出が蘇ったので三人にしばらく会いたくなくなったのだ。ただ、朝夕と食事を作りに帰るのだが……。

 

 

ちなみに、あの三人と一緒にしたら命が危ないとしてアーシアも修行に同行することになった。集合場所に向かいながら柳は思う。あのセイバー。皆、男装と言っていましたが、どこが男装なのだろうか? っと……。


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