ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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細かいツッコミは無しの方向で! (*´∀`*)


悪魔の力を手に入れました…… ②

「悪いが旧校舎まで案内してくれないか」

 

その日の放課後、宿直当番が回ってきた薫は夕御飯を買いに学園を出ようとした所で二人の少女に呼び止められた。少女らは白いフードをかぶって顔を隠しており、非常に怪しい。当然のごとく薫は警戒した顔で二人を見た。

 

「……何方でしょうか? 部外者を簡単に学園に入れる訳にはいかないのですが、入学希望の方……っという訳では無いようですね」

 

「怪しい者ではない。リアス・グレモリーに用があるだけだ。一般人は下がっていてくれ」

 

「不審者は『私、怪しい者です』なんて言いません。……一般人? ああ、貴女方が教会の方ですか?」

 

「……貴様、悪魔の手先か! 私達の事を知りながら足止めするとは良い度胸だ!」

 

薫はソーナから教会の使いが来ると言われていた事を思い出し、そう呟く。すると今度は二人が薫に警戒心を向けてきた。片方の青髪の少女など手に提げた包みに手をかけている。包みの上からでもそれが剣だと解った。だが、殺気を向けられているにも関わらず薫からは余裕が感じられる。

 

「違いますよ。私はちょっと変な本に選ばれた悪魔を知っているだけの一般人です。その本に興味を持って近づいてきた魔王と知り合いになってコネで此処に就職しましたけどね。貴女達の事は関係ないから忘れてただけですよ。じゃあ、ご案内いたします」

 

不機嫌な少女達を尻目に薫は飄々とした態度で旧校舎までの案内役を請け負った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君達、正座」

 

「え、いや、これは……」

 

「正座」

 

「……はい」

 

その日の夜、校庭の方から違和感を感じた薫は一誠によって小猫とアーシアの服が弾け飛ぶのを目撃。すぐに上着とワイシャツを二人に着せ、今度はグリモアを出現させて行われていた戦闘行動を止めた。今は宿直室でリアス達を正座させている所だ。

 

 

 

 

 

 

「……生きていても良い事なんてない」

 

「……主は私達なんてお救いにならないわ」

 

「……死にたい」

 

 

 

 

「あっちの絶望している三人は放っておくとして……グレモリーさん。なんで校庭で戦闘なんてことになったのかな? いや、確かに此処は裏では君達の領土という事になってるよ?  でも、学園には一般人も通ってるよね? 修繕とかで迷惑受けるのは彼らなんだよ? そこの所解ってる?」

 

「……反省してます」

 

「次は兵藤くんね。あの技は何? あの戦いで使うべきだったの? 一応訳があって戦いになったんだよね? じゃないと試合形式の戦いなんてしないよね? そんな戦いで欲望優先するなんてどうなの? ……一ヶ月程不能になってみる?」

 

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁい! それだけはご勘弁をっ!!」

 

薫の表情は笑顔で口調も穏やかではあったが、言い表せれぬ恐怖を感じた一誠達は素直に説教を受け続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……妙に宿直が続くと思ったらこういう事ですか。臨時ボーナスに釣られた私が馬鹿だった」

 

そう言って溜息を吐く薫の目の前には十枚の羽を生やし、宙に浮かぶ堕天使の姿があった。彼の名前はコカビエル。聖剣エクスカリバーを強奪し、三勢力間の戦争を再び巻き起こそうとしているのだ。轟音に驚いて様子を見に出てきた薫の視線の先には砕けたエクスカリバーと血を流して倒れる白髪の少年神父と老人の死体。そして傷ついた生徒達の姿だった。どうやらこの事態を想定して宿直の仕事が連続して入れられたと理解した彼は痛む頭を押さえる。コカビエルはそんな彼を興味深そうに見ていた。

 

 

 

「おい、人間。貴様がブックマスターだな? 名を名乗れ」

 

ブックマスター。それはグリモアを使う事から薫に付けられた異名である。なお、本人は厨二臭いと嫌がっている。

 

「芥辺 薫。ですよ。あ~……」

 

「俺の名はコカビエルだ。おい、単刀直入に言うぞ。貴様の持つ本の力は興味深い。なんせ悪魔を力量にかかわらず触れただけで殺せるのだからな。どうだ、俺の手下にならんか?」

 

コカビエルはそう言うと薫に近づき、勧誘をする。薫は数秒考え込んだ後に口を開いた。

 

「あっ、良いですよ」

 

『なっ!? せ、先生!?』

 

薫の返答にリアス達は驚愕する。彼は生徒思いとして知られ、裏切るような人ではないからだ。

 

「いやぁ~、コネでここに就職したのは良いんですが、ブラックでしてね。生徒会の顧問だけでなく、理事長の仕事も押し付けられているんですよ。あっ、そっちの待遇はどうですか?」

 

「三食昼寝付きでどうだ? 当然、残業代も払うぞ。何なら女をあてがってやっても良い」

 

「最高ですね! ……あっ、一つ聞きたいんですが良いですか? 私は部下を見捨てるような奴の下につく気はありません。貴方は私の為に死んでくださいますか?」

 

「フハハハハ! 当然だ!」

 

この時コカビエルは薫が本当に自分の手下になる気だと思い、その場限りの出任せを口にする。それを聞いた薫が微かに笑っているとも気づかずに。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私の為なら今すぐ自害だってしてくださいますね?」

 

「ああ、当然だ! 今すぐ死んでやる!」

 

「なら、死んでください」

 

その時であった。薫は空中で何かを掴むとコカビエルの体に押し当てる。その瞬間、コカビエルは光の槍を自らの心臓に突き立てて死に絶えた。

 

「私の生徒に手を出すな……。『革命』。相手自身が口にした言葉なら、相手の思想信条をその通りに塗り替える最悪の職能。できれば使いたくなかったんですがねぇ。……今思えば『怠惰』で動きを止めれば良かったような」

 

薫はそう自嘲したように呟くとリアス達の方に近づいていった。この後、白い鎧を身に纏った少年がやってくるも便所に数時間篭る羽目になったという……。




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