ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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従者が金ピカと青タイツと半裸だったら…… ④

「さて、最初の敵は此処ですね」

 

柳の目の前にある建物は体育館。互の陣地の中心地にあるこの建物は手に入れられればゲームを有利に進められる。だが、既に敵が数名入っている事を、柳はマントラで感じ取った。通常なら仲間を呼ぶか、裏口からでも侵入し、様子を伺うだろう。だが、柳のとった行動はどちらでもなく

 

 

 

「断罪の……エクスキューション!!」

 

 

バルバトス直伝の術で建物ごと敵を葬り去るというものだった。真下とその後方上空から噴出する闇のエネルギーによって体育館は半壊し、中にはボロボロとなって倒れている少女達がいた。なお、この術に、断罪の、という言葉は本来付かないはずなのだが、柳は師匠であるバルトスの影響により、元々付くものと思い込んでいた。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名、『戦車』1名リタイア』

 

「さ、終わりましたね。……まだ私も修行が足りない。バルバトスさんなら体育館は欠片も残らず、眷属は生きていなかったのに……。 !」

 

多大なダメージを受けて転送されていく彼女らには目もくれず、柳は先に進もうとし、咄嗟に後ろを向くと剣を交差させ、飛来してきた魔力を防ぐ。柳の視線の先にはライザーの女王、ユーベルーナが宙に浮かんでいた。

 

「……女王自らやって来るとは、私も注目されていますねぇ」

 

「お黙りなさい! 貴様のせいで私達はライザー様に叱責を受けましたわ! その借り、きっちり返してさしあげます!」

 

「ああ、芭蕉扇で吹き飛ばされたの恨んでいるんですね? あの後、何処まで飛ばされましたか?」

 

「ええ、飛ばされた所は牧場で、親切なお爺さんにミルクとパンを頂いたのですが……美味しかったなぁ。って、違う!」

 

取れたてのミルクと焼き立てのパンの味を思い出していたユーベルーナだったが、冷めた目で見つめる柳に気づき、我に返る。誤魔化しとばかりに柳に魔力を放とうとした彼女だったが、横合いより放たれた電撃により、気を逸らされた。

 

「あらあら、貴女のお相手は私ですわ。柳さん、私が此処を引き受けますので、貴方は先に行ってください!」

 

柳とユーベルーナとの間に割り込んだ朱乃は電撃を放ってユーベルーナを牽制し、柳に先に行くように促す。眷属全員を倒すつもりだった柳だが、彼女が頑固なのは幼い頃の経験で知っていたので素直に先に行く事にした。

 

 

 

 

 

「あ、木場くんは目を覚ましました?」

 

「……ええ、まだ意識が朦朧としているようですが、何とか大丈夫ですわ」

 

朱乃はそう言うとユーベルーナとの戦いに集中する。今のところ戦いは互角に進んでいるが、実力は朱乃の方が一歩リードといった所だろう。だが、柳は先に進みながらも首を傾げていた。

 

 

「……なんで雷光を使わないのでしょうか? まぁ、どうせ、アイツと同じ技を使いたくないという理由でしょうけど……」

 

 

その後、柳は森の辺りを見回っていた兵士三人を瞬殺し、敵の本拠地の新校舎まで進むと、様子を伺っている一誠と小猫の姿があった。

 

 

 

 

 

「あらら、まだこの様な所に居たのですね。先に進まないのですか?」

 

二人は柳が話し掛けると一瞬びっくりした様だったが、相手が誰か分かると落ち着きを取り戻した。最も,コ小猫は未だにけいかいのう

 

「……校庭にどれだけ敵がいるか分かりませんので」

 

「とりあえず、木場が来るのを待とうと思ってるんだ」

 

「この先には『戦車』『騎士』『僧侶』が一名ずつ、居ますよ。では、私はお先に」

 

柳はそう言うと後ろで制止してくる二人を無視し、校庭へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく来たな! 私の名はカーラマイン、ライザー様の『騎士』なり! その腰のふた振りの剣。貴様も剣士と見た! いざ尋常に勝負!」

 

「あ、断ります」

 

「うわっ!? 名乗りの途中に攻撃するなど卑怯な! 貴様、それでも剣士か!」

 

柳が校庭に正面から入ると、短剣を持った『騎士』らしき女性が名乗りを上げ、柳に決闘を申し込んできた。隣に居る『戦車』らしき女性は、何時もの事なのか呆れたような顔をしている。ここで相手が剣士だったのならばその申し出を受けたのだろうが、相手が悪かった。カーラマインが名乗りを上げている途中で投げられた短剣をなんとか身を捻って避け、柳に向かって叫ぶ。だが、非難されたにもかかわらず、柳は飄々とした態度を崩さなかった。

 

「あ、私は別に剣士じゃありませんよ? 剣も使うだけです。あ、それと、後ろに気をつけた方が良いですよ」

 

「ふん! その程度の嘘に騙される私では、ふげっ!?」

 

柳の言葉を嘘と判断し、切りかかろうとしたカーラマインだったが、先ほど柳が投げた短剣が地面に突き刺さった瞬間、その場所が爆ぜ、その衝撃で彼女は背後から迫った爆風に吹き飛ばされ、頭から校庭に突きさり、間抜けな姿を晒している。なお、『戦車』は爆発をモロに受けた事によって消えていった。

 

「……うん、目の保養になりますね。……うっ! 寒気が」

 

その格好からスカートが捲れ上がり、その中身が丸見えになったカーラマインを見つめていた柳だったが、嫌な寒気を感じ目を逸す。その頃、観覧席ではアーシアが黒い笑みを見せており、その笑みを見た者達は、エネルでさえも軽い恐怖を感じていた。

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』一名リタイア』

 

「ああ、名乗るのが遅れましたね。私の名は柳。空島の神の下僕であり、英雄殺しの反英雄の舎弟であり、かって世界を掌握した、世界最古の英雄王の家臣です。ちっぽけな冥界の、取るに足らない貴族の三男坊の眷属などとは格が違うのですよ」

 

柳はそう言うと未だに立ち上がれないユーベルーナ目掛けて剣を振り下ろし。その体を切り裂いた。

 

 

『ライザー・フェニックス様の『騎士』一名リタイア』

 

「さてと、貴女達も出てきたらどうですか?」

 

 

 

 

 

 

 

「……気付いてましたのね。それにしても恐ろしい力ですわ。貴方、本当に人間ですの?」

 

そう疑いの目で柳を見ながら近づいてきたのは金髪の巻き毛の少女。その後ろには着物を着た少女と、猫の獣人の双子らしき少女ら、そして、大剣を背負った女性がいた。お前は人間か? という質問に対し、柳は肩を竦めて答える。

 

「ええ、私は人間ですよ。いつの時代だって、悪魔やドラゴンは人間に倒されてきたじゃないですか。悪魔が人間に倒される事の何が不思議なのです? フェニックス家の長女、レイヴェル・フェニックスさん」

 

柳がそう言って腰に携えた鎌を抜くと、レイヴェルト呼ばれた少女の顔が強ばり、他の眷属達は彼女を守るように立ちふさがる。明らかに柳が手に持った鎌を警戒していた。

 

「……その鎌、お兄様の手に傷を残したという物ですね? それに警戒せよと言っておられましたわ。それにしても、よく私の事を知っていましたね」

 

「……いや、戦う相手の事を調べるのは当たり前でしょう? どこぞの慢心王じゃあるまいし。それに、あなたのお兄さんは有名ですよ。妹をハーレムに入れた生粋の色ボケだって。まぁ、私の後ろの変態には負けるでしょうが……」

 

「うっせぇ! 誰が変態だ!」

 

「イッセー先輩です。神田先輩、私たちも加勢致します」

 

「これで5対3ですか。本来なら私は戦いませんが、そんな事言ってられる状況ではありませんね」

 

「レイヴェル様、お下がりを! 私が貴女の分まで戦います!」

 

ようやく駆けつけた一誠と小猫の姿を見てさらに警戒を募らせたレイヴェルは戦闘態勢を撮り、他の眷属達も同様に構える。その場に一触即発の空気が流れる中、柳の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、この程度の相手なら私が倒しますので、貴方達は焼き鳥の所に行ってください。っていうか、貴方方が居たら邪魔です。早く行かないと、リタイアして頂きますよ?」

 

柳はそう言うと聖剣を抜き、一誠達に向ける。その表情や、戦った時の容赦のなさから本気だと悟った二人は慌てて新校舎へと向かっていった。当然、レイヴェル達は止めようとするが、その間に柳が立ちふさがる。

 

 

「さて、ここから先は行かせませんよ」

 

「……貴方、幾らなんでも舐めすぎじゃありませんこと? こっちは五人ですわ。勝てると思って?」

 

その言葉を聞き、柳は納得したような表情になり、鎌をしまい、剣を鞘に戻した。

 

「いや~、すいません。五人でも勝てる自信がないなんて、貴女方の弱さを舐めていました。不死の貴女は兎も角、他には武器は使わないでおきますね」

 

「なっ! ななななななな」

 

あまりの挑発行為にレイヴェル達は言葉を失い、怒りに震える。そして、柳は止めの言葉を言い放った。

 

「さて、こういう時はあの人の言葉をお借り致しましょう。精々散り様で私を興じさせてくださいよ? 雑魚共」

 

 

 

 

 

「殺せ! 貴女達、あの男を殺しなさい!」

 

「「「「行意!」」」」

 

怒りの余に上品な言葉使いも忘れ柳の抹殺を命じるレイヴェルの言葉に対し、四人は一斉に柳に向かっていった。まず、双子の獣人が左右から襲いかかるも、柳は後ろに身を逸らし、その攻撃を避け、二人の頭を掴み、両者の頭をぶつけ合っう。そして、二人が怯んだ瞬間、腹部に蹴りを入れて吹き飛ばした。

 

 

「よくも、ニィ、リィを!」

 

大剣を背負った少女、ライザーの『騎士』であるシーリスは柳に向かって剣を振り下ろすも柳は横に避ける。その瞬間、彼が今までいた場所を衝撃波が通り過ぎた。

 

「いやはや、マントラが無ければ喰らっていましたね。いや~、危ない、危ないなっと!」

 

柳は言葉とは裏腹に余裕そうな態度でシーリスの剣を避け続ける。その背後から残った少女、『僧侶』の美南風が魔力を放ってくるが、まるで背中に目があるように避け続ける。そして、再びシーリスの剣を避けた時、柳は彼女の懐に入り込み、指を彼女の目に突き刺した

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

両目を潰されたことで思わず剣を離し、両目を押さえたシーリスに向かい柳は彼女の胸ぐらを掴み、放り投げる。レイヴェルが柳をシーリスごと葬る為に放った炎へと……。

 

 

「いや~、仲間を倒すとか、非道な事をいたしますね。ああ、恐ろしい」

 

柳はそう言いながら残った双子を剣で串刺しにした。

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』二名 『騎士』一名リタイア』

 

「くっ! よくもぬけぬけとっ!」

 

柳の小馬鹿にしたような態度にレイヴェルが憤る中、再びアナウンスが流れる。

 

『リアス・グレモリー様の『女王』一名リタイア』

 

そのアナウンスを聞き、レイヴェルと美南風の顔に余裕が戻った。

 

「これでユーベルーナが直ぐにやってきますわ! 幾ら貴方が強くても、彼女には……」

 

「あ~、やっぱり倒されたか。まぁ、本気出していませんでしたし、当然ですね。……なんかやる気無くなったなぁ。三男坊の収入の半分の様な端金の為に、張本人達が本気を出さない戦いを続けるなんて、馬鹿らしくなってきましたね。しょうがない、先に引き受けた仕事だけでもこなしますか」

 

柳はそう言うと剣を抜き放ち、美南風の方へと振るう。ただ、それだけで大地は割れ、校舎が切断され、美南風の右腕が宙を舞う。そのような事をしたにも関わらず、柳は困った様に剣を見つめるだけだった。

 

「むぅ、やはり今の私ではグラムを使いこなせんませんか。少し右にズレちゃいましたね」

 

『ライザー・フェニックス様の『僧侶』一名リタイア』

 

「ズ、ズレたってあのままズレていなかったらあの子は死んでいましたわ!」

 

「いや、貴女も私を殺すように言っていたじゃありませんか。おあいこですって」

 

柳はそう言ってレイヴェルにツカツカと近づいていく。後ずさりして逃げようとしたレイヴェルだったが、壁際に追い詰められる。彼女が恐怖から目をつぶった、その時、空中から声が響いた。

 

「レイヴェル様ぁ! 今、お助け致します!」

 

「ユーベルーナ!」

 

仲間が次々とやられている事から急いで本陣まで戻ってきたユーベルーナはレイヴェルのピンチに間に合う事ができた。頼りにしている相手が来た事により、彼女の瞳に余裕が戻る。だが……。

 

 

 

 

「よっと」

 

「……え?」

 

柳はレイヴェルの胸ぐらを掴むとユーベルーナと自分の対角線上になる様に彼女を放り投げ、エクスカリバーを構える。すると、エクスカリバーから赤いオーラが溢れ出し、

 

 

 

「ジェノサイドブレイバー!!」

 

 

柳が剣を振るった瞬間、聖剣のオーラを纏った赤い波動が、二人に向かって一直線に放出された。

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

二人はなす術なく波動に飲み込まれ、ユーベルーナは転送され、レイヴェルは石像となって校庭に落下する。そして、復活することなく転送されていった。

 

『ラ、ライザー・フェニックス様の『僧侶』一名『女王』一名リタイア』

 

この光景に冷静なアナウンスを行っていたグレイフィアさえも動揺した声を出す。だが、当の本人である柳は気にした様子もなく新校舎へと向かっていった。

 

「さて、ライザーに手傷を負わせますか」

 

「待ちなさい! 貴方はもう良いわ。……せめて、此処から先は私たちがやらなくちゃいけないわ」

 

柳が鎌を出して新校舎へと向かおうとすると、リアスに呼び止められた。

 

「……良いんですか? 貴方方だけでは負けますよ?」

 

「……それでも、私達だけで戦わないといけないのよ。貴方に眷属を全て倒して貰っておいて、言う事じゃなないけど、私達にも意地があるわ」

 

「はぁ、まぁ良いですよ。すみません、リタイアさせてください」

 

『リアス・グレモリー様の『助っ人』一名リタイア』

 

リアスの決意を聞いても、何も感じなかったような表情を見せた柳はリタイアを宣言し、転送されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「柳さ~ん!」

 

柳は特に怪我もないので転送された先から帰ろうとしていた。会いに来たサーゼクスに、ゲームの結果が気にならないのか?、と聞かれたが、

 

「興味ないので」

 

っと、一言だけ言って帰えろうとすると、廊下の向こうからエネルに連れられてアーシアがやって来る。さすがにあんな試合を見せた後だから、怖がられてりいるだろうな、と思っていた柳だったが、アーシアは真っ直ぐに柳に向かって行き、抱きつくと、その頬に軽くキスをした。

 

「柳さん! 凄く格好よかったですよ!」

 

「……あんな戦いを見ておいて、私が怖くないのですか?」

 

柳の質問に対し、アーシアは柳の目を見据えながら、軽く首を振っって言った。

 

「……はい、少し怖かったです。でも、そもそも柳さんが戦いに参加した理由は私が原因ですし、それに、柳さんは大切な人ですから! だから、私は貴方の全てを受け入れます」

 

「……有難うございます。さぁ、帰りましょう」

 

仲良く手を繋ぎながら帰っていく二人の背中を見てエネルは呟く。

 

「やれやれ、これが息子に女が出来た時の親の心境か。まさか我がこんな物を知る事になろうとはな……」

 

その声は少し寂しそうだったが、同時に、何処か嬉しそうだった。このあと、柳はゲームの結果を知らされた。一誠が片手を犠牲にして一時的な禁手に至り、何とかライザーを倒したと。最も、柳はそれを聞いても興味無さそうにしていたが……。


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