ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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霊感少年 Fate編 ⑦

第三回戦の対戦表を見た一誠達はマイルームで相談を始めた。

 

「次の対戦だけど、誰が出る?」

 

「う~ん。流石に此の世界のありすと戦うのは気が引けるにゃ」

 

 今まで敵とあらば情け容赦なく殺して来た一行だが、流石に仲間とほぼ同一人物の子供を殺すのは気が引けるようだ。あくまで自分達は分身であり、この戦いを本体が暇潰しに観戦する為に送り込まれただけに過ぎない。その思いが一行の決断を鈍らせていた。

 

「なんなら俺が戦おうか?」

 

「……拙者が殺ろう。たとえ別人でも、殺せば観戦している本体は気不味くなるで御座る。なら、その汚れ役は拙者が引き受けるで御座るよ」

 

そんな中、一誠の提案を却下しながらポチが立ち上がる。一誠が何か言おうとしたが手で制し、そのままありすと共にマイルームから出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、キャスターさん! あたしの相手もあたし(ありす)なんだってね!」

 

「ええ、そうね。……どういう事かしら?」

 

 その頃、対戦相手のありす達もアリーナに向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「遅いっ!」

 

向かってきたエネミーはポチが刀を振るだけで分解されて消えていく。ありすはその後ろでアクビを咬み殺す。その手にはトリガーコードが握られていた。

 

「これを集めないといけなかったのね。今までの相手が弱かったから初めて見るわ」

 

「いや、今までの者がルールを破って一日目に戦いを挑んだので御座ろう……」

 

ポチも敵が弱すぎて暇なのか大アクビをする。困った事にリターンクリスタルを忘れ、出口まで行かないといけなくなっていた。

 

「あたし、疲れた! ポチさん、オンブ!」

 

「……仕方のない童だ」

 

ポチは溜息を吐きながらもありすを背負い、風を切る様に出口へと進む。途中、襲ってきたエネミーは足で一蹴し、出口が見えてきた頃、もう一人のありすの姿も見えてきた。どうやら先に入っていたらしく、その隣には見知った者の姿がある。

 

 

「あっ! メディアさん!」

 

「なっ!? ……ありすちゃん、下がってなさい」

 

もう一人のありすのサーヴァントの正体は此方の世界のメディア。フードを被っているにも関わらず正体を看破された事に警戒し自分のマスターを下がらせる。

 

「どうしたの、メディアさん?」

 

「……あ~、ありすちゃん二人を並べて着せ替えしたいわねぇ。其方のムサ苦しい侍が貴女のサーヴァントかしら?」

 

「うん! 今回のサーヴァントはポチさんなの!」

 

「……今回は?」

 

ありすの言葉に違和感を覚えたメディアは少し考え込み、直ぐ様後ろに居たありすを抱えてアリーナから脱出していった。

 

「想定外の事が起こったら直ぐに退避……やはり厄介で御座るな」

 

「あれ? メディアさん、もう帰ったの?」

 

「……あれは此方の世界のメディア殿。つまり、敵で御座る」

 

「? あたし、よく分からない! メディアさんは、メディアさんでしょ?」

 

「……なんと説明すれば良いのか」

 

ポチは困りながら脱出用のゲートを潜った。報告を受けた一誠達は更に戦いにくくなったと困るが、ポチはそれでも戦うと言い張った。

 

 

「彼方は彼方、此方は此方。全くの別人で御座る。そして、此方の仲間(群れ)を守るのが拙者の役目。それならば、別世界の仲間だろうと切り捨てる」

 

「……うん。君の言うとおりだね。俺は何を悩んでいたんだか。……ポチ、次会ったら二人を噛み殺して良いよ」

 

「御意っ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あたし(アリス)。また決戦の場には行かないのかしら?」

 

「また決戦の場には行かないのよ、わたし(ありす)

 

 

 

 

 

そして次の日、退屈だった一誠は白野とセイバーをオチョクリに行く事にした。二人の対戦相手は変なピエロだ。

 

 

 

 

「やぁ!」

 

「……貴様か。何の用じゃ」

 

「君達を馬鹿にしに来たんだ」

 

「……いっそ清々しいな」

 

「いやぁ、照れるなぁ。それで勝ち目はあるの? 向こうの方が君達より強いよ。……あ、そうだ! 君達が勝ったら君の正体に関する質問に答えてあげる。頑張ってランサーのヴラド公を倒してね」

 

一誠はそれだけ言うとその場から立ち去った。

 

 

 

 

「……相手の情報、教えに来てくれたのか?」

 

「そのよう、じゃな」

 

 

 

 

 

 

「あっ! その格好、どう見ても男装じゃないよねっ! 黄金劇場の客がすぐ帰ったネロさん!」

 

「……あやつ、余の真名を大声で叫びよって……。やはり馬鹿にしに来たのではないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャスターの本領発揮、といった所で御座ろうか?」

 

ポチがアリーナに入るなり、無数の竜牙兵が襲ってきた。ありすを背負ったポチは竜牙兵を蹴り飛ばしながら奥へと進む。すると特大の魔術が雨霰と襲いかかってきた。

 

「ちぃ!」

 

ありすを背負っているために刀を抜けないポチは魔術を避けながらメディアに接近する。

 

「これで吹き飛びなさいっ!!」

 

そして、ポチの視界は津波のように押し寄せる魔術に覆い尽くされた。

 

「……逃げられたわね。ありすちゃん、トリガーコードは手に入れた?」

 

「うん!」

 

「そう。なら、帰ってご飯にしましょう」

 

メディアはありすと手を繋ぎながらアリーナの出口に向かう。それを見届けたポチは物陰から出て来た。

 

「……痛い」

 

ありすの腕には掠り傷が出来ており血が滲んでいる。それを見たポチの目は鋭くなり、牙が怪しく光った。

 

 

「……許せぬ。よくも拙者の仲間に怪我を負わせたなっ!」

 

とたん、ポチの毛が逆立ち、四つん這いになったポチの体は獣へと変貌する。やがて変化が終わるとポチは人狼からフェンリルへと変化していた。

 

「……此処で待っていろ。すぐ終わる」

 

ポチは風の様に走るとメディア達を追って行き、ありすの四回戦進出が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして別の対戦では凛とラニが戦い、ラニの自爆で重傷を負いながらも凛が四回戦進出を決める。白野は殺し合いの中で出来た友人を一人失い、失意の中四回戦に挑む事となった。

 

 

「……奏者よ、気に病むな。残るのが一人な以上、何時か死ぬ運命にあった。今は自分が生き残る事をかん挙げよ」

 

 

 

 

 

 

「まぁ、たとえ優勝しても君は消えるけどね」

 

「……どういう事だ?」

 

「うん。約束だから教えてあげるね。君は人間じゃない。NPCが偶然マスターの資格を持ったイレギュラーに過ぎないのさ。だから、優勝してもイレギュラーを許さないムーンセルは君を排除する。君には過去も未来もないんだ。……まぁ、信じるも信じないも君次第だけどね」

 

一誠が立ち去った後も白野は立ち尽くし、掲示板には次の対戦カードが表示される。

 

 

 

 

 

ありす 対 ウェイバー・ベルベット

 

ありすの次の対戦相手は大柄のライダーを連れた少年だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ。次は私が出るヨ」

 

 




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