「Aaーーーlalalalalalalalalaie!!」
アリーナの中を二頭の牛に引かれた戦車が疾走する。現れるエネミーは踏み潰さえれ、もしくは放たれる電撃によって消滅していった。
「お、おいライダー! 何でこんなに飛ばしてるんだよっ!?」
「何を言うか! 征服王たる余がチマチマ歩を進めれる訳がなかろうっ! このままトリガーコードを探すぞっ!」
「こ、こんな速度で探せるかぁっ! バカバカバカぁ!」
ライダーの破天荒ぶりに未だ振り回されているウェイバーは戦車にしがみつきながら周囲を見回す。そして怪しい宝箱を見つけたその時、戦車が急に止まった。
「わぁっ!? い、いきなり止まるなよっ!」
「そう言われてもなぁ。ほれ、敵さんのお出ましだ」
ウェイバーの目の前には不気味な顔の装飾がされた上に刃が三叉に分かれた剣を持っている男と対戦相手のありすが立っていた。
「……ふむ。相手はライダーの様だネ」
「そういう貴様はセイバー……いや、アサシンだな」
ライダーが見つめる先にある剣からは煙が上がっており毒が仕込まれていることが伺えた。
「ククク。さて、どうだろうネ。では、戦う前に名前を聞いておこうか。でないと君を解剖した後で入れる瓶に貼るラベルに何と書けば良いか困るからネ」
「あれ? 倒されたら消えるんじゃなかったかしら、マユリ?」
「そうさせないのがワタシだヨ。サンプルの一部は本体に送られるようになっている。では、始めようか」
「良いだろう! 我が名は征服王イスカンダル! 暗殺者ごときに遅れは取らんわい!!Aaーーーlalalalalalalalalaie!!」
イスカンダルは手綱を引くとマユリ達へと向かっていく。マユリはありすを抱えて飛び退くと片方の牛の前足を切り裂く。牛は切られたもののマユリの体勢が悪かったのか傷は浅く問題なく動ける状態……のはずだった。
「ぬっ!? これはどうした事だっ!?」
イスカンダルが再び突撃しようとするが攻撃を受けた牛の四肢の動きが止まっていた
「……麻痺毒か」
「ほぉ。筋肉ダルマにしてはよく気付いたね。でも、違うヨ。この剣がワタシの宝具『
疋殺地蔵が動けない牛に突き刺ささると牛は苦悶の鳴き声を上げる。イスカンダルが剣を振り上げて切り掛かるが間に現れた壁によって防がれた。
「忘れていたようだネ。アリーナでの戦いは禁止されているよ」
「ふんっ! これまでアリーナで敵を仕留めてきた奴らが何を言うかっ!」
「ワタシに言われても困るのだがネ。……さて、目的は果たしたし帰るとしよう」
ありすの手には既にトリガーコードが握られており、そのままリターンクリスタルで脱出する。イスカンダルはその姿を苦々しげに見送っていた。
「むぅ。中々厄介な敵だのぉ。吾輩の宝具が生き物の姿をしているのがアダとなるとは。だが、宝具が分かったのは儲け物だな、小僧」
「でもよ、疋殺地蔵なんて聞いた事がないぞ? 名前からして日本の英霊っぽいけどよ。ていうか、毎回毎回自分から真名を明かして何考えていやがりますかぁぁぁぁっ!!」
「なら、帰ってから調べれば良かろう。それと、吾輩が名を隠さねばならぬ理由がどこにあるというのだ? それに分からなくとも問題ないわい。アレを使えば良いだけなのだからなっ!」
「いや、魔力供給するのは僕なんだぞ?」
イスカンダルは豪快に笑うと戦車から降りて歩き出す。ウェイバーもその背中を慌てて追っていった。そして数日が経ち、たまたま時間が合わさらなかった二人は決戦当日まで会うことがなくトリガーコードを手に入れた。
「やれやれ、ようやく君の試合が始まるのか。普通なら一回戦から始まっているべきなのだがね」
「別にいいじゃない、ロリコンおじさん」
「その呼び名は訂正して欲しいのだが……」
「わかったわ! ロリコンおにいさんっ!」
根本的な所で気持ちが伝わらず、ありすはそのまま決戦の場へと続くエレベーターに乗り込む。半透明の壁で隔たれた向こう側にウェイバー達の姿のあった。
「……なあ、お前みたいなチビがなんで聖杯戦争に参加したんだ?」
「え~とね、暇つぶし!」
「暇つぶしって……負けたら死ぬんだぞ? 怖くないのかよ……」
「あたしはもう死んでるよ? でも、お兄ちゃんが助けてくれたから大丈夫だけど」
「いや、何を言ってるんだ?」
ありすの言葉に疑問符を浮かべるウェイバーに対しイスカンダルはマユリをジッと見つめている。
「お前さん、何処の英霊だ? 全く調べがつかんかった」
「わざわざ教えるバカはいないヨ。それを聴くお前は大馬鹿だネ」
「何、物は試しというではないかガハハハハ!」
「……やれやれ、ウチの脳筋組の同類のようだネ」
マユリが呆れたような眼差しを向けた時、漸くエレベーターが到着する。二組はゆっくりと外に出ると互いに向かい合った。
「……ライダー。あの剣を一撃でも食らったらまずい」
「分かってるわい。短期決戦で決めるぞ」
「ねぇマユリ。これが終わったら甘い物が食べたいわ」
「ワタシに言うんじゃないヨ。グレンデルにでも頼むんだね」
最初に仕掛けたのはイスカンダル。動けるようになった戦車の最高速度でマユリに突っ込み引き潰そうとする。すぐに飛んで避けたマユリがイスカンダルに剣を振り下ろすも大剣で受け止められ弾き返される。宙に浮いたマユリがら耳を触ると中から鎖鎌が現れイスカンダルの腕に巻き付いた。
「ぬっ!? 奇っ怪な奴め」
イスカンダルは着地したマユリを引っ張ろうとするがビクともせず反対に引き摺り落とされそうになった。素早く鎖を断ち切ると再びマユリに突撃を開始する。だが、足元から吹き出した炎によって戦車のバランスを崩され、その隙に二頭の首が切り落とされた。
「あれ? 牛さん消えちゃった。今日はステーキかと思ったのに」
「アレは宝具だからね。お前の神器で出した魔獣と同じと思えば良いヨ」
「……お前さんら、さっきから妙な事を言っておるの。がっ、気にしてる場合でもなさそうだ」
「おいおい、どうするんだよライダーっ!? あの宝具を使う暇なんて……」
「いや、使って良いよ。むしろ使って貰えわねば此方か困る。情報は多いほうが良いからネ」
マユリの言葉に驚いて固まったウェイバーだが、即座に大量の魔力を供給する。イスカンダルはその魔力を受け、奥の手を切った。
「集え我が同胞よっ!」
イスカンダルから突如強烈な光が放たれ光が晴れた時、四人は先程までの場所は違う砂漠の真ん中に居た。心象風景の具現化。固有結界と呼ばれる大魔術である。そしてイスカンダルの背後には彼と戦場を共にした数多の仲間。その全てが英霊だ。この瞬間、ウェイバーはイスカンダルこそが最強だと確信した。
「さて、ここは吾輩が生前駆け抜けた大地。余と仲間たちが等しく心に焼き付けた景色。率いるはいずれも強者。この世界を具現化できるのはこれが我ら全員の心象であるからだ。彼らとの絆こそが我が至宝! 我が王道! イスカンダルたる余が誇る最強宝具『
イスカンダルの背後で英霊達が武器を構えてマユリ達に狙いを定める。
「蹂躙せよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そして愛馬であるブケファラスに乗ったイスカンダルの掛け声と共に押し寄せた。
「……ふぅ。全く、ワタシは学者だというのに面倒な。おい、ありす。毒に強い魔獣を出せ」
「うん!」
ありすの影が広がり中から無数の怪物が出現する。どれもこれも巨大でイスカンダルは一瞬動揺の色を見せるがすぐに振り払って突撃していく。そしてマユリは疋殺地蔵を構えた。
「……卍解『金色疋殺地蔵』」
現れたのは赤子の様な頭を持つ巨大なイモムシ。その口から紫色の霧が吐き出された。霧はまたたく間に周囲を覆い尽くし、イスカンダルと背後の軍勢達を包み込む。そしてそれを最初に吸った兵士がその場に倒れこんだ。その体には無数の痣の様なものが出現し、他の兵士の体にも現れていく。当然、イスカンダルやウェイバーの体にも現れていた。
「小僧っ!」
「分かっ…てる」
ウェイバーは薄れいく意識の中、毒消し効果のあるアイテムを使う。イスカンダルの体から毒が消え去り、毒で倒れたブケファラスから飛び降りた彼は単身マユリに向かっていった。振るわれる魔獣の拳を避け、履きつけられる炎に焼かれながらも進む。そして金色疋殺地蔵の胸部から生えた無数の刃を避けて剣を振り下ろそうとして赤い壁に阻まれた。
「……少し遅かったか」
背後では毒が完全に回って死亡したウェイバーが倒れておりイスカンダルの体も崩れ始める。
「惜し…かったな…」
やがてイスカンダルの体は完全に消滅し、靄となってマユリが手にした小瓶に吸い込まれていった。
「中々のサンプルが手に入った。では、帰るヨ」
既にこの場に興味をなくしたマユリはエレベーターに乗り込み、ありすも後に続く。こうして四回戦目にしてありすの最初の決戦は幕を閉じた。
「ふせんしょう?」
「ああ、相打ちで終わった組みが居てね。厳選な抽選の結果、君が不戦勝となった」
そして五回戦は戦わずして勝利し、いよいよ六回戦。残るマスターは四人。岸波白野もラニⅷの自爆で本調子でない遠坂凛も生き残っている。
そして、ありすの対戦相手が発表された。
ありす 対 遠坂凛
「……非常に拙いわね」
未だ本調子でないにも関わらず、相手は優勝候補筆頭を初日で倒したダークホース。凛は焦燥感に襲われていた……。
広範囲の固有結界は脳が破壊されるとかの設定は無視してくれ!
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