ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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今回、ケリィの能力が判明します


不死鳥の王と収集家の戦車 ②

ケルベロス。地獄の番犬の異名を持つ三頭の犬の魔獣で、その戦闘能力は中級悪魔を凌ぐ。口からは火球を吐き、唾液には猛毒が含まれていて、その唾液からトリカブトが生まれた、とまで言われるほどの猛毒だ。

 

「大体二十頭って所かしら? この場合は六十頭かしらね?」

 

そのケルベロスが大量に集まって群れを作っているので退治して来る様に、殿名を受けらケリィは岩陰から群れの様子を伺う。数は大体二十頭程度で、中央に年老いたリーダーらしきケルベロスが鎮座していた。今ケリィが居るのは風下だから気付かれないが風の向きが変わったら気付かれるだろう。ケリィは空間を歪ませると中からエアガンを取り出し引き金を引く。弾を入れ忘れていて不発だった。

 

「え~!? 嘘ぉん! しまったわぁ!」

 

『!』

 

ケリィが思わず発した声にケルベロス達は反応し、唸り声を上げながら近づいてくる。一番若い一頭がケリィ目掛けて飛びかかり、頭を三つとも光の槍で貫かれて地面に落ちた。

 

「あ~あ。久々に思いっきり暴れられると思ったのに残念だわぁ。早く終わらせてスィーツでも食べに行きましょ」

 

ケリィの影が盛り上がり、巨大な人型(ヒトガタ)になって行く。数分後、無残に吹き飛ばされた荒野にケルベロスの死体が散乱していた……。

 

 

 

「あら、帰ってましたのね、ケリィ」

 

「ええ、さっき帰ったばっかりよ、レイヴェル様」

 

屋敷に帰って一休みしているケリィの近くに金髪ロールの少女が近づいてきた。彼女の名はレイヴェル・フェニックス。ケリィの王であるライザーの妹だ。レイヴェルはそのままケリィの隣に腰を下ろした。

 

「お兄様達の世話って大変ではありません事? 私が肩でも揉んであげましょうか?」

 

「いやいや、流石に其処までして貰う訳には行かないわ。いくら昔から一緒に居ても、私は中級悪魔で貴女は上級悪魔。他の人に見られたら示しが付かないでしょ?」

 

「あら。だったら貴方が私の眷属になりませんこと? 私、一人も眷属いませんし眷属と主のコミュニケーションなら問題有りませんわ」

 

ケリィの返答に不満そうな顔をしたレイヴェルは次の提案をして来る。それに対しケリィは困ったように笑った。

 

「気持ちは嬉しいけど、アタシって他の眷属の面倒も見なきゃならないのよね。基本皆ライザーを甘やかすばっかりだから叱る役目も必要だし。……この前、お母さんみたいって言われたわ」

 

「あら、知りませんの? 使用人の間では『偉大なる母漢(グレートマザーガイ)』って呼ばれてますわよ?」

 

「……そう。まぁ、良いわ。眷属の件だけど、ライザー様と相談して頂戴な。そうそう、来月から人間界の学校に通う事になったから貴女の眷属候補を探しましょうか?」

 

「ええ、お願いするわ。……今、人間界の学校に通うって言いませんでした?」

 

「ええ、そうよ。任務の前に当主様から頼まれたの。眷属を代表してライザー様の婚約者であるリアス・グレモリー様の所でお世話になりなさい、だって。ほら、あの方嫌われてるから、繋ぎとなる者が要るのよ。で、他のメンバーは嫌われてる要因の一つだからアタシしか居ないって訳。……まぁ、皆の世話の都合上、頻繁に帰って来るんだけどね。……あれ?」

 

ケリィの隣に居たはずのレイヴェルは何時の間にか姿を消しており、ケリィは話に飽きてどこかに行ったのだと判断した。

 

「仕方の無い子ねぇ……」

 

 

 

「お父様!」

 

「おや、どうしたんだい、レイヴェル?」

 

フェニックス家当主が執務室で仕事をしていると娘であるレイヴェルが慌ただしい様子で飛び込んでくる。娘に甘い彼は仕事の手を止めて娘に顔を向けた。

 

「私も来年から人間界の学校に通わせてください!」

 

 

 

 

「フェニックス家からの客人ですか?」

 

数日後の事、ライザーと家同士が決めた婚約者であるリアス・グレモリーはフェニックス家から送られてきた書類を見て眉を顰める。其処に乗っていたケリィについてのデータが載っていた。彼女の女王である姫島朱乃は書類を興味深そうに覗き込む。

 

「……ケリィ・ロックベル。わずか十三歳で中級悪魔に昇進した転生悪魔。ライザー・フェニックスのゲームでの快進撃に大いに貢献しており、MVPに何度も選ばれた選手ですわね。確か異名が『千の技の男(サウザントアーツ)』でしたわね。どうも様々な異能を扱うとか」

 

「……そう。どちらにしても断る訳にはいかないし、一度会ってみるわ。気は進まないけど……」

 

リアスは大きく溜息を吐くと書類を封筒にしまった。

 

 

「……ふ~ん。雷光のバラキエルの娘にSS級はぐれ悪魔・黒歌の妹。それに強力な神器を宿したハーフヴァンパイア。……あら? 聖剣計画の生き残りまで居るのね。……できれば全部収集したいわ」

 

その頃、ケリィも独自のルートで手に入れたリアス達の情報を纏めた書類を見ていた。一通り見終わると書類を燃やし、待ち合わせの場所であり通う予定の駒王学園に向かっていった。

 

 

「お初にお目にかかりますわ。アタシはケリィ・ロックベル。ライザー・フェニックス様の戦車(ルーク)よ。此れからお世話になりますわ♪」

 

「リ…リアス・グレモリーよ」

 

リアスがケリィに抱いた第一印象は、得体が知れない、だった。紫がかった黒髪を後ろで括り、前髪で片目を隠している。中性的な顔立ちにスラットした高身長の体。そして何より目に付いたのは彼の目だった。今まで彼女を見る男の目は容姿や家しか見ておらず、例外として眷属や家族が親愛などの感情を向けていた。だが、目の前の男は其れのどれとも違う物が宿っている。その事にリアスは不気味ささえ感じていた。

 

「お茶でもお入れしますわ」

 

其れはリアスの眷属達も感じており、女王の朱乃だけでなく、戦車の塔白小猫や騎士の木場祐斗も警戒した様子だ。そんな彼らの感情を感じ取っているにも関わらずケリィは少しも臆した様子もなくお土産まだ出して来た。

 

「……そうそう。貴方を受け入れる身としては貴方の力を知っておきたいんだけど。貴方、異能持ちなんでしょ? どんな能力を持っているのかしら?」

 

「そうねぇ、教えたいのは山々なんだけど……。グレモリー家に仕えてる友人から聞いたんだけど、リアス様ってレーティング・ゲームのタイトル制覇が夢なんでしょ? だとしたら将来的にぶつかる事になるし、あまり言いたくないわねぇ。……そうだ!」

 

リアスの言葉に腕組みをして悩んだケリィは使い込まれたチェス盤を空中から取り出した。

 

「チェスで決めようっていうのね。良いわ、貴方強いらしいし、相手にとって不足なしよ」

 

リアスはケリィについてのデータを思い出す。其処にはケリィがフェニックス領で行われるチェス大会のチャンピオンである事が書かれていた。

 

「…じゃあ、決まりね。アタシも一応チャンピオンだし特殊ルールでいきましょ。二十四時間耐久でチェスをするの。そっちは交代有りで、二十四時間の間に一回でも勝てたら能力を全て教えるわ。レーティング・ゲームは相手の情報を集める事から始まってるの。強豪チームのエースの情報が手に入るんだから良い条件でしょ?」

 

「……良いわ。どうせ明日は休みだし、その条件でやりましょう。貴方が勝ったら情報は要らないわ」

 

リアスはケリィの出した条件を飲みゲームを開始する。第一戦目はリアスが惨敗し、悔しがった彼女は十回負けるまでゲームを続け、疲れた彼女がソファーで仮眠を取っている間に朱乃や祐斗、そしてわけあって隔離されている僧侶が電話越しに相手をするも惨敗。そして、リアスが五十回目の惨敗をした所で二十四時間が経過した。

 

「ま…負けた。……約束通り能力は教えなくて良いわ」

 

リアスは疲労困憊といった様子で机に突っ伏す。他のメンバーもリアスの気迫の押されて部屋から出ていけなかったので気分的にも疲れているようだ。そんな中、唯一元気なケリィは半場寝かけてソファーから落ちそうだった小猫を元に戻し、懐から携帯電話を取り出した。すると途端にメールの着信音が鳴る。

 

「折角だし、私の能力を一つ教えるわ。……え~と何々”甘いものが食べたいです。出来たらチョコパフェ”ですって」

 

「……なんで私の考えている事が?」

 

「これが私の能力の一つ『相手の思考を電子メールに変える能力(ちから)』よ」

 

「能力は教えたくなかったんじゃなかったの?」

 

リアスの問いに対し、ケリィは笑顔で返した。

 

「ええ、最初はそのつもりだった。でもね、チェスの腕を競い合った貴女達に好意を持ったみたいなの。……ライザー様には秘密よ?」

 

その返答にリアス達も笑みを溢し、彼に対する悪感情も薄れていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ええ、手に入れたわ。滅びの魔力と魔剣を創る能力をね。雷光や仙術は異能と違い一種の技術だから無理だったけど停止結界の邪眼の能力を手に入れたのは儲け物だったわ。ま、雷光は光を操る力を手に入れてるから同じようなのを再現してみせるわ。……にしても面倒ね。私の本当の能力である『相手の能力を自分の能力に変える能力』は二十四時間もの間、相手の半径二十メートル以内に居ないといけないんですもの」

 

その夜、ケリィはライザーに首尾を報告しながら凶悪な笑みを浮かべていた……。

 

 

 

 




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