ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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不死鳥の王と収集家の戦車 ⑦

ライザーとのゲームに向け、リアス達は学校を公欠してグレモリー所有の山で修行を開始した。その中で一誠の神器が赤龍帝の籠手である事が判明。ゲーム勝利の鍵となるとし、一誠を中心に作戦を立てる事となる。

 

 そしてケリィは修行に関する情報を手に入れ、ほくそ笑んでいた。これで破談時に此方(フェニックス家)が有利になる、と。直ぐに影響下にあるマスコミに手を回し、着実に準備を続ける。

 

 

 

「さて、戦車戦はアタシが出るわ。追い詰められれば鹿も龍に角を突き立てる。小猫ちゃんが使いたくない仙術を使わないとも限らないわ」

 

「随分と慎重ですね、ケリィさん」

 

「ふふふ。もしもの想定ってのは、やり過ぎなくらいが丁度良いのよ、ミラ。ほら、貴女の要望通りの武器が届いたから扱いに慣れておきなさい。もしかしたら赤龍帝の籠手を覚醒させてるかもしれないし、十秒以内に倒すつもりでいなさいよ?」

 

「分かっています。十秒ごとに強くなるのなら、十秒以内に倒せばいいだけですからね」

 

 ライザーの兵士であるミラは、ケリィから受け取った棍を手にしながら笑った。

 

 

 

 

 

「……これが本当の守りタイ? ……いや、少し無理があるような」

 

 

「……え~と、あれは良いんですか?」

 

「しっ! 関わっちゃ駄目」

 

 

 ユーベルーナがギャグ要員となる中、最初のゲームの日がやって来た。

 

 

「皆、一勝した時点で私達の勝ちよ。此方を舐めた事、思い知らせてあげなさいっ!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 

 

 

「へぇ、気合が入っているじゃないか。ケリィ、大丈夫か?」

 

「あらあら、笑いながら言う事じゃないわよ。とりあえず参考にって私達のゲーム映像を送っておいたわ。……これでこっちの情報は漏れてないわね。プライドの高いお姫様ですもの。あんなの送られたら逆に見ようとしないわ」

 

「まぁ、知られても問題ないがな」

 

 

 

『皆様、これよりライザー・フェニックス様とリアス・グレモリー様のゲームを開始致します。まず最初の組組み合わせは……『女王』です』

 

 いきなり女王の出番とあって会場が騒めく。朱乃は何時もの笑い顔を浮かべ、ユーベルーナは何やら呟いたかと思うと吹き出す。二人が魔法陣に乗ると転移され、岩場を模したバトルフィールドに移動していた。

 

 

 

 

「あらあら、お手柔らかにお願いしますわ、爆弾王妃(ボムクィーン)さん」

 

「あら、私の手は柔らかいわ。え~と、貴女の異名ってなんでしたっけ? どうでも良いから忘れちゃたわ」

 

 ユーベルーナは手を柔軟に曲げながら馬鹿にした視線を送る。朱乃の額に青筋が浮かび、舌戦はユーベルーナの勝利に終わった。

 

『それでは開始してください』

 

 そのアナウンスと共に朱乃は強烈な雷を放つ。だが、ユーベルーナの周囲に出現した球状の魔力が直前で爆発して相殺した。朱乃は連続して雷を放つが全て相殺される。そして舞い起こった爆煙の中から何かが飛び出してきた。

 

「……魚?」

 

 それは魚型の魔力。詳しく言うのなら鰹だ。その周囲には鯛の形をした魔力が寄り添い、まるで水中を泳ぐかのように朱乃へと迫った。

 

「こんなものっ!」

 

 朱乃は雷で全て撃ち落とそうとするが、鯛が鰹を庇うかのように飛び出して雷を相殺する。そして朱乃がどれほど避けようとしても鰹はしつこく追跡して来た。

 

「ほ~っほっほっほっ! その鯛は鰹を守ります。これが本当の”守りたい()”。そして鰹は貴女を何処までも追っていく。これが本当の”追い鰹”! 私はこのギャグを言いたくって技を開発しましたわっ!」

 

 得意げにユーベルーナが笑う中、ライザー達は頭を押さえる。全員の心中は一つ。

 

「……何でどうしてああなった?」

 

 そんな中、朱乃はユーベルーナへと急接近する。昔から追跡する技に対する対処法は一つ。使い手に急接近して技を当てる。だが、朱乃が直前で緊急回避しようとした瞬間、ユーベルーナの手に巨大な鰹が握られていた。

 

「鰹の叩きっ!」

 

 鰹は叩きつけられた場所が爆発し、朱乃を地面へ叩き落とす。其の後を追い鰹が追って行き、朱乃は最大級の雷で鯛ごと撃ち落とそうとする。その時、岩陰から小さな魚影が飛び出す。それは鯵の形をしていた。

 

 

「ふふふっ! 最初の爆煙の時に隠していましたの。それは敵が近づいたら飛び出す罠。これが本当の……」

 

「……隠しアジ()? きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「オ、オチを言われたっ!?」

 

 ユーベルーナが涙目になる中、朱乃は鯵と鯛と鰹の爆発を食らってリタイアした。

 

 

 

 

次の試合は騎士同士の試合。魔法陣へと向かう祐斗に声援が送られる。

 

「頑張って、祐斗。朱乃の敵、頼んだわよ」

 

「焼き鳥野郎の眷属なんてぶっ飛ばしちまえっ!」

 

「……応援しています」

 

「見ていてくれ皆。僕が終わらせてくる」

 

 祐斗はリアス達に微笑みかけると颯爽と魔法陣に乗る。着いた先は石づくりの闘技場。相対するライザーの騎士の名はシーリス。大剣を背負った戦士風の女性だ。

 

「……グレモリーの騎士よ。最初に警告しておこう。痛い思いをしたくなければ直ぐにリタイアしろ」

 

「悪いけどそういう訳にはいかないんだ。部長の望みだからね」

 

「……王の行いが王足らぬのなら、逆らうは不忠にあらず。今回の婚約を破談にする事が真にリアス様の為になると思っているのか?」

 

『それでは開始してください』

 

 アナウンスと共に祐斗が走り出す。彼は騎士の特性を活かしたスピード主体の剣士。対するシーリスはパワー主体の騎士だ。祐斗は無数の剣戟を浴びせかけ、シーリスは大剣を盾にして防ぐ。一見すると祐斗優勢の状況にリアス達からは歓声が上がった。

 

「よしっ! そのまま行けっ!」

 

「勝ちなさい、祐斗っ!」

 

 リアス達は気付いていない。全く表情の変わらないシーリスに対し、祐斗の表情が焦りと疲労に染まり出している事に。

 

「……どうした? 息が上がって来ているな。そして、足元がお留守だっ!」

 

 踏み込んだタイミングを狙われて腹に蹴りを食らった祐斗は体勢を立て直す為に後ろに飛び退く。その着地の瞬間、シーリスは地面に大剣を突き立てた。大剣から発せられた衝撃波によって足場が大きく崩れ、祐斗は瓦礫に足を取られる。その隙を狙ってシーリスが斬りかかり、避けようとするが足場の悪さに思うように動けず、瞬く間に切り裂かれた。

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

 祐斗の敗北を受けて一誠は壁を叩く。叩いた壁は固く、手に痛みが走った。そして次の対戦を決めるクジが引かれ、次は兵士同士の戦い。一誠の相手は棍を持った小柄な少女、ミラだった。

 

 

 

『それでは開始してください』

 

「もう女の子だからとか気にしねぇっ! 即効でぶっ飛ばしてやるっ!」

 

『Boost!』

 

 一回目の倍加と共に一誠は駆け出していく。そしてミラ目掛けて拳を振り上げ、そのまま鳩尾を突かれて後ろに吹き飛ばされた。

 

「短期戦はこっちが有利。だから、即効で決めるっ!」

 

 ミラは一誠に向かって駆け出すと、棍を大きく振り上げる。。一誠は後ろに飛んで避けようとするが、棍の先端が外れ、中から鎖が飛び出す。外れた先端は鎖と繋がっており、避けたつもりの一誠の腕に絡みついた。

 

(仕込み武器っ!? だけど、もうすぐ二回目の倍加だ。そうなったら振り回してやるぜっ!)

 

 一誠がそんな事を思った時、ミラはもう片側の先端を外して一誠に向ける。先端を蓋の様に外した部分からは砲身が覗いていた。

 

「ファイヤー」

 

「そ、そんなの有りかよぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 発射された弾は着弾と同時に爆発し、一誠は黒焦げになりながら消えていった。

 

 

 

 

 

「ユーベルーナの魔力を封じ込めた仕込み砲、結構使いこなせてるじゃない」

 

 ケリィは感心したように呟き、最後の試合をすべく魔法陣の上に乗る。砂漠を思わせるフィールドには既に小猫の姿があった。

 

「私、負けません」

 

「あら、無理よ。貴女はアタシには勝てないわ」

 

『それでは開始してください』

 

 アナウンスと同時に小猫は飛び蹴りを放つ。ケリィは余裕綽々といった様子で背を向け、小猫の足が迫った瞬間、小猫の視界からケリィが消える。

 

 

 

「後ろよ」

 

 ケリィはそのまま小猫を捕まえ、右腕でヘッドロックを決め、左腕を小猫の両腕に巻きつける。そのまま寝転がると両足で胴と足を締め出した。

 

「な、なんで後ろに……」

 

「ふふふ、ひ・み・つ。まだ公式で発表してないの」

 

 やがて小猫はダウンし、第一回目のゲームは終わった。

 

 

 

 

「次は三日後でしたっけ? フェニックスの涙もあげるし、大盤振る舞いね」

 

「なぁに、強者の余裕だ。それに、相手も言い訳のしようがないだろ? ……にしても最後の試合だが、犯罪臭かったな」

 

 ライザーの言葉に他の眷属も頷いた……。

 

 

 

 

 

「わ、私はそんなこと思ってませんわよっ!?」

 

「わ、私もです! ケリィさん、素敵でしたよ」

 

「……ありがと」

 

 

 

 




全体的に強化されたライザー眷属 そして次回、朱乃用に持たせた能力が登場です


分かっても秘密ですよ?


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