ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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不死鳥の王と収集家の戦車 ⑩

 アーシアが寝静まった深夜の事、ケリィはベットの上で仰向けに寝転がるレイヴェルに跨っていた。レイヴェルは顔を羞恥に染めながらもケリィから視線を外さず、ケリィもまたレイヴェルから視線を外さない。

 

「じゃあ、脱がすわよ?」

 

 レイヴェルが無言で頷くよりも少し早くケリィの指は寝巻きのボタンに掛かり、上から一個一個順番に外していく。三番目のボタンを外すと今まで押さえつけられていた胸が布地を押しのけて姿を現す。呼吸と共にわずかに上下する胸は青いブラに包まれており、ケリィは指を左右の乳房を包んでいる布の中央の下に潜り込ませると風の魔力で布を切り裂く。

 

「ぁ……」

 

 さらけ出された肌で梅雨独特の湿った空気を感じたレイヴェルの羞恥心は更に増し、期待と不安で鼓動が高鳴る。ケリィはそのまま胸を押さえる役目を果たせなくなった下着をレイヴェルから剥ぎ取ると自分も上着を脱ぎ逞しい上半身を曝け出す。

 

「好きよ、レイヴェル」

 

 そしてそのままレイヴェルの上にゆっくりと覆い被さっていく。上から感じる重みと肌と肌とで感じ合う体温に心地よさを感じたレイヴェルは目を瞑ると両手をケリィの背に回し、強く抱きしめた。

 

 

「私も…私も好きですわっ!!」

 

 

 

 

 

「あ、あの、私、女の人はちょっと……」

 

 目を覚ますと既に時刻は七時を回っており、レイヴェルの腕の中にはアーシアがいる。レイヴェルは布団を跳ね除け、寝起きで起こしに来たのか寝癖が付きパジャマが少し乱れたアーシアに抱きついてベットに引き摺り込む形になっていた。

 

開いたドアの向こうからは朝食を作り終えたケリィが起きてこないレイヴェルに文句を言いながら近付いて来ており、腕の中のアーシアは真っ赤になっている。アーシアはレイヴェルを揺り起こそうとしたのか手を伸ばしており、アーシアがレイヴェルを押し倒し、レイヴェルがそれに応え互いの唇が触れ合う寸前で止まっていた。

 

「ほら、早く起きな……今日は風邪で欠席って連絡しておくわ。いや、まさか身内に百合に目覚める子が居るなんてね。ライザーに言っておいたほうが良いのかしら?」

 

「こ…これは誤解……」

 

「そ…そうですっ! 私はレイヴェルさんに引きずり込まれただけで……」

 

「こらこら、それだったら寝惚けて貴女に抱きついたレイヴェルが同性愛者みたいに聞こえるわよ。さ、早く朝食を食べて身嗜みを整えなさいな」

 

 ケリィはフライパン片手にキッチンに戻ると朝食の支度を追え、二人が身嗜みをする準備を終え、昨日の内に作っておいたオカズと朝食の片手間に作ったオカズを弁当箱に詰める。その頃になって漸く二人がやって来た。

 

「ほら、顔は洗ったわね? 洗ったなら早く席に着きなさい」

 

 テーブルの上には少し遅くても大丈夫な様、サンドイッチ等の食べやすい物で統一され、ケリィもエプロンを洗濯機に入れると食卓についた。

 

「じゃあ、いただきます」

 

「「いただきます!」」

 

 今日も三人の食卓は平和である。なお、レイヴェルはパニックになって忘れていたが、二人が百合に目覚めたのかと勘違いしたはずのケリィは状況をしっかり把握していた。

 

 

(……あれ? ケリィさん、レイヴェルさんが寝ぼけて抱きついた事を理解していた様な。……言わない方が良いですね)

 

 徐々にケリィに染まっているアーシア。もう戻れないだろう。

 

 

 

「やっほー♪ 皆さんお元気ねっ!」

 

「……ケリィ、部室に行くのは良いけどもう少し何か有るでしょう。私達、リアス様達と戦ったばかりですのよ」

 

 その日の放課後、オカルト研究部に何の躊躇いも無く入ってきたケリィは何時もの席に座る。レイヴェルとアーシアは恐る恐る座り、リアス達は戦ったばかりのケリィに対して普通に接してきた。

 

「そんなに固くならなくて良いわよ。貴女達は婚約がなくなったからとは言っても客人なんだから」

 

 リアスは一誠の隣に座りながら微笑む。一誠が自分の為にボロボロになりながら戦う姿を見たリアスは彼に惚れ、両親もその恋を認めているのだ。リアスは今一誠の家で暮らしているという情報も入ってきている。

 

(……貴族としてはどうなのかしらね。一場面の印象だけで決めると大変よ)

 

 内心冷ややかになっているのを隠したケリィはレイヴェル達と共に談笑し、話題はオカルト研究部の部活動に関する事となった。

 

「来週の火曜なんだけどイッセーの家で部活動を行うわ。ケリィ達はイッセーの住所を知っていたかしら?」

 

「ああ、その日は無理よ。アタシ、上級悪魔の昇進試験があるから」

 

「へ? お前、上級悪魔になるの? ま、まさかライザーの様にハーレム作る気じゃっ!?」

 

「まだ合格した訳じゃないわ。それと、合格しても眷属には興味無いのよね。だってこれ以上世話を焼く子が増えたら大変じゃない」

 

「あう~、ケリィさんにはご迷惑ばかりおかけしています」

 

「あらあら、構わないわ。他人の世話を焼くのも結構楽しいもの。……其れとイッセー。貴方、もうライザーとは敵対してないんだから呼び捨ては辞めなさい。今は良いけど、そういうのは公の場では偉い方々の不評を買うわ。部長も王ならば眷属を甘やかすだけじゃなくって処世術も教えなさいな」

 

「……そうね。ちゃんと考えておくわ。そうそう、そろそろソーナが来るんだけど」

 

 リアスがそういった時、ドアがノックされて生徒会長であり偽名で通っているソーナ・シトリーが新人眷属を連れて入ってきた。

 

「失礼しますよ、リアス」

 

「か、会長っ!? なんで会長が?」

 

 

 

 

「はんっ! 俺は最近悪魔になったばかりだが変態のお前なんかに負けるかよっ!」

 

「辞めなさいな、みっともない」

 

「あぁっ? 何ならお前から相手を……」

 

「あら、相手になるわよ? 会長、三秒だけ彼を借りても良いかしら?」

 

「……仕方有りませんね。サジ、相手をして貰いなさい」

 

「うっすっ!」

 

 ソーナは溜息を吐くと匙に許可を出す。ケリィの事を知らない匙はソーナに良いところを見せようと向かっていき、一撃で沈められた。

 

「三秒どころか0・5秒持たなかったわね。喧嘩慣れしてるみたいだけど喧嘩と戦いは違うのよ? じゃあ、アタシは昇進試験の勉強があるから失礼するわね」

 

 アーシアとレイヴェルもアーシアが匙の治療を終えるなり部室から出て行く。

 

 

 

 その晩、ケリィは昔の夢を見ていた。耳と鼻と目を封じられた状態で戦い合い、どちらかが死にまで戦う事への恐怖と生存本能から無理矢理能力を覚醒させるという実験だ。

 

(死にたくない死にたくない死にたくないっ!!)

 

「其処までっ!」

 

 死への恐怖から相手を滅多刺しにしたケリィは終わりの合図を聞いて安堵する。そのまま目隠しが外されたケリィの目には彼が勝った事に落胆する研究者と、絶命した姉の姿が映っていた……。

 

 

 

 

 




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