それはDD結成から数日後の事。一誠の家に住む女子達の殆どが留守のある日、アザゼルが又しても奇妙な機械を造ってきた。
「おい、イッセー。実験台になりやがれ」
「嫌っすよっ! アザゼル先生の発明品って、碌な事になった試しがないじゃないっすか」
「いい加減にしてくださいっ! 生徒を実験台にしようだなんて……」
何度も被害に遭っている一誠は拒否し、近くに居たロスヴァイセと小猫も止めようとする。そんな中、黒歌が部屋に入ってきた。
「相変わらず外は寒いわね。あれ? 何この機械? ひゃっ!?」
黒歌が機械に触れた瞬間、強い光が部屋を包み込む。一誠は思わず黒歌に手を伸ばす
「黒歌っ!」
やがて光が収まると一誠は黒歌に馬乗りになり胸を鷲掴みにしていた。一誠の手に極上の感触が伝わり鼻血が激しく吹き出す。その姿を小猫はジト目で見つめ、ロスヴァイセは憤慨している。機械はウンともスンとも言わなかった。
「……最低です」
「ひ、昼間から破廉恥なっ!」
「……おかしいな。失敗か?」
アザゼルが弄っている機械は公衆電話程度の大きさの箱に色々と機材がくっついているという物だ。やがてアザゼルは機械から興味を失い、その頃になってリアスの声が玄関から聞こえてきた。
「イッセー居るー? お茶にしましょう」
「……しょうがねぇ。後で壊すか」
失敗作だと判断したアザゼルは一誠達と共に部屋から出ていく。その数秒後、箱の中から声が聞こえてきた……。
そして世界は平行世界に移り、冥府にある歴代最強最低の赤龍帝兵藤一誠の城の一室。豪奢なベットに寝転がり、スヤスヤ寝息を立てる少年が一人。年の頃は十七歳程で頭に生えたネコミミがピコピコと動いている。彼の名前は兵藤
「お兄ちゃん、朝だよー!」
腹の上に飛び乗った。だが、掛け布団がフカフカな為か、少女が小さくて軽いからか黒無は動じた様子がなく寝続ける。少女は頬を膨らませ、黒無の上に寝そべると手足をバタつかせ出した。
「お~兄~ちゃ~ん! 今日はハイキングに行く約束だよ~!!」
「
少女の名は玉章。玉藻の娘で、今年五歳になる末っ子だ。玉章を抱き上げたのは紫銀色の髪をした女性。年の頃は十九程で、服の上からでも分かる形の良さの大きな胸を持ち、顔も少々気弱そうだが美しい。女性に声を掛けられた黒無はようやく目を覚ました。
「ふわぁあ。お早う、玉章、ローラ」
「おはよー」
「はい、お早う御座います、黒無様」
玉章は手を挙げて元気に挨拶をし、ローラは深々と頭を下げた。今日は他の兄妹達は用があり、黒無は玉章と一緒にピクニックに行く予定となっていた。
「まずはお祖父ちゃん達の家に顔出して、近くの河原でお弁当食べるからな。其の後はデパートにでも行くか?」
「うん! グレンデルがお弁当作ってくれるんだよね? お母さんも作ってくれるって言ったけど、グレンデルの方が美味しいよね」
「こ~ら。そういう事は言っちゃダメだぞ。……叔母さんの料理よりはマシだろ? 玉藻母さんも料理上手だし」
「……母上よりは遥かにマシです。父上は本音トークが苦手ですから私と弟達しか文句を言えませんが、言おうとしたら笑顔で背後に魔法陣を出現させるんですよ」
ローラは顔色を悪くしながら溜息を吐いた。なお、彼女も戦闘時には父から貰った魔剣を手にして弾幕を張りながら向かって行くのだ。どっちもどっちだろう。
『ほれよ。三人前の弁当だ。おい、玉章。ピ-マン残すなよ』
「……はーい」
「任せとけ。俺が見張る」
グレンデルから十段重ねの重箱を受け取った黒無は妹の顔をジッと見て、玉章はさっと目を晒す。どうやら残す気マンマンだった様だ。そんな時、周囲を漂っていた霊達が静まり返り、まるで道を作るように左右に分かれる。廊下の向こうからは一人の死神が向かって来ていた。
「やぁ、お早う黒無、玉章、ローラちゃん」
「お父さん、おはよう!」
「お早う、父さん」
「い、一誠様、お早う御座いますっ!」
親子だからかラフな挨拶をする二人に対し、ローラは畏まった態度で頭を下げる。一誠はそれを見て笑いながら近づいた。
「やだなぁ。ローラちゃんには黒無が世話になってるんだから、そんなに畏まらなくて良いんだよ? 俺としては君が黒無のお嫁さんになる日が楽しみなんだからさ。黒無、ローラちゃん泣かしたら俺もランスロットも黙ってないからね?」
「俺、信用ない?」
「まぁ、俺の息子だもん」
「息子だったら信用しろよっ!」
一誠はケラケラ笑う居ながら仕事に出掛け、黒無達も出掛ける準備を始めた。そんな時、ローラが立ち止まって話しかける。
「あの、黒無様。本当に私もご一緒しても宜しいのでしょうか? 兄妹水入らずの方が……ほら、黒無さまっていうか、他の方々もシスコンブラコンのお集まりですし」
「……ローラはランスロットと性格を足して二で割ると良いと思うぞ。それと…」
「きゃっ!?」
黒無はローラを抱き寄せ、頬に軽く口付けをする。ローラの頬は瞬く間に真っ赤になった。
「俺はさ、お前とも一緒に居たいんだぜ? ほら、俺達って恋人じゃん」
「……はい」
ローラが俯いてモジモジしだした時、黒無の背中に衝撃が走る。準備を終えた玉章が黒無の肩に飛び乗っていた。黒無は先程から立ち上がており、幼稚園程の体格しかない玉章が飛び乗るのは普通は難しい。もっとも、血筋からして普通ではないのだが。
「はいはい、肩車だな」
「うん! じゃあ、れっつごー!」
玉章は尻尾を盛大に振りながら前を指さし、黒無は飛び乗った事に対して一言も注意せずに素直に進む。そして、もう直ぐ一誠の実家に直行する魔法陣の有る部屋にたどり着くといった時、三人は強い光に包まれた……。
「あ~、くそっ! マユリの仕業か?」
「あ、あの黒無様。お手が胸に……」
気付けば狭い箱の中。外も出ようと辺りを触っていた黒無の手はローラの胸を鷲掴みにしていた。
「あ、うん。わざと触っている。……蹴破るか」
肩に似せている
「きゃっ!?」
「……今、誰か居ましたね」
「誰かいたー」
ローラはジト目を黒無に向け、玉章は頭をペチペチ叩く。黒無がそっと顔を覗かせると白髪の小柄な少女がコチラをジッと見ていた。
「……誰ですか?」
「あれ? 叔母さん……だよな? 魂が叔母さんだよ」
「あっ! ちっちゃいけど白音叔母さんだっ!」
「どうして此処に? にしても小さいですね。小学五年生の
「だから、貴方達誰ですか……」
「ところで先生。あの機械ってどういう物だったんですか?」
「ああ、未来から対象の子供を呼び寄せるって物だったんだ。おっ! ヴァーリも来たか」
「ああ。……何か嫌な気がする」
『……俺もだ。何やら精神が崩壊しそうな予感が……』
意見 感想 誤字指摘お待ちしています
今日は訂正忘れてた 明日二章訂正 霊感のレイナーレとの関係は無しにしました