ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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前世マフィアで今ドラゴン? ②

”駒王学園”。数年前まで女子高だったが最近になって男子も受け入れ出した名門校。表向きは普通の学校であるのだが、魔王が理事長を務め、魔王二人の妹達や異能力者が多く通っているのだ。

 

「其処に俺達が通えと? 何でまた」

 

「傘下の組織からの報告でな。どうやら各勢力の過激派がキナ臭い動きを見せている様だ。そして狙われるとすれば重要人物の身内が居るにも関わらず腕利きの護衛がいない其処といった訳だ。奴らが争うには構わんが、商売に影響が出るのは敵わん。少し調査して来い」

 

「ああ、それで潜入しやすい俺達にしたんっすね。実力もそれなりで、年頃も丁度いいから」

 

二人はて合わされた資料を見ながら納得する。資料には通っている悪魔や異能者、そして二人が通う際の経歴が書かれていた。

 

「力を隠してたらバレた時に面倒になる。とりあえず私の顔の一つが指導者を務める魔術組織の一員として話を通しておこう。神器はありふれた物としておけ」

 

「分かったよ、ボス」

 

「了解しました、ボス」

 

二人は一星龍に一礼すると部屋から出ていく。荷物を纏める為に廊下を歩いていると組織の先輩二人が前から歩いて来た。女性の方が男性の腕に抱きついており、一誠は嫉妬から聞こえない様に舌打ちしつつも笑顔を向ける。

 

「サイラオーグさん、帰ってたんですね」

 

「ああ、任務が昨日の深夜に終わってな。報告して直ぐに寝室に向かって今起きた所だ」

 

「うふふ。でも、疲れてる割には凄かったにゃん♪」

 

男性の名前はサイラオーグ。悪魔貴族で最も上の大王であるバアル家に生まれながらも特徴である滅びの魔力どころかまともな魔力を殆ど持って生れず、長男でありながら僻地で貧しい暮らしを強いられていたという過去を持つ。そして彼を疎ましく思う父親によって母親もろとも偶々発生した(・・・・・・)土砂崩れで事故死(・・・)にされそうになっていた所に通りかかった一星龍によって保護されたのだ。一応それを察して魔王の配下が助けに来たが死体は埋もれて行方不明扱いになっている。ちなみに今では肉体を鍛え上げて若手でもトップクラスの実力になっていた。

 

「二人は今から任務?」

 

女性の名は黒歌。猫の妖怪で親を亡くして妹共々彷徨っていた所を幹部の一人によって保護されたのだ。ちなみに非常に色っぽい彼女はサイラオーグの恋人でもある。

 

「ええ、魔王の妹が通う高校に行く事になって、俺は設定はそのままで、ヴァーリは母親は母親が貴族に妾として攫われて冷遇された挙句に産まれた自分共々捨てられたって設定です」

 

「そうしておけば多少力を見せても眷属に誘われにくいだろ? まあ、ドライグさんやアルビオンさんの力はバレない様に使う事になっているんだ」

 

本来なら相棒なので呼び捨てにする関係の二人と二匹だが、同じ組織の一員で二匹は初期メンバーで幹部だからヴァーリは二匹に敬称を付けて呼んでいた。

 

「にゃはは! そういえばヴァーリってこの前アルビオンさんが寝てる時に”ドライグさんの方が良かった。弱くした敵に勝っても嬉しくない”って言ってたにゃん」

 

『……ほう? 面白い事を言うな、ヴァーリ』

 

「く、黒歌さんっ!? それは秘密って約束じゃ。ア、アルビオンさん……すいませんしたぁぁぁぁぁっ!!」

 

組織において上下関係は絶対。ヴァーリは幼い頃から血の掟としてそれを教え込まれていた。それはもう、骨の髄まで。

 

 

そして数日後、魔王の妹であり学園を夜と昼に分けて支配するリアス・グレモリーとソーナ・シトリーに魔術組織に所属する二人のデータが実家から送られていた。

 

「部長。その二人が例の?」

 

「ええ、最近勢力を伸ばしている組織の二人ですって。どうも社交性に欠けるから高校に通わせるそうよ。力はそれなりみたいだけど神器はありふれた物らしいわ。……経歴を見たけど接触はやめた方が良さそうね」

 

「まあ、必ずしも会わなければならないという訳でもありませんし、この過去からして下手に刺激するのもいけませんしね」

 

ソーナもリアス同様に二人に必要以上の接触はしない事にし、他の異能者同様に干渉せずに学園生活を送っていた。

 

 

そんなある日の放課後、与えられた住まいに帰っていた一誠は一人のシスターと出会った。彼女の名はアーシア・アルジェント。一誠は其の名前に聞き覚えがあった。

 

(確か、”聖女”だったっけ? 聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の持ち主だよな。それもドラクル・ファミリー(ウチ)に居る所有者達のより強力な奴)

 

「あ、あの、私の顔になにか付いていますか?」

 

「いや、なんでもないって。それより、探していた教会は直ぐ其処だぜ」

 

どうやら街の外れにある教会に赴任して来たらしく、日本語が分からず迷っていた所を一誠に会い、悪魔が使う『翻訳』を模倣した魔術で会話をこなした一誠は観察の為に案内する事にしたのだ。

 

(そういや、目的地の教会は廃教会で堕天使が来てるって話だよな。一人殺されて悪魔になったって話だし。この子、その仲間か? にしては無用心だしな……)

 

先程も怪我した子供を人前で神器を使って治しており、一誠はもしかしたら抗争の援護の為に呼ばれた人員かと思ったが、その考えにも疑問を持つも、もしかしたら一誠の事を人外の世界の住人だと見抜いた上での演技かも知れないと疑心暗鬼に囚われた所で目的の教会に到着した。

 

「じゃあ、俺は此処で」

 

「あ、待ってください。お礼にお茶でも」

 

「そうしたいのは山々だけど、もうすぐスーパーのタイムセールがあるんだ。貧乏学生は特売以外の肉を中々食えなくてな。んじゃ、機会があったらまた会おうぜ」

 

「はい! またお会いしましょう!」

 

一誠は中を調査しようとして直前で思い止まる。彼の視線の先には白髪頭の少年神父が立っていた。

 

(おいおい、なんで教会の例の戦士養成施設の奴が居るんだよ。こりゃ、連絡してからでないと拙いな)

 

白髪頭は教会が極秘裡に管理している訓練施設の一員の証。そして教会からは三人の下級堕天使と一人の中級堕天使の気配がする。危険な神器を持っている一般人を殺すにしては戦力過剰と判断した一誠は怪しまれる前に退避する事にした。

 

 

 

「アーシアが知らない男と一緒にいた?」

 

「まあ、動きも素人くさいし、話を聞く限りじ道案内を引き受けたお人好しみたいっスよ」

 

「そう。なら、放置しておきなさい」

 

この時、一誠を用心してアーシアを連れて本部に帰っていれば彼女の未来は変わっただろう。だが、彼女は役に立つ神器の持ち主を連れて帰ったという手柄よりも更に上を目指してしまった……。




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