アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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※帝都のマップを大まかに描いてみました。
字も絵も小学生レベルで汚いですがそこは目をつむってけろ。

今回から初登場した地名やまだ登場してない店などもあります。
また、これから増える可能性もあるのでとりあえず仮マップです。


第113話 フェスティバル練り歩き

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大道芸コンテストの全項目が終了し、観客達は祭りを楽しむために再び帝都に散らばった。一斉に固まって行動するのもあれだからと龍馬達は別れて行動することにした。龍馬はディレットと二人だ。勇斗と千春は他に行きたい場所があるらしく、二人で帝都の西へ向かっていった。

 

「じゃあ私達は東へ行こっか」

 

「そうだな」

 

もしかしたら知り合いにも会えるかもしれないし、面白い店もあるかもしれない。二人は密かに期待しながら帝都東へ向かって歩を進める。

東の宿屋街通り……マーナ川に面する通路をしばらく行くと何だか見覚えのある赤い大型テントが鎮座していた。

まさかと思いつつテント入口の上部に書いてある店の名前に目をやる。

 

「大衆食堂……ふくまる……アルカ帝国出張店……」

 

「やっぱりおばさんまた店出してたんだね……」

 

全く話は聞いていなかったが何となくまた出しそうな予感はしていた二人。テントの中からはガヤガヤと人々の喧騒が聞こえてくる。それと共に流れてくる嗅ぎ慣れた食欲を誘う香り。二人は誘われるようにフラフラとテントに入っていく。

 

「いらっしゃい!……って、龍ちゃんにディレットちゃんじゃないか。あんた達も好きだねぇ」

 

「繁盛してるみたいだね、おばちゃん」

 

店内は多くの客で埋まっており、愛華とレナが忙しそうに配膳をこなしている。さらに奥にはこれまたよく見知った顔が二人。

 

「はーい!チャーハンお待たせしましたー!」

 

「おばさん、オーダーだ。ビールとギョーザを三つずつ」

 

何故かブラッドとラグーンの二人までエプロンを付けて配膳を手伝っている。ラグーンはまだしもブラッドのあの性格は接客に不向きだと思うのだが……。龍馬が訪ねてみると経緯をレナが説明してくれた。

 

「じつはヴィヴェルタニアの王様がえらくうちの店を気に入ってくれたから是非今回も店を出してほしいって帝国経由で手紙が来てさ」

 

前回のフェスでヴィヴェルタニア王アティウスより多大な評価をもらったふくまる出張店舗。アティウスはここでの食事をあの夏以来楽しみにしているようで、わざわざ帝国経由で直筆の手紙をくれたそうなのだ。しかも丁寧な日本語で文章を書いて。

これを見たおばちゃんは今回も店を出さねばと決意。前回の忙しさを踏まえて丁度店にいたブラッドとラグーンを巻き込んで今回の出店に至ったとのこと。

 

「さっきオフィーリアさんが一人で挨拶に来てさ。『王はコンテストをご覧になった後にこちらに伺う予定なので席を開けておいていただきたい』って……ほら、あそこ」

 

レナが指差した先には"予約席"と書かれたプレートが置いてあるテーブルが。ほどなくしていよいよその噂のアティウス達一行がやってきた。いきなりヴィヴェルタニアの王と王子、それに護衛の騎士達が現れたことで客達の間にどよめきが走るもアティウスは以前と同じようにおばちゃん達に頼むと店内の客全てにビールを振る舞う。

 

「皆の者!今宵はこのヴィヴェルタニア王アティウスの奢りである!存分に飲み、食らうがよい!」

 

「おおーっ!」

 

「ヴィヴェルタニア万歳!アティウス王万歳!」

 

この流れ以前にも見たぞ、と龍馬は呟いた。ほとんど帝国民のくせに現金な連中だ。まあ、だからこそアティウス王は厳格ながら民に好かれる王であるのだろうが。

アティウスは駆けつけ一杯、ビールを飲み干すとおばちゃんのラーメンやレナの中華料理を頼み、アーヴィングとゴドムもそれに続く。

そしてオフィーリアは……

 

「フクマル特製激辛マグマラーメンを頂こう」

 

「はいよっ!そう来ると思ってオフィーリアさんのために今回は更なるスパイス用意しといたよ!」

 

ドクロや明らかにヤバそうな絵がラベルに描かれた瓶や容器を両手に持ったレナが早速準備に取り掛かる。それを作り始めた瞬間、目の痛くなるような香りが漂い始めた。こんなものを平気で食べれるオフィーリアはマジでイカれてると思う龍馬とディレットであったがアティウス達もやはり大体同じ事を考えているようだ。前回迂闊にあのラーメンに手を出して死ぬ思いをしたゴドムに至ってはオフィーリアからなるべく離れた所に座っている上に自分が座っている椅子をさらに遠ざけている。

出来上がったまさにマグマのようなラーメンを平然と食べる様を見て龍馬達はおろか、周囲の人々までオフィーリアを見てざわつき始める。

そんなオフィーリアをよそにアティウスは龍馬とディレットを自らの席に誘った。

 

「リョーマ、ディレット。久々だな。せっかく会ったのだ。(ちこ)う寄れ。そこに座るがよい」

 

「久しぶりに会ったんだから色々と話そうよ、リョーマ!」

 

アティウスに続いてエドワードからも誘われて龍馬達は席に座る。おばちゃんのいつものラーメンとギョーザを注文して彼等と食事を共にした。

色々と話を聞いてみるとバルガス不在の最近の四騎士はオフィーリアが以前よりもより逞しく、頼もしくなり兵士達の士気も高いという。

ほぼ軟禁状態のレオンハルトに関しては相変わらずで今日は城の掃除や武器の手入れなどを厳しい監視の目がある中させられているらしい。まあ、自業自得だろう。やはり泣きべそをかきながらやっているのだろうか。

龍馬達はアティウスにエドワード、それに四騎士達と会話をしつつ食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー美味かった」

 

「なんか帝都にいるのにフクオカにいる感じがしたね」

 

当然だ。何せ知ったふくまるの味を食べているからそうディレットが感じるのも無理はない。

あの後あそこでアティウスと会う約束をしていたというバルガスが祖父母と共にやってきた。積もる話もあるだろうと龍馬とディレットは祖父母とバルガス達に別れを告げて店を出た。

帝都の北側にあるラザンナ通りを歩いていると港方面から一人の男性が何かを叫びながら歩いてくる。

 

「釣りコンテストが始まるよー!誰でも歓迎!興味のある人は漁師ギルド"水竜の波止場"までいらっしゃーい!」

 

どうやら港で釣りコンテストなるものをやるらしい。せっかくだからと龍馬とディレットはそちらまで行ってみることにした。

帝都北側から教区通りを抜けていくと港前通りに到着する。そこに漁師ギルド"水竜の波止場"はあった。ここは普段は帝都の水産業のほぼ全てを統括しているギルドで龍馬は実際に足を踏み入れるのは初だ。ディレットは中を覗いたことこそあるものの、あまり普段は用がない場所なので事情は龍馬と大して差は無い。

コンテストとは言っても誰でも気軽に参加出来るらしいので気負う必要もないらしい。二人が登録を済ませて会場である桟橋へ向かう。すると……

 

「おっ、龍馬。お前も出るのか?」

 

「勇斗……お前が来たかった場所ってここか?」

 

なんと勇斗が千春を連れて既に参加の登録をしていたのである。話によれば最近釣りにハマっているそうでこのコンテストの話を開催前に知った勇斗は早めの登録をして良さげなポイントを先取りしていたらしい。

 

「んで委員長も興味あるっていうからよ。連れてきたんだ」

 

「誰が委員長よ、誰が。まあでも釣りってやってみたかったけどなかなか機会がなかったから丁度いいかと思ってね」

 

そう言う千春も既に釣竿を持ってスタンバイしている。道具はギルドが貸してくれるが、この世界のものなのでかなり古典的な釣竿だ。

丈夫な木で出来た竿に馬の尻尾の毛で編んだ釣糸がつけられている。もちろんリールなどというものはない。魚がかかれば竿をそのまま引き上げて釣ることになる。

ルールは簡単だ。砂時計の時間が一時間で切れる前に多く釣り上げた者の勝ちである。しかしそれとは別に大物賞もあり、過去のコンテストの記録を更新した者にも賞が与えられる。

全員の準備が終わり、コンテストが始まった。皆がそれぞれ糸を垂らし、魚がかかるのを待つ。

と、一人の男性がそこそこの魚を釣り上げたのを切り目に皆我こそは、と竿の先と海面を睨む。勇斗達も例外ではない。すると……

 

「き、きたっ!」

 

勇斗の竿にアタリだ。素早く竿を引いてアワセ(※針に食い付いた魚に針を引っかけること)を行う。水飛沫を上げながら糸が激しく海面を移動していく。

落ち着いて魚を徐々に疲れさせていく勇斗。すると魚の引きが弱くなってきた。今がチャンスだ。

 

「よっしゃ!!」

 

勇斗は大きく竿を振り上げた。針の先にはなかなかの大物がかかっていた。青いウロコを持つ、大きなヒレのついた見たことがない魚だ。

ギルドの漁師によればこれはバサイーダという魚で煮ても焼いても美味い魚だという。

そうこうしているうちに千春の竿にも大きな引きがあった。

 

「えっ、えっ!?なに!?どうすればいいの!?」

 

「落ち着け須崎!俺の言うとおりにしろ!」

 

勇斗が手を添えて千春の竿を共に引く。早く泳ぎ回る魚と格闘すること五分、彼女は勇斗の助けを借りて遂に獲物を釣り上げる。美しい赤と白の光沢が特徴の鯛に似た魚だ。

 

「や、やったわ!」

 

「おう、やったな須崎!」

 

この魚はレッドバサイーダといい、バサイーダの成魚とのこと。沖釣りか沖合いの漁でなくては滅多にお目にかかることができないらしく、こうして岸の方にまでやってくるのは非常に珍しいケースなのだとギルドの漁師は説明する。

成魚だけあって勇斗のバサイーダより大きく、漁師が言うには脂もたっぷり乗っていて塩焼きでかぶりつくのが絶品らしい。

 

「くそっ、なんで俺はかからねーんだ」

 

「リョーマ、釣りは気長にやらないとダメだよ」

 

龍馬の竿には未だにアタリが来ない。当然と言えば当然だが釣りは釣れなければ面白くはない。せっかく釣りをしているというのにボウズ(※魚が一匹も釣れないこと)だけは避けたいところだ。

と、そこへ……

 

「リョーマ!竿!引いてる!」

 

「えっ!?よ、よし!」

 

急にアタリがきた。引く力はかなり強く、これは大物だと確信する。勇斗は「沈んだ長靴とかいうオチじゃなけりゃいいけどな」とニヤニヤしながら行く末を見ている。冗談じゃない。そんなベタな展開があってたまるか。

 

「ううっ……こいつ結構しぶといぞ……!」

 

あちこちを泳ぎ回り、なかなか疲れる素振りを見せない。ここまで動き回るということは少なくとも長靴やゴミではないはずだが、引きが強すぎる。これは長丁場になりそうだ。

ようやく引きが弱くなってきた瞬間、龍馬はすかさずこちら側に引き寄せる。水面下にかすかに魚影が見えた。大きく、長い胴体を持つ魚だ。

 

「観念しろやオラァ!!」

 

水面に出た魚がバチャバチャと大きく水しぶきを上げて暴れ最後の抵抗を見せるが、龍馬は持ち前のパワーで一気に引き上げた。

大きな魚影が太陽を遮って空中を舞い、照らされた水しぶきが輝きを放つ。ドサリと桟橋の上に着地したその魚はなかなかにグロテスクな魚でまるでシイラを巨大化したような魚だった。

 

「おおっ!?やるな兄ちゃん!そいつは沖合いですら滅多にお目にかかれない"シカルス"って深い海の魚だぜ!見た目はアレだがこいつは素揚げにすると美味いんだコレが!」

 

シカルスというその魚は漁師によればどうやら深海魚の一種のようで、こんな浅瀬にまで上がってくることはほとんどなく、ベテランの漁師でも一年に数回お目にかかれるかどうかの珍味なのだとか。

身は素揚げや塩焼きに、肝は塩漬けで酒のつまみに、骨は太く丸みがあるため装飾品や一部の装備品の素材と捨てるところのない高級魚らしく、海が近い町では重宝されているようだ。それを聞くとアンコウを思い浮かべるがやはり外見は日本で言うところのシイラに似ている。

龍馬に続いてディレットも多く魚を釣り上げている。まさに入れ食いだ。小振りではあるがどれも食用となる美味な魚ばかりらしい。

そうこうしているうちにコンテストは終了した。惜しくも龍馬達四人のうち誰も賞を獲得することは出来なかった。龍馬の釣ったシカルス以上の大物を釣り上げた猛者がおり、数では他の参加者に圧倒的に負けていたがこれはこれで楽しかった。

コンテスト終了後は皆で釣った魚をギルドの漁師達が海の男の料理として調理し、参加者達に振る舞った。

龍馬が釣ったシカルスの素揚げは非常に美味で、これならシイラと同じくフライにしてとんかつソースやタルタルソースで食べればもっと美味いはずだと龍馬は確信したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、美味かった」

 

「こっちの世界は新鮮な海の幸は港町でしか食べられないからね。これを食べるためにわざわざ国を越えてやってくる人も多いんだよ」

 

「あー、気持ちはわかるわ」

 

コンテストを終えた龍馬とディレットは勇斗達と別れ、噴水広場に戻ってきた。帝都をぐるりと一周したようだ。

と、ステージ前で城のメイドや兵士達がビラを配っている。その中に龍馬は見知った顔を見つけた。

 

「よう、マリー。何してるんだ?」

 

「あっ、リョーマさんにディレットさん!お二人もどうですか?"軍人体験"!」

 

マリーはそう言ってビラを差し出した。シルワ語と日本語の両方で書いてあり、それによれば本日は城の敷地内にある兵士達の訓練場を一般解放し、そこで騎士団によるアルカ帝国の兵士、即ち"軍人としての体験"をさせてもらえるのだそうだ。

種目は軽鎧を着ての剣や槍の訓練、弓、馬術、そして流鏑馬(やぶさめ)がありそれらを自由に選べるとのこと。

 

「始まったばかりの時はハヤトさんが真っ先に来ましたよ」

 

「確かにあいつなら飛び付くなこういうの」

 

ファンタジー大好物野郎の勇斗なら絶対に見逃すはずがないと苦笑する龍馬。あまり武器を使ったことはないし、自分も剣士気分を味わってみるのもいいかもしれないと龍馬も参加を決める。

 

「ディレットも行くか?」

 

「もちろん!弓のカテゴリならエルフの独壇場だよ!私はこう見えても故郷じゃ"エルフのシモ・ヘイヘ"と呼ばれてて……」

 

「嘘乙。そもそもこっちの世界にシモ・ヘイヘを知ってるエルフがお前以外にいるわけないだろ。そもそもヘイヘは弓じゃなくてライフルだ。くだらんこと言ってないで行くぞ」

 

「シモヘイヘーイ」

 

最近このエルフ、本当に変な知識ばかりつけてて行く先が思いやられると肩を竦める龍馬。とにもかくにも二人は城にある訓練場へと向かうのであった。

訓練場に着くと軍人に憧れる小さな子供達以外に日本からやってきた人々の割合が多いことに気付く。何せファンタジーの世界の剣士のような気分を味わえるのだからそりゃ集まるだろうと納得する龍馬。

 

「お、リョーマ君にディレット君か。君達も軍人体験かな?」

 

そう言って声をかけてきたのは騎士団長アルバートだ。彼の管理の下、大人から子供まで様々な人々が軍人体験をさせてもらっているのが目に入る。もっとも、大人の方は日本人の方が圧倒的に多いようだが。

 

「はい。広場で宣伝していたマリーに声をかけられて……」

 

「ふむ、そうだな……ならばまずは弓からでどうだ?弓が得意なディレット君もいることだしな。弓に関しては彼女の方が我々より上だろう」

 

確かに弓の腕に関しては彼女の右に出るものはいないだろう。自然と共に生きるその人生で培われた弓の正確さは並みの人間を凌駕するのがエルフの長所とも言える点である。

ディレットの指示で彼女は長弓(ロングボウ)を、龍馬は小さめの短弓(コンポジットボウ)をアルバートから借りた。

丁度的当てのスペースが開いたので二人はそこに立つ。

 

「リョーマ、まずは姿勢からね。まず両足を縦に広げて的の中心と自分の広げた足が一直線に揃うように調整して」

 

「こうか?」

 

「うんうん、そんな感じ。じゃあ私の動きを真似してね。こうやって……弓は垂直にして矢が水平になるように矢をつがえるの。そしたらあとはこうやって……」

 

ディレットが弓から矢を放つ。矢は風を切るように真っ直ぐ飛んでいき、見事的の中心に突き刺さった。ギャラリーが歓声を上げ、その腕前にアルバートも思わず「見事だ」と唸った。

続いて龍馬が言われた通りに矢をつがえて引く。が……

 

「あっ……」

 

発射した弓は力なくへなへなと数メートル飛んで落下してしまった。落ちた矢を素早くディレットが拾いに行く。

 

「リョーマ、力みすぎだよ。弓と弦を引く力のバランスが釣り合ってないと照準が安定しないよ?はい」

 

「お、おう」

 

ディレットから渡された矢を受け取ると龍馬は再び射撃体制に入る。弓というのは力任せに引いても当たらないことがほとんどで、現代の銃における"ガク引き"に近い状態となってしまう。

ディレットの言うとおり弓を正確に放つにはまず弓と弦を引く力のバランスが取れていること、そして腕の力で引くのではなく背筋を使って釣り合うように引くことが重要である。

彼女の指示通り引く力のバランスを意識し、背筋全体で引くようにイメージして龍馬は再び的を狙った。すると……

 

「おおっ!?」

 

「リョーマ!すごい、すごい!当たったよ!」

 

龍馬が放った矢は多少の放物線を描いたものの的に向かって飛んでいき、的の左下の方に命中したのだ。

流石にど真ん中とまではいかなかったが、素人でこれだけ出来ればまあいい線を行っているだろう。ディレット曰く「長弓が使えるようになれば弓使いとしては一人前だね」とのことらしい。

実際のところ龍馬が使っている短弓は軽さや速射性に優れ、さほど力を使わなくてもよいのだがその分威力と射程距離に欠ける。相手が厚い鎧を着ていれば最大威力で当てても通じないこともあるし、射程が短い分狙撃にもあまり適していない。

対してディレットの長弓は重く長い分、短弓よりも速射性に欠け、必要とされる力も技術もそれ相応のものを要求される上級者向けの弓だがその反面威力は強く、うまくいけば鎧や盾を貫通させることもできる上に射程距離が長いので長距離狙撃も可能だ。

二人はその後も弓の射撃体験を続け、ディレットが流鏑馬で百発百中を見せたり、龍馬は馬術の指導をアルバートやアルフォンスから受けたりした。

 

 

中世の兵士や騎士になったようで二人は長く楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ日が傾いてきたな」

 

「そうだね」

 

二人が噴水広場に戻ってきた頃、空は既に夕焼けの赤に染まり始めていた。

もうすぐ日が暮れ、夜が来る。今夜は少し遅いハロウィンが開催され、帝都はハロウィン一色に染まるだろう。

適当に飲み物を買って広場のベンチに座った二人がしばらく休憩していると彼等の前に意外な人物が現れる。

 

「あら……?ディレット……ディレットじゃない!」

 

「久しぶりだな、ディレット!」

 

「あっ!?お母さんにお父さん!?」

 

二人の前に現れたのはディレットの母マリアと父のノーブルであった。まさかこのフェスに参加しているとは思わなかった龍馬とディレットは驚いた。彼女の両親は早速彼等の隣に座る。

 

「お父さん達もフェスに来てたんだね」

「あ……ああ。まあな。以前の夏に村の者が行って土産話を聞かせられてな……」

 

どうやら夏に開催したフェスに村のエルフが何人か参加していたらしい。そこで様々な珍しい催しを見たという話や異界の土産物を持ち帰って村中で話題になったという。

以前龍馬達が村へやってきたこともあって村のエルフ達の間でも異世界のものについては話題になった。何せ馬も魔法も無しに動く鉄の馬車や鉄の馬、離れた場所の者と会話ができる光る板など彼等が持っていたものだけでも珍しい物が沢山あったのだから。

 

「ディレット、聞いて。お父さんったらね……」

 

「お、おいマリア!よさないか!今はまだ……」

 

「?なに?」

 

「あら、そうね……ごめんなさい、ディレット。今はちょっと秘密にしておきたいことがあるの。もうしばらくしたらそちらに手紙を送るからそれで知らせるわ」

 

何やら二人は隠していることがあるらしいが、反応を窺うに今はまだ話したくないようだ。何か良くない話というわけでもなさそうなのでディレットは追求はしないことにした。

 

「オホン、ところで……リョーマ君、いつもうちの娘が世話になっているね。本当に感謝しているよ」

 

「ディレットもとても楽しそうだし、本当にあなたのご家族に出会えて良かったわ。リュウイチロウさんとリョーコさんにもよろしくね」

 

「いえ、そんな……」

 

日本と異界が繋がって約一年半。たったその一年半の間に多くの出来事があった。

正直ここまで自分が異界に大きく関わることはないと思っていたが、これはこれで楽しい。……命を落としかけたことも一度や二度ではなかったが。

それも今となってはいい思い出だ。こうして日本や異界を問わず多くの友人や仲間達が出来たことの前では些細なことに過ぎない。

龍馬はしばらくディレットの両親と話し込んだ後に二人と別れた。今回は泊まりがけで帝都に来ているようなので夜のハロウィンを楽しんでいくとのこと。

 

「じゃあリョーマ、私達も仮装の準備する?」

 

「そうだな。一旦城に戻ろうか」

 

ハロウィンに備えてもちろん仮装のための衣装やメイク用品を持ってきている。今は城の客室に置いているので一度城に戻らなければならない。二人は噴水広場を後にし、城へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

異世界の都のハロウィンが遂に幕を開ける。

 

 

 

 

Eat, drink and be scary.(食べて、飲んで、怖がらせよう)

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