デデンデッデデンデン
デデンデッデデンデン
デデンデッデデンデン
デデンデッデデンデン
テーーーーテッテッテッテーーーー
(いつもの曲)
「う~~ん……」
千春は自宅でとある本とにらめっこをしていた。
本の内容は"銃"に関することである。異界で銃を握った以上、これから先もしかしたらまた握ることになるかもしれない。それに備えてとりあえず銃に関する本を読んでみたのだが……。
「はあ……なんかイマイチわかんないわ……本だけじゃあねぇ……」
これまで様々な事を勉強してきたし、多くの時間を勉強に費やしてきたつもりだが、こんな専門外すぎる分野はいきなり本を読んだところでピンとこない。
そもそも龍馬や勇斗といった人間は実銃を握る以前から、扱ったこともないのにやたら銃に詳しいが……あれは一体何故なのだろうか。
「……私が聞く側ってのは癪だけど……明日あいつらに相談してみようかな……」
一人で悩んでいても仕方がない。龍馬と勇斗に助力を乞おう。千春はそう考えて本を閉じた。
「銃について詳しく知りたい?」
「また珍しい質問だな、須崎」
翌日の昼休み、千春は教室で龍馬と勇斗に昨日自分が悩んでいた話を打ち明けた。二人も千春がそんなことを言い出すとは思ってなかったので拍子抜けしてしまう。てっきりまた口うるさいことを言われるのかと構えていた。
「二人とも銃に詳しいじゃない。それってあれ?映画とか漫画とかで……?」
「んー、それもあるけど俺と勇斗はゲームが大体を占めてるかな」
「そうそう」
基本的に銃器や兵器に詳しい男の子というのは大体ミリタリー系のゲームを趣味にしていることが多い。例に漏れず龍馬と勇斗もその部類である。加えて勇斗は西部劇映画が好物だ。
「銃の種類とか特徴くらいならゲームで学べるかしら?」
「うーん、実際に扱うわけじゃないから暴発とか
「ええ。最近異世界で私も銃を扱い始めたし、予習だけでもと思って。それにルシアンテにいつまでも危なっかしい素人扱いされるのも癪だしね」
龍馬・勇斗・ディレット・千春の中で彼女だけが銃を一丁しか渡されていない。それも拳銃だけだ。確かにルシアンテの判断は妥当なのだろうが、この扱いは癪だ。どうしても見返してやりたいという彼女のプライドと根性が強くなっている。
「じゃあ、放課後うちに来いよ。丁度ゲーム持ってるし、良かったらやってみろ」
「……いいの?」
「知識がないまま扱って背中から撃たれたくないしな」
そこまで言った瞬間、龍馬は頭を思い切りひっぱたかれたのは言うまでもない。
「というわけで準備ができました。はい」
龍馬の部屋。既にゲームの準備が出来ている。さらに部屋のもう一方にはモニターが設置され、もう一台のPS4が接続されている。それを操作しているのはディレットだ。
「リョーマ、準備できたよ」
「お、サンキュー。じゃあまずは俺とディレットで分隊を組んでみるか。須崎はまず見学な」
「ちょ、ちょっと待ってよ。もう少し詳しく説明して」
いきなり始めると言われても何のどんなゲームをどのようにしてやるのかがわからない。ある程度は説明が欲しい。
「わかった、わかった。……今からお前にやってもらうのは"ウォー・フィールド2"だ」
「ウォー・フィールド2?」
"ウォー・フィールド"シリーズは海外で開発された洋ゲーであり、一人称視点で戦う、いわゆる"FPS"である。
最新作のウォー・フィールド3が来年の秋に発売されると知ってこの2からやり始めるプレイヤーも多い。なお、2は第二次世界大戦を舞台にしており、最新作の3では現代戦になるとのことだ。
「FPS?」
「"ファースト・パーソン・シューター"の略だ。一人称視点のシューティングゲームのジャンルだよ。とりあえずやってみせるから大体どういうゲームかだけわかってくれればいい。操作方法とか詳しい説明はその後だ」
そう言って龍馬とディレットはそれぞれのモニターでゲームを始める。壮大な音楽が鳴り、美しい映像美の中、第二次世界大戦の過酷な戦場を描くオープニングムービーが流れ、龍馬達はオンラインに接続した。
試合がマッチングされ、龍馬達が戦闘を開始する。銃声や爆音、怒号が飛び交うリアルな戦場での勝負が始まった。
「なるほど……FPSってのは自分のキャラクターの視点でやるのね……それで"一人称視点"か……」
キャラクターの頭上にはアルファベットと数字が表示されており、どうやらこれが名前のようだ。龍馬側のモニターで見るとディレットのキャラには"Elf_wind262"と表示され、ディレット側のモニターに映る龍馬のキャラには"Ryo_5017"と表示されている。
「リョーマは突撃兵か。いつも通りだね」
「そういうお前も安定の狙撃兵じゃんか。支援頼むぜ」
「……突撃兵に……狙撃兵……?兵士の種類も選べるの?」
「ああ。このゲームには四つの兵科があってな。好きなものを選んでプレイできる」
ウォー・フィールド2には突撃兵、工作兵、衛生兵、狙撃兵の四つの兵科がありそれぞれ装備できる銃や兵器、得意な環境や苦手な環境が違う。
「斎藤の突撃兵ってのは?」
「主にライフルやサブマシンガンやショットガンによる近距離から中距離での対人戦に優れた兵科だ。屋内や塹壕での狭い場所では強いけど、屋外の広い場所だと狙撃兵や工作兵、それに乗り物に狙われたら不利だな」
「ふうん……じゃあ、ディレットの狙撃兵は?」
「私の狙撃兵はスナイパーライフルで遠距離から狙い打ったり、敵を偵察したり対人用のトラップなんかが得意だよ。ただ、スナイパーライフルと拳銃しかないから近距離に持ち込まれると圧倒的に不利だし、遠距離から狙撃する以上は正確な照準操作のテクニックが必要になるね。初心者向きじゃないかも」
「工作兵と衛生兵は?」
「工作兵は主に軽機関銃を使って中距離からやや遠距離で味方を後方から支援する兵科だな。それにランチャーや補修キット、弾薬箱で乗り物の修理や破壊に味方の弾薬の補給とか色々やれることは多い。反面、武器がでかくて取り回しが悪いから近距離での咄嗟の戦闘には向いてない。状況を考えて臨機応変にしないと器用貧乏で終わる。衛生兵は味方の蘇生や回復が出来るが、攻撃性能は突撃兵よりやや弱い」
「ふうん、それぞれで一長一短なとこがあるのね」
このゲームでは分隊を組んで最大4人までの部隊で行動できる。各々が戦況に合った判断でそれぞれの兵科の能力を活かさないとあっという間に負けてしまう。
「勝敗はどうやってつけるの?」
「このマップに赤と青の地点があるだろ?赤は敵のエリア、青は味方のエリアだ。ここに居座って占領ゲージを溜めるとそのエリアを占拠できてポイントが入る。占拠できたところを防衛し続けたり、敵をキル……まあ、倒したりすることでもポイントが入るぞ。制限時間が無くなった時点でポイントが多いチームの勝ちだ。他にもルールがあるが、この"コンクエスト"モードがこのゲームの一番基本的なルールだ。……っとと、味方の陣地がヤバイな」
マップにはA、B、C、Dの地点と現在の戦況が表示されている。龍馬とディレットがいるのはC、Dのある右側で現在は回り込まれた敵によってCの地点が占拠されそうだ。
「任せてリョーマ。私が戦車で出撃するよ!」
「おっ、頼むぜ」
丁度キルされて再出撃しようとしていたディレットは工作兵を選択、そして戦車に乗り込んでD地点からC地点へ向かう。同時にディレットの視点が戦車に乗り込んだ視点に変更される。
「そういえば乗り物があるのよね。戦車とか戦闘機とか。あちこちで動いてるけど、全部これ別のインターネットに繋いでるプレイヤーが動かしてるの?」
「その通り。ちなみに今ディレットが乗ってるのは重戦車だ。装甲の厚さに火力はピカ一だが小回りが効かない、旋回速度が遅いといったデメリットがあるぜ。あと主砲は操縦士は使えないから誰か別の味方に撃ってもらわなきゃいけない」
「へえ、現実の戦車みたいにちゃんと多人数で役割分担しないといけないのはかなりリアルね」
ウォー・フィールド2にはいくつかの乗り物がある。うまく使えば状況を打破できる、強力で頼もしい存在だ。
ディレットが使っている重戦車以外には軽戦車、装甲車、軍用バイク、戦闘機、爆撃機といった乗り物があり、戦闘機以外は全て操縦士以外のプレイヤーも一緒に乗り込んで移動や攻撃が出来るのも特徴だ。
「くらえー!」
大きな建物に立て籠る集団を殲滅するべく、操縦士のディレットと他のオンラインプレイヤーが建物への主砲を浴びせる。建物の一部が損壊し、巻き込まれて死亡(デス)したプレイヤーの名前とディレットに入るスコアが表示される。
「ところで死んでしまった時の復活ってペナルティとかあるのかしら?」
「特にないよ。復活はリスポーンっていうんだけど……ただ、死ぬとしばらくリスポーンできないからその間に敵に攻める機会を与えることになっちゃうね。……って、わっ!わっ!リョーマ、まずいよ!敵の爆撃機が……!」
戦車に乗るディレットの上空に敵チームの爆撃機が迫っている。爆撃機は戦闘機よりも機動性と空中戦に欠ける分、厚い装甲とその名の通り地上への降下爆撃・機銃掃射に適している。強力な爆弾投下は建物に固まるプレイヤーや厄介な重戦車を無力化しやすい。反面、機動性の高い戦闘機に後ろに付かれると何も出来ないまま終わってしまうこともしばしばある。今は味方の戦闘機が墜落した直後のため、上空の制圧力がなく、ディレットの戦車は敵の爆撃機に攻撃されてあえなく大破してしまう。
「任せろ。あのアホを撃ち落としてやる」
龍馬の視点が戦闘機のコックピットに変わった。大地が左右になったり上になったりする目まぐるしい視点の変化と共に龍馬の戦闘機は爆撃機の背後に張り付いて機関銃を打ち込む。
「あっ、誰か降りたわよ」
回避出来ないと悟った敵のプレイヤーは爆撃機を乗り捨てて上空から飛び降り、脱出した。C地点に向かってパラシュート降下し、そのまま白兵戦を繰り広げるつもりだ。
さすがに味方がいないのか、徐々にC地点が制圧されつつある。そこへ再度出撃したディレットの装甲車が駆け付けた。
「おりゃおりゃー!」
縦横無尽に走り回る装甲車に轢かれ、或いは機関銃の的にされて敵は次々にキルされていく。
さらに上空からの龍馬の機銃掃射が功を成してC地点の防衛に成功した。
と、ここでマッチが終了。お互いのポイントが表示される。結果は龍馬とディレットのチームの勝利だ。
「よし、終わったな。まあ、流れは大体こんな感じだ」
「なるほどね。時代設定が古いから私達の銃にも通ずるものがあるわ。たかがゲームだと思ってたけど、なかなかリアルで面白そうじゃない」
千春の口からそんな言葉が聞けるとは思わなかったので龍馬は内心驚いてしまう。こういった手の物に興味を示さない彼女から「面白そう」という言葉が出るとは。人生何があるかわからないものだ。
「よし、俺は抜けるから次はお前がやってみろ。初心者なら工作兵か衛生兵がいいかもな」
「初めてだからあんた達みたいに弾が当てられるか自信がないわ……」
「じゃあ衛生兵がオススメだな。銃の取り回しもいいし、何より自分も味方もピンチの時に体力を回復出来るのは生存率の向上に繋がるからな。逃げ回って味方を回復するだけでも充分に貢献できる。そろそろ勇斗の奴も合流するころだが……お、きたきた」
画面から音が鳴り、"招待されました"と通知が入る。
「これは?」
「今のゲームにはフレンド登録って機能があってな。親しいプレイヤーを登録しとくと同じゲームをやってる時に後から参加したり招待を送ったり出来るんだ。今は勇斗が招待送ってきてくれてんだよ。ヘッドセット貸してやるからボイスチャットで連携してみな」
「こ、こう?」
まるでオペレーターのような、マイクの取り付けられたヘッドホンを受け取る。すると向こうからは勇斗の声が。
「"おーい、龍馬?それとも委員長か?"」
「だ、誰が委員長よ!」
「"ああ、委員長だな、よし。ゲームの流れは龍馬に教えてもらったな?じゃあ次は実戦だ。失敗は気にせずに操作は死にながら覚えていけ。トライアンドエラーってやつだ"」
無茶言わないでよ、と千春は言うが既に試合のマッチングは始まっている。じきに対戦が始まるだろう。
"ベルリンの戦い"━━━━画面にはそう表示され、大きく損壊した市街地のマップが映し出される。
「お、市街戦か」
「さっき斎藤達がやってたところとは違うわね」
このマップは議事堂を防衛するドイツ軍と侵攻するソ連軍、すなわちドイツ・ベルリンの市街地を舞台としたマップとなる。だだっ広い場所が広がる先ほどのマップと違って、入り組んだ建物が建ち並ぶ市街戦が展開されていく。
千春は基本的な操作方法を龍馬に教わりつつ、衛生兵で戦場に繰り出した。
「一人称視点ってかなり忙しいゲームね……」
移動に視点操作だけでも忙しいというのにマップやスコアボードの確認、武器の切り替え、武器以外の装備品の切り替えや使用、味方とのコミュニケーションやエイム操作などコントローラーのボタンを全て駆使して素早く操作しなければならず、そもそもゲーム自体に慣れてない千春には中々難しいものだ。
「あっ、死んだ……」
「ま、初めはそんなもんだ。特にミリタリー系のFPSは体力が低めだからちょっと撃たれただけですぐ死ぬ」
リアル寄りのミリタリーFPSというものは比較的体力が低く死亡率が高い。ほんの少し被弾しただけですぐに死亡してしまう。特に初心者は索敵やエイムが上手くいかず、経験者相手では弾を撃つことすらままならずに死亡することがほとんどだ。マッチが終わってスコアボードを見ると1キルもできずにデス数ばかりが2ケタ台などザラである。
「ううう……さっきから全然当たらない……」
衛生兵は火力が低めのため、撃ち合いでは正確なエイム力がないと撃ち負けやすい。セミオートやボルトアクション式のライフルは初心者には辛いものがあるかもしれない。
「"須崎、分隊の弾が不足しがちになってるから今度は工作兵にしてみたらどうだ?少し遠距離から機関銃で射撃してみるのもいいかもしれないぞ"」
「わかったわ」
ヘッドセットから聞こえる勇斗の言葉通りに千春は工作兵を選択する。工作兵は軽機関銃による支援射撃、迫撃砲による制圧砲撃、味方の弾薬補給、爆発物の設置、乗り物の修理と破壊などやれることが幅広い。
「"あまり一人で行動するなよ。なるべく誰かに引っ付いて行動しろ。特に突撃兵は弾が無くなりやすいから補給をしっかりな"」
「善処するわ」
言葉通りに突撃兵を使う勇斗の後ろに続く形で千春は移動する。瓦礫を勇斗が越えると銃撃戦が始まった。
「"須崎!制圧射撃を頼む!"」
「え、ええ!?」
「"当てなくていいから敵の動きを封じるように弾をバラ撒け!"」
言われるがまま、千春は建物に隠れつつも勇斗を狙う敵に向けて軽機関銃を連射する。何発かは当たったらしく、敵が後ろに下がり始めた。
「逃がさないよ!」
スナイパーライフルの銃声が響く。ディレットのライフルによる狙撃が見事に敵を撃ち抜き、キルを達成した。さらに弾薬箱を置いて消費した弾薬の補給を行い、分隊にいる衛生兵のプレイヤーが救急箱を置いてくれたので体勢は完全に建て直すことができた。
「"ナイスだ、須崎!こうやってうまく連携を取ればこのゲームは勝てるぜ!"」
「チハル、また援護頼むね!」
「へ?あ……ええ!ま、任せて!」
ようやくこのゲームのコツが掴めてきた。分隊による連携を上手く取らなければ相手を攻め落とすのは難しい。それぞれの兵科がバランスよく協力して連携し、足りない部分を補うことがチーム全体の勝利へと繋がっていく。
フラッグを確保した千春達のチームはさらに侵攻を続け、ベルリンの大通りでの攻防戦へと突入した。
「"須崎!味方戦車が来るまで迫撃砲の援護急げ!"」
一部が破壊された鉄条網と土嚢が配置された大通りで敵味方の歩兵が集結し、激しい銃撃戦が開始される。飛び交う弾丸と手榴弾の雨の中、前線で戦闘を続ける勇斗の背後で迫撃砲を設置した千春はなんとか援護しようと敵の頭上から迫撃砲で攻撃を加えるが、初心者の千春では 銃以上になかなか当たらない。
「全然無理よ!倒せないわ!」
「"当たらなくてもいいからとりあえず撃て!攻め込まれたら終わりだぞ!"」
「う……うん!」
そうは言っても既に味方の多くがキルされ、敵が前線を押し上げてくる。ディレットも二階の窓から狙撃をしているが、流石に敵の数が多すぎる。
「ええい、もうヤケクソよ!こいつでも喰らいなさい!」
千春は本来なら対戦車用に使われるパンツァーシュレックを敵の密集している場所に死亡覚悟で撃ち込んだ。
すると驚いたことにピッタリと敵が密集していたおかげで一気に三人もキルを取ることが出来たのである。この局面で三人も仕留められたのは大きい。敵の前線を一気に崩すチャンスだ。
「"須崎、ナイス!こっちも二人倒せた!"」
突撃兵の勇斗が残った敵を始末した直後に味方の戦車がようやく到着する。砲撃が敵陣を吹き飛ばし、B地点の制圧に成功した。
千春達のチームの快進撃はその後も止まらず、味方の見事な連携で勝利を納めたのだった。
「ふう、楽しかったわ。色々兵器も知れて参考になったし」
「そりゃ良かった。それにお前、慣れてきたおかげか大活躍だったじゃねぇか」
千春は主に工作兵による支援で真価を発揮した。射撃のエイミングはまだまだ練習が必要なものの、対戦車地雷や迫撃砲、ランチャーによる一掃など、主に爆発物を駆使した立ち回りで味方のサポート役としてチームに大きく貢献したのだ。キル/デス数はやはり初心者ならではと言ったところだが、支援によるポイントのおかげで総合的なスコアは決して低くない。
「ひとつ聞きたいんだけど、このゲームに出てくるライフル・グレネードみたいに手榴弾を遠くに飛ばせるような兵器って無いのかしら?」
千春がプレイ中に気付いたのは爆発物を射出出来るような兵器の存在だ。特に擲弾(てきだん)発射兵器は現実の戦争においてもフリントロック式銃が現役だった時代から課題とされてきた。第二次世界大戦では小銃(ライフル)の先に取り付けて発射するライフル・グレネードが使われていた。
爆発物、特に擲弾に大きく興味を持った千春は気になった事を龍馬に訪ねる。
「第二次世界大戦の時代はまだ無かったみたいだけどベトナム戦争時代にはある兵器が開発されてだな。現代に至るまで結構有名なものが出てくるぞ。えーと……ほら、これだ」
龍馬がスマホの動画で見せた実銃の射撃映像。そこに千春の目を引く映像が映っていた。
「爆発物を射出するライフル・グレネードを使うための小銃(ライフル)を使うには私では取り回しが悪すぎる。かといって拳銃だけじゃ火力不足だし私がサポート出来そうな兵器はここ一番で火力を発揮できる比較的小型の擲弾発射器しかないわ」
千春はあの後、龍馬に教えてもらった兵器に目を引かれてそれだけを徹底的に調べあげた。
ライフルよりも短くて取り回しがよく、軽量で、構造が単純で扱いやすく、様々な弾頭を使い分けることの出来る武器。問題はこの武器をルシアンテが確保しているかどうかだが。
「M79グレネードランチャー……これの在庫があることを祈るしかないわね」
ウォー・フィールド2のプレイによって得られた知識から導き出された彼女のひとつの答え。それはグレネードランチャーによる擲弾で味方をサポートすること。龍馬から教えてもらったこのM79グレネードランチャーなら非致死性のスモーク弾やゴム弾など様々な弾頭を使用でき、榴弾によるモンスターへの大きな火力も期待できる。さらに比較的小さく取り回しもいいため、千春はこれを見た時に「これしかない」と確信したのだ。
しかしM79グレネードランチャーはベトナム戦争以降の時代に作られた比較的新しい銃だ。第一次大戦や第二次大戦の古い銃器が主な商品となるルシアンテの店にこれがあるという保証はない。
「……なかったら作ってもらうのも手かもね。あれだけ詳しいんだから作れるでしょ。弾薬だって手作りみたいだし」
それにしても銃など全く興味がなく、ゲームだってやろうとも思わない、生きていく上で無駄だと思っていた要素がこんなところで糧になるとは。人生とはわからないものだと千春は苦笑した。