アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第127話 クリスマス・イヴ

12月の半ば。クリスマスが目前に迫る日本各地。同時に冬の寒さもピークに達しつつあった。

コンビニやスーパー、デパートの入り口など至るところでクリスマスケーキやパーティーメニューの販促物が展開され、あらゆる場所でイルミネーションが光輝き、街は慌ただしい動きを見せていた。

 

「リョーマ、クリスマス楽しみだね」

 

「んー?ああ、まあそうだな」

 

下校中、ディレットは初めて迎えるクリスマスという行事に胸を躍らせ、そう言った。対して龍馬はさほど興味もないといった感じでぶっきらぼうに返事をする。

 

「なんかリョーマ……あんまり興味なさそうだね」

 

「サンタクロースにお願いするような年でもないしな。ケーキとチキン食って終わりだろ。クリスマスを楽しめるのは恋人持ちのリア充だけさ」

 

去年のクリスマスだってそうだ。女っ気のない学生生活の中、今のディレットのポジションにいたのはむさ苦しいゴリラ……もとい、勇斗だったのだ。こうしてディレットと歩いているだけでも嬉しくないわけではないが、恋人というわけでもないので龍馬はクリスマスのことなどさほど考えてもいなかった。

どうせ勇斗はリリィさんと過ごすだろうし、母子家庭の千春は母と二人で出かけると行っていた。

 

「もう……せっかく横に可愛い女の子がいるんだよ?もっと嬉しそうにしたら?」

 

「お前それ自分で言っちゃうの?」

 

やれやれ、と肩を竦める龍馬。馬鹿なこと言ってないで早く帰るぞとディレットより先に足早に歩き出す。

 

「あっ!待ってよ、リョーマ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ただいまー」」

 

「おう、お帰り」

 

二人が家に帰るとエプロン姿の涼子が一枚の封筒を差し出す。宛名はディレットだ。そして差出人は……両親である。

 

「お父さんとお母さんからだ!えーと……」

 

 

 

 

"ディレットへ。元気にしてますか?冬の寒さも厳しくなってきたので風邪など引いていませんか?母は貴方の健康を誰よりも願っています。

さて実はお知らせがあります。実は私とお父さんはなんとニホンへの渡航資格を得ました。そこで一週間ほどそちらへ出向きたいと思います。ニホンではもうすぐ『くりすます』という行事があるそうですね。私とお父さんも『くりすます』を見てみたいのでそれに会わせて行きたいと思います。

あなたやリョーマ君、それにリョーコさんやリュウイチロウさんに会えるのを楽しみにしています。

 

母より"

 

 

 

 

 

 

「……リョーコさん、大変です!クリスマスにうちの両親が来ます!」

 

「はぁ!?うそやろ!?25日まであと何日ね!?」

 

涼子はカレンダーを見る。……今日は18日。25日、クリスマスの日まではちょうどあと一週間しかない。これは一大事である。

涼子は通販で慌てて二人分の布団を注文し、今はルビィ達の部屋になっている一階にある和室の押し入れやら部屋の隅にある不必要な物を片付けるためにまとめ始めた。

……今日は夕飯を食べられるのはいつになるのだろうか。龍馬はその事を考えつつ、涼子からの要請でディレットと共に片付けを手伝い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父様!私、"くりすます"に参加したいわ!」

 

「いきなり何の話じゃ、モニカよ」

 

一方、こちらは帝国。こちらの世界でも厳しくなりつつある冬の中、モニカは城にて父ソフォスにあるひとつの要望を出した。それはニホンのイベント"くりすます"に参加したいという旨だ。

話によれば"くりすます"とやらは色とりどりの飾りが町中で輝き、美味しいケーキや料理を囲んで皆でパーティーを開き、夜には"さんたくろーす"という存在が素敵なプレゼントをくれるというのだ。こういう話に目がないモニカは父に直談判してニホンに行きたいと言い出したのである。

 

「あのなあ、モニカ……前回ニホンに行った時だって儂のワガママとはいえかなり根回して苦労したんじゃぞ。そんなにすぐに、しかも儂ら皇族がホイホイとすぐに行けるわけなかろう……」

 

「お父様のケチ!私最近いい子にしてたじゃない!こんな時くらいワガママ聞いてよ!」

 

「お前最近やけに大人しいと思ったらそれが狙いじゃったのか……」

 

確かに最近のモニカはいつものお転婆さを見せず、真面目に勉学にも武道にも打ち込んでいてあのワガママはなりを潜めていた。ようやく皇女としての自覚をきちんと持ち始めたのだなとソフォスは期待していたのだが、まさかこれが狙いとは。我が娘ながら抜け目ない。

 

「モニカ。"くりすます"の話は儂も耳にしておる。出来ることならお前だけでも行かせてやりたいが……手続き自体が間に合わぬ上にお前一人でニホンに行くのは無理があるじゃろうて」

 

流石に一国の主ともあろう者がそう何度もお忍びで行くわけにはいかない。かといってモニカ一人で行かせるのは無理がある。アルバートに相談するのは……

 

 

 

 

 

 

 

(「またですか!!いい加減にしてください!!こっちだって暇じゃないんです!!」)

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対、怒られるのう……」

 

アルバートに相談して叱られる自分が容易に想像できる。この方法はまずい。

と、なるとやはりあの人物を頼るしかあるまい。ソフォスは懐に手を入れ、携帯電話を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では陛下。行って参ります」

 

「うむ、気を付けてな」

 

龍馬達の家に手紙が届いてから三日後。場所は変わってヴィヴェルタニア王国。団長代理のオフィーリアは深夜、荷馬車の後ろに乗って城を発とうとしている。そう、彼女は教材によって勉学に励み、ようやく資格を習得したのだ。

裏門からこっそりと、王であるアティウスに見送られてオフィーリアは荷馬車に腰を下ろした。これは自分のためにアティウスが用意してくれた帝国の行商人の荷馬車だ。王直々に口止め料として大金を握らせたので情報が漏れることはないだろう。

何せ四騎士のうち一人が留守にしている上に短期間とはいえ、二人目が騎士団をポストを空けようというのだから情報が知れれば大変なことになる。

一応表向きには任務によるしばらくの留守ということにはしてあるが、それでもやはり長くはごまかせない。この事実を知っているのは自分とエドワード、同じく騎士団を任されているアーヴィングとゴドムくらいだ。

帰国予定はニホンに着いてから10日後。移動には複数日かかるが、それでは不憫だということでアティウスは行き帰りの移動時間は制限に含めないことにした。

 

「既に手紙は送ってある。帝都に着いたらまずギルドへ向かってソフォスを頼れ。あとはあいつが手筈を整えてくれるはずだ」

 

「陛下……何から何までありがとうございます。何とお礼を言ったらいいか……」

 

「よい。それよりもう行け。誰か来ると面倒だ。向こうに着いたらバルガスによろしくな」

 

「はい……では」

 

オフィーリアはローブを深くかぶり、荷馬車の荷物の隙間に腰を下ろした。ゆっくりと歩き出す馬車。だんだんと遠くなるそれを後ろから見送りながらアティウスはふう、とため息をつきながら苦笑した。

 

「まったく、手のかかる二人だ。レオンハルトとエドワードだけでも手一杯だというのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、準備は?」

 

「うむ、バッチリだ」

 

翌日。場所は変わり、ここはディレットの故郷であるトルトの森。いよいよニホンに行く準備を整えたノーブルとマリアの二人は帝都から呼び寄せた馬車に乗り込む。

前回は娘が滞在先の一家と友人を連れてやってきたが、今回はこちらが出向く番だ。娘と会えるのもそうだがニホンに行けること自体もまた楽しみで仕方がない。

 

「よし、それでは行くか。御者、馬車を出してくれ!」

 

馬車に荷物を積んで乗り込んだ二人。御者が手綱を振ると馬車はゆっくりと歩を進め始めた。

馬ではゆっくり進んで一日ほどの距離。森を出た馬車は帝都を目指して進んでいく。

 

 

 

 

迫る日本のクリスマス。そして渡航のために集う者達に、日本でクリスマスの準備を行う龍馬達。各々の者達が出会うクリスマスは果たしてどのような展開を見せるのか。

 

 

今はまだ、誰にも予想がつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝。馬車の中で目を覚ましたオフィーリアは商人に別れを告げて馬車を降りた。

ヴィヴェルタニア四騎士の一人が単独で帝都に来ていると知られてはまずい。オフィーリアは外套を深く被り、できる限り顔を隠して帝国ギルドへと急いだ。

帝国直営のギルドは今日も沢山の人々で賑わっている。冒険者や傭兵、仕事を依頼する人々、一仕事終えて酒を酌み交わす者……そこにいるのは様々だ。

だが一番多いのはやはりニホン渡航関係の窓口に並ぶ人々だろう。これから資格を取ろうとする者や既に資格を取得した者達が受付のためにずらりと並んでいる。

 

「(ここに並べばいいのだな。それにしても時間がかかりそうだ)」

 

オフィーリアは楽しそうに会話をしているエルフの夫婦の後ろに並んだ。この二人もニホンへ行くのかと考えながら夫婦の手元を見ていると何やら見覚えのある紙を手に語り合っている。

 

「(あれは……シャシン?)」

 

バルガスもよく送ってくれる、異世界の技術で作られた精巧な"写し絵"。そのシャシンを持っているということは……既に身内か知人がニホンにいるのだろうか?だが後ろからではシャシンに映る人物が誰なのかよくわからない。と、その時。

 

「あ……お……落としましたよ」

 

重ねていたシャシンの一枚がオフィーリアの足元にハラリと落ちた。彼女はそれを拾い上げ、夫婦に返そうとする。

 

 

しかしそのシャシンを見てオフィーリアは驚愕する。

 

「(こ、これは……!)」

 

見間違えるはずがない。そこに映っていた人物は紛れもなくあのエルフの娘とニホン人の少年。自分を負かしたあのエルフ、そして敬愛するバルガス団長を打ち倒したニホン人。

 

「(ディレットと……リョーマ!)」

 

「あら、どうもありがとうございます。大事な娘のシャシンなもので……なくしたらどうしようかと」

 

エルフの夫婦の女性はそう言ってオフィーリアに頭を下げた。

娘……ということは……まさかこの夫婦は……!

 

「あの……つかぬことをお伺いしますが……」

 

「はい?」

 

「お二人はまさか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、驚きました。まさかヴィヴェルタニア王国の騎士様だとは……」

 

「いえ、そんな……それに……申し訳ありません……私はかつて……」

 

オフィーリアとディレットの両親は受付後、別室に案内された。マリアとノーブルは通常の受付でもよかったのだが、アティウス国王からソフォス皇帝を通じてオフィーリアの渡航を聞いているギルドが彼女を別室に案内する際、オフィーリアの頼みでディレットの両親も同じ部屋に案内するように頼み込んだのだ。

手続きの合間、オフィーリアはこれから向かう場所とかつての城での戦いとディレットとの戦いを話し、そして二人に謝罪した。二人はしばらく渋い顔をしていたが、すぐに笑顔に戻るとオフィーリアに顔を上げるように言った。

 

「顔を上げてください、オフィーリアさん。確かに私達の娘とあなたは命懸けで戦ったのかもしれない。だがあなたは騎士の務めを果たしたまで。結果的に誰も死んではいない。それに……あのヴィヴェルタニアの四騎士の一人にうちの娘が勝ったんだ。これは親としては誇らしいことだ。なあ、マリア?」

 

「ええ、そうね。もしかしたらあの子は……私達が考えている以上に大きくなってるのかもしれないわ」

 

「……感謝します、ご両親」

 

自分達の知らぬ所で娘が本職の騎士と命のやり取りをしていたことには驚きだが、結果として娘は勝負に勝ったのだ。そしてどちらも命を落とさず、和解に至った。ならばそれで良いではないか。しかもあのヴィヴェルタニアの四騎士の一人に勝ったとあっては親としては身を案ずる一方で鼻が高くもなるというものだ。

 

「失礼します。渡航の準備が完了しました。皆様方、港へお急ぎください」

 

ギルドの女性が別室へと入ってそう案内した。三人はその言葉に従い、荷物をまとめて港へと移動する。

 

 

 

 

一方、モニカは━━━━

 

 

 

 

「リョーマ君、本当に申し訳ない。姫様を頼んだぞ」

 

「モニカよ、リョーマ君と彼のご家族の迷惑にならないようにするのじゃぞ」

 

「まあ、遠出はしないし多分大丈夫ですよ。とりあえず今日は来客があるんで帰りますね。ほら、行くぞモニカ」

 

「はーい!」

 

同じ頃の城にて荷物をまとめたモニカが龍馬の迎えで日本に発とうとしていた。

さすがに正規の手続きで日本に向かうには時間もないため、龍馬達が使うポータルで直接龍馬の自宅へと行き来することにしたのである。

もちろんこの話がアルバートの耳に入らないはずもなく、初めてアルバートが聞いた時はソフォスもモニカも彼から苦言を呈されたが渋々了承した。

 

「じゃあ、明日の夜くらいに送り届けます」

 

「頼むぞ、リョーマ君。何かあったら儂のデンワに連絡してくれ」

 

「はい」

 

龍馬はソフォスに一礼すると一旦の別れを告げて外套をかぶったモニカと共に城を出た。二人は帝都東通りから宿屋街へと北上し、北東にあるアジトを目指す。

 

「ねぇ、リョーマ。ディレットのお父様やお母様も来るんでしょ?なら二人も転移の魔法を使った方が早いんじゃない?」

 

「馬鹿言うなよ。本来なら俺がポータルを使って帝国を行き来するのは密入国と同じなんだぞ。それを陛下に目をつぶってもらってるんだからおおっぴらに使ったらまずいだろ」

 

龍馬の言うことは最もだ。転移魔法……ポータルによる帝国と日本の行き来は不法な入出国に値する。日本側にバレればエラいことになるだろうし、帝国にとっても本来ならばお縄になってもおかしくない案件だ。そこを龍馬は皇帝との仲で多目に見てもらっている。

 

「それに……ディレットのお父さんとお母さんは初めて日本に来るんだから飛行機とか電車とかで日本での旅気分を味わわせてやりたいだろ?」

 

「……そうね。ごめんなさい、愚問だったわ」

 

「気にするな。さて、そろそろ着くぞ」

 

宿屋街の北東。龍馬と仲間達の"アジト"がある場所へと二人は到着した。ドアを開けて中に入るとあまりまだ家具が揃ってないせいか、殺風景さが残る内装だ。龍馬はモニカを連れてポータルのある部屋に案内する。

 

「俺に掴まってろ。転移するぞ」

 

「え、ええ」

 

モニカは龍馬の背中にしがみつくようにして彼と一緒に魔方陣の真ん中に立つ。すると陣から光が溢れだし、二人を包んだ。

やがて光に包まれた二人ははじめからそこにいなかったかのように姿を消し、部屋には静寂だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今から空を飛べるのか!ワクワクするな!」

 

「あらあら、あなたったら年甲斐もなくはしゃいじゃって……そういうところはディレットにそっくりね」

 

「(うう……緊張する……)」

 

ノーブルとマリア、オフィーリアの三人は羽田空港から搭乗手続きを済ませ、飛行機の内部にいた。

大空を翔び、人々を乗せて旅するこの世界の乗り物・ヒコウキ。噂には聞いていたがどのようなものなのかとノーブルとマリアは期待に胸を躍らせる。対してオフィーリアはかなり緊張している。何せ今から空を飛ぶのだというから不安でたまらない。

いよいよ飛行機が動き出す。滑走路の位置に付き、飛行機が凄い勢いで加速し始めた。それと同時に初めて飛行機に乗る異世界の人々は悲鳴を上げたり、逆に楽しんだりと様々な反応を見せた。

機体はみるみるうちに上昇し、あっという間に雲の上まで到達する。シートベルトの解除サインが灯り、アナウンスが流れると異世界の人々はこぞって窓の外を見る。もちろんディレットの両親達も例外ではない。

 

「あなた、見て!海があんなに下の方に……!」

 

「ああ……しかも雲より高いぞ!これは凄い……!オフィーリアさん、あなたも見てみなさい!」

 

「は、はい」

 

オフィーリアもおそるおそる窓の外を眺める。足元に海と雲が広がるという、決して拝むことは出来なかったであろう光景。オフィーリアはその景色に釘付けになってしまった。

 

「(団長も……半年前にこの景色を…………待っていてください、団長。今行きます)」

 

胸に秘めた自分だけの想い。敬愛するバルガス団長にもうすぐ会える。そう考えるだけで鼓動が早くなる。

 

 

 

再会の時は、近付いている。

 

 

 

 

一方、龍馬達は━━━━━

 

 

 

「かたじけない、リュウイチロウ殿」

 

「気にしないでください、バルガスさん。大事な部下が来るんでしょう?せっかく遠路はるばる来てくれるんだ。迎えに行かなきゃ可哀想ですよ」

 

ランドクルーザーを運転する龍一郎の隣、助手席にはバルガスの姿が。ディレットの両親と同時期にオフィーリアも来日すると知ったディレットの提案で五十嵐一家も自宅に招いてクリスマスパーティーをやろうと言い出したのだ。

今現在は涼子達にパーティーの準備を任せ、龍一郎はバルガス、龍馬、ディレットの三人を乗せて福岡空港へ迎えに行く途中だ。

 

「バルガスが迎えに来るって知ったらオフィーリアさん、きっと喜ぶぜ」

 

「そうね、とてもバルガスさんを信頼してるみたいだし」

 

「ディレットに感謝しろよ~バルガスぅ~。こいつが提案してくれたから"彼女"に会えるんだからなあ~」

 

「な、何を言うか。からかうのはよせ」

 

後ろの席から龍馬とディレットの声が聞こえる。二人はいたずらっぽく笑いながらバルガスの反応を楽しんでいる。

そんな車内のカーラジオから流れるラジオDJの声。話題はやはりクリスマスのことばかりだ。

 

「"さあ、今夜はいよいよクリスマス・イヴですねぇ。もしかしたら雪が降るかも……?聖なる夜のホワイト・クリスマス……なんてロマンチックな響きなんでしょうか。さて、本日のリクエストは……これまたクリスマスを過ごす恋人達にはピッタリの曲です。それではお聴きください。MISIAで『Everything』です……"」

 

 

 

 

「また懐かしい曲だなあ……何年前だっけ?15、6年は前の曲だよ」

 

カーラジオから流れるリクエスト曲。比較的古い曲ではあるが、テレビなどでも未だに使われるために龍馬にも多少の聞き覚えがある。

 

 

 

 

 

 

"過去を見ないで 見つめて 私だけ"

 

 

 

 

 

 

"You're everything You're everything"

 

 

 

 

 

"You're everything You're everything"

 

 

 

 

 

"あなたが想うより 強く"

 

 

 

 

 

"優しい嘘ならいらない"

 

 

 

 

 

"欲しいのはあなた"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと着いたな」

 

「ヒコウキ、とても楽しかったわね。ねえ、オフィーリアさん?」

 

「ええ。空を飛ぶ乗り物であのように飲食をしながら快適に過ごせるとは……とても素晴らしいものでした」

 

オフィーリアはうんうんと頷く。さすがバルガスの部下と言うべきか、言うことがそっくりだ。

福岡空港に降り立った三人は荷物を受け取るとターミナルの案内を聞きながら出口を探す。

ディレットの話では確か村に来た時と同じジドウシャで迎えに来ているらしいが……。

 

「おい、マリア。あれじゃないか?」

 

「あら、ほんとだわ……ディレットー!」

 

遠くで白いジドウシャの脇で手を振る娘の姿を二人は確認した。同時にオフィーリアもその方角を見る。

 

 

 

 

その瞬間、彼女の心臓がドクンと強く脈打つ。

 

 

 

 

 

「(だ……団長……!?)」

 

龍馬達とそこにいたのは紛れもない、敬愛するバルガス団長だ。彼の顔を見た瞬間にオフィーリアの心臓は激しく動き、呼吸が苦しくなる。

 

「(な、何故団長がリョーマ達と……!?確かまだリョーマの祖父母の家にいるはずでは……!?)」

 

オフィーリアの姿を見つけるとバルガスはゆっくり歩み寄り……目を逸らしつつぎこちなく答える。

 

「あー……オフィーリア……その……久しいな。……元気に……していたか?」

 

「えっ!は……はいっ……!も、もちろん……!」

 

やはりオフィーリアは突然の再会に半ばパニック状態と化している。龍馬とディレットはそれを端から見ながらニヤニヤとし、龍馬達の気持ち悪い笑顔をチラリと見たバルガスは小さく舌打ちした。

 

「(おのれ、ディレットにリョーマめ。この光景が見たくてわざわざパーティーの提案をしてきたな)」

 

ぎこちない挨拶を交わすバルガスとオフィーリアをよそにディレットは久しぶりの両親との再会を喜ぶ。

 

「あー、はいはい。皆さん積もる話もあるだろうけどまずは車に乗りましょうね。寒くてかなわないんだよ」

 

 

 

 

 

 

龍一郎のその一言で一行は荷物を積み、車に乗り込んだ。




作中使用歌詞:MISIA/『Everything』より
JASRAC楽曲コード:079-5581-2
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