アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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龍が如く系シナリオ第二弾。

それはたったひとつの事故が生み出してしまった物語。大切な人の危機に直面した龍馬は博多と小倉、二つの街をそれぞれ牛耳る極道組織の抗争に巻き込まれていく。
ヤクザの抗争が激化する中で龍馬は仲間達と共に真実を追い求める。その中で明らかになる26年前の事件。涼子と祖父母に秘められた過去と因縁。
過去と現在が交差し、複数の思惑が絡み合う中で龍馬は真実に近づくたび、ヤクザやマフィアすらも凌駕する裏社会の"闇"と対峙することになる……。


これは巨悪の闇と戦った熱き男達の、奇跡の記録。





博多・小倉極道組織抗争編
第131話 悲劇のバレンタイン


2月。新しい年も明けて新学期も始まり、龍馬達は三年生への進級を控えていた。そんな中で学生達にとっての一大イベントが迫りつつある。

 

 

そう。2月14日のバレンタインデーである。

 

 

この日が近づくと様々な反応を学生達は見せる。来もしないチョコを期待するもの、興味のないフリをして実は内心期待するもの、本当に興味がないものなど……青春を謳歌する学生にとっては死活問題の日なのだ。

 

「おい、龍馬。お前は今年どれくらいもらえるんだ?」

 

「喧嘩売ってんのかブタゴリラ」

 

龍馬と勇斗がそんな他愛ないいつものやり取りをしている頃、別の学級であるディレットはスマホで一人あるものを調べていた。

 

 

"おいしいバレンタインチョコの作り方"

 

 

"男子が喜ぶ!素敵なバレンタインチョコレシピ!"

 

 

きっかけは1月の終わり頃だった。珍しく千春と二人で下校したディレットは彼女から迫るバレンタインデーの話を聞いたのだ。

 

「バレンタインデー?」

 

「そ。男子が沸き上がるめんどくさいイベントよ。そう簡単に本命チョコなんて貰えたら誰も苦労しないのに……男ってほんと馬鹿な生き物よね。そういやこないだ同じクラスの木村ってヤツが……」

 

やれやれ、と肩を竦めながら愚痴を溢す千春の傍らでディレットはバレンタインデーの詳細をスマホで調べている。

一般的に日本でいうところのバレンタインデーとは2月14日に女性が男性に対してチョコレートを贈ると共に想い人に愛を告げる……というのが通例である。その一方で友達や仕事仲間にあくまでも友好的な意味合いでのチョコを贈る義理チョコなるものもあるとディレットは知った。

その中でもやはり男性が喜ぶとされるのは女性が手作りしたチョコレート。いくら高級なものでも既製品ではなく、一から自分のために手間暇かけてつくってくれたとなれば男性の好感度もうなぎ登りというものだ。

 

「……ディレット?聞いてる?」

 

「…………えっ?あっ、ごめん、聞いてなかった」

 

「はあ……どうせあれでしょ?斎藤に贈るチョコのためにバレンタインのことでも調べてたんでしょ?」

 

「うっ……」

 

図星である。未だ打ち明けられない龍馬への想い。このバレンタインデーをきっかけに勇気を出してチョコと共に龍馬への想いを告げよう。そう内心思っていたのだ。

一度こちらへ旅行にやってきた母の「悔いのない選択をしなさい」という言葉。あれから随分悩んだものだ。だが"きっかけ"がなくなかなか言い出せずにいたディレットは呆れる千春をよそにこの機を逃すまいとチョコレートのレシピを調べた。

 

「仕方ないわね……ディレット、あとでお菓子作りのサイトのURL教えといてあげる。ユアチューブの動画も載ってるから分かりやすいはずよ」

 

「ほんと!?チハル、ありがとう!チョコが出来たらチハルにもあげるね!」

 

「はいはい、期待して待ってるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから龍馬が外出中に練習のため自宅で色々とレシピを試した。だが独学ではなかなか満足にチョコを作れない。しかも頼みの綱である涼子ですらお菓子作りは専門外であるらしく、ある程度大雑把でも出来上がる料理に比べて繊細さ、手際の良さが何より求められるお菓子作りはあまり得意ではないらしい。焦がしてしまったチョコは数知れず、だ。

2月に入り、バレンタインが近づくが満足のいくチョコは未だに作れない。そんな彼女がふくまるでバイト終わりにため息をついたことから再び話は動き出す。

 

「ディレットちゃん、どしたの?」

 

「ん?いや、実はね……」

 

元気のないディレットに話し掛けてきたのは後片付けを共にやっていたレナだ。そういえばおばちゃんに並んでレナも料理が得意だったはず。しかも現ヴィヴェルタニア国王であるアティウスをも唸らせるプリンを作るなど、お菓子作りにも長けていたはずだ。

 

「なるほど……龍馬君に贈るチョコ作りね。ふむふむ、そういうことならこの私に任せなさい!」

 

「ほんとに!?」

 

「うん!泥船に乗ったつもりで安心していいよ!」

 

ドン、と自分の胸を叩くレナ。泥船というところは突っ込むべきなのだろうかと悩んだディレットだが敢えてスルーした。バレンタインまであと二週間弱。果たしてチョコは間に合うのか。

翌日からディレットはバイトがある日もない日もふくまるに通い詰め、レナからチョコ作りを教わった。「愛情は入ってる」という言い訳はダメだ。食べ物を贈る以上は味も美味くなくては。そんなディレットにおばちゃんは快く厨房を貸してくれた。

バイトがある日はいつもより帰りが遅くなったが涼子もディレットの事情を察してか何も言わなかった。龍馬は多少怪しんでいたが。

 

 

 

そして……

 

 

「で、できた……!」

 

2月14日。バレンタイン当日。この日、バイトを終えたディレットは遂にチョコを完成させた。

ハート型に作り上げたチョコ。それにカラフルなトッピング。最高の味になるようにレナと何度も試作と味見を繰り返してようやくここまで辿り着いた。

 

「ふふ。おめでとう、ディレット。きっと龍馬も喜んでくれるよ」

 

「へへ……そうかな」

 

最大限の努力と愛情を詰め込んだチョコ。味も問題ないはず。あとはこれを丁寧にラッピングするだけだ。

レナがあらかじめ買っておいたラッピング用素材からいくつかを選び、丁寧にラッピングする。ディレットはそれをカバンにしまうと着替えてレナに礼を言った。

 

「レナ、ありがとう!おかげで助かったよ」

 

「いいって、いいって。さ、早く帰って龍馬に渡してあげなよ。どうせお母さん以外にチョコ貰えてなくて悔しがってるだろうから」

 

「ふふ、そうだね」

 

時計を見ると既に夜22時を回っている。だいぶ遅くなってしまった。早く帰らねば。

 

「もう遅いし、送ろうか?」

 

「大丈夫、大丈夫。お店の戸締まりして早く帰ろうよ」

 

「そう?じゃあ、気を付けてね。あ、戸締まりは私が一人でやるから早く帰んなよ。愛しのダーリンに早くチョコ渡さなきゃでしょ?」

 

「もう……レナったら……」

 

「ははは。じゃ、また明日ね」

 

レナはそう言って店から出ていくディレットを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━今思えば、あの時無理にでも送っていけば━━━━"あんな悲劇"は起こらなかったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く帰らなきゃ……遅くなっちゃった」

 

ディレットはスマホの時計を見ながら横断歩道へと走る。丁度青信号だ。急ごう。

と、彼女が急いで渡ろうとすると信号が点滅し始めた。ディレットは走る速度を早めた。

 

 

と、その時。

 

 

クラクションの音が大きく鳴り響き━━━━彼女をライトが大きく照らしたかと思うと━━━━、

 

 

 

 

ドン、という音と共に彼女の身体が宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人がはねられたぞー!!」

 

 

「轢き逃げだー!!」

 

 

「だ、誰か救急車を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルルルル……

 

 

 

「はい、もしもし。斎藤です……何ですって!?……み、みんな大変やが!!ディレットちゃんが……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察からの知らせにより、斎藤一家は病院へと慌てて駆け付けた。

彼等がそこで目にしたのは人工呼吸機を付けられ、出血した頭や身体に包帯を巻かれた痛々しい姿のディレットだった。ピッ、ピッという心電図モニターの音がやけに重く、病室に響き渡る。龍馬はそんな彼女のベッドにしがみつくように近づくと必死に名前を呼び掛ける。

 

「お、おい……嘘だろディレット……頼む……返事してくれ……俺だ、龍馬だよ……」

 

しかし彼女から返事はない。目を閉じたまま、意識は回復しないままだ。

傍らにいた医師から龍一郎と涼子は話を聞く。

 

「先生、うちのディレットは……!」

 

「"娘"はどうなんですか!?」

 

「……一先ず、一命は取り止めました。しかしそれでもまだ予断を許さない状況です。それに回復したとしても意識が戻るとは限りません。はねられた際に頭を強く打っていて……下手をすればこのまま植物人間、ということも有り得るでしょう」

 

「そんな……!」

 

涼子は大切な"娘"を前にして泣き崩れた。どんなことがあろうともいつも強かったあの母が。そしてそれは皆同じだった。

 

「ディレット……!」

 

「なんでこんな……」

 

「どうして……どうして彼女が……!」

 

ルビィはディレットのベッドにすがりついて泣き出し、ルミナとアヤもその場ですすり泣いている。

 

「……私はしばらく外します。皆様、ディレットさんのそばにいてあげてください。何かあればすぐにナースコールを」

 

医師はいたたまれぬ表情でそう告げると病室を後にした。

 

 

龍馬は……ディレットの手を握り締めたままずっと泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、龍馬は学校を休んだ。とても授業を受けられる気分ではない。バイト先の酒屋にも電話すると店長が気を使って「落ち着くまではじっとしてろ。バイトは気にするな」と言ってくれた。

龍馬はベッドに腰掛けたまま、ディレットの割れたスマホと……カバンの中にあった半分潰れたチョコレートの箱を見つめていた。

 

「あいつ……俺のためにわざわざこんなことを……馬鹿野郎……」

 

本来ならディレット本人から渡されるはずだったチョコレート。それは中身が砕け、せっかくの彩り豊かなトッピングも台無しになっていた。龍馬は割れたチョコの欠片をつまむと一口食べる。

 

「うまい……」

 

無惨な姿にはなってしまったが、甘さと苦さのバランスがとても良く、彼女の努力が窺える。チョコレートの箱には一緒にカードが入れられていてディレットのメッセージが一言添えられてあった。

 

 

 

「"ハッピーバレンタイン。龍馬へ"」

 

 

 

 

丁寧な日本語で書かれたメッセージカードを見て再び龍馬の目から涙がこぼれ落ちる。そして龍馬はチョコレートの箱とディレットの割れたスマホを机の引き出しにしまうと壁を思い切り殴り付けた。

 

「許さねえ……許さねえ許さねえ許さねえ……!!!!絶対に犯人を見つけ出して……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチ殺してやる……!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怒りに震える龍馬、否、"怒龍"の姿がそこにはあった。決して許してなるものか。たとえ一人でも必ず犯人を見つけ出してこの手で地獄へ送ってやる。彼はそう決意したのであった。

龍馬は着替えるとディレットの事故現場である天神の交差点へと向かった。交通量は多く、人の往来も多いこの場所で彼女は信号無視をしてきた車に轢き逃げされたのだ。

昨晩、事故現場を捜査した刑事と警官から事情聴取を受けた際に二つだけ明らかになったことがある。

まずディレットをはねたのは目撃者の証言から黒いセダンの車であること。ナンバーが"北九州ナンバー"であったことだ。流石にナンバーの数字までは教えてくれなかったが、これだけでも手がかりにはなる。龍馬は駅前で独自に聞き込みをして更なる手がかりを探す。しかし……

 

「クソ……ダメか……」

 

有力な目撃情報は見つからなかった。夜まで粘ってみたものの、やはりこれといった収穫はなし。諦めて帰ろうとした矢先、ふいに後ろから肩を叩かれた。龍馬は素早く振り向いて拳を構える。

 

「よっ」

 

「……なんだ、お前かよ。びっくりさせやがって」

 

そこにいたのは紛れもなく勇斗だ。どうやったらこんなでかい図体でここまで忍び寄れるステルス性能を発揮できるのだろうか。それとも自分の注意力が散漫なだけか。

 

「まあ、ここじゃあなんだ。場所変えようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディレットのことは……その……気の毒だったな」

 

近くのカフェに入った二人。勇斗はコーヒーのカップに目を落としながらそう言った。いつも通りに接しようとしてきたが流石の勇斗もショックを受けているようだ。

勇斗がディレットの事故を聞いたのは今朝のことだ。一瞬自分が夢を見ているのだと疑ったが紛れもない現実だった。龍馬を励まそうと自宅に向かったが家を飛び出してから帰ってこないと涼子に聞いたのでここまでやってきた次第である。

 

「一応、須崎と一緒にディレットの見舞いには行ったんだがよ……面会謝絶だったからな……引き返してきた。あいつもかなりショック受けてたよ」

 

「そうか……悪いな、気を使わせて」

 

「何言ってんだよ。お前らしくもない。ところで……お前やっぱり犯人探してんのか?」

 

「当たり前だ。ディレットは大事な家族なんだ。それをはねただけじゃなく、そのままトンズラこきやがったんだ。絶対に許さねえ。地の果てまでも追い掛けて捕まえてやる」

 

「なるほどなあ。だけどこんだけ人の往来も多いんだ。聞き込みだけじゃあろくな情報は集まらんだろ」

 

「う……」

 

図星である。実際これだけ時間を費やしたというのに何の手がかりも得られていない。担当の刑事に犯人の車の情報を求めてはみたがやはり一定以上の捜査情報の開示は出来ないと断られた。

 

「じゃあお前はなんかアテがあるのか?」

 

「ああ。歩行者が駄目なら"運転手"さ」

 

「……は?なんだ?あの道通る車捕まえて検問みたいなことしろってか?」

 

「馬鹿!そうじゃねぇよ!……あそこは駅前だ。となれば、長く"待機"している車があるだろ?」

 

「……まさか……タクシー!?」

 

「大正解」

 

勇斗の意見はこうだ。駅前とその周辺なら駅からの客目当てのタクシーが多い。もしかしたらタクシーの運転手が事故を目撃しているかもしれない。幸いにも事故現場の周辺はいつもタクシーが停まっていることがほとんどだ。二人はスマホで辺りのタクシー会社を調べると電話番号を記録し、片っ端から会社に電話をかける。勇斗の機転で「警察の捜査が難航していて独自に情報提供を呼び掛けている」と言えば会社はあっさり答えてくれた。そして遂に……

 

 

 

 

「昨日の事故の目撃者、ですか……社員に確認してみますので少々お待ちくだ…………え?土井さんが見た?…………すみませんお客様、どうやら今社内で待機している社員が目撃したと……」

 

 

 

勇斗はビンゴだ、と拳を握った。会社の名前は博多交通タクシー会社。会社はどうやら薬院にあるらしい。龍馬と勇斗は今から直接向かうと伝えてすぐにタクシー会社に向かう。

会社の敷地に入るとタクシーを洗車している初老の男性がいたので声をかける。すると……

 

「ああ。君達がさっきの電話の方かい?土井は私だよ」

 

運よく目撃者である土井という男性だった。二人は昨晩の事故について話を聞いてみる。

 

「あれは現場の手前で客を拾おうと待機している時だったねぇ。時間は夜の10時過ぎごろだったかな。青信号を渡っている人の中に高校の制服を着たエルフのお嬢さんがいたんだ。髪の色は金髪だったね」

 

間違いない。ディレットのことだ。二人はさらに土井から情報を聞く。

 

「異界人も最近は珍しくないし、私も特別気にしてなかったんだけどね。その時に後ろから凄いエンジン音が聞こえてさ。黒のセダンが信号無視してお嬢さんをはねたんだ」

 

さすがにその光景には焦りを覚えた土井だが通行人達が応急措置や警察・救急への連絡をやっていたため、あとは一部始終をタクシーの中から見ていたという。

 

「そ、そのセダンのナンバーは覚えていますか!?」

 

「うん。昔から記憶力には自身があってね。現場は明るかったししっかり覚えているよ。"北九州660、ふ58-47"だった。間違いないよ。車種は日産のシーマだった」

 

これはかなり有力な情報だ。ナンバーの詳細だけでなく車種まではっきりと土井は覚えていた。龍馬達にとってはかなりの大収穫になる。

 

「土井さん、ありがとうございました。おかげで助かりました」

 

龍馬は深く頭を下げた。有力な情報はこれくらいだろうか。これ以上はもう無さそうだ。二人は土井に礼を言って帰ろうとする。

 

「いえいえ。いいんだよ。早く犯人、捕まるといいね。それにしても最近はまた物騒になってきたな……またヤクザの抗争が近辺で激化してるみたいだしさ。昨日も近くで発砲事件があったから君達も気を付けなよ」

 

「え?」

 

「また薬院で発砲事件が起こってね。警察はヤクザ同士の抗争だろうって。ただ、昔もこんなことあっただろ?しまいには街で中国人が暴れたりして……」

 

龍馬の脳裏に去年の夏の事件が蘇る。リオングループの日本進出、黒狼会傘下の組織と神鳥会の関与、博多での中国人達の暴動……。

 

「君達学生さんだよね。危なそうなことには首を突っ込んじゃいけないよ。何かあったら警察に任せた方がいい。自分を大事にしないとね」

 

「肝に命じておきます。土井さん、本日はお忙しい中ありがとうございました」

 

「少しでも役に立てたなら嬉しいよ。それじゃあ気を付けて帰ってね」

 

そう言って洗車作業に戻る土井。二人は再び土井に礼を言ってタクシー会社を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍馬、どう思う?」

 

「……土井さんが最後に言っていたこと……気になるな」

 

二人は道を歩きながら今得た情報をまとめる。土井の目撃証言。そしてその後に土井が語った発砲事件と今回のディレットの轢き逃げ事故の因果関係。完全にないとは言い切れない。龍馬の勘がそう告げているのだ。

 

「土井さんが待機していて後ろから例のセダンが暴走してきた……そしてその少し前に薬院で発砲事件が起きている……龍馬、こいつはただの偶然だと思うか?」

 

「セダンがやってきた方角と発砲事件の方角は概ね一致……そしてその方角には……黒狼会の本部や事務所が多数……」

 

偶然にしてはあまりにも関連性があると疑わざるを得ない要素が多すぎる。とはいえ、現在の情報だけでは憶測でしか語れない。

 

「……こうなったら直接聞いてみるしかねぇな」

 

「直接?誰にだよ?」

 

「決まってるだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒狼会の会長……黒谷仁にだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日━━━━黒狼会・本部前。大きく構えた正門前に龍馬と勇斗は立っていた。

 

「……なあ、龍馬。本当に行くのか?」

 

「昨日会長には連絡した。それに以前はここにカチコミかけたんだ。ただの訪問くらいどうってことないさ」

 

インターホンを鳴らし「斎藤龍馬だ」と名乗ると「少々お待ちを」との声ののち、門が開けられる。前には黒いサングラスをかけた黒いスーツの男が立っていて龍馬達に頭を下げた。

 

「斎藤龍馬様に城島勇斗様ですね。会長からお話は聞いております。ご案内しますのでどうぞこちらへ」

 

龍馬は臆する事なく男についていく。その後ろから勇斗はキョロキョロと辺りを見回しながら龍馬に続いた。

豪華な装飾が彩られた黒狼会本部の内部では様々なヤクザの組員達が龍馬達をジロジロと睨んでいる。明らかに緊張感が漂っているのがわかる。

 

「先刻の銃撃事件で組員は皆気が立ってるんです。どうかご理解を」

 

「手出して来るわけじゃないならこっちも気にしないよ」

 

案内人の組員の言葉に龍馬はそう答えた。さらに龍馬達は歩を進める。そしてある部屋の前で立ち止まると案内人はドアをノックした。

 

「会長、お連れしました」

 

「通せ」

 

部屋の中からは聞き覚えのある声が聞こえてくる。案内人がドアを開けると黒狼会会長……黒谷仁その人が既にソファに腰掛けて煙草を吸っていた。

 

「会長さん、どうも」

 

「よう、龍馬。久々だな。コミックシティ以来か?」

 

前回11月のコミックシティを最後に仁とは会っていない。あの時は黒狼会会長ではなく"ただの同人作家"としての彼だったが。

 

「え?黒狼会の会長さんがコミックシティって……え?」

 

勇斗は驚きを隠せない。それもそのはず、勇斗は彼の"もうひとつの顔"を知らない。知っているのは龍馬だけだ。そして遂に勇斗に彼の正体が明かされる。

 

「龍馬のダチの城島勇斗だな。こうして会長として会うのは初めてまして、だよな。よろしく、"ジョナさん"。俺が"黒うるふ"だよ」

 

 

 

 

「え……えええええ!?!?!?」

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