アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第132話 御堂誠公会

「嘘だろ!?黒うるふ先生の正体が……黒狼会会長……!?」

 

「本当は内緒にしときたかったんだがな」

 

黒狼会会長・黒谷仁のもうひとつの顔を知り、それが自分の好きな同人作家であったことに驚きと戸惑いを隠せない勇斗。そしてようやく"要求されたもの"の意味を知ることになる。

 

「んじゃ、取引のブツをいただこうか」

 

「なんかおかしいなとは思ったけど、こういうことだったのか……」

 

実はここに来る前、龍馬から勇斗は「あるものを持ってきてほしい」と頼まれていた。それは自分にとっては身近なある"もの"だ。勇斗は背負っていたリュックを下ろすと中から数冊の同人誌を取り出した。それは今まで勇斗が描いた同人誌、リリィが描いた画集、そして二人が合同で作った同人誌だった。

 

「おう、これだよこれ。ジョナ先生の同人誌にツバキ先生の画集……二人が合同で作った同人誌……よし、とりあえずこれがお代だ」

 

そう言って仁は財布から札束を取り出した。いや待て、金額がおかしい━━━━龍馬と勇斗はざっと見ただけでも30万はありそうな分厚さに度肝を抜かれた。

 

「ちょ、ちょ、ちょ、いくらなんでも多すぎでしょ会長さん!こんなに貰えないって!」

 

「そ、そうだよ!それに俺が電話した時は情報と交換って話だったじゃんか!」

 

「それはそれ、これはこれ、だぜ。技術に対価を払うのは当然だよなぁ?それにこの金はこれから動くことになるお前らの手間賃でもある。二人で山分けして取っとけ。きっと金が必要になるからな」

 

仁は半ば無理矢理に札束を勇斗に押し付けるとデスクの引き出しに満足げな顔で勇斗の渡した同人誌をしまい込んだ。

仁はヤクザではあるが隠れオタクでもある。オタクの好きなものに対する金のかけようはかなりのものだとこの業界では当たり前の話ではあるし、勇斗は自分にそう言い聞かせて札束をしまった。

 

「さて、取引も済んだところで本題に入ろうか。お前らが欲しがっている情報だが、確か龍馬んとこのエルフの嬢ちゃんがひき逃げされたって話だったな?そしてその車の主を知りたいと……」

 

「ああ、そうだ。俺はそいつを何としても捕まえたい。事件の直前に薬院で発砲事件が起きてる。何か心当たりは?」

 

仁はソファに座って煙草に火を付け一服すると、龍馬の問いに答えた。

 

「ある。おそらく俺達が追ってるやつと同じだ」

 

「く、詳しく聞かせてくれ!」

 

まあ落ち着け、と仁は身を乗り出す龍馬に対し、再び煙草をくわえながら"情報"を話し始めた。

 

「……昨日の夜、うちの傘下の事務所が襲撃された。組長は無事だったがそばにいた若頭補佐が殺られた。おそらく鉄砲玉の仕業だ。組員の目撃情報によればそいつは北九州ナンバーの黒のセダンで逃走したらしい」

 

「……そのセダンのナンバーはもしかして"日産のシーマ、ふ58-47"じゃねぇか?」

 

「詳しいな。うちの組員は下2ケタの47だけ覚えてた。まず間違いないだろう」

 

龍馬は膝の上で拳を握り締めた。やはり睨んだ通りだ。犯人に繋がる第一歩だ。しかしこの一歩は大きい。龍馬はさらに仁から情報を聞き出す。

 

「恐らくうちの傘下の組にカチコミかけてお前んとこのエルフの嬢ちゃんひき逃げした犯人は……恐らく"御堂誠公会(みどうせいこうかい)"の鉄砲玉だ」

 

「御堂……誠公会?」

 

「龍馬、俺何度かニュースで聞いたことあるぞ。確か……」

 

御堂誠公会。北九州・小倉に本部を置き、福岡の暴力団でも屈指の過激武闘派組織でありヤクザ同士の抗争はおろか、無関係の一般市民ですら躊躇なく殺害する相当に恐ろしい組織だ。龍馬は初めて聞いたが勇斗は名前だけニュースで聞いた記憶があるようだ。

 

「去年の秋頃から奴等の動きが急に怪しくなってきてな。丁度コミックシティの後くらいに実はうちのシマを荒らしにきた御堂誠公会の連中を返り討ちにしたんだ。その時は小競り合い程度の話だったんだが……」

 

仁によれば以前から御堂誠公会の動きは察知していたらしい。だがこれといって大きな動きはなく精々末端の組織であろう組員が黒狼会の縄張りでちょっとしたトラブルを起こす程度だった。

事を大きくしては奴等に付け入る隙を与えると仁も軽く返り討ちにする程度で深追いはしなかった。大規模の抗争になればどちらも甚大な被害を被ることは目に見えているからだ。

だが今回はどうだ。突如として襲撃を受け、死人が出た。今まで大した手出しをしなかった御堂誠公会がだ。

極道であれば直ちに報復を行うのが常というものだ。実際組員達もかなり気が立っている。しかし仁は慎重だった。

 

「俺の勘に過ぎないが……この事件、何か裏があるような気がしてならない。御堂誠公会の動きがどうもただの襲撃には思えん。しかし俺らが迂闊に動いたり"返し"を仕掛ければ大事になりかねん。そこでお前らだ」

 

仁はほとんど減った煙草を灰皿に押し付けて両手を組み、龍馬達に"作戦"の全貌を話す。

 

「龍馬、幸い俺とお前は利害が一致している。お前は勇斗と一緒に小倉に乗り込んで奴等の動きを探ってほしい。犯人を追えば奴等の行動も見えてくるかもしれないからな。この行動には危険が伴う。さっきの金が手間賃も含まれてるって言ったのはそういうことだ。ああ、心配しなくていい。もらうもんはもらったし、仮に何の情報も得られなくてもお前らを責めたりはしねえよ……どうだ?行ってくれるか?」

 

どうだ、ではない。そんなもの、答えは決まっている。

 

「当たり前だ。俺は必ず犯人を捕まえてやると決めたんだ」

 

「これで正式に交渉は成立、だな。俺らの方でもわかったことがあれば知らせてやる」

 

ヤクザの諜報役になるというのは若干腑に落ちない点もあるが、今は手段を選んでいられる場合ではない。仁と手を組めば個人で動くよりも情報が得やすいだろうし、何より後ろ楯となる。仁にとっては自分達で動かずに情報収集ができる。win-winというやつだ。

黒狼会本部を出た龍馬と勇斗は翌日に備えて早めに帰宅する。勇斗も適当な理由でずる休みをしてまで龍馬に付き合うと言ってくれたので明日は二人で小倉を探索することになる。

 

 

 

 

 

 

その夜、龍馬は部屋の中でベッドに腰掛けたままディレットの事を想う。部屋の静寂の中で彼女の無事だけをひたすらに願い、バレンタインチョコに入っていたメッセージカードを見つめながら。

 

「必ず犯人を見つけてやる……ディレット、お前も頑張ってくれ……」

 

果たして龍馬の想いは届くのか、今はまだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、龍馬と勇斗は電車を降りて小倉駅前へとやってきた。人通りは多いものの、さすがに昼間とあってか学生や通勤途中らしき人間はあまり見受けられない。

 

「着いたな……さて、龍馬。会長さんの話じゃ"青薔薇"って店を探せって……」

 

「ああ。場所は堺町にあるらしい」

 

出発する前、彼等二人は仁から情報収集の拠点として"とある店"の情報をもらっていた。その店は小倉の繁華街である堺町の一角にあり、"青薔薇"という店だ。何でも仁が若い頃にお世話になったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

『小倉に着いたら"青薔薇"ってスナックを訪ねろ。そこのママは昔から店をやっていて小倉の裏情報にも詳しい。俺からは連絡を入れておく』

 

 

 

 

 

 

 

 

仁のその言葉を思い出しつつ、二人は堺町の一角へと向かう。昔からの古き良き店からキャバクラまで大人の店が建ち並ぶ繁華街。しかし今は昼間なため本来の顔はなりを潜めている。

 

「っと、あったあった。勇斗、ここだ」

 

「おう」

 

スナック"青薔薇"。店先の小さな看板には店名通りの青い薔薇が描かれており、すぐにわかった。龍馬は店のドアをノックしてみる。

 

「すみません、仁さんの紹介で来た者です。誰かいませんか?」

 

本来ならばスナックが開いている時間帯ではない。だが仁は連絡を入れておくから気にするなと言っていた。しばらくの静寂ののち、店内から足音が聞こえ、ガチャリと鍵の開く音が聞こえる。ドアが開けられ、その先には仕事着であろうドレスを着た中年の女性が立っていた。

 

「あ、あの……」

 

「話は仁ちゃんから聞いてるよ。とりあえず中に入りなさい。お茶くらい出すから」

 

女性の後に続いて龍馬と勇斗は店内に入る。生まれてこのかた、スナックに入ることなど初めての経験だ。店内は落ち着いた内装でオレンジ色の照明がシックな雰囲気をより醸し出している。

 

「コーヒーでいいかい?」

 

「あ、はい……」

 

「大丈夫です」

 

龍馬達がカウンターに座ると女性はお湯を沸かし始めた。静寂の中でお湯がコポコポと沸く音だけが聞こえてくる。しばらくして二人の前にカップに入ったコーヒーが差し出された。

 

「ミルクと砂糖はいるかい?」

 

「大丈夫です」

 

「俺もブラックで」

 

「へえ、大人だねえ」

 

女性はクスっと笑うとカウンターの後ろにあった煙草とライターを手にして火をつけた。どこか仕草が母の涼子に似ているような気がするのは気のせいであろうか。そういえば吸っている煙草の銘柄も母と同じであることに龍馬は気が付いた。女性は軽く一服して煙を吐き出した後に再び煙草を吸いながら話し始める。

 

「自己紹介が遅れたね。あたしはこの青薔薇のママやってる朱美(あけみ)ってんだ。君達が仁ちゃんの紹介の学生さん?」

 

「はい。斎藤龍馬といいます。こっちはクラスメイトで俺の友人の城島勇斗」

 

「城島です、よろしく」

 

「ふうん、若いねえ。仁ちゃんも何でこんな若い子達に危険なことやらせてんだか……まあいいさ。君達二人は御堂誠公会の情報を知りたいんだったね?」

 

朱美は煙草を灰皿に押し付けると二本目に火を付ける。よく見ると既に吸われた吸い殻が十本近く灰皿の上に転がっている。龍馬達が来る前から吸っていたのか、結構な愛煙家のようだ。

 

「ひとつ忠告しておくよ。御堂誠公会はその辺のヤクザとは訳が違う。殺しのために目的を作るような連中だよ。女子供だって容赦しない。そんな危険な連中と本当にやり合うつもりなのかい?」

 

朱美は煙草を吸いながら目を細めて龍馬を見る。だがそんなことを言われても龍馬の決意に揺らぎはない。

 

「危険なのは承知です。だけどあいつらのせいでうちの家族が……今も生死の境をさ迷っているんです……!俺は奴等を絶対に許さねぇ……!地獄の果てまでも追い詰めて犯人を見つけ出してやると決めたんです……!」

 

「龍馬の度胸と実力なら俺が保証します。なんてったってこいつ去年、黒狼会の裏切者やら中国マフィアの神鳥会とやり合って勝ったんですから」

 

「へえ、実力は折り紙つきってわけだね。あの神鳥会と……それでよく生きてたね」

 

「仲間達のおかげですよ。俺一人じゃどうにもならなかった」

 

龍馬の脳裏に去年の事件が甦る。リオングループの日本進出と裏で暗躍するチャイニーズ・マフィアの神鳥会と黒狼会直系組織の神鳥会との内通。あの事件で龍馬は裏社会の人間達と戦い、そして死闘を制した。今さら引き下がるつもりなど毛頭ない。

 

「……わかったよ。じゃあ先にこれ、はい」

 

「?これは……」

 

朱美から渡されたのは鍵だ。見る限りどこかの部屋の。

 

「店の上に空き部屋があるんだ。昔は住み込みのバイトの子とかの下宿先として使ってたんだけどね。もし泊まり掛けなら場所が必要だろ?そこを好きに使っていいからさ」

 

「朱美さん……」

 

龍馬は鍵をキーホルダーにつけるとそれをポケットにしまう。

 

「んじゃ、本題に入ろうか。御堂誠公会の情報についてだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御堂誠公会。北九州・小倉に本部を置き、福岡の暴力団の中でも一番危険な組織だとされている。外部・内部問わず抗争が昔から非常に多く、一般市民が抗争に巻き込まれて亡くなった例も少なくはない。

今から四年前に他組織との大規模抗争が原因で多くの民間人や建物が巻き込まれ、警察にも殉職者が出たことから警察による徹底した排除が行われ、当時の三代目会長であった大谷次郎(おおたにじろう)が逮捕され、組織は弱体化した。

四代目会長には次期会長候補の一人であった御堂誠公会直系・藤嶋一家組長である藤嶋繁雄(ふじしましげお)が就任した。それからしばらくは御堂誠公会は大きな動きを見せなかったが、遂にその時は訪れた。一昨日の黒狼会直系組織の銃撃事件である。

いきなり直系組織の構成員に死者が出たとあって黒狼会は一触即発の状態だ。冷静な判断力を持つ会長の仁と言えど、爆発寸前の構成員達をいつまで抑えつけておけるかは怪しい。

 

「……そこで君達が、ねぇ……」

 

「あくまで俺達は同居人のエルフを轢いた犯人を探しているだけです。黒狼会と御堂誠公会の勢力争いなんかは興味ない。黒谷会長への情報提供はついでです」

 

「なるほどね。犯人さえ捕まれば君達は満足、と」

 

朱美は再び煙草を灰皿に押し付けると腕を組んで目を細めて龍馬を見る。

 

「犯人自体は仁ちゃんの予想通り、ただの鉄砲玉に過ぎないかもしれない。だけど御堂誠公会を相手にする以上、下手をすれば幹部クラスの連中だってやってくるよ。さっきも言った通り奴等は本当に恐ろしい連中だ。それでも奴等と戦うのかい?」

 

「なんと言われようと俺の意志は揺らぎません。俺等だって日本や異界で命賭けて戦ってきたんだ。それに俺達にしかない"武器"だってあるしな。な、勇斗」

 

「おうよ。ヤクザが相手だって負けやしないさ」

 

龍馬のルナ・アームに勇斗のハイドラ。どちらも異界の神によって鍛えられた絶大な力を持つ武器だ。これならば相手が(ドス)を持とうが拳銃(ハジキ)を持とうが関係ない。

 

「ふうん、そこまで自信があるなら……そうだね。まあ後悔しないように頑張りな。じゃあ犯人に関する情報だね。断言はできないけど……博多で銃撃事件があった日の二日前に不穏な動きがあったんだ。御堂誠公会傘下の二次団体組織……田嶋組ってんだけどね。そこの事務所に何らかの組員が出入りしていたって情報がある。おそらく幹部クラスのね」

 

朱美によれば幹部らしき組員がいくつかの護衛の組員を連れて二次団体の田嶋組という組の事務所に出入りしているのを朱美の"知人"が見かけたらしい。そしてその二日後に事件は起きた。これは何かの関連性があると思わざるを得ない。

そうでなければ御堂誠公会の幹部ともあろう者がわざわざ二次団体の弱小組織の事務所に出入りするなど考えがたい。

 

「田嶋組は中島の方にあるよ。"田嶋興業"って事務所がそう。ま、どうやって情報を奴等から聞き出すか知らないけどね……気を付けるんだよ」

 

「大丈夫です。ママさん、情報ありがとうございました。コーヒー美味しかったです」

 

「ご馳走さまでした」

 

龍馬と勇斗は飲み干したコーヒーの礼を言ってカウンターから立ち上がる。店を出る二人を朱美は煙草を吸いながら無言で見送った。

 

 

 

 

 

「あんな若い子達がねぇ……仁ちゃんの頼みだから仕方ないとはいえ……明日には海に沈められてなきゃいいけど……」

 

 

 

 

煙草の煙をくゆらせながら朱美はぽつりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堺町の西側に位置する小倉北区中島。このエリアにあるという田嶋組の事務所を探し、龍馬と勇斗は歩き回る。

やはり一応は会社組織であるためか事務所のビルは簡単に見つかった。どうやら三階建てのビル全体が田嶋組の根城のようだ。二人は少し離れたとこから様子を伺う。

 

「龍馬、あれ見てみろ」

 

勇斗が顎で指した先にはテンプレのチンピラのような派手なシャツを着込んだ組員らしき男達が出入りしている。どう見てもカタギではない。

 

「んで?どうするんだ?」

 

「……決まってんだろ」

 

落ち着いているように見えるが龍馬はもう限界寸前だ。爆発しそうになる怒りの炎が彼の心の奥底でメラメラと燃えている。

 

「……正面突破だ!!」

 

「……だよなぁ!!」

 

もはや小細工など必要ない、片っ端から潰してやると言わんばかりに二人はビルの入口に近づくと入口のガラス戸を蹴飛ばして中に押し入る。

 

「な、なんじゃあ!?」

 

「んだ、テメーらは!?」

 

「何モンじゃわりゃあ!!」

 

組員達は驚きながらも怒号を飛ばした。いきなり少年達二人が鬼のような形相で乗り込んできたのだ。しかしそこは腐っても極道、各々が構えたり木刀やバットで武装して立ちはだかる。

 

「ギャーギャーうるせえ!!お前らんとこ組長出せ!!出さねえなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員、ブッ殺してやる!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍馬は最初から手加減などしないと言わんばかりに即座にルナ・アームを装着した。その両手からは彼の怒りを体現するようにバレンの獄炎が燃え上がる。勇斗もニヤリと笑うとハイドラを手に出現させ、盾から棍の形態に変化させた。

 

「な、なんじゃありゃあ……!?」

 

「ええい、お前ら何をビビっとる!あんなもん見かけ倒しじゃ!ガキ二人にヤクザがナメられてどうする!ブチ殺したれや!!」

 

組員達は怒号を上げながら武器を手に襲い掛かる。龍馬と勇斗も構えて彼等に突っ込んでいく。

 

「死ね!!」

 

「やかましい雑魚が!!」

 

龍馬は振り下ろされたバットをガードするとその燃え盛る獄炎の拳を目の前の男の顔面にすかさずカウンターで叩き込んだ。車が激突したような衝撃で顔の骨が砕け、バレンの獄炎によって顔に火傷を負い、もがき苦しむ組員の男。

異界の力であろう武器と能力に一瞬怯む組員達だがそれでも己の縄張りを荒らされまいと龍馬達に襲いかかる。

 

「どこ見てんだぁ!」

 

勇斗は見事な棒術でハイドラを振り回すと目にも止まらぬ早さで棍の両端を素早く二連続で打ち付けてダウンを取る。その瞬間、ハイドラを鞭の形態へと変化させて離れた位置にいる組員に巻き付けて拘束し引き寄せると、自慢の腕力で男の顔面を思い切り壁に叩きつける。

 

「邪魔だ!!」

 

「ぎゃあっ!」

 

龍馬の飛び蹴りが近くにいた一人を地面になぎ倒し、さらにはそのまま拳の追撃を顔面に加える。

 

「どけ!雑魚に用はねえ!!」

 

龍馬は拳の連打を、勇斗はハイドラの棒術によって敵を次々になぎ倒していく。一階の敵をあらかた倒し終えると二人は階段で二階へと向かった。

曲がり角で不意打ちしてきた組員がいたがこんなものは予想の範疇だ。龍馬は刀を持った男の攻撃をルナ・アームで防御して獄炎の拳を叩き込む。と、その時だ。

 

「死ねやぁ!!」

 

通路奥の離れた場所から組員が叫びながら飛び出してくる。その手に握られているのは拳銃。この距離ではバレンの獄炎も間に合わない。その瞬間勇斗が龍馬の前に出た。

 

「龍馬!!俺の後ろに隠れろ!!」

 

組員が発砲するより先に勇斗がハイドラを変形させ、巨大なライオットシールドで姿をすっぽりと二人を隠す。銃声が何度も響き渡り、銃弾がシールドに直撃する衝撃が響くが、シールドはびくともしない。

 

「く、クソッ!」

 

組員の銃撃が途絶えた。弾切れだ。龍馬は組員が再装填を行っている間にバレンの獄炎から属性エンチャントを切り替える。

 

「来い!ルフローラ!」

 

ルフローラの疾風が龍馬のルナ・アームを包み、彼を風のような速さに加速させる。龍馬は一瞬で距離を詰めると銃を持った組員の腕を掴んで捻り上げ、顔面に拳の一撃をお見舞いした。地面に落ちた銃は使えないように粉々に打ち砕いておく。

二人は最上階である三階へと駆け上がる。残りわずかな組員達を軽く捻り潰すと龍馬は遂に組長がいるであろう部屋の前へと辿り着いた。

 

「オラァ!!」

 

「邪魔するぜ!!」

 

龍馬が扉を蹴破って勇斗と共に中に押し入る。組長の田嶋は突然の襲撃と異様な武器を装備した二人の少年に慌てつつも怒号を飛ばした。

 

「な、なんやお前らは!?どこの組のモンや!?」

 

「どこの組だって……?2年1組だよ!!」

 

「ぶはぁっ!?」

 

龍馬は激昂しながら田嶋に近づくといきなり鼻っ柱に一発、ルナ・アームの拳の一撃をお見舞いした。吹き飛ばされて床を転がる田嶋の胸ぐらを掴んで引き起こすと龍馬は鬼、いや龍のような形相で顔を近付けて田嶋を睨み、殺意のこもった声で訪ねる。

 

「ひ、ひぃっ……!」

 

「いいか、俺の質問に答えろ。一昨日、博多で黒狼会を襲撃した奴がひき逃げ事故を起こした。黒のセダン……シーマだ。それに乗っていた奴は誰だ?」

 

「し、知らねえ!知らね……ぎゃはっ!!ぐはっ!!」

 

またしても龍馬の拳が炸裂する。しかも今度は二発だ。田嶋の歯が二本ほど吹き飛ぶ。

 

「とぼけんじゃねぇ!!御堂誠公会に薬院での銃撃事件に関わった奴がいるはずだ!!……いいか、もう一度聞く。黒のセダンを運転していた鉄砲玉は誰だ?次にしらばっくれたら次は歯を全部へし折ってやるからな」

 

「ひっ……!」

 

なんという迫力。なんという殺意だ。少年から漂う底知れぬ怒りと憎悪は並みのヤクザを遥かに凌駕している。田嶋は恐怖に怯えていた。

しかし言わなければきっと殺される。それもなぶり殺しだ。そう思わせるだけの迫力が少年にはあった。

 

「ち……直接やった奴は知らねえ!俺は本家の幹部から頼まれて兵隊を貸しただけだ!そいつが誰に指示したのかまでは俺も知らねえんだ!」

 

「……じゃあ質問を変えよう。お前に兵隊を貸すように指示した奴は誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちょ……直系組織……"紅鸞会(こうらんかい)"会長の……"鷲尾志鶴(わしおしづる)"だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 




vs田嶋組構成員戦イメージBGM……
『tusk』
(『龍が如く0 誓いの場所』より)
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