アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第133話 その男、リザードマンにつき

北九州市・小倉北区。小倉駅のすぐ北側に位置する浅野のエリアにその会社はあった。

 

株式会社・高宮建設。

 

この会社の社長である高宮健三(たかみやけんぞう)は小さなこの会社を小倉の発展のために切り盛りしてきた。従業員は20人ほどの小さな会社ではあるが創設以来、黒字経営を続けてきた。

高宮建設の良好な経営は社長の地元愛にある。幼い頃から小倉の街で育った社長は小倉のための仕事はもちろん、町おこしや自社独自のイベントなど地域と密着したスタンスを貫き通してきた。それゆえに地元から愛される会社として地域の人々には有名だ。

従業員の中には幼い頃に高宮社長の人柄に惚れて、高校卒業後すぐに働き始めた者もいる。

 

 

そんな高宮建設で一際異彩を放つ存在があった。

 

 

「コルボ!今日もお疲れさん!」

 

「あ、社長!お疲れ様です!」

 

高宮社長に声をかけられた従業員。それは全身が緑色の鱗に覆われ、尻尾を持ったトカゲのような男だった。

彼の名はコルボ・ガレント。アルカ帝国領の南西に位置するセボサの森出身のリザードマンである。

リザードマンである彼が何故日本の建設会社で働いているのか。それには訳があった。

コルボは誇り高きリザードマン一族の戦士である。セボサ村では彼に戦いで勝てるものはなく、狩りや漁の腕においても一流だった。そんな彼はある日村の収入源となる獲物の皮や肉を売るためにそれらを担いで仲間達と共にいつものように近くの人間の町まで赴いた。

金を受け取り、生活に必要なものを市場で買っている時、たまたま通りかかった貴族がコルボ達を見て心ない一言を放った。

 

 

 

“「何故リザードマンがこの町にいるのだ。野蛮で原始的で醜悪な魔物達なぞをこの町に入れるとは」"

 

 

 

人間至上主義者であったその貴族の言葉にコルボの仲間達は怒りを露わにしたが、コルボは冷静にそれを止めた。村に帰ると仲間達から「何故何も反論しないのか」と問い詰められたが、彼等はコルボが見せた形相を見て一瞬で黙ってしまった。

 

 

その言葉に何より怒りを感じていたのは他ならないコルボ自身だったのだから。

 

 

リザードマン一族の戦士としての誇りを傷付けられ、怒り心頭であったコルボは何とかして貴族を見返す方法はないかと考えた。だが貴族の言う通り、森で原始的な生活を営み、肉体の力以外にはエルフのように精霊魔法も使えない自分達は確かに人間の文化には劣っていると痛感したコルボ。

 

そんな彼に転機が訪れる。

 

コルボはいつものように肉や皮を町に売りに来た時、人間達から異世界の国の話を聞いた。

見たこともない建物や乗り物、様々な未知の文明が広がる異世界の国・ニホン。帝国が同盟を結んだその国では既にこちら側の世界の人々の多くが人種問わず観光をしたり労働や勉学に励んでいるとのことだ。

噂を聞いたコルボはすぐに情報を集めた。そして町の住人や商人を通して渡航資格の事を知り、彼は村の仲間達に事情を話して別れを告げ、すぐに旅立った。

コルボはリザードマンの中でも聡明であった。渡航資格はすぐに取得できた。そして彼は村を発展させ、貴族を見返すべくニホンの建築技術に興味を持ったのだ。ギルドに建設業を希望したのち、丁度新しい社員を募集していた高宮社長の目にそれが止まった。

それからおよそ半年ほど。無事に高宮建設の社員となったコルボは驚くべきスピードで知識と技術を吸収し、今では重機や機械の資格まで取得していた。

 

「お前が来てからもう半年ちょっとになるのか。今じゃお前はこの会社になくてはならない存在だよ」

 

「いえ、そんな……自分なんてまだまだです。勉強することが山ほどありますよ」

 

「確か一級建築士目指してるんだってな?道のりは険しいぞー」

 

「はい、心得ているつもりです」

 

コルボの夢は大きい。将来は一級建築士の資格を取る事を夢見ている。合格率は日本人でも受験者の10%前後程度しかないため、難関と言える。だが逆に言えばこれを達成出来ればいずれ自分がリザードマンの一族を大いに発展させられる。あの貴族だって見返せるだろう。いつか自分がセボサ村を発展させることができればもう誰にもリザードマンを原始的な部族とは言わせない。

 

「しかしお前いつみても作業着のまんまだな。そんなに気に入ってるのか?」

 

「はい!これが俺の正装ですから!騎士団が着てる鎧より価値のある大事な宝物です!」

 

コルボは“(株)高宮建設 コルボ"と社名と名前の刺繍が施されたグレーの作業着と紺色のドカジャンを何よりも大切にしていた。リザードマンである自分がこの会社で働く上での一番の誇りであり、宝物なのだ。

人間と違い、大きな体躯や尻尾を持つリザードマン用に高宮社長が特注で頼んだ会社の制服であり作業着。これを着るとコルボはまるで騎士団にでもなったかのように自分が誇らしかった。

 

「制服大事にしてくれんのはありがたいが、たまにはオシャレもしろよ?ちょっとはカッコつけて将来は嫁さんもらうことも考えないと女が寄り付かないぜ?」

 

「ははは。自分にはまだ早いっすよ。あ、社長。自分、今日使った道具片付けてきますね」

 

「やれやれ、仕事熱心だな。じゃ、頼んだぞ」

 

「うっす!」

 

コルボは会社の裏手にある倉庫へと向かう。そこで片付け及び点検作業などを行い、きちんと戸締りしたのを確認してから社長のいる玄関先へ向かう。そこでコルボは良くない光景を目にした。

 

「社長さんも頑固だねえ。別にタダで手を引けってんじゃないですよ?」

 

「そうそう。うちとしては今の契約の二倍……いや三倍でも出そうって言うんだ。悪い話じゃないでしょう?」

 

「あれはうちの会社を信用してくれてるお客さんから引き受けた契約だ。それを蔑ろになんぞ出来ません。それにヤクザの汚い金なんかいくら積まれても受け取るつもりはない」

 

「んだと、このジジィ……!!」

 

「こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!」

 

高宮社長が二人組のガラの悪い男に絡まれている。それを目撃したコルボはドスドスと足音を立てながら駆け寄り、社長の目の前にずいと出た。

 

「コルボ……!」

 

「な、なんだこのトカゲ野郎は……!?」

 

「どこのどいつか知らんが、お引き取り願おう。うちの社長をこれ以上困らせるなら容赦はしねえ」

 

コルボが拳を鳴らし、リザードマン特有の鋭い牙を見せながら男達を威圧する。その恐ろしい牙や爪で襲い掛かられたら並の人間ではひとたまりもないだろう。二人の男達は後退りしつつ、高宮社長を睨みつけた。

 

「……そのトカゲの兄さんに免じて今日のところは退きますわ。だけどもこれじゃ終わりませんぜ、社長さん」

 

流石にリザードマン相手では分が悪いと踏んだのか、男達は社長にそう告げると踵を返して去っていった。社長がふう、とため息をつくのと同時にコルボは社長に問い掛ける。

 

「社長、今の連中は?」

 

「ああ……奴等はこの小倉をシマにしてる“御堂誠公会"ってヤクザの連中だよ」

 

「ヤクザっていうと……ニホンの盗賊団的な連中のことですかい?」

 

「まあ、そっちの世界で例えるならそれが分かりやすいかな。加えて殺しに麻薬や武器の密売とか何でもありさ」

 

コルボもこちらの世界で暮らすうちにニホンにおける犯罪組織のことも多少知り得てきた。ニホン人の犯罪組織は主にヤクザと呼ばれる集団が大多数を占めることも。

 

「そんな奴等がなぜうちに?」

 

「今うちが契約してる仕事をよこせと迫ってきたんだ。どうやら手当たり次第に他社の契約を奪ったり地上げ屋的な行為をやっているみたいだな。何故かはわからんが……」

 

「……ニホンも物騒っすねぇ。ま、あんな奴等が来ても俺が軽くのしてやりますよ!」

 

「はは。それは頼もしいな。だけど相手はヤクザだ。迂闊に手を出せばどうなるかわからない。穏便に頼むよ。それはそうとコルボ、今日は飲みに行くか?奢ってやるぞ」

 

「え!いいんですか!ゴチになります!」

 

よく社長が連れて行ってくれる馴染みの居酒屋とスナック。まず居酒屋で飲み食いしてから堺町にあるスナックをハシゴするのが二人の通例となっている。酒も大好きなコルボとしては嬉しい限りだ。二人は会社を後にすると夜の繁華街へと歩を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、コルボ君はウイスキーロックね。社長さんは焼酎水割り」

 

「アケミさん、ありがとうございます」

 

「ママ、ついでに何かつまむものある?」

 

「ナッツと枝豆くらいならあるよ」

 

場所は変わってスナック・青薔薇。ここは高宮社長がずっと通っている馴染みの店だ。コルボも社長と共に来ることはもちろん、一人の時も来るほど常連になっていた。一軒目の居酒屋でいい感じに酔っ払った二人は青薔薇にてまったりと飲み始めた。

 

「コルボ君も小倉に来て半年か。すっかり馴染んじゃったねぇ。故郷が恋しくなったりはしないかい?」

 

「そうっすね……やっぱり村のみんなに会いたいって気持ちはあります。でも俺には目標があるから……」

 

ふと故郷の家族や仲間達の顔を思い出すたび、寂しい気持ちにはなる。しかしそれと同時にあの憎たらしい貴族の顔も記憶に蘇る。リザードマンの一族を鼻で笑ったあの男の顔だ。

 

「確か貴族のお偉いさんに一族を馬鹿にされたんだって?そいつは見る目がないねえ。こんな努力家の子を見た目だけで判断するなんて」

 

「ママだって俺が最初、初めてコルボを連れてきた時は“高宮さんがでっかいトカゲを連れてきた!!"って驚いてたじゃないか」

 

「し、仕方ないでしょ。リザードマンなんて種族知らないし……」

 

初めて高宮社長がコルボをこの店に連れてきた当初はママの朱美をはじめ、店に来ていた常連客達も飛び上がるほど驚いたものだ。それが今やコルボ自身も店に馴染んでしまっている。

 

「いつかコルボ君が故郷に帰って村を発展させたらコルボ君を馬鹿にした貴族も地団駄踏んで悔しがるだろうね」

 

「ははは、今から楽しみですよ。でも、まだまだ勉強しないとですね。一級建築士への道のりはまだまだ遠いですから」

 

「君ならすぐなれるよ」

 

コルボはロックグラスを傾け、ウイスキーをあおる。朱美は吸っていた煙草を灰皿に押し付けると空になったコルボのグラスにウイスキーを再び注いだ。

やはり異界の酒は美味い。故郷の火酒もよいがこちらの世界のビールやウイスキーは格別だ。そして会社とこのスナックが存在する小倉がコルボにとっての第二の故郷となったのは言うまでもない。

話が弾み、あっという間に時が過ぎていく。時計を見ると終電が近い。コルボはカウンターから立ち上がる。

 

「アケミさん、社長、俺そろそろ帰ります。デンシャなくなっちゃうんで」

 

「あら、そうだねぇ。気をつけて帰るんだよ」

 

明日は仕事もある。早めに帰宅しなければ。コルボは朱美と社長に別れを告げ、店を出た。

 

「う〜、まだ寒いな」

 

酒で火照った身体とはいえ、まだ2月の冷たい夜風は堪える。愛用のドカジャンを着込みなおすとコルボは小倉駅に向かって歩き始めた。

 

「……の奴ら絶対に……」

 

「おい、龍馬……あんまり声に出すな。誰が聞いてるかわかったもんじゃねぇぞ」

 

向かい側からコンビニのレジ袋を持った二人の学生らしき若者が歩いてくる。学生達はコルボの姿に気付き、やや驚いた表情でこちらを見てきた。コルボもチラリと彼等を見るが特に何も思わずにすれ違った。それは学生達も同じのようですぐに二人でまた何かを話し始めた。

きっとリザードマンが珍しいのだろう。こんな見た目だ。初めて見るニホン人からはよく好奇の目を向けられる。今に始まったことではないのでコルボは特に気にしなかった。だが……

 

「……あのガキ二人の片割れ……どこかで見たような……」

 

背の高い方と低い方がいたが、どうも小さな方に見覚えがあるような気がする。しかしよく思い出せない。

まあ、多くの人間と毎日すれ違っているのだからかすかに印象に残る人間もいるかもしれない。あのガキもそんなところだろう、コルボはそう思って再び歩き出した。

小倉駅についたところでコルボは重大なことに気が付いた。……財布がない。おそらく会社に忘れてきたのだろう。あれには定期券も入っていてこれでは電車に乗れない。スマホの時計を見ると時計は23時を回っていた。会社はそう遠くない。コルボは急いで会社へ向かうことにした。

会社に到着し、入口の門を開けて敷地に入る。おそらく財布はオフィスにある更衣室のロッカーだろう。コルボはオフィスの鍵を取り出して入口を開けようとする。その時だ。

 

「……?」

 

おかしい。会社の倉庫から物音がする。既に会社は電気も落とされて誰もいないはずだ。念のためコルボは更衣室に向かう前に倉庫を調べてみることにした。

 

「おい、誰かいるのか?」

 

倉庫の扉を開け、中を調べる。電気を付けても誰もいない。荒らされた形跡もない。野良猫でもいたのだろうかと思ったその時、

 

 

コルボの戦士としての“勘"が背後の気配を察知した。

 

 

コルボに向かって振り下ろされた鉄パイプ。彼はそれを手で受け止めると、襲撃者に反撃のパンチを浴びせたのだ。

 

「ぐわっ!」

 

「甘ぇよ。リザードマンの“勘"を舐めるんじゃねぇ」

 

コルボは覆面を被った襲撃者の首根っこを掴むとそのまま引きずって倉庫の外に投げ飛ばした。ドサリと地面に落ちる襲撃者を問い詰めようと迫った時、周囲に複数の気配を感じた。

 

「……なるほど。お仲間ってわけか」

 

コルボの前に現れた敵。襲撃者達は黒ずくめで全員覆面を被っており、顔はわからない。だがそんなことはコルボにとって関係ない。

 

「悪いがお引き取り願おうか。今は営業時間外だぜ!!」

 

コルボがそう叫んだ瞬間、襲撃者の男達は鉄パイプやバットを手に襲いかかってきた。コルボは素早く構えて迎撃体制を取る。鉄パイプを振り上げて襲い掛かる一人の攻撃を避け、コルボは足を引っ掛けて転ばせるとさらにその男の足を掴んだ。

 

「オラァッ!!」

 

「ぎゃふっ!!」

 

コルボはまるでタオルでも振り回すかのように片手で掴んだ男の足を振り下ろし、男を顔面から地面へと叩き付けた。顔を砕かれ、悶絶したのちに気絶してしまう男。

これこそコルボのリザードマンとしての恐るべき力。ヒトを超える腕力に恐ろしいまでの牙や爪。そして戦いを好む戦闘民族としての(さが)だ。

そんなコルボに一瞬怯む襲撃者の男達だが、すぐさま武器を構えて突進してきた。

 

「いいねぇ。酒と喧嘩は大好物だぜ!!久々にリザードマンとしての血が滾るってもんだ!!」

 

こちらの世界へ来てから狩りをすることも無くなった。たまに酔っ払いや不良に絡まれはしたが、正直言ってそれらはコルボの前では児戯にも等しい。あくびをしながらでも勝てるのだ。

しかし今回は思わぬアクシデントとはいえ、明確な殺意を持った連中を相手にしている。正体など知ったことではない。たまにはこうして暴れたいものだ。

 

「そらよ!」

 

コルボのチョップが脳天を直撃し、一人が地に沈む。続けて三人目を拳の一撃でノックダウンさせると、その隙を目掛けて武器を振り下ろしてきた男に対してコルボはその金属バットを口で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「ウルァッ!!」

 

次の瞬間、男達は目を疑った。コルボの口に咥えられた金属バットが音を立てて“千切れた"のだ。岩をも噛み砕くリザードマンの強靭な顎と牙の威力を目の前にして戦意を喪失する男達。そんな彼等にコルボは静かに歩み寄る。

 

「まさかこれで終わりってんじゃないだろうなぁ?なあ?」

 

「ひっ……!」

 

「く、クソッ……!」

 

男の一人が持っていた鉄パイプを投げ付ける。さらに他の男達も一斉に武器を投げ付けた。さすがのコルボも顔目掛けて立て続けに飛来する武器に対しては防御するしかなかった。そんなコルボの一瞬の隙をついて男達は逃走する。

 

「あっ!おい、待ちやがれ!」

 

しかし既に男達は会社の塀を乗り越えて逃走してしまっていた。いつの間にか気絶させたはずの男もいなくなっていた。

 

「チッ……とりあえず社長に電話するか」

 

コルボはスマホを取り出して高宮社長に電話をかける。しかしいくらコールしても社長は出る気配がない。酔い潰れて寝てしまっているのだろうか。青薔薇に行った時はたまにこういうことがあった。

 

「……アケミさんなら知ってるかもな」

 

今度は青薔薇に電話をかけてみる。しかしやはり出る気配はない。社長が酔い潰れて出ないのはわかるがママである朱美まで出ないのは様子がおかしい。コルボはしばらくしてかけ直そうとまずは更衣室の財布を取りに行った。

忘れた財布を取って会社の戸締りをした直後、知らない番号から着信が表示された。コルボは特に迷うこともなく電話に出る。

 

「もしもし?」

 

「“こ、コルボ君!?あたしだよ!朱美!大変よ!社長さんが……社長さんが……!!"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルボは朱美からの電話を聞くなりタクシーを捕まえて小倉北総合病院へと向かった。そこで目にしたものは手術室の前で泣き崩れる朱美の姿だった。

 

「社長が……なんで……!!」

 

「あたしの店を出てからすぐに……通り魔に襲われたって……!」

 

店のすぐ側で通り魔によって腹部をひと刺し。それにより大騒ぎになったのを駆け付けた朱美が救急隊と共に病院まで来たのだという。

 

「社長さんが何したっていうんだよ……!いつものように仕事して……いつものようにあたしの店で飲んで……また明日から頑張って働くっていう日常を送っていた社長さんが……!」

 

高宮社長は街中の誰からも愛される人柄だった。無論コルボだってその一人だ。彼が恨みを買う理由などひとつもない。何故社長がこんな目に合わなければならないのか。コルボは頭を抱えながら力なく椅子に座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。自宅のアパートで目が覚めたコルボ。言わずもがな、寝起きは最悪だった。

どうにか社長は一命を取り留めたらしい。ひとまずは安心だが油断は出来ないそうだ。コルボは顔を洗い、水を飲むといつもの作業服に着替えた。だがいつまでも落ち込んではいられない。社長が無事に退院できたら安心して会社に戻れるように、社員である自分が頑張らなければ誰が高宮建設を守るというのだ。コルボはそう思いながら自宅を出て最寄駅である八幡駅へ向かう。

小倉駅に着いたらいつも食べている立ち食いのカシワウドン。しかしこの日ばかりは食欲がなかった。コルボは何も食べずにそのまま会社へと向かう。

会社の朝礼では社長の悲報が社長夫人を通じて知らされ、社員達は皆悲しみに暮れた。

だが落ち込んでばかりもいられない。自分達が会社を守らなければという思いはコルボだけではなく、社員達も同じだった。皆が一丸となった朝礼の時間。そこへ水を差すように招かれざる客が現れる。

 

「おやおや、高宮建設の皆さん。これはこれは」

 

「聞きましたよ?社長さん、刺されて死にかけてるんだって?可哀想に……これじゃ契約してる仕事も大変ですなあ」

 

やってきたのは昨日社長が相手をしていたガラの悪い連中だ。その態度に激昂したコルボは真っ先に飛び出して怒鳴る。

 

「んだと、コラ!!」

 

「おー、こわこわ。でもトカゲの兄さん、いいんですかい?ここでわしらに手を出したら立場悪くなりますぜ?」

 

男はニヤニヤと笑いながらコルボを見上げている。すぐに殴ってやりたいところだが、悔しいかな男達の言う通りだ。その時、コルボの脳裏に社長の言葉が蘇る。

 

 

 

 

 

 

『“ああ……奴等はこの小倉をシマにしてる“御堂誠公会"ってヤクザの連中だよ"』

 

 

 

 

『“今うちが契約してる仕事をよこせと迫ってきたんだ。どうやら手当たり次第に他社の契約を奪ったり地上げ屋的な行為をやっているみたいだな。何故かはわからんが……"』

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……テメェらが社長を!!」

 

確かこいつらは社長に契約をよこせと迫ってきたミドウセイコウ会の連中だ。まさか社長はこいつらに……。

 

「はて、何のことですかなぁ」

 

「証拠も無しに人を犯人扱いですか。まったく、高宮さんも人……いや、トカゲを見る目がありませんなあ」

 

こちらが手出し出来ないのをいいことに男達は言いたい放題だ。さらに男達は続ける。

 

「社長さんがいないんじゃあ、仕事を続けるのは難しいでしょう。ま、今日は挨拶だけで済ませときますわ。でもうちに仕事を譲った方が会社のためですぜ?それじゃ」

 

「近いうちにまた来ますわ。その時までに答えを決めといてくださいな」

 

男達は言うだけ言うと立ち去っていった。コルボは怒りに拳を震わせながらいつまでも男達の背中を睨み続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は全く仕事が手につかなかった。いや、コルボだけではない。社員全員がまるで仕事に集中できないのだ。

社長を襲い、会社の倉庫で自分と対峙したのはあの男達の所属する組織……ミドウセイコウ会に違いない。無理矢理契約を奪い、あわよくば会社まで潰すつもりなのかもしれない。

 

「そうはさせねぇ……見てろよ」

 

社長は自分にとって第二の父親とも言える存在だ。時に厳しく、時に優しく、コルボを社員として見守ってきてくれた。そんな社長を自分達の利益のためだけに傷付けたあの連中は決して許さない。

 

 

 

コルボの中の、リザードマンの戦士としての魂が怒りの炎で燃え上がった瞬間だった。彼はミドウセイコウ会に報いを受けさせるべく、行動を開始した。




vs謎の襲撃者戦イメージBGM……
『Massive Fire』
(『龍が如く4 伝説を継ぐもの』より)
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