アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第136話 仕組まれた罠

龍馬は勇斗と共に作戦準備の最終段階に入る。と言っても所詮は学生二人。できることと言えば戦に備えて腹ごしらえをするくらいだ。勇斗の提案で焼肉を食べることになった。

正直、今の龍馬は「ディレットを差し置いて自分だけが……」という気持ちがあったのだが、

 

「彼女のためにこの事件を解決するんだろ。だったら気力も充分じゃないとな。腹が減っては戦は出来ぬ、と言うじゃないか」

 

と、半ば強引に龍馬を連れて行った。それに彼女が元気になったらお祝いに改めて焼肉行こうぜ、と龍馬を促す。

二人は少しお高めの焼肉屋に入ると学生の小遣いでは食べれないような高い肉を白米と共にかきこむ。もちろんこれは“必要経費"として仁から貰った金で食っている。

肉を焼く直前までやはり龍馬はディレットのことを考えて渋っていたが勇斗が肉を焼き始めるとその香りが久々に食欲を刺激した。

そうだ、彼女のためにこの事件を解決すると誓ったのだ。ならば英気を養うためにいくらでも食って気力満タンで戦ってやろうではないか。そんな気持ちが龍馬の中に溢れてきて彼は勇斗と共に肉に喰らいつく。焼かれた肉は次々と彼等二人の胃袋へと消えていった。一時間半の食べ放題を終える頃には二人の前には空っぽになった皿や茶碗が所狭しと並んでいるだけの状態となった。

 

「ふー、食った食った」

 

「うー……もう食えねぇ」

 

大きく膨らんだ腹部をさすりながら二人は店を後にした。これで腹ごしらえ、気力の充填は充分だ。

 

「龍馬、朝に朱美さんの言っていた情報じゃあ……」

 

「ああ、ヤツの商談は夜……だな」

 

裏社会の事情に詳しい朱美から伝えられたのは金田が自身が経営するホテルにおいて取引のための商談を行うというもの。しかも今日の夜、だ。従って龍馬達は夜まで待機をすることになる。

 

「一応、もう一度だけ会長さんに報告しとくか……」

 

今度の相手はかなり危険だ。直前まで情報のやり取りを行なっておいた方がいいかもしれない。龍馬はそう考え、仁に再び電話をかける。数コールのあと、仁が電話に出た。

 

「“龍馬か。どうした?"」

 

「会長さん、俺達は今夜に紅鸞会の若頭が経営しているホテルに乗り込む。その前に報告をと思ってな」

 

「“なるほど……いよいよってわけか。ああ、龍馬。そういや昨日、サツが接触してきたって言ったよな?"」

 

そういえば仁はそんなことを言っていた。確か福岡県警所属の刑事が仁になんらかの事情で接触を試みてきたと。龍馬の脳裏に昨日の夜の会話が蘇る。

 

「“あのサツから連絡が来てな。お前らがカチコミかけた田嶋組の組長が……死んだそうだ"」

 

「何だって!?」

 

仁から告げられた話は衝撃的な話だった。なんと最初に襲撃したあの末端組織である田嶋組の組長が亡くなったというのだ。

 

「“小倉署の留置場に身柄を拘束されていたはずなんだが……どうやら昨日の深夜に亡くなったらしい。首を吊って自殺だとよ"」

 

「自殺って……!」

 

一体どういうことなのだろうか。龍馬から見て少なくとも自殺が出来るほどの度胸があるような組長には見えなかったが。この流れで考えられるのは……まさか……。

 

「田嶋組長は口封じのために殺された……?」

 

「“おそらく、な……。末端だからそれほど重要な情報は握ってなかっただろうが、それでも今回の事件に関わっている人間の一人だ。少しでも情報を漏らしたくなかったんだろうさ。あの組長はビビりだから簡単に口割るだろうしな"」

 

田嶋組長は情報の流出を恐れた御堂誠公会によっておそらく自殺に見せかけて殺害された可能性が高い。しかしそうだとするとあるひとつの可能性も高くなってくる。

 

「“龍馬、これが何を意味するかわかるか?"」

 

「何って……何だよ?」

 

「“ハァ……オメーは鈍いな。いいか、田嶋組長が殺された場所はどこだ?"」

 

「それは……留置場で……あっ!」

 

「“そうだ。留置場はサツのテリトリーのど真ん中だ。つまり田嶋組長が他殺だったと仮定すれば、組長は殺したのは警察内部の人間……つまり御堂誠公会は警察組織と繋がっている可能性が高い"」

 

そう、田嶋組長は留置場で殺害された。とするならば警察以外の人間が内部に侵入して彼を殺害するのは不可能に近い。つまり警察組織が御堂誠公会と繋がっている可能性が高いのだ。

 

「“龍馬、これは思った以上にヤバい案件かもしれねえ。もし警察が御堂誠公会と繋がっているなら……お前ら間違いなく消されるぞ"」

 

「……」

 

なんということだ。市民を守るはずの警察がヤクザと繋がっているとは。ドラマなんかで警察のお偉いさんが汚職に手を染めてヤクザと……という展開は見たことあるがまさか現実でそれを目の当たりにすることになるとは。龍馬の背中にじんわりと汗が走る。

 

「“……龍馬、引き返すなら今だぞ。幸いお前らが喧嘩を売ったのは末端組織にすぎねえ。しばらく身を隠してほとぼりが冷めるのを待てば奴等も手は出してこないだろう。だがこのまま紅鸞会に喧嘩を売れば……お前も勇斗も、そしてお前らの家族もただでは済まないぞ"」

 

おそらく警察と御堂誠公会が繋がっているのはほぼ間違いないだろう。このまま直系組織に手を出せばヤクザだけではなく、裏で警察も龍馬達を抹殺するべく動くはずだ。

 

 

しかし……それでも龍馬は進むことを選んだ。

 

 

「……もし、警察もこの件に関わっているならヤツらも同罪だ。今もディレットは病院で苦しんでいる。このまま泣き寝入りなんてゴメンだぜ」

 

「“……わかった。お前が腹を括るなら俺も括る。御堂誠公会を潰せば警察も弱体化する。それなら俺にとっても好都合だ。いいだろう。持てる全ての力を使って黒狼会はお前達をサポートしてやる。お前の家族やエルフの嬢ちゃんの病院は部下に見張らせる。万が一に備えてな。健闘を祈るぜ"」

 

「会長さん……」

 

「“それに……お前らが死んでジョナさんの同人誌がもう見れなくなるのはオタクとして困るしな"」

 

ははは、と仁は電話の向こうで悪戯っぽく笑った。忘れていたが仁は一部の部下にしか真実を教えていない隠れオタクであった。「推し絵師がいなくなるなんてオタクとしては死よりも辛い」とTwitterのつぶやきみたいなことを彼は言っていた。

龍馬は軽くやり取りをして電話を切る。そして今の内容を勇斗に伝えた。田嶋組長の死と警察が御堂誠公会と繋がっている極めて高い可能性、そしてここからの戦いは非常に危険な戦いになることを話したらやはり彼も驚いていたが……すぐに笑い飛ばした。

 

「水臭いぜ!一体俺はどれだけお前と一緒に喧嘩してきたと思ってるんだ!こうなったら地獄の底までとことん付き合ってやるよ!」

 

「勇斗……悪い、助かるぜ」

 

「やめろって!そんなことよりも今は目の前の作戦に集中しようぜ!」

 

龍馬は心の中で生涯最高の親友といえる城島勇斗という男に最大限の感謝の意を評した。こんないい男、世界中を探してもいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、龍馬と勇斗はホテル・プリンスへ着いた。ヤクザが経営しているとはいえ、表面上は高級なビジネスホテルだ。一般の利用客も多いので流石に正面からの突破はまずいとして裏口へ回り込む。

 

「さて、どうやって侵入する……?」

 

「勇斗、あれ見てみろ」

 

龍馬が裏口から見上げて二階の窓を指差した。なんと小さな窓が開いている。電気が付いていないところを見るとおそらく無人の部屋だろう。そして都合のいいことに排水用のパイプが窓の近くまで壁を伝って伸びている。これと壁面の室外機を足掛かりにすればなんとか侵入できるかもしれない。

 

「うへえ、都会でロッククライミングかよ」

 

「ゴリラの握力なら大丈夫だろ、行くぞ」

 

龍馬が先に進み、勇斗も後に続く。幸いこのホテルの裏口は目立たない路地裏にあるため、侵入を目撃される可能性は少ない。龍馬と勇斗は持ち前のパワーで何とかパイプを登り、室外機に足をかけて窓へとたどり着いた。

中に入るとどうやらここは浴室のようだ。二人は浴室を抜けて一般の宿泊部屋を出て廊下の様子を伺う。

 

「……大丈夫みたいだ。誰もいない」

 

「よっし、じゃあ若頭さんを押さえるとしますか」

 

二人がそう言って進もうとした時だ。突如、廊下にある他の部屋のドアが開き、中から武装したヤクザの組員達らしき男が続々と出てきたのだ。

 

「なにっ!?」

 

「待ち伏せ……!?龍馬、襲撃がバレてるぞ!」

 

この武装、そして人数。明らかに龍馬達が襲撃してくることを予測していたかのような展開だ。おそらくこいつらは紅鸞会の構成員達だろう。

 

「へっ!だったら話が早ぇ!全員ブッ飛ばして金田の野郎を引きずり出してやるぜ!」

 

バレているなら逆に話が早い。コソコソする必要もないとばかりに龍馬はルナ・アームを、勇斗はハイドラを棒状に変形させて戦闘態勢を取る。構成員達は怒号を上げながら龍馬達に武器を振り上げて襲い掛かってきた。

 

「どけオラァ!!」

 

「ぶへっ!!」

 

まずは龍馬の渾身のストレート。先頭の構成員をノックアウトし、続け様に後ろにいた構成員の腹にパンチを打ち込んで叩き伏せる。

 

「どけやぁ!!」

 

勇斗のハイドラが一人を地に沈め、直後に勇斗はハイドラをヌンチャクの形状に変化させて次々に叩き伏せていく。その捌きたるや、素人とは思えないほどだ。あらゆる武器を使いこなせる、パワーとテクニックの両方に長けた勇斗にはピッタリの武器……それがハイドラなのだ。

 

「エレベーターを目指せ!」

 

勇斗が叫ぶと同時に龍馬は走り出した。エレベーターのある場所を目指して構成員達を殴り倒しながら廊下をひた走る。たどり着いた先にある突き当たりにあるエレベーターのスイッチを押す。しかし……

 

「龍馬!エレベーターのスイッチが反応しねぇぞ!」

 

「くそ!またこのパターンかよ!」

 

去年、シーホークホテルで戦った時の記憶が蘇る。やはりそう簡単には進ませてくれないらしい。仕方なく龍馬達はその場で構成員達を迎撃するが、上層階にもいたのか非常階段からも敵がゾロゾロと降りてくる。

 

「龍馬、こいつはちょっとキツいかもしれねぇぜ……」

 

「ちくしょう……俺達の行動なんてお見通しってわけかよ……」

 

襲撃の情報が事前に予測され、二人を迎撃するためにこれほどまでの人数を配置するとは。全くの予想外だった。

 

 

二人は構えたまま大勢の構成員達を睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、コルボはホテルのロビーから堂々と中に入った。コルボの風貌に驚きつつも、フロントマンは丁寧に対応する。

 

「い、いらっしゃいませ。お客様、申し訳ありませんが本日は当ホテルは満室となっておりまして……」

 

「……カネダって奴を出せ」

 

「へ?」

 

コルボの言葉にフロントマンはキョトンとした顔で一瞬固まるが、困惑しつつもなんとか笑顔で接する。

 

「も、申し訳ありません。お、仰っている意味がよくわかりませんが……」

 

「ここの経営者にカネダって奴がいるだろう。そいつを出せと言っているんだ!」

 

「ひ、ひいい!」

 

牙を剥き出しにして声を荒げるコルボにフロントマンは怯えてしまう。「カネダはどこだ」となおも声を荒げて問い詰める。

その時であった。ロビーのソファに座っていた何人かのスーツ姿の男達が無言で圧をかけるようにしてゾロゾロとコルボに詰め寄るように集まってくる。それに気付いたコルボはフロントマンから視線をそちらに向けた。

 

「……なんだ、テメーらは」

 

「トカゲの兄ちゃん……悪いことは言わねえ。引き返しな。今帰ればカシラはあんたを見逃すって言っている。大人しく帰んな」

 

さらに詰め寄る男達。囲まれるコルボ。他勢に無勢のこの状況。しかしこの状況下でコルボが見せたものは……不敵な笑みであった。

 

「くっくっくっ……」

 

「何がおかしいんや、トカゲの兄ちゃん」

 

「いや、この程度の人数でリザードマンを脅そうたぁニホンのヤクザってのはよっぽど頭が悪りぃのかと思ってな」

 

「な……!どういう意味やコラァ!!」

 

「こういう意味だよ!!!!」

 

その瞬間、コルボの鉄拳が先頭の男を殴り飛ばした。男は顔面に強烈な拳の一撃を受け、鼻の骨を砕かれて悲鳴を上げる間もなく気絶してしまう。

 

「見逃すだって?ハッ!逃げる気なんざさらさらねえよ!むしろこっちが見逃すつもりなんてねえさ!」

 

叫ぶコルボはすかさず近くにいた構成員の胸ぐらを掴むとタオルを振り回すかのように片手で持ち上げて床に叩きつける。

 

「オラァ!!」

 

「ぎゃはっ!」

 

「や、野郎!!」

 

背後から別の構成員の男がドスを取り出して振りかぶり、コルボに襲いかかる。その瞬間、男はコルボの尻尾の一撃によって激しく横に吹き飛ばされた。男の身体は宙を舞ってフロントに叩きつけられ、カウンター上の備品があちこちに飛び散り、今までフロントの陰に隠れていたフロントマンの男性は悲鳴を上げながら慌ててフロントを飛び出して外へ逃げていく。

 

「ぐひゃあっ!」

 

「ふん、この尻尾が飾りだとでも思ったか!?違うね、こいつはリザードマンの立派な武器さ!」

 

硬い鱗と皮膚を持つリザードマンの皮膚の中でもその太い尾はしなやかで群を抜いて頑強だ。太い丸太をぶち当てられたかのような衝撃が走るその尻尾をまともに叩きつけられれば並みの人間なら無事では済まないだろう。

コルボはその後も襲いかかる構成員達を持ち前の怪力で殴り倒すと気絶した彼等をその場に残してホテルの上階へと非常階段で登っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!一体何人いやがるんだよ!」

 

「これじゃキリがねえぞ!」

 

龍馬と勇斗の二人は襲い来る構成員達を殴り倒しつつも、数のあまりの多さになかなか突破できないでいた。まさに多勢に無勢である。

その時であった。非常階段の方向にいた構成員達が騒がしくなったと思ったら急に彼等が何者かによって攻撃され、その場に叩き伏せられているのだ。

一瞬何が起こったのか戸惑う二人だがこれはチャンスだ。構成員達が混乱しているところを正体不明の襲撃者と挟撃するように攻撃を仕掛ける。

 

「オラァ!」

 

「邪魔だこの野郎!」

 

龍馬の鉄拳と勇斗の棒術で殴り、叩き伏せられていく構成員の男達。その反対側でも何者かが次々と敵を薙ぎ払うように快進撃を続けている。

怒号と共に床や壁に叩きつけられる音までもが廊下中に響き渡り、ホテル内はまさに戦場と化している。突然の襲撃者の乱入により、戦況は龍馬達に傾いた。あれだけ大勢いた構成員達も徐々に地に伏せていき、最後の一人を倒した龍馬と勇斗は襲撃者と向き合うことになる。

 

「あんた……!」

 

「おい、龍馬……このトカゲの兄さんどこかで……!」

 

「なんだぁ?先客がいたかと思ったらガキンチョじゃねぇか。待てよ……お前らどこかで見たな?」

 

明らかに異世界の種族・リザードマンであろうその男はどこかの会社のものらしい作業服にドカジャンという出立ちである。そんな彼の姿に何となく見覚えがある龍馬と勇斗。そしてそれは……彼、コルボも同じだった。

 

「そうだ!お前ら確か……“青薔薇"の近くですれ違ったガキ……!」

 

思い出した。そういえばあの晩……青薔薇で社長と飲んだあの帰りにすれ違った二人組だ。

 

「あんたこそ……よくよく考えたらそれ以前にも会ったぞ……!去年の秋……小倉駅のうどん屋で俺の隣に来たリザードマンじゃねぇか!」

 

そういえば龍馬は去年の秋、これまたヤクザ絡みの事件でレナ、ラグーン、ブラッド達と共に小倉に来た時、小倉駅のうどん屋で自分の隣に来たリザードマンを目撃していた。あの時もほぼ同じ服装だったはず。それを言われてコルボも去年の記憶をおぼろげながら思い出した。

 

「ああっ!そうだ……!あの時もお前が隣に……!」

 

一体何の縁なのだろうか。たまたま居合わせただけの関係だった彼等は思いもよらない場所で再会することになったのだ。

その時である。上階からさらに複数の足音が聞こえてきた。おそらく奴等の増援だろう。

 

「ちぃっ!おい、ガキンチョ共!話は後だ!お前ら少しは戦えるんだろうな!?」

 

「そうじゃなきゃこんなとこ居ねえよ!てか、さっき見てたろ!」

 

「龍馬!トカゲの兄さん!来るぞ、構えろ!」

 

怒号を上げながら再び襲い来る紅鸞会の構成員達。三人は正面から突っ込むと手当たり次第に敵を殴り倒す。

元々喧嘩自慢で修羅場を潜ってきた龍馬と勇斗に加えて人間以上の頑強さと怪力を持つリザードマンのコルボが加わったことでもはや通常の構成員など相手にならない。加えてここはホテルなせいか武装もバットや鉄パイプなどの貧弱な武器か非武装の人間が多く、圧倒的な数の利さえ除けば三人が戦闘力は上手であった。その数の利さえも覆されつつあるが。

敵を倒しながら階段を進むと四階ほど上がったところで敵の攻撃が止んだ。どうやらこれで打ち止めのようだが……。

 

「おい、龍馬。そういえば取引の場所ってわかってるのか?」

 

「最上階のスイートルームだ。ヤツはそこでいつも取引をやっているらしい」

 

朱美から聞いた話では金田は商談をよくそのスイートルームで行うとのことだ。自分のテリトリーなら有利に立てるし、何より邪魔が入りにくい。金田は決まってそうしているそうだ。

 

「ガキンチョのくせになかなか情報掴んでるじゃねぇか」

 

「まあ、ちょっとした情報屋みたいな人がいんだよ。ってかいい加減ガキンチョっていうのやめろよ。俺は龍馬、こっちは勇斗だ。リザードマンの兄さんは?」

 

「俺はコルボ。コルボ・ガレントだ。セボサって村の出身だ」

 

彼等はまだお互いの名前も知らなかった。状況的に利害が一致していると理解した三人は軽く自己紹介をし、ホテルの上階を目指して駆け上がる。

最上階の十階に着いた時、龍馬とコルボが奥の部屋を目指す後ろで勇斗は何か違和感を感じていた。

 

「(最上階で取引を行なっているのに敵の攻撃が激しかったのは下の方だけ……しかもこの階が一番重要なフロアのはずなのに見張りもいない……何かがおかしいぞ)」

 

普通ならば商談相手と組織の幹部がいる最上階は何が何でも守ろうとするはずだ。しかし敵の激しい攻撃が来たのは下の階層だけ。それ以降は不気味なほど静かなフロアを最上階まで突っ切ってきた。龍馬とコルボは何も感じていないのか、或いは敵を倒すことに集中し過ぎて周りが見えていないのか。ともかく勇斗は杞憂であることを祈りつつも警戒はしつつ前方の二人と共に進んだ。

 

「ここか!……クソ、鍵がかかってやがる!」

 

「リョーマ、どけ!俺に任せろ!」

 

ドアにはカードキー式のロックがかかっているが、そんなのお構いなしとばかりにコルボが何度も身体と尻尾を叩きつける。徐々にミシミシと音を立て始めたドアが金具ごと壊れて破られるのにそう時間はかからなかった。

 

「金田ぁ!!」

 

「おいカネダ!!どこだ、出てこい!!」

 

ドアを破って先に突入した二人。だがそこには写真の金田という男はおらず、それどころか取引相手らしき人間すらいない。

 

……ただ、部屋のソファに髭を生やした男がいる以外には。

 

「……カシラならここにはいませんぜ」

 

「……誰だ、テメェは!?」

 

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります。ワシ、紅鸞会若頭補佐やらしてもろとります、松山宏(まつやまひろし)いいます。以後、お見知りおきを」

 

 

 

 

 

 

 

そういって男は余裕たっぷりといった態度のまま、煙草に火を付けた。




●vs紅鸞会構成員戦イメージBGM……
『Pure Malice』(龍が如く3)
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