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「思えばあの時が一番の間違いやったんたい。資産を、会社を守ることが家族を守れると俺は頑なに信じっとた」
平蔵は一服した煙草の火を見つめながら己の大きな過ちを悔いるようにそう言った。重苦しい雰囲気の中、煙草の煙だけがゆっくりと天井に登っていく。消えゆく煙と燃える煙草の先に視線を向ける龍馬達。
ただ会社を経営するだけではいずれやってくる不況の波には太刀打ちできない。そうなればどうやって会社を、社員を、家族を守れるというのか。あの時の平蔵には手段を選べるような余裕などなかったのだ。
だからこそ……やってはいけない“取引"に手を出してしまった。
それが破滅への第一歩であるとも知らずに。
これからは投資の時代だ──その話を最初に受けたのはドーム建設の工事を引き受けることが決まってから一ヶ月後のことだった。かなり大きな仕事故に様々な業者も一緒に入ってくる。平蔵はその中で小倉の建設会社を経営しているという男と顔見知りになった。
男の名前は鷲尾一也(わしおかずや)。小倉の建設会社や商社を複数経営しており、現在は投資によって莫大な利益を生み出している投資家でもあった。そんな鷲尾と知り合ってからある日のこと、彼が個人的に平蔵の会社にやってきたのだ。投資の話を持ちかけられたのはその時のことだった。
いずれバブル経済は崩壊し、不況の波がやってくる。その時に我々経営者が生き残っていくためには先を見据える力を培い、投資をするしかないと。だがこれまで投資に手を出したことのない平蔵にとってはリスクの大きな話だ。最初は乗り気ではなかった平蔵。しかし鷲尾が持ちかけたある話し相手によって平蔵の気持ちは揺らぐことになる。
「平蔵さん。決して損はさせません。こちらもそれなりの対価をいただくことにはなりますが……私にお任せくだされば安心です。私は様々な分野の情報を握っているのでね……」
そう言って鷲尾が一部を見せた書類。それは当時の福岡のあらゆる企業から集めた内部情報が記載されていた極秘のリストである。平蔵はそれを目にした時……悪魔の囁きに耳を貸してしまったのだ。
「じゃあ、まさか……じーちゃんの会社が無くなったのって……」
「まあ、ここまで言えば大体察しはつくやろう。そうたい、俺はやっちゃいけんことをやってしまったんや。あの男……鷲尾一也の誘いに乗ってな」
「……インサイダー取引……!!」
インサイダー取引。株取引において他社の公開されていない内部情報を事前に把握することによって株の取引を優位に進めることである。もちろんインサイダー取引は株取引の公平性を大きく損なう行為であり、日本の金融商法において禁止されている。
「鷲尾一也が御堂誠公会直系の紅鸞会会長ってのに気付いたのはその後やった。やけど俺はもう引き返す訳にはいかんかったんや」
そう言って再び平蔵は煙草を口に運ぶ。その隣にいるバルガスは聞き慣れない単語に話についていけていないようだ。首を傾げつつ彼は質問した。
「すみませんヘイゾウ殿……“いんさいだー取引"というのは……一体?」
「……バルガス、宝くじはわかるな?」
「うむ、ヘイゾウ殿が時々お買い求めになっているアレですな。確かくじを買って当選番号を予想し、それが見事的中すれば多額の賞金を得られるという……」
時々平蔵達の買い物に付き合った時、よく地元のスーパーの店先にある小さな窓口で平蔵が買っているのを見たことが何度かある。くじによって仕組みは違うらしいが、番号を予想して当てれば賞金がもらえるという概ねの仕組みはバルガスでも知っていた。
「……もし俺が宝くじの当たりの番号を不正に知ってから買ったらどうなる?」
「それでは宝くじの公平さが失われ…………まさか……ヘイゾウ殿がやったことは……ニホンの法律に反することなのでは……!?」
「……そうや。今お前にもわかりやすいように例えたが……用は株取引において不正な情報を入手して……俺は株に投資したんや……」
バルガスは驚いた。この目の前の誠実な……自分の師にも新たな親にもあたるこの五十嵐平蔵という人間が……不正に手を染めたなどにわかには信じ難い。
「それこそが鷲尾の罠やったんや……あのせいで会社は……俺達は……」
「涼子センパイ!!大変ですよ!!」
「なんや朝からしゃーしぃやつやなぁ……」
朝っぱらから騒がしい美香の声を聞く羽目になった涼子は寝ぼけ眼のまま鬱陶しそうに返事をした。
「こ、これ!今朝の朝刊です!」
「あぁ……?なんやまったく…………は、はぁ!?こ、こりゃ一体どういう……!!」
涼子は美香が自宅から持ってきた朝刊の見出しを見て驚いた。そこに掲載されていた社名、そして経営者の名前……
紛れもない、父と父が経営する会社の名前だったのだ。
“寿建設社長・五十嵐平蔵氏、インサイダー取引発覚"
“福岡ドーム建設に暗雲か"
記事の見出しはこう書かれていた。インサイダー取引というのは詳しくは知らないが違法行為であるということくらいは涼子も知っている。そんなものに父が手を出したというのだろうか?何かの間違いではないのか?だがホームルームの時間にやってきた担任が深妙な面持ちで彼女を職員室へと呼び出し、この件について話したことで残念ながら涼子はあの新聞が真実であると思い知らされることになる。
「五十嵐。お前のお父さんの会社の件だが……今会社にいるお前のお母さんから電話が入った。二人はこの件のせいでしばらく帰れないと。そして五十嵐、お前はしばらく学校を休みなさいと」
「……」
「……正直俺も困惑している。何かの間違いだと信じたい。だが本当のようだ。五十嵐、今日はもう早退しなさい。いいな?」
「……はい」
会社の母から連絡があったらしい。父はこの騒動の対応に追われ、母もその混乱の最中学校へとどうにか連絡できたところのようだ。さらにその後担任から聞かされた伝言によればマスコミが自宅に押し寄せる可能性を鑑みて祖父の家に身を寄せるようにとの指示があった。涼子は困惑しつつも足早に下校すると自宅で荷物を整えてバスと電車を乗り継ぎ、祖父がいる町へと向かった。
宗像郡津屋崎町(現在の福津市)。この田舎町で農業を行いつつ、五十嵐流無手術師範として道場の経営も行っている祖父の自宅へと涼子はやってきた。
「おう、涼子か。よぉ来たなぁ」
「おじいちゃん……」
五十嵐 巌鉄(いがらし がんてつ)。平蔵の父親にして涼子が絶対的な信頼を寄せる数少ない人間の一人である。
いかにも頑固ジジイといった厳つい見た目で実際その通りではあるのだが孫娘の涼子にとっては強くて優しい祖父であった。
「話はヨネ子さんから聞いとる。全く、平蔵の奴……田舎モンのハナタレの分際で身を弁えんけんこげんなるとや。娘に苦労かけさせておまけにお上のお世話になるたぁあの馬鹿息子が……」
ぶっちゃけ平蔵と巌鉄の親子仲はお世辞にもいいとは言えない。かと言って悪いというわけでもないのだが、未だにお互いギクシャクしている雰囲気はある。
平蔵は高校を卒業後、実家の農家を継ぐ事を嫌って家を飛び出した。住み込みのバイトで金を稼ぎながら自費で大学へと進学し、都会で成功するという夢を今から20年前に叶えたのだ。
ちなみに祖母……平蔵の母である房江(ふさえ)は涼子が小学生の時に亡くなっている。いつも厳つい巌鉄がこの時だけは涙していたことが涼子の記憶にも強く残っている。
「まあなんだ。何もねえ百姓の家やけどゆっくりしていきや。少なくともほとぼりが冷めるまではのう」
「ありがとう……おじいちゃん」
涼子は家の中に案内された。古臭い家の香りが涼子にとっては数少ない安心できる居場所のひとつだった。古びた母屋に納屋、そして巌鉄が毎日欠かさず綺麗にしている小さな道場。何を隠そう、涼子の強さのルーツはこの巌鉄の教えにある。
巌鉄は涼子が身を守れるように幼い頃から五十嵐流無手術の指導を行ってきた。強くて優しい祖父に憧れて涼子もそれに倣った。そして男相手に“実戦"を積み重ねたのち、五十嵐流をベースに己の格闘術を確率させた。それが“鬼"と呼ばれる涼子の強さの秘密である。
「涼子、お前も大きなったなぁ。死んだ婆さんの若い時に似とるわ」
「おじいちゃん、それ前も言いよったよ……」
涼子がこうやって家に来ると巌鉄はよくこのセリフを言う。それは孫の成長を喜ぶ祖父としての巌鉄の純粋な一面でもあった。
家の居間に座り、テレビをつける。すると丁度お昼のワイドショーの時間だったらしく、父の会社の話題が持ち上がっていた。
何しろあの福岡ドーム建設を担っていた会社の経営者が違法な取引に手を染めていたのだから県民の注目も多く集まっていた。
司会者やコメンテーター達は各々が勝手な憶測を立ててやり取りをしている。いくら険悪な仲の父親とはいえ根も葉もないことをここまで言われては複雑な気分だ。涼子を気遣ってか巌鉄は「映画でも見るか」と所持している古い映画のビデオテープを入れた。
巌鉄が流すのは決まって時代劇か西部劇だ。涼子は昔からこうして祖父と見る映画が好きだった。この時は色々な事を忘れることができた。
その夜、涼子は不思議な夢を見た。夢の中で自分は赤ん坊を抱いていた。おそらくは男の子だ。小さな命を抱いている自分はさながら母親のようだった。
しかし突然空間に闇が生まれると闇の中から悪魔のような禍々しい腕が伸びてきて赤ん坊を奪っていこうとする。
この子を守らなければ。涼子はそう強く思い、必死に赤ん坊を取られまいとするも抵抗虚しく赤ん坊は悪魔の腕に奪われ、闇の中へと引きずり込まれてしまう。あとに残された涼子にはもはやどうすることもできなかった。
「……はっ!」
……おかしな夢を見て目を覚ました涼子。身体は汗ばんでいて目覚めは最悪である。
窓に目をやると既に朝日が登っていた。別室で寝ていた巌鉄は既に畑仕事に出かけたようで、「鍋の中に昨日のカレーがあるから温めて食べなさい」と居間のちゃぶ台にメモが置いてあった。
メモの通りにガスコンロの火を付けてカレーを温める。正直食欲はなかったが、せっかく巌鉄が作ってくれたカレーだ。祖父の好意を無駄にはしたくなかった。
元々巌鉄は家事などはほぼ妻に任せっきりだったがその妻が亡くなってからは自炊をしている。特に涼子が来てくれた時は決まってカレーを作ってくれるのだ。祖父の作るカレーはいつも変わらず、美味しかった。
温めたカレーをよそい、口に運ぶ。最初は食欲がなかったがいざ食べ始めると食欲が湧いてくる。涼子はカレーを二杯平らげると水を飲み干してテレビをつけた。
「“それでは次のニュースです……福岡ドーム建設を担う寿建設の社長・五十嵐平蔵氏がインサイダー取引で摘発された件で五十嵐社長は今日、謝罪会見を開きました"」
……再びテレビに父親の姿が映る。涼子はすぐにテレビを消した。嫌いな父とはいえ、無様に謝罪会見をするところなど見たくはない。
その時ジリリリン、と黒電話が鳴った。涼子は電話に出るべきかどうか迷ったものの意を決して電話へと向かい、電話を取る。
「……はい、五十嵐です」
「“……五十嵐か?俺だ、担任の三島だ"」
「先生……?」
電話の主は担任の三島だった。一体どうしたのだろうか。
「“おじいさんはいるか?"」
「ええと……今畑仕事でちょっと……」
「“そうか。なら後でもう一度電話するが先に言っておこう。しばらく博多には帰ってくるな。可能な限り津屋崎での外出も避けろ"」
「……え?」
「“実は森下がお前の家の様子を報告してくれてな。やはりマスコミがずっと張ってるらしいんだ。下手に見つかればお前質問責めにされるぞ。どこから嗅ぎ付けたのかさっきは学校にまで来やがった。もちろん俺と校長先生達で追い返したがな。事情を直接説明したいからおじいさんが帰ってきたら学校に電話をかけるように伝えてくれないか?"」
「わ、わかりました……」
「“ほとぼりが冷めるまでは津屋崎に逃げてろ。課題なんかは郵送しておくから勉強も忘れるなよ"」
担任はそれだけ言うと電話を切った。涼子は憂鬱な気分で受話器を置く。重い足取りで居間へ戻るとため息をつきながら大の字に寝転んだ。
昼過ぎに巌鉄が帰宅し、その際に事情を説明すると巌鉄はすぐに学校に電話をかけて事情を聞いた。担任は涼子がマスコミの目に晒されることのないよう気を付けてほしいと頼んだようだ。巌鉄も重い口調で「そうですか……わかりました」と一言告げて電話を置いた。
「大変なことになってしまったのう」
「おじいちゃん……ごめん、あたしのせいで……」
「涼子が気にすることやなか。元はっちゅうたら平蔵のハナタレが起こした事が原因やろうもたい。そいけどマスコミか……」
巌鉄はため息をつきながら麦茶を飲み干す。長く生きてきたがこんなことは初めてだ。しかし身内の会社の不祥事という前代未聞の事件に多少なりとも戸惑いを隠せない。
しかしマスコミの目にかわいい孫娘を晒すわけにはいかない。奴等の情報収集能力は異常だ。いつ涼子のいるこの場所がバレるかもわからない。巌鉄は再び電話に向かうとこの辺り一体の住民達に電話をかけ始めた。決して愛する孫娘の居所が知られないようにと協力を求めて。
それからのひと月はまるで人生最悪としか言いようがないくらいの出来事だった。
父は裁判にて数億円規模の財産を罰金として支払う判決を下される羽目になり、家にあるほとんどの高価な品は差押えられた。
さらには福岡ドーム建設という一大事業を他社に奪われ、さらには会社も倒産寸前の事態にまで陥ってしまった。連日テレビでこの話題は放映され、五十嵐家は世間から強いバッシングを受けることになった。涼子の学校でもこの話は話題となり、とても涼子は学校に登校できる状態ではなかった。
平蔵の会社はおそらくは御堂誠公会の息がかかった会社に吸収合併され、平蔵は会社を追い出される形で社長を辞職。五十嵐一家は莫大な財産を一気に失ってしまったのだ。
学校に行けない涼子は常に祖父の家に避難する形で住むようになり、畑仕事を手伝いながら津屋崎で暮らしていた。
そんなある日。
巌鉄の家に一人の少女が訪ねてきた。五十嵐涼子の後輩を名乗る人物であった。巌鉄は最初警戒したが、たまたま鉢合わせた涼子の話から彼女が本当の後輩の美香であることが判明したため、彼女を家に上げることにした。
巌鉄は「積もる話もあるやろうから二人で話しよきなさい」と畑仕事に再び出かけていった。
「涼子センパイ……やっと会えましたね」
「……こんな田舎まで会いにくるたぁ、暇人やねあんたも」
冷たい麦茶に手をつけながら涼子はふう、と軽くため息をついた。美香が自分を慕ってくれているのは嬉しいが、正直言って今は自分に関わるべきではないだろう。もし自分と親しい関係であることがマスコミに知れれば彼女まで何を問い詰められるかわかったものではない。
「センパイ、私許せません。センパイとご両親から全てを奪った“犯人"が。どうしてセンパイがこんな扱いを受けなければならないんですか。私、納得できません」
「あんたの納得なんて世間は求めとらん。世間が求めとるのはあたし達一族に対する社会的制裁とそれで得られるマスコミの視聴率たい」
「ええ。そうでしょうね。だから……」
すると美香はカバンから大きな封筒を取り出すとそこからいくつもの書類、そして複数枚の写真を取り出した。写真には服装は違えど全て同じ男が映っている。
「私なりに納得のいく答えを見つけてきたつもりです」
「……この男は?」
「……その男の名前は鷲尾彰一(わしおしょういち)。平蔵さんと直接取引をした御堂誠公会直系の紅鸞会の会長です。そして……この男こそがセンパイのお父さんを嵌めた真犯人です」
「……!?」
涼子の写真を握る手に自然と力が入る。さらに写真と共に同封された書類には紅鸞会傘下の会社による地上げや数々の事業乗っ取りの事件、それの被害を被った会社の名前が羅列されていた。
「……こ、これは……‼︎」
「私、調べました。あらゆる手を使って。時にはちょっと危ない橋を渡りましたが……天神連合の鬼怒川さんが協力してくれたんです」
「鬼怒川……あいつが……!?」
聞けば美香は天神連合の集会場所に一人で出向き、総長の鬼怒川に直談判したのだという。なんと命知らずな女であろうか。
「よく鬼怒川のバカが協力してくれたね」
「はい。鬼怒川さんも倒すべきライバルを陥れた人間が許せないようでした。喧嘩っ早いですがなかなかに情に厚い人でしたよ。鬼怒川さんの身内や人脈を総動員して情報をかき集めました。夜の移動の時も鬼怒川さんがバイクに乗せてくれたんですよ!」
美香のその言葉を聞いて涼子は苦笑した。馬鹿な男気だとは思っていたが愛すべき馬鹿な男なのだと。いい意味でも悪い意味でも真っ直ぐな男なのだ。
「……つまり、じーちゃんもばーちゃんも母さんも……その御堂誠公会の鷲尾彰一って男に嵌められたと……?」
「そうたい。そして龍馬、あんた達が追ってる鷲尾志鶴は鷲尾彰一の息子や」
なんということだ。つまり紅鸞会の鷲尾彰一、息子の志鶴は今回の事件をきっかけに五十嵐家と二代に渡る争いを初めてしまったことになる。それもかなり分の悪い戦いだ。
「一体何の因果なんやろうね……もう断ち切れたはずだと思っとった過去が今になって足を掴んできやがってからに……しかも息子のあんたにたい……」
もうあの忌まわしい過去は振り切れたものだと思っていた。復讐を果たすことはできなかったが、家族を失うことなく龍馬という新しい命を授かり母となった自分には手に入れた幸せがあった。そう思っていたのに。
まさか、あの過去が息子にまで魔の手を伸ばしてこようとは。高校時代、あの時見た夢は今のこの状況を暗示していたということなのかもしれない。
「結局過去からは逃れられんっちいうことか……すまん龍馬……俺があん時紅鸞会の誘いに乗っとらんやったら……」
あの時、真っ当な手段を選んで会社を続けていたら。あの時、鷲尾の誘いに乗らなければ。
未来を見据えるあまりに足元を掬われてしまった自分の行いに平蔵は悔やんでも悔やみきれない。そのせいで娘はおろか孫にさえ忌まわしい過去の記憶に巻き込む羽目になってしまった。
だがしかしたらればの話をしてもどうしようもない。今はこれからどうするかを考えなければ。
「ところで母さん……気になるんだけど……結局その後母さんはどうしたんだ?」
「……あんまり言いたくないんやけど……こうなってしまった以上は話せるところを全部話しとかないかんね」
涼子は再び重い口を開き、過去のことを話しはじめる。最も忌まわしい、その後の話を……。