第34話 いざ、異界へ
ある日の昼下がり。
大臣ボルドの報告と共にソフォス皇帝は手紙を受け取った。
差出人は……"サイトウ・リュウイチロウ"。
「む!?これはリュウイチロウ殿から!?」
ソフォスの脳裏に斎藤一家と過ごしたあの一週間の思い出が蘇る。思い出に浸りつつ、ソフォスは手紙の封を開けた。そこにはリュウイチロウからシルワ語である事が書かれていた。
"拝啓 ソフォス皇帝陛下。
暑い日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、この度は私達斎藤一家と龍馬の友人も共に夏の休暇を利用してアルカ帝国を訪問したいと考えております。
それについてご相談をさせていただきたいことが二つほど。
ひとつはピクシー族であるルミナの故郷を探すのに力を貸して頂きたく存じます。
それからもうひとつが……"
「むう……!なんと……!」
「いかがなされました、陛下?」
「ボルドよ。儂の大事な客人達が幾日かの内にここを訪ねてくる。儂やモニカ、アルバート達も世話になったニホンの恩人だ」
「ニホンの恩人……と申しますと、以前陛下がお世話になった"サイトウ様"……でございますか?」
「そうだ。彼等には返しきれぬほどの恩がある。彼等がいつ来てもいいよう、客室の準備と迎えの兵を用意しておくのだ」
「はっ、かしこまりました」
数日後……斎藤家
「異界に行く!?」
龍馬は父と母から衝撃的な話を聞かされた。
なんと異界・アルカ帝国へと夏休みを利用して一週間の異界旅行へ行こうと言うのだ。
「そうだ。まずはルミナちゃんの故郷を探す。そしたらディレットちゃんのご実家へ挨拶に行こう。あとは……適当に帝都を見物して帰ろうじゃないか」
「でも……足はどうすんだよ?見たとこアルカ帝国の領土は結構広いぜ?帝都だけならまだしも一週間でルミナの住んでた森を探したりディレットの実家の森まで行って回る時間あるのかよ?」
「確かに……リョーマの言うとおりです。帝都から私の住んでいたトルトの森までは馬だとどれだけ急いでも片道1日半はかかります。天候が悪かったりすれば二日以上かかることも……バイクや車をあの世界に持ち込めれば別ですけど」
そう言ってディレットは頬杖をつく。
「……さてディレットちゃん、今なんて言ったかな?」
「え?馬では1日半か二日以上かかるって……」
「そのあとだよ!」
「バイクや車をあの世界に持ち込めれば……」
「ふふふ……実はね……」
不敵な笑みを浮かべながら龍一郎は手紙を取り出した。
「……!!リュウイチロウさん……それは……!!」
手紙の封にはアルカ帝国を象徴する紋章が描かれている。これは皇族からの直筆の手紙であることを指していた。
「そう、ソフォス皇帝陛下からの直接の手紙だよ。手紙はルミナちゃんに翻訳してもらった。中にはこう書いてある」
"拝啓 サイトウ・リュウイチロウ様
この度、わざわざお手紙を頂けたことを大変嬉しく思います。
私共がニホンへ来た時、その節は大変お世話になりました。
さて、この度サイトウ様ご一行が我が帝国を訪れていただくと聞いて歓迎の意を表したいと思います。
つきましては、サイトウ様のお手紙に書かれていた『お願い』ですが、私共でよろしければルミナ様の故郷探しに喜んでご協力させていただきます。
それから二つ目のお願い……『帝国内へのジドウシャとばいくの持ち込みをさせてほしい』という件……これに関しましても許可させていただきます。城の者や兵士達、ニホン政府へは私から口添えしておきます。安心してご入国くださいませ。
私共一同、サイトウ様のご来訪を心よりお待ちしております。
アルカ帝国第三代皇帝 ソフォス・レーグヌム・アフトクラトリア"
「マジかよ……」
龍馬はVIPレベルどころか国賓級レベルの待遇を約束した皇帝直筆の手紙にただただ絶句するしかなかった。
「いやあ、ランクルが当たったのは非常に好都合だったな」
「で、でも親父。車はともかく"バイク"ってなんだよ?ディレットのKLX250ならまだしも俺のNinja250や親父のバルカンSは異世界の舗装されてない道なんて走れないだろ?」
確かにその通りだ。
オフロードバイク以外のバイクは基本的にオンロード用で舗装された現代世界の道路を走るように設計されている。
舗装されていないあちらの世界の道を走るのは些か危険だ。
「いい質問だな、龍馬。とりあえず二人ともガレージの二階に来なさい。そこで詳しく話そう」
龍一郎はそう言ってソファを立ち、さっさとガレージへ言ってしまう。わけもわからず二人もあとに続く。
ガレージの二階に行くと龍一郎の隣にはカバーのかけられた謎のバイクが。
龍一郎がカバーを取るとそこにはーーーー
「こ、これは……!!」
カバーの下から現れたのはディレットのKLX250に似た緑色のオフロードバイク。しかしよく見ると大きさが違う上にやや古ぼけている。
「これ私のバイクに似てませんか?」
「そりゃそうだ。これはKDX220SR。KLX以前のカワサキのオフロードバイクシリーズのひとつだよ」
1980~1990年代にかけてカワサキが生産・販売していたオフロードバイク。それがKDXシリーズである。
KDX220SRは1994年に販売が開始され、その後排ガス規制のあおりを受けて1999年に生産中止になるまで作られたKDXシリーズ最後のモデルなのだ。
コンパクトな車体と侮るなかれ、水冷2ストロークのエンジンから生み出されるパワーは他のオフロードバイクの追従を許さない。
「親父……!どうしたんだよ、これ……!」
「冴島社長に頼んで安いやつを探してもらったんだ。あとは俺が修理した。それから……龍馬、そろそろお前の友達から連絡があるころじゃないか?」
「え?」
そう言って龍馬がスマホを見ると1件の通知が。勇斗からだ。龍馬はメッセージを確認する。
ゴリラ
「"バイク2台目買っちった☆"」
写真も送られてきている。そこにあったのは黒いオフロードバイクだ。
ゴリラ
「"ヤマハのセローだぜ!"」
ゴリラ
「"異界でバイク乗り回すからってお前のお父さんから誘いを受けて皇帝陛下の謝礼金使って買ったんだ!おっちゃんとお前のお父さんのおかげでめっちゃ格安で手に入ったぜ!"」
この父親、人の友達にまで根回ししてやがる。龍馬は呆れと笑いが同時にこみ上げてきた。
「んで……このバイクは誰が乗るんだ?」
「そりゃもちろん龍馬、お前だよ」
「……予想はしてた」
「俺は車運転しなきゃいけないからな。その代わり向こうで時間がある時は交代で俺にも乗せてくれ。一度あの世界の広い草原や森をオフロードバイクで思いっきり駆け抜けてみたかったんだよ」
「アンタほんとはそれが一番やりたかっただけだろ。子供かアンタは」
「はは、男は一生ガキのままだよ。さて……これで前準備は整った。あとは日程だが……3日後に出発するぞ」
「急すぎない!?」
「"善は急げ"だ。二人とも、準備をしておくように。……ああ、そうだ。バイト先には母さんが連絡してくれてるから休みは心配ないぞ」
「抜かり無さすぎて草生えるわ」
こうして斎藤一家の異界旅行が決まった。
龍一郎の計らいにより、勇斗の他に千春も来るらしい。
龍馬とディレットは荷物をまとめ、異界に行くための準備をする。
着替えや洗顔用具など宿泊に必要なものをまとめる。
最初に聞いたときは驚いたが、異世界の城に泊まれると聞いて否応なしに気持ちが高ぶってしまう。
荷物をまとめたらバイクの試乗と点検だ。龍馬は試しに近所をブラリと走ってみる。
さすがオフロードバイクだけあってパワフルだ。しかもコンパクトな車体で取り回しも良い。
「新しい相棒、よろしく頼むぜ」
龍馬はそう言ってタンクをポンポンと叩く。
帰宅するとディレットのKLX250もあわせて入念に点検と手入れを龍一郎と共に行う。
そして遂に出発の日がやってきた。
車とバイクを運ぶため、一行はフェリーを利用する。そのためにはまず北九州の最北端・門司港へと移動する必要がある。
だが、いくらランドクルーザーといえどオフロードバイクを三台も積み込むことは出来ない。
そこでバイクに乗りなれている龍馬と勇斗が車の後ろから追従し、ランドクルーザーのリアバンパーにバイク用キャリアを取り付けてディレットのKLX250のみ積み込んで彼女は車に乗ることにした。
出発は昼過ぎ。門司港からフェリーに乗り東京まで。その後大型フェリーを乗り継いで海洋港まで向かい、帝国へ向かう。
東京まではおよそ半日かかる。夕方からフェリーに乗り込んだら船で一夜を過ごすことになる。
「よし、忘れ物はないな?」
「「オーケー!」」
既にバイクに跨がった龍馬と勇斗がグッドサインをする。
「みんな行くばい!ファンタジーの世界へ!」
「おー!」
「うう……緊張する……」
「(やっと……お父さんとお母さんに会えるんだ……!)」
ルミナは両親に会いたいが故の感情の高ぶりを堪え、平静を装う。
「さあ、女性陣は車に乗れ。龍馬と勇斗君は気を付けて着いてきなさい」
「大丈夫だって!」
「わかってまーす!」
「じゃあ行くぞ!まずは門司港だ!」
龍一郎はランドクルーザーのエンジンをかけ、発進する。龍馬と勇斗もそれに続く。
博多を出発した一行は香椎浜沿いの下道から貝塚ICで都市高速に乗り、福岡ICまで走った後はそこから九州自動車道に乗る。九州自動車道を北上し、一時間ほど走る。
途中のパーキングエリアで休憩を挟みつつ、新門司港ICで九州自動車道から降りる。そのあとは新門司港フェリーターミナルからフェリーに車とバイクを積み込み、フェリーに乗船する。
暗くなりつつある夕焼けの下、フェリーは門司港を出発した。
甲板に出た龍馬、ディレット、勇斗、千春の四人は遠ざかるターミナルを見つめる。
「何気に船乗ったの人生初だよ」
「龍馬もか?俺もだ」
「私は帝国で何回か乗ったことあるよ」
「まさか人生初の海外旅行が異世界になるなんて思いもしなかったわ」
一行を乗せたフェリーは夕焼けの下、東京へと向けてゆっくりと進んでいった。
翌日。
朝5時過ぎにフェリーは到着し、龍馬達は眠い目を擦りながらフェリーを乗り換える。
このフェリーは日本政府がソフォス皇帝の口添えで特別に用意した、車両を積み込むためのフェリーだ。
至れり尽くせりの待遇の中、フェリーは東京湾沖の海洋港を目指して進む。
空港のような海洋港で入国手続きを済ませてからもう一度フェリーに乗る。
本来ならばここでアルカ帝国が所持する帆船に乗り換えるのだが、それでは車両が積めないため特別にフェリーをアルカ帝国に入国させてもらうことになっている。
フェリーは暗い次元の門の空間を通る。龍馬達は甲板に出て次元の門を通過するその時を待った。
「おいみんな!出口だぞ!」
龍馬がそう叫んで指差す先には出口の光。
フェリーは光に近づき、次元の門を抜けた。
「おお……!!」
「すげえ……!!」
「これが……アルカ帝国の帝都……!!」
「(久々に……帰ってきたのね……この世界に……!)」
眩しい光に慣れた先に広がっていたのは美しい海。そして高くそびえるアルカ帝国王城と中世の町並みであった。
ゲームや漫画、映画で見たファンタジーの世界。その世界が目の前に現実となって広がっている。
フェリーはゆっくりと帝都の港の一番広い場所に停泊する。港の帆船から魚を水揚げしている水夫や交易船の乗組員達が異界の船に驚いて皆こちらを見ている。
龍馬達は一度タラップからレンガ作りの桟橋に降りた。
するとすぐに馬に乗った鎧姿の騎士が駆け付け、龍馬達の前で馬から降りる。
「サイトウ・リュウイチロウ様ご一行ですね?私はオールデン騎士団第1部隊隊長、アルフォンス・リーゲルと申します。皇帝陛下ならびにアルバート団長からの指令を承り、あなた方のお迎えと王城までのご案内をさせていただきます。よろしくお願い致します」
金髪の美しい顔立ちに装飾が施された銀の鎧、そして騎士団の刺繍が入った青いマントを着用し、腰には柄に美しい宝石が埋め込まれたロングソードを装備している。
「ほお……こりゃまたえらいいい男が出てきたもんやね。至れり尽くせりやないね」
涼子がそう言ってアルフォンスの顔をまじまじと見つめる。
「よろしくお願いします、アルフォンスさん。それから皇帝陛下から聞いているとは思うのですが……」
「はい、異界の乗り物があるということですね?私はここでお待ちしておりますのでどうぞ」
「お心遣い感謝します、アルフォンスさん。……龍馬、勇斗君。バイクを出そうか。俺は車を出してくるよ。それ意外はここで待機で」
龍一郎と龍馬、勇斗の三人は車両を出すためにフェリーへ一旦戻る。後にはディレットと涼子、ルミナと千春が残された。
「皆様、船での長旅お疲れ様でした。ご遠方からわざわざ我が帝国へご来訪いただき感謝しています。城へ付けば陛下もお喜びになられることでしょう」
そう言ってアルフォンスはニコリと笑う。日本の男性トップアイドルも顔負けの美しい顔立ちだ。さぞモテるに違いない。
「アルフォンスさん……あんたいい男やね……ねえ、うちの旦那と交代して日本に来んね?」
「ちょ、ちょっとリョーコさん!」
とんでもないことを言い出した涼子をディレットが諫める。
「リョーコ様……ですね?リュウイチロウ様の奥方の。……お気持ちは嬉しいですがそのお話には乗れません。私にはここでオールデン騎士団の第1部隊隊長として帝国を守るという使命があります。私は使命を全うするまでどこにも行くつもりはありません」
アルフォンスは胸に手を添えて一礼する。さすが一流の騎士。女性の扱いにも慣れているらしい。
「冗談ですたい、冗談。そげんかしこまらんでも」
「ふふ、面白い奥方だ。……おっと!?」
突然アルフォンスの馬が興奮し出した。
原因はフェリーから出てきた車とバイクのエンジン音だ。
龍一郎のランドクルーザーと龍馬達のバイクは一行の近くに止まり、一旦エンジンを切る。
「どうどう!どうどう!……よし、いい子だ。そうだ、落ち着いて……」
アルフォンスの馬は徐々に落ち着きを取り戻し、再び大人しくなる。そこへ車両から降りた龍一郎達がやってくる。
「どうも、お待たせしました」
「ほう……それが異界の"ジドウシャ"に"ばいく"という乗り物ですか。話には聞いていましたが、本当に鉄で出来た馬と馬車のようだ。少し馬が驚いてしまったようです」
どうやら聞き慣れないエンジンの音に馬が驚いたようだ。龍一郎はその事を詫びた。
「お気になさらず。私とこの馬は共に多くの戦場を駆け抜けてきました。すぐに慣れますよ。さあ、では私に着いてきてください」
アルフォンスは馬に再び跨がり、歩を進める。
涼子達は車に乗り込み、龍馬と勇斗の二人はその後ろからバイクで追従する。
細い路地を通り、大通りに出ると様々な店や露店がズラリと並んでいた。
「皆の者!道を開けよ!皇帝陛下の大事なお客人のお通りである!事故にならぬよう、充分に距離を取るように!」
アルフォンスがそう叫ぶと大通りの人々が一斉に道の両端に寄った。アルフォンスの跨がった馬の後ろに続く異界の乗り物に皆驚いて目を丸くしている。
「おい、見ろよ……!あれがジドウシャってやつか……!?異世界の国ニホンの……!?」
「本当に馬無しで走ってる……!」
「後ろの鉄の馬は一体なんだ……!?」
「すごーい!かっこいー!」
町の人々から驚きの声が上がる。
「なんか恥ずかしいな……」
龍一郎は車を運転しながらそう呟いた。通りの人々が奇異の目でこちらをずっと見ている。
「リュウイチロウさん、ここが"バザー通り"です。一年を通して珍しい品物がたくさん売ってるんですよ」
「へえ、確かに色々な店があるな」
野菜や果物、水揚げされたばかりの新鮮な海の幸や美しい布や装飾品、パン屋やキャラバンの露店など中世ならではの店や商品がところ狭しと並んでいる。
と、左斜め向かいの店先からこちらに向けて手を振り続けている三角巾を被った金髪ポニーテールの少女がいた。アルフォンスは馬の歩をゆっくりと止め、後ろに続く龍一郎達も停車する。
「アルフォンスさーん!こんにちは!」
「やあ、シャル。こんにちは。お手伝いかい?」
「うん!」
「そうか、いい子だ。お父さんとお母さんをしっかり助けてあげるんだぞ」
「もちろん!……ねえ、後ろのおっきい馬車に鉄のお馬さんは何?あの人たち誰なの?馬車、お馬さんいないの?」
「ああ。皇帝陛下の大事なお客様だ。あれは"ジドウシャ"と"ばいく"といって、馬が無くても走る魔法の乗り物なんだ」
「すごい、すごい!私も乗りたい!」
「こらこら。お客さんを困らせちゃいけない。私はこれからお客さんをお城に案内しなくちゃいけないんだからね」
「ちえー、つまんないの」
シャルと呼ばれたその少女は不満そうに口を尖らせる。
と、その時店の中から長い金髪の女性が走り寄ってきた。
「こら、シャル!何してるの!」
「あ、お母さん……」
どうやら彼女はシャルと呼ばれた少女の母親のようだ。
「まあ、アルフォンス様!この度はうちの娘がご迷惑をおかけしました……」
「いいえ、お気になさらず。マルタさん、シャルはいつも元気な娘さんですね。こちらまで笑顔になりますよ」
マルタと呼ばれた女性はどうやら彼女の母親らしい。アルフォンスと会話していると龍一郎達も車を降りてきた。
「アルフォンスさん、お知り合いですか?」
「ああ、リュウイチロウ様。これは大変失礼致しました。こちらは私がお世話になっている雑貨屋の方でして……」
「はじめまして。主人のキース・カムランと共に"雑貨屋カムラン"を営んでおります、妻のマルタと申します。こっちは娘のシャルルです」
「シャルル・カムランです!シャルって呼んでね!」
二人は龍一郎達に深々と頭を下げた。
「皆様は不思議な乗り物に乗っておられるのですね……もしかしてニホンから?」
「ええ。ちょっと旅行というか……まあ観光に」
「そうでしたか。お時間があればうちのお店にも寄っていってください。少しですがニホンの製品も取り扱っていますので」
「ええ。是非寄らせていただきますよ」
その後一行はカムラン親子としばらく雑談をし、再び王城へ向けて出発した。
「じゃーな、シャル!」
龍馬がバイクからシャルルに向けて手を振る。
「ばいくのお兄ちゃん!またね!」
王城へ向けて走り去る彼等に向かってシャルルはずっと手を振り続けていた。
「さあ、着きましたよ」
目の前には大きな城門。その城門が音を立ててゆっくりと開く。
アルフォンスは馬から一度降りると見張りの兵士と何やら話をしてからこちらに戻ってくる。そして運転席にいるリュウイチロウに告げた。
「城の中庭までご案内します。ジドウシャとばいくはそちらに止めておくとよいでしょう。さあ、皇帝陛下がお待ちです。どうぞ」
一行はアルフォンスに続いて城内へと入っていく。しばらく走り続け、城の中庭に入ると懐かしい顔がそこに待っていた。
龍一郎達は車両を降りて彼等と対面する。
「陛下!お久しぶりです」
「リュウイチロウ殿。それにご家族とご友人の皆様。お待ちしておりましたぞ。ようこそ我が帝国へ。そして我が城へ。私達はあなた方を歓迎致します」
遂にアルカ帝国へとやってきた斎藤一家と龍馬の友人達。
これから波乱に満ちた異世界の事件に巻き込まれていくことを彼等はまだ知らない。