アナザー・ディメンジョン -異界交流記-   作:誠龍

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第4話 異界を夢見て

あの対談からおよそ半年が過ぎた。

半年の間に両国は大きく変わった。異界同盟法案は無事に結ばれ、交易によってニホンの珍しい品がアルカ帝国に流通し、特に日本製の美しい生地は貴族達に引っ張りだことなり、"キモノ"や"ハカマ"と呼ばれるニホンの伝統的な衣装も大人気であった。さらにあの対談の際に日本政府から記念にとソフォス皇帝に贈られた様々な装飾品の中にあった一振りの剣。"カタナ"と呼ばれる日本の鍛冶職人が数百年に渡って受け継がれてきた技術で鍛え上げたその剣は非常に精巧な技術で作られており、帝国お抱えのドワーフの鍛冶屋をも驚かせた。

異界の品に驚いたのは帝国だけではない。それは日本も同じであった。アルカ帝国に流通しているエルフの伝統的な技術で織られた生地やドワーフの鍛えた金物は日本にも輸入され、日本の技術とはまた違うその美しい生地や金物は高額ながらも瞬く間に売れていった。

こうして帝国中に異界の国ニホンの品が出回ったことで帝都をはじめ、国民達がニホンの品だけでは飽きたらず、異界の国ニホンそのものに憧れを抱くようになった。

もちろん日本国民も例外ではない。本来ならおとぎ話や映画などでしか存在しなかったファンタジーの世界。その異世界が目と鼻の先にある。もはや両国の国民達が異世界を一目見てみたいと声を大きくするのは時間の問題であった。

この国民の声に応えるべく帝国と日本政府は共同で異界の門の管理を発表。最初は異界人の受け入れによる国内の混乱を恐れて日本政府は躊躇していたが、国民のあまりの声の大きさにそうせざるを得なくなった。ここで国民の期待の声を無視すれば内閣の支持率に悪い意味で影響してしまう。

異界の門となっている次元の穴は日本政府が急ピッチで建設した外壁兼施設内部におさめられ、アルカ帝国と日本政府を繋ぐこの門を管理する施設は"東京湾海洋港"、異界側は"アルカ帝国海洋港"と名付けられた。

門を抜けてアルカ帝国側の海上にも施設が建設され、異界との架け橋となった。また、異界人の受け入れに関してはさすがにそのまま受け入れるのはまずいとして日本政府と帝国ギルドが共同で運営する"渡航希望者専門学校"が帝国に設けられた。ここでは誰もが無料で日本の法律やマナー、ひらがな・カタカナ・漢字といった日本の文字など滞在に必要最低限な知識を学べる(不思議なことに言葉は通じるが文字までは読めないらしい)。ここで課程を修了したのち、帝国が週2回開いている日本入国資格試験に合格すれば渡航資格を得ることができ、晴れて日本への渡航が許可される(ただし犯罪歴のある者などは入国を制限される恐れがある)。

誰もが無料で憧れのニホンへと渡れると聞いて連日ギルドには学校への入学の申し込みが絶えなかった。

資格を取得した者は次々とニホンへ渡り、中にはニホンの学校へ通ったり、ニホンで働いている者もいる。そしてあのエルフの少女ディレットもニホンへと渡りたいと願う者であった。

 

「(憧れのニホン……!ついに行けるチャンスがやってきたわ……!)」

 

ディレットはギルドへ向かい、入学の手続きに必要な書類やニホンの渡航案内の("ガイドブック"というらしい)をもらって一度帰宅した。両親にニホンへの渡航を認めてもらうためだ。だがーーーー

 

「ニホンへの渡航!?馬鹿を言うな!異世界だぞ!?」

 

父ノーブルは強く反対した。行き先は勝手のわからぬ異世界。便利なものは確かに多いようだがどんな危険なことが起きるか予想もつかないのもまた事実。大事な一人娘を異世界に行かせるなどもってのほかだった。

 

「お父さんお願い!私どうしてもニホンへ行きたいの!」

 

「ダメだ!帝都に住むと言うならまだしも、異世界なんて危険すぎる!」

 

「……ディレット、あなたの気持ちはよくわかったわ。でも……異世界に行くなんてのは……」

 

母マリアも不安そうな表情を浮かべている。母親としては娘の願いは出来ることなら叶えてやりたい。だが異世界の国はこちらの世界の人間にとっては未知の領域。やはり母として娘の安全を願う以上そのような場所には行ってほしくないというのも本心だ。

 

 

 

「…………バカ…………」

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

ディレットは唇を噛み締めて涙を浮かべーーーー溜まった感情を一気に放出してしまう。

 

「お父さんとお母さんのバカ!!わからず屋!!」

 

わかっている。両親の気持ちも、自分がワガママを言っていることも。それでもこの気持ちは抑えられるものではない。ディレットは本や書類をノーブルに投げつけて家を飛び出してしまう。

 

「ディレット!待ちなさい!!」

 

ノーブルは本をぶつけられた顔を押さえつつも慌てて後を追いかけ、娘を引き止めた。しかし後ろから羽交い締めにした娘の力は予想以上に強かった。

 

「離してよ!!離してったら!!」

 

ディレットは父親を振りほどくと突き飛ばした。……と、言うよりは"張り倒す"と言った方が近かったかもしれない。ノーブルは強くその場に倒され、ディレットは森の奥へと走って言ってしまった。

 

「いてて……我が娘ながらなんて力だ……」

 

ノーブルは痛む腰をさすりながら立ち上がると服の土を払う。

 

「あなた……大丈夫?」

 

あとから来たマリアが心配そうな顔をしている。既に娘の姿は見当たらない。しかしこんな夜更けに彼女が行くとすれば場所はひとつしかないだろう。森の奥……"あの場所"だ。

 

「ああ、大丈夫だ……」

 

「あの子は……?」

 

「森の奥へ……多分オルディオの大樹だ。昔からあの子は何かあればあそこへ行っていたからな……」

 

オルディオの大樹はこのトルトの森の中心に位置する大樹だ。古代エルフの精霊が宿ると言われ、この森を守護する存在とも言われている。大樹は生命の誕生と終結に深く関係しているとの言い伝えがあり、エルフの魂はここから生まれ、そしてまた生涯を全うした時に魂は再びここへ還っていくのだと。

聖域と呼ばれるその大樹のある場所は昔からディレットのお気に入りの場所で何かがあれば彼女はよくそこへ行っていることをノーブルは知っていた。

 

「そう……しばらく一人にしてあげましょう。落ち着いたら二人で迎えにいきましょうか」

 

「ああ……」

 

「私達ちょっと言い過ぎたかもね……せめて落ち着いて話だけでも聞いてあげましょう。賛成か反対か決めるのはそれからでも遅くないはずよ」

 

「そうだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森の奥深く、オルディオの大樹の下でディレットは膝を抱えて目に涙を浮かべていた。

 

「なによ……お父さんもお母さんも……あんなに反対しなくたっていいじゃない……」

 

あと少し……あと少しで憧れのニホンへと渡れる。だが両親がそれを許さない。しかしニホンへの憧れも捨て去ることはできない。ディレットの脳裏に"家出"の二文字が浮かぶ。

 

「……さすがに家出はダメよね……」

 

ディレットはふう、と溜め息を漏らした。

確かにニホンには行きたいがここまで大事に育ててくれた両親を裏切ることはできない。先ほどは感情の昂りから思わず飛び出してしまったが落ち着いてみると両親に申し訳ないことをしてしまった。

 

「……ハァ……どうしよ……」

 

膝を抱えたままうつむいていると足音が聞こえてきた。ディレットはハッとして足音の方向を見る。

 

「……誰?」

 

現れたのは父ノーブルと母マリアだった。

 

「やっぱりここにいたか。心配したぞ」

 

「さあ、家に帰りましょう」

 

「……」

 

ディレットはうつむいたまま答えない。

 

「……私も言い過ぎた。反対するにしてもまずはお前の話を最後まで聞くべきだった、すまん」

 

「……うん」

 

ディレットは立ち上がると目をこすって歩き出し、両親と共に家へと帰った。

 

 

 

ーーしばらくして、ディレットの自宅。

 

 

 

「異界人留学プラン?」

 

「うん、そうなの」

 

自宅に帰り、落ち着いたディレットはノーブルに促され、ニホンへの渡航に関する話をしていた。

その中にあったのが"異界人留学プラン"だった。

 

「ニホンへの渡航には観光・留学・就労の三つから渡航目的を選べるの。このうち留学と就労は異界人の私達に衣食住を提供してくれる人達がいてね。私は留学で色々なことを学びたいの」

 

「しかしそれには大きな金がいるんじゃないか?うちにはそんな大金はないぞ」

 

「大丈夫。お金はニホン国と帝国が共同で負担してくれるわ。"奨学金"っていう仕組みらしいけど……」

 

「ふむ……」

 

ノーブルはディレットの話を聞きつつ、資料に目を通していた。

 

「だが……お前を預かってくれるっていう人達は?お前を預かる者として金が必要になるはずだ。さすがにそこまで国は金を出してくれないだろう?」

 

「それも大丈夫よ。これは留学に限るけど、私を置いてくれる人の家もある程度国が負担してくれるみたい。さすがにこれは全額じゃないけど……」

 

「……なんだか夢みたいな話なんだが、信じていいのか?至れり尽くせりじゃないか」

 

「観光目的でニホンに行ったこっちの世界の人達や交易のおかげでニホンの経済に余裕が出来たんだって。それからこんなプランが出来たとか」

 

ノーブルは顎に手を当て、考え込む。

そしてしばらく考えたのち、答えを出した。

 

「……わかった。まずは渡航資格を取得しろ。話はそれからだ」

 

「え!?いいの!?」

 

「ただし!条件がある。この資料によれば資格は最短で1ヶ月で取れるとある。"資格を1ヶ月で取れ"。そして"不合格だった場合はニホン行きは諦めてもらう"ぞ。そうなればお前はニホンに向いてないと判断して再び試験を受けることは許さん。この二つが条件だ」

 

一度は強く反対した父。その父からの最大限の譲歩。

チャンスは一度きり。失敗は許されない。

 

「……わかったわ!私、絶対に合格する!」

 

そうと決まれば早速明日ギルドに申し込みだ。

入校すれば勉強のための教材がもらえるのでそれをもらえれば早速猛勉強だ。

 

「ふふ、よかったわねディレット。……さあ、夕食にしましょう?腹が減ってはなんとやらよ」

 

「うん!ありがとう、お父さん、お母さん!」

 

「おいおい、まだ許したわけじゃないぞ。条件付きだからな?」

 

「わかってる!……さあ、明日からは猛勉強ね!」

 

その日ディレットは夕食を取った後、明日に備えて早めにベッドに入った。

 

 

 

 

同じ頃、日本・福岡県福岡市・龍馬の家……

 

 

 

「"異界人滞在先募集"……?」

 

涼子がスマホでニュースサイトを見ていると、そんな広告が目に入った。リンク先は日本政府が運営するサイトで、内容は"留学・就労希望の異界人を受け入れてくれる家庭又は会社組織"とある。

 

「ふんふん……"就労希望者の受入に関する応募は寮又は社宅のある組織に限るが、留学希望者は一般家庭でもホームステイ先として応募できる"か……おっ、国が金も出してくれるんか。えーと、"応募した組織又は一般家庭は政府の審査の後に問題なしと判断されれば通知が……"そりゃそうか。問題のある家庭には行かせられんしな……せや!」

 

涼子は怪しい関西弁を喋りながら応募フォームから必要事項を記入し、応募ボタンページを開く。

 

「今は父ちゃんも単身赴任でおらんし、面白そうやから応募したろ!あ、ポチッとな」

 

"応募完了しました"

 

「さ、あとは審査を待つだけ。もし通ったらどんな人がうちに来るんか楽しみやね~♪おっと、そろそろ今日の晩飯作らんと……はぁ~めんどくさ。主婦の献立の悩みは異世界でも同じなんかね?」

 

涼子はそんなことを呟きながら夕食の準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ディレットは後日、申し込みを済ませて入学した。学校でも自宅でも必死に勉強した。

憧れのニホンをもっと知りたいと必要以上に勉強した。

与えられた猶予は短く、チャンスは一度しかないのだ。慢心して落ちればもうそこで終わりだ。より多く勉強しておくに越したことはない。

ちなみにこの学校ではニホン人が多く働いている。彼等のほとんどはニホンで職を失った人々だ。異界と繋がる前のニホンでは経済が不安定で職を失った人々が多かったのだが、異界との同盟を結んだことでこちらの世界でも帝都に限り働いているニホン人も多い。

ヒト以外にエルフやドワーフ、ハーフリングや知性のある魔族といった向こうの世界には存在しない種族に最初は彼等も若干の恐怖心を抱いていたが、皆真面目に授業を聞くので次第に打ち解けていった。何より異界での職ということでニホンで働くよりも給与が高いそうだ。あと、ニホン人向けの社員食堂での賄いが美味しいらしい。

ディレットは森と帝都を生地の卸売りで行き来しながら勉強を続け、全ての課程を修了してついに試験の日を迎えた。

 

「(今日で全てが決まる……!)」

 

用紙にはこれまで学んできたニホンの基礎知識や中には引っかけ問題もあったが、勉強に勉強を重ねたディレットには容易い内容であった。

走り出したペンは止まらない!

 

 

 

数時間後……トルトの森

 

 

 

「お父さん!お母さん!ただいま!」

 

ディレットが玄関のドアを勢いよく開けて帰宅した。

 

「おかえり。試験はどうだったんだ?」

 

「……受かったわ!ほら!」

 

ディレットはそう言って合格通知書を取り出す。

 

「なになに……?えー、"合格通知書 以下の者は渡航希望者専門学校の全課程を修了したのち、ニホン国渡航資格試験に合格し、渡航資格を得る者とする。『ディレット・アドミラシル殿』"……凄いじゃないか!」

 

「まあ!頑張ったわね、ディレット!」

 

「うん!それでね、今私の受け入れ先をニホン国の人が探してくれてるの!見つかったら手紙で通知が来るんだって!お父さん、これで私ニホンに行っていいんだよね!?」

 

「お前はきちんと約束を守ったんだ。私が守らないわけがないだろう。……行ってきなさい、ニホンへ」

 

そう言ってノーブルは笑顔を見せる。本心では"出来れば行ってほしくない"という気持ちがまだどこかにあったが、約束を果たし、笑顔を見せる娘の前では口が裂けてもそんなことは言えなかった。

 

「受け入れ先の人の情報が来るまでまだ少し時間がかかるみたい。ああ、どんな人達と会えるのかな……楽しみだな……ニホンの学校ってどんなところなんだろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘックショイ!!」

 

龍馬は突如出たくしゃみに顔を歪ませながら鼻をすすった。

 

「おいおい、風邪か?うつすなよ?」

 

「誰かが噂してんのかもな」

 

龍馬は鼻の下を指でさすると、ポケットに再び手を突っ込んだ。現在は勇斗と下校中である。

高校生活も早いものでもう12月だ。年が明けて3ヶ月もすればもう自分達は高校2年生だ。

街はクリスマス一色で至るところでクリスマスのイルミネーションや店舗のクリスマスキャンペーン用ののぼりや装飾品を見かける。

しかし、去年までのクリスマスとは違う。

 

 

 

異界人が多い。

 

 

 

半年ほど前に東京湾海洋港が出来てからというもの、異世界の人々やエルフ、ドワーフ、ハーフリング、魔族といった亜種族をこの福岡でも至るところで見掛けるようになった。

居酒屋の呼び込みをするドワーフ、ブティックで年末セールをアピールしながら働くエルフ、福岡の見慣れた光景であるオフィス街の屋台で日本人と共に商売するハーフリングなどの異世界の亜種族の人々……更には魔族、いわゆるモンスターであるはずの種族まで知性がある者はニホンに来て学校へ行ったり働いたりしている。

 

「仕事でお疲れの皆さん!さあさあ、うちの居酒屋に寄ってって!ドワーフの美味しい火酒で一杯どうですかい!」

 

「ただいま当店ではエルフ生地の衣類全品30%引きの年末セールを行っておりまーす!是非ご来店くださーい!」

 

「らっしゃいらっしゃい!フクオカの皆様!アルカ帝国名物のコカトリスの手羽先はいかがかね!うちの屋台に来たらこれを食べなきゃ損だよ!」

 

龍馬と勇斗はもはや日本人の生活の一部となった異世界の人々をまじまじと見た。

 

「……しっかし勇斗、お前の言ったこと本当に現実になったな」

 

「……だな。まさかここまで浸透するとは……」

 

わずかでここまで馴染むって日本人寛容すぎだろ。そう心の中で思った龍馬であった。

まあ、そのおかげでこちらの世界にいながらファンタジーの世界の文化に触れることが出来るし、何より龍馬も勇斗も中身はオタクだ。むしろこの状況を楽しんでいた。コンビニで温かいお茶を買って飲み、雑談しながら家路を歩く。勇斗と途中で別れ、帰宅した龍馬は自宅のポストに封筒に入った書類が入れられていることに気付いた。

 

「なんだこれ?」

 

宛名は母親だ。送り主は"日本政府・日本異界人渡航管理機構"と書かれている。

 

「日本政府……!?それに異界人って……?」

 

龍馬はリビングで上着とカバンを置いたのと母が買い物から帰宅するのはほぼ同時だった。

 

「ただいま~」

 

「母さん……これ、何?」

 

龍馬は封筒を見せる。

 

「あ、通知きたか」

 

「通知って……何の通知だよ?それに日本政府って……」

 

「まあ、ちょっと待ちんしゃい」

 

涼子は封筒を開け、書類に目を通す。

 

「えーと、"斎藤一家様。政府の審査の結果、あなた方の家庭は異界人滞在先家庭として審査を通過しましたのでここに通知致します"……やったぜ。」

 

それを聞いた龍馬は目を丸くして驚く。

 

「はああああ!?異界人滞在先家庭ぃ!?聞いてねーぞそんなの!?」

 

「成し遂げたぜ。」

 

「"成し遂げたぜ。"じゃねーだろ!?そもそも何でこんな通知が来てんだよ!?」

 

「だって応募したから。ほら」

 

そう言って涼子が見せたスマホの画面には"異界人滞在先募集"と書かれたサイトが映っている。

 

「何でこんなのに応募したんだよ!?」

 

「面白そうやったから」

 

などと母は供述しており、反省の色は全く見られない。龍馬は訴訟も辞さない考えだ。

 

「変なヤツ来たらどうすんだよ!!ドワーフのむさいおっさんとか来て同居とか俺嫌だからな!?」

 

「まだ来る人は誰か決まったわけじゃないっしょ。それも決まればまた別に通知が来るし……かわいい女の子が来るかもしれんよ?」

 

「おっさんが来る可能性だって否定できないだろ!!」

 

「大丈夫よ、一般家庭は留学希望の人しか受け入れが出来ないから少なくともおっさんは来んでしょ」

 

「おっさんだって学校行けるっつーの!!可能性充分あるっつーの!!だいたい……」

 

「ああああーー!!!!男のくせにいつまでもグジグジグジグジしゃあしぃ!!決まったもんはしょうがないやろ!!ゴチャゴチャ文句言っとらんで洗い物のひとつくらいせんか!!」(※『しゃあしぃ』=博多弁で"うるさい"、"やかましい"の意。"めんどくさい"、"鬱陶しい"、"厄介"のニュアンスで用いられることもある)

 

斎藤家に龍馬がゲンコツを喰らうゴチーンという音が響き渡った……ような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2ヶ月後、トルトの森。

 

「ディレットさーん、お手紙でーす」

 

「はーい」

 

ハーピーの郵便配達員がディレットの自宅に手紙を届けに来た。送り主は……ニホン政府。

 

「ニホン国の人からだ!!」

 

ワクワクしながらディレットは封を開ける。

 

「"滞在先決定通達書 ディレット・アドミラシル殿 この度あなたの留学の渡航に関して受け入れ先の家庭が決定致しましたので通達致します。"……やった!!ちょっと時間かかったけどやっと決まったわ!!」

 

更に書類に目を通すと滞在先の家庭について書かれていた。

 

「"フクオカ県フクオカ市在住・サイトウ一家様"……サイトウさんって方なのね……どんな家族なのかしら……」

 

ディレットはふふ、と笑いながら通達書を大事にしまい、まだ見ぬニホンに想いを馳せた。

 

 

運命の出会いは、すぐそこまで近づいている。

 

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